Western-Monsters

keiTO

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第ニ怪

女神からのお礼

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【第二怪の登場人物】
・シンジュウ




<女神からのお礼>

【河童】
日本の伝説や民間信仰に登場する水の妖怪。主に川や湖など水辺に住んでいるとされ、小さな体で甲羅を背負い、頭には皿のような形のくぼみがあり、そこに水が入っていることが生命の源とされている。
この皿の水がなくなると、河童は弱体化したり死んでしまう。
河童はいたずら好きで、人や家畜を川に引きずり込んだり、作物を荒らしたりする存在として知られているが、一方で礼儀正しい一面も持ち、相撲が得意で、人間と交流することもある。



アナタは神隠しを信じるか?
神隠しとは、突然人が姿を消してしまう現象や出来事を指す日本の伝統的な言葉。
かつて、理由もわからず人が消えると、それは神や妖怪など超自然的な存在がその人を連れて行ってしまったと信じられ、「神隠し」と呼ばれていた。
特に、子供が行方不明になるケースでよく使われている。

本来は"人間"が"妖怪"の世界に迷い込んでしまう事が、本来のパターンだが、妖怪が妖怪の世界に迷い込む事もある。

ここに二匹の西洋妖怪が日本妖怪達が住む世界に迷い込んだ。


フランクルン・ガルトン=オランダの“モンスター・キラー” 半妖人。
スノームン=オランダの“雪の妖精“ 熱を感じる物に少しでも触れると溶けて死ぬ体質。

2人は日本での仕事を終え、帰りの電車に乗ったはずが、何故か異界“夢望町”に辿り着く。
いくら西洋生まれの2人でも、今いる場所が現実の世界に居ない事は出来る。
そもそも、夢望町の空は月も星も一つもない、空にあるのは内側から黄金色の光を放つ強大なバルーン【気嚢】。
バルーンは幅が15~20メートルくらいあり、空に無数に浮かんでいる、中には人(妖怪)が居るみたいだ。

夢望町の町並みは、建物は二階建ての木造長屋が多く、京都の歴史ある花街として知られている、祇園に近い町並みだが、祇園の夜よりも幻想的な景色。
華やかな雰囲気に包まれ、石畳の通りや温かさのある照明の行灯と提灯、居るだけで心がホッコリとする。
でも通りの店は飲み屋ばかり、しかも飲み屋の中から高笑い・喧嘩騒ぎ・大盛り上がりの騒がしい声が聞こえてくる。
飲み屋以外も一応あるが、“大人の店“ばかり、もし現実の世界なら未成年が入れる店は何一つない。

町の住人も日本妖怪ばかりが視界に映る、西洋妖怪のガルトンとスノは非常に目立つが、からかさ小僧・提灯お化け・白山坊・一つ目小僧・テケテケ・小さいおじさんなど、どれも下級ランクで害を加えない妖怪ばかりが彼らの前を通る。
住人は妖怪だけではなく、普通の“人間“も含まれている。
子供・大人の女・大人の男など、よく見ると老若男女。

スノ「旦那様、どう見てもモンスターじゃなく人間ですよね?」

ガルトン「ああ、邪気を感じられない・・・何故人間が異界で生活できているんだ?」

先程、2人が“きささぎ駅”で乗った電車には、3人の親子と女子中学生らしき人物も平然と町を歩いていた、そんな光景に不可解を感じる2人。
西洋にも異界はあるが、生活出来るのは妖怪だけで、人間は環境に適応出来ずに死に至る。


スノ「・・・ガルトンの旦那様、とりあえずここは情報を収集しませんか? ここにいても無駄に時間を食うだけみたいですし・・・それに“周り“の視線も気になります」

ガルトン「・・・異議なしだ」


やはり西洋の妖怪は目立つ、何せ神隠しで人間が迷い込む現象は珍しくはない。
しかし、西洋の者が夢望町の地に足を踏み入れるのは珍しいどころか、“初“。

その初のケースに、ガルトン達に探りを入れる者が現れる。


??「・・・“望まぬ“の者が、この夢望町に入り込むとは・・・“蛾叉“!」

蛾叉「才!」返事をする。

??「来訪者を見定めろ」

蛾叉「承知」

??「河童!」

河童「才!」

??「来訪者が厄介な存在だと分かれば、貴様の手で葬れ、“磯の沼“に誘い込んでも構わん」

河童「・・・御意!」

??「・・・・・・・“然る“べき時に・・・・まさかな・・・」



~月の里~
ガルトンとスノは情報を収集する為に、とりあえず適当に居酒屋を選び、そこの店主おタヌキ妖怪に夢望町について詳しく聞く。

タヌキ「この町に住む“人間“は、神隠しにあった奴らだ」

ガルトン「やはりそうか」

スノ「人間達を見たところ、この町に適応し、元の世界にも帰らない・・・いいや帰れない」

タヌキ「まーそうだな、ここは来るのは簡単だが、出るのはまず無理だ。 出れるのは強い妖力を持つ妖怪のみ、うちの女房も元は人間だった」

スノ「その人は今どこに?」

タヌキ妖怪の古女房は約200年も前に異界に迷い込み、それからずっと夢望町の住人として生きてきた。
人間だった頃の記憶は片隅程度しかなく、覚えているのは“元人間“だったという事ぐらい。
長く異界に居ると、人間から半妖に変貌する、女房も狐の耳が頭から生え、尻から尻尾が3本生えた妖狐化している。

ガルトン「・・・強い妖力のモンスターはこの異界から出れる、なら俺達がここから出入り出来るかもしれないのか」

タヌキ「そいつはどうかな、どれだけの手練でも現実界に行く事を許されるのは“神“レベルの妖怪だけ、そこそこ腕が立つ妖怪はそこら中にいる、アンタ達がここを出るには“神”に下剋上をするしかない」

スノ「つまり神殺しをする必要がある、至ってシンプルな考え方ですね、でも実行するのは難しいですね」

ガルトン「・・・俺が信じてる神は、“力“だけだ。 強い奴が正しい」


2人は何も注文せずに、カウンター席に座っているだけで、それにしびれを切らす店主。

タヌキ「お客さん、質問もいいけど注文もしてくれよ、ここは相談所じゃないんだ」

スノ「あっ・・・すいません、僕達この町に降り立ったばかりで、無一文なんです」

タヌキ「ハアー! じゃあ店に入って堂々と席に座るなよ、金がないなら客じゃない、すぐに出てってくれ!」

ガルトン「最後に聞きたい、強いモンスターはどこにいるんだ?」

タヌキ「さっそく動くって訳かい、まあーいいだろう、特別に教えてやるよ」



~磯の沼~

タヌキの店主が言うには、夢望町で最強の妖怪と謳われているのは、“河童“という水妖怪らしい。
だが河童は水の生き物、普段は地上に姿を表さずに水中で生息している。
実は夢望町の真下は“底なし沼“の湖で、水妖怪達の住処でもある。
もし水妖怪に会うには、夢望町の中央にある広大な池の真ん中に浮いてる小屋に訪れなければならない。

がルトンは磯の沼に向かうが、スノは万が一の時を考えて、夢望町で働き口を探す。
2人は二手に分かれて、それぞれの役目をこなそうとする前に、ある会話をした。

スノ「旦那様、“肉の破片“の残りはあと二つですか?」

ガルトン「いいや、三つだ。 人面瘡と対峙した時は運良く使わずに済んだ」

スノ「持ってきた破片は、“ドラキュラ“と“ウルフマン“と、なんでしたっけ?」

ガルトン「“スレンダーマン“だ」


*肉の破片
モンスター・キラーは、倒した妖怪のわずかな肉を体の中に含む事で、その妖怪の力を一時的だが、自身の能力として使用可能になる。



ガルトンは丘に置いてあるボート乗り、タヌキの店主の助言通り、ボートを漕いで小屋に向かう。
池の色は黒色、何も映らないが魚が泳いでる気配は感じられない、だが途中で“邪悪“な何かをガルトンは感じ取った、そしてモンスター・キラーの直感から、自分の所に向かってくる者は・・・。

ガルトン「“強い“!!」

ガルトンは漕ぐのをやめて、戦闘体制を取る。
町にいた妖怪とは一味違う、それどころか、薙木家に取り憑いていた妖怪よりも、はるかに上回っている。
ガルトンの表情は険しくなり、緊張の汗が吹き出る。


ガルトン「(考えるな! 思考ではなく神経を集中させろ!・・・!?)」

右視界から、何かがガルトンの方向に向かってくる、水面が強く膨れ上がりながら、明らかにこちらに目掛けて進んでくる。
まるでサメ映画の様に、獲物を狙うシーンが浮かぶ。

ガルトン「(残り10メートル、9・8・・5・・・・!)」

膨れ上がっていた水面は収まり、水音が止む。
しかし、ガルトンには確信があった、“戦いは終わっていない“と。
敵は水深に身を潜んだだけで、何処からともなく自分に襲いかかると。


ガルトン「(クソ!黒水だから何も見えない・・・水中での勝負は不利だ、経験がない、かと言って丘に戻るには遠すぎる、むしろ危険を高めるだけ・・・やるしかない!)」


ガルトンが決心を決めた時に、背後から水しぶきが上がる。
一瞬の音を聞き取り、見向きもせずい反射的にしゃがんで交わすガルトン。

かろうじて咄嗟の攻撃に交わせたものの、次の攻撃は回避不可能だった。
真下から敵はロケットの様に攻撃、ガルトンの地(ボート)を奪い、強引に水中戦に持ち込んできた。
望まない水中戦となってしまったガルトン、敵は視界に捕えたが、スノみたく妖怪の種類を熟知している訳ではない、自分を襲ってきた敵の正体も分からない。

ガルトン「(・・・こうなったら、肉の破片を使うしかない!)」


水面から顔をわずかに出し、ドラキュラの破片を使おうとした時、敵の重い攻撃を受ける。
猪の如く強烈な体当たり、敵の動きは追いきれない程のスピードで、数発水中ラリアットを喰らう。
それだけじゃない、敵は接近戦を好む、相撲選手の様にガルトンに密着。
敵はガルトンの腰部分に両腕を回し、姿勢を垂直線にして足だけで泳いで、岩礁に目掛けて突進。

ガルトンは水の抵抗により、ほぼ身動き出来ない状態だが、なんとか敵の顔面に向けて殴打する、次に首に腕を巻いて脇に抱えて首絞め上げる、敵からの拘束を解こうとするが。
敵の泳ぎは水中だと言うのに、自動車並みの速度で岩礁にぶつけられる。
岩礁が二つに砕け散るほどの衝撃。


ガルトン「ガツ!?」

ガルトンは意識が途切れ、沼の底へと沈んでいく。

敵はガルトンの完全沈着の姿を見て、勝利の表情を浮かべる。

??「フフ、危なかったぜ、水の中なのにコイツの首絞めは堪えた・・・!?」

敵は自分の額から血を流している事に気付く。

??「まさか、痛みを感じない殴打を喰らったからなのか!・・・一体何者だ!」










深い海底へと沈んでいくガルトンは、“苦“は無かった。

モンスター・キラーをしていれば、いつかは訪れるかもしれない“敗死“。


ガルトン「・・・ここで終わるのも悪くない・・・そもそもこんな仕事を続けて報われた事はあるのだろうか?・・・生まれた時から周りから煙たがわれ、普通に生きる事も許されない・・・眠い・・・俺はいつでも終わる事は出来た、初めからこうしとけば良かったのに・・・なのに何故、モンスター達を殺めてきた ・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・"ありがとう"」


ガルトン「!?」


"ありがとう"。
モンスターを倒した時、礼を言われるどころか、当たり前のように思われ、むしろ自分みたいな半妖人は邪険される。
でも稀に、"ありがとう"を頂く。
金よりも、安定した生活よりも、その"言葉"がたまらなく・・・欲しかった。


暗闇しか映らないガルトンの視界に、眩しい光が見えてくる。
瞼が完全に開き、顔に柔らかい感触する。
瞳には、“女“が写っていた。

ガルトンは女性に膝枕をして貰ってる事に気づき、我に返り、勢いよく起き上がる。
ガルトンは膝枕してくれた女、次に子供ぐらいの女、女、女、ガルトンが居る場所は女しかいない空間。

“磯女“の巣窟に、いつの間にか流れ着いた。


【磯女】
「磯女」は、日本の伝説や民話に登場する海の女の怪物。
一般的に、海や磯(岩場)に住む女性の姿をしており、漁師や旅人を誘惑して危険に巻き込むとされている。具体的な伝承や物語は地域によって異なることなる。

ヨーロッパの伝承“人魚”に近いが、一般のイメージよりも尾びれが長く、種類も異なる。

磯女達は、海蝕洞の“磯の沼“で生活している。

ガルトンは周囲を見渡すが、夢望町の真下にあるとされている湖は、現実世界の海の様に絶景、空も常に夜の夢望町と違って、常に快晴。
ガルトンは沼に沈んでいったはずが、何故か水中から抜け出して、磯の沼に辿り着いた。


磯女「シンジュウ! 死にかけてた人が生き返ったよ」

一匹の磯女が、リーダー格の磯女“シンジュウ”を呼ぶ。

シンジュウ「ハーイ! 溺れてた妖怪さん!」

ガルトン「・・・名前はガルトン」


磯女達は全員が絶世の美女だが、シンジュウは他の磯女よりも飛び抜けて美女。
水色のロングヘアーに、豊満な胸、母性的な魅力を感じる。

ガルトンは落ち着きを取り戻し、ここがどこなのか詳しく聞き、磯女とは何なのかを、分けて貰った“きゅうり“で腹を満たしながら聞く。

まずガルトンは磯の沼の近くで死にかけていた、磯女達が見つけて介抱したが、なぜ磯女達の巣窟“磯の沼“に辿り着いたかは不明。
ガルトンと磯女達が居る沼は、まだ“底なし沼“ではなく、水妖怪達が自由に泳ぎ回る事できる“中の沼”。
夢望町と底なし沼の間の湖、そこから更に堕ちるのが底なし沼だが、死なない限り無縁の話。

自分の現状を理解出来たが、それとガルトンは他にも気になっていた事がある。

ガルトンを見て、頬を赤くする磯女達、“男“に飢えた磯女達。

ガルトンは周囲を見渡すが、やはり女しかいない。


磯女1「いい男、しかもたくましいわ」

磯女2「見た感じ西洋の方よね、でも逆に新鮮、そこが見応えあるわ」

ガルトン「・・・」

シンジュウ「怪我の具合からして、ガルトンちゃんは誰かと喧嘩してたの?」

ガルトン「・・・誰かは分からない、細身で美形でサラサラした白髪、青緑色の肌・・・とにかく強かった」

シンジュウ・磯女「!?」

磯女達の空気が一変、恐怖に包まれる。


ガルトン「?」

シンジュウ「・・・アナタが戦ったのは、河童ね?」

ガルトン「河童?・・・あれが日本の神“河童”?」

シンジュウ「すぐにここを出た方がいいわ、命がある内に」


シンジュウは洞窟の入り口付近にある、夢望町に繋がる“ブルーホール(穴)”を指差す。
その穴を進んでいけば、夢望町に辿り着くと伝える。


ガルトン「ちょっと待ってくれ、俺達はなんの突拍子もなく異界に迷い込んで、しかもその河童とやらに突然襲われたんだ、だからそいつ話したい事があるんだ」

シンジュウ「無理よ、アイツは人の話を聞く様な奴じゃない」


磯の沼は、磯男と磯女の愛の洞窟だった。
しかし、数年前に“河童”が現れ、磯男を全て皆殺し、男なら子供や赤ん坊までも殺めた。
女達は恐怖に縛られ、愛する男や出来た子を殺される瞬間を傍観するしかなかった。
磯の沼に残ったのは女だけ、女であった事が不幸中の幸いとなのだろうか?
それから中の沼は、河童の支配下に置かれた。


シンジュウ「顔は男前だけど、中身は最悪の男尊女卑野郎よ!」怒声。

ガルトン「なぜここを捨てない、俺ならそうする」

シンジュウ「・・・ここで私達は生まれた、他に居場所なんてない、それに・・・ここにいるだけで“あの人”
にそばにいてくれる気がするの」

シンジュウは河童に殺された愛する人を思い浮かべる。


シンジュウ「とにかく。私達はここを離れない、みんなと一緒に“戦う“」

ガルトン「・・・戦う?」

シンジュウ「私達の事は構わなくていいから、早く逃げて!」



ガルトンは何とかブルーホールのおかげで夢望町に辿り着く。
安定した地に足を着けただけで、幸せだったが、磯女達が何故窮地に留まるのか理解出来なかった。

ガルトンは手の平に火の玉を出現させる。
この玉は、どこに居ても、仲間と通話をする事が可能。

磯女達の答えを知りたく、女の同僚“エリア・ファイブ・ワン”に答えを聞く。

ガルトンは隠さずに全てを報告する、自分達は日本の異界に迷い込んだ事、河童という妖怪に敗北した事、女とは何なのかと言うこと。


エリア「そうか、負けちまったか、この雑魚が」

がルトン「それは否定しない、ただどうして彼女達は逃げないのか分からない、弱い事を自覚してるなら逃げればいいだろ」

エリア「“愛“にはどんな生き物も勝てないのさ・・・そもそもどうして女達の事が気にかかる? アンタは感情を“無”にしてるんだろ?」

ガルトン「・・・」

エリア「分かった! アンタ、“お礼“を言って欲しいんでしょ?」

ガルトン「この自意識野郎め、ハハハハハハハ!!」高笑い。

ガルトン「それは否定する・・・借りを返したいだけさ、河童と磯女にな」












磯野の沼では、磯女達を支配する河童が姿を現し、存在だけで磯女達を恐怖で震え上がらせる。

河童「お前らに聞く、ここに西洋の妖怪が来たな?」

シンジュウ「・・・来てないわよ」

河童「・・・下手な嘘をつくな」

河童は裏拳で、シンジュウの顔面を殴る。
倒れたシンジュウの髪を掴み、地面の岩場に叩きつけ、追求する。

シンジュウ「匂いで奴が来た事が分かるんだよ! ここから匂いがすると言う事は奴は生きている、そしてお前達は奴を匿った、そうだな!」

シンジュウ「知らないわよ!」

河童「・・・弱い雌の分際で威勢がいいな、だがお前達は所詮は“女“! 変わらぬ強者階級で強情するな、女という弱者は男の配下として生き続けるしない! さあ吐け、奴はどこだ!」

??「典型的なバカな考え方だな」

河童「!!」

河童は気付かない内に背後を取られた。
顔から血を流しながら、自分を助けようとする人物が目に映り、シンジュウは驚愕する。

シンジュウ「・・・ガルトンちゃん・・・」

ガルトン「どの環境でも女は男よりも強い、男に支配された世界でも、女という生き物は意志を強くして生きていけるからな」

河童「・・・やはり生きていたか・・・今度は首の骨をへし折って息の根を止めてやる」

ガルトン「なら俺は、お前の首を刎ねてやる」


お互い間合いを取り、戦闘開始。

河童は、口から吐き出した水玉攻撃。
ガルトンは鉄よりも頑丈な骨で、単純な接近戦攻撃。

強力な二匹の妖怪の戦いは、頑丈な岩を砕けさせる程の戦い。
磯女達の住処は、衝撃・爆風・爆音に見舞われ、近くにいる磯女達は戦いに巻き込まれそうになる。

磯女「キャー!」

シンジュウ「みんなー、洞窟から出て!」


河童とガルトンは間合いを取り、両者はまだ無傷状態。
だが地上戦では互角でも、水中では河童の土俵となる。
ガルトンは懐から小瓶を取り出し、ドラキュラの肉の破片を取り出す。

ガルトン「・・・使ってやるぜ」

ガルトンはドラキュラの肉を食べ、胃の中に流し込む。


河童「(何かを口に入れた、一体何を入れたんだ? 見たところ奴の体は何も変化していない、未知数で奴に迂闊に近付くのは危険だ・・・水に潜るしかない)」


河童は水中に潜った。
シンジュウは、ガルトンにこの隙に逃げる様に呼び掛けるが、ガルトンは拒否する。

シンジュウ「でも水中でアイツに敵う奴はいないわ、潜っても殺されるだけよ、お願い逃げて!」

ガルトン「・・・逃げるなら、アンタ達と一緒に逃げる・・・戦うならアンタ達と一緒に戦うだけさ」

シンジュウ「!?」


ガルトンは覚悟を決めて飛び込み、河童を追跡。

ガルトンを四方八方に首を振り、河童の姿を捕らえようとするが、河童の姿は何故か見当たらない。
だが、真上に気配を感じた。
すぐに真上を確認するが、河童はガルトンに隙も与えずに、池の時の戦いと同じ様に突進攻撃、河童はガルトンが水中に来るのを待っていたのだ。

再び身動きを封じられ、まともに攻撃出来ない体勢を強いられたが、接近戦はガルトンにとって好都合。


河童「潰れろ!」

ガルトン「グっ!!」

河童はガルトンを岩壁に叩きつける、岩壁は30メートル近くヒビが割れる、池の戦い以上の衝撃を喰らったガルトンだが。

河童「あっけない、あっけない、もっと楽しま・・・グッ!?」

河童は左腹部の部分に激痛が走る。

河童「なんだこれは!!」

河童の腹には、鋭く尖った長い爪が貫通して突き刺さっている。
その爪は、ガルトンの爪から出した物だった。

ガルトン「離さねー!!」

ガルトンのは目は、狼のような瞳がなくなり、吸血鬼コウモリの様に真っ黒だった。

河童「コイツの爪か! 何か口に入れたのが関係しているな! だがこの程度の攻撃、致命傷ではない、死ね!」

ガルトン「!?」

河童は背中からクラゲの様な白い触手を出し、ガルトンに強烈な電流を喰らわせる。
近距離から電流を喰らった、ガルトンは断末魔を上げる。

ガルトン「グオーーーーーーー!? ガアーーーーーーー!!」

ガルトンは生気を感じさせず、ほぼ戦闘不能状態になる。


河童「ハアー、ハアー・・・危なかった、コイツにこんな奥の手があるとは、だが俺は勝った・・・なっ!?」

河童は更に腹部に激痛が走る。

河童「なんだ!!・・・“血を吸っている“!? この爪、俺の血を吸っている! まさか、コイツまだ生きているのか! 違う、この爪は無意識に俺の血を・・・このままではマズイ、すぐに抜かねば!」


河童は抜こうとしたが、更に深く腹に刺さる。

河童「なんだ!・・・シンジュウ!!」


なんとシンジュウが乱入参戦、河童の体に刺さったガルトンの爪を抜かせない様に、恐怖を耐え意を決して河童を背後から抑える。

河童「この雌魚!」

シンジュウ「逃がさない、ここで仕留める!」

河童は拳を固く握りしめて、シンジュウの顔面を何発も殴る。
しかし、河童の拳よりも固いシンジュウの決意。
ガルトンの爪は無意識に河童の血を吸いまくる、すぐにでも抜かなければ河童は死ぬ。


河童「離せ!離せ! 離れやがれ!!」必死。

シンジュウ「(絶対に離さない、ここでケリをつけるの、だからお願い、目を覚まして!!)」

シンジュウ「(ガルトン!!)」

シンジュウの頼みの綱は“ガルトン”、彼が目を覚さない限り形勢は逆転しない。


河童「このクソが、離れろ!!」

河童はシンジュウの頭頂部を手の平で掴み、シンジュウの首を180°捻って折る。

シンジュウ「!?・・・・・・・」


シンジュウは手の力が抜け、ゆっくりと瞼が閉じながら、体も魂が抜けた様に底なし沼へと沈んでいく。

シンジュウの手が離れ、河童は急いで爪を抜こうとするが。

河童「!?」

戦闘不能状態だったガルトンが目を覚まし、最後の攻撃“一刀両断”を披露する。

河童の腹に刺さった爪を、横にスライドさせ、河童の上半身と下半身をほぼ真っ二つに切る。
河童は体が引き裂かれた状態のまま、底なし沼へと沈んでいく。


ガルトンも力尽きて、河童と共に沈んでいくが、悪魔を捨て去り、天使を救う女神達が現れた。

磯女達が、沈まない様にガルトンの体を支え、みんなで協力しながら水面まで上げていく。


その光景はまるで・・・・・・・・芸術的な神秘の美しさ。




全ての戦いを終えて、磯女達は河童の恐怖体制から解放された。

ガルトンは地上に戻るべく、磯女達にお別れを言う。


全てを救う事を出来なかった事にガルトンは謝罪する。

ガルトン「申し訳ない・・・全員は救えなかった」

シンジュウに代わって、新たな代表者がガルトンに礼を言う。

磯女「そんな、謝罪は勿体なさすぎます! 何もお礼を用意出来ない自分達が不甲斐ないぐらいです・・・もしアナタで良ければ、ここにずっと住んでも構いませんし」 頬が赤くなる。

ガルトン「・・・ようやく男から解放されたんだ、女だけの世界も楽しみな」

磯女「・・・せめてこれだけお伝えさせてください」

ガルトン「?」

磯女「アナタは最強と謳われる妖怪“河童”を倒しましたが、河童は最強であって“神”ではありません。
アナタの事ですから、止めても“神”と戦うかもしれませんが、これだけは言わせてください」

ガルトン「・・・」


磯女は真剣な眼差しでガルトンに伝える。

磯女「日本の神は“天蛇鬼(てんじゃき)”と言う妖怪です。 いくらアナタでも、この妖怪に勝つのは無理です」


ガルトン「・・・・・・・・・・・・・・天蛇鬼・・・・・・・・・」


ガルトンは磯女達の「ありがとう」が耳から離れず、清々しい気分で中の沼を去る。




これから、この先、これからこそが、壮絶な西洋妖怪と大和妖怪の死闘を繰り広げる。
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