3 / 17
3話
しおりを挟む
私が家へ戻ると、緊急で家族会議が開かれた。
お父様とお母さまは勿論、お兄様や弟、妹たちまで全員参加だ。
それなりに遅い時間だったけれど、誰も文句を言わずに集まってくれた、
「……そうか、そんなことがあったのか」
何とか今日起きてしまったことを全て話し終えると、お父様が重い口を開いた。
失望、しているのかな。
伯爵家としては、公爵家であるユーリスと結ばれるのはとても望ましいことだろう。
より上位の貴族と強い繋がりを持てるというのは、貴族界において非常に大きな意味を持つ。
両親も私とユーリスは相思相愛だと思っていただろうから、きっとがっかりしているに違いない。
そう思って私が震えていると、お父様が立ち上がって私の傍によってきて、ぽんと頭に手を乗せてきた。
「それは辛かっただろう。すまなかったな。そんな大事な時に傍にいてやれなくて」
そういって、私の頭を撫でてくれた。
すると私の緊張が解け、一気に力が抜けていった。
「しかし、大切な娘をそんな簡単に捨てるとはあまりに不誠実だ。いくら公爵家と言えど、一言くらい言ってやらんと気が済まん」
「ええまったくね。母としても黙っていられませんわ」
「お父様、お母様。でも――」
「こうなれば婚約などこちらからも願い下げだ。辛い思いをさせたな、シェリル」
「いいん、ですか? 公爵家との、大切な婚約。台無しにしちゃって……」
「娘より大事なものはないだろう。そんなことは気にするな」
そう言われて、押さえていたはずの涙がまた出てきてしまった。
そっか。私、捨てられちゃっても受け入れてもらえるんだ。
何より大事だったはずの婚約者に捨てられても、それ以上に私を大切に思ってくれる家族がいた。
そのことが嬉しくてたまらなかった。
「幸いシェリルには魔導の才能があるからな。シェリルの開発した精霊炉はやがて王国に欠かせないものとなるだろう。兄ではなく一人の男として考えると、私ならば決して縁を切りたくはないがな」
「そうそう。姉さんは凄いんだから、焦る必要なんてないんじゃない?」
「きっとこれからまたお姉さまに相応しいお相手が見つかりますよ!」
兄弟たちにも慰められてしまった。
そう。私は根っからの魔法及び魔導の研究者。
子供のころから夢のような現象を引き起こせる魔法が大好きで、その魔法を誰でも扱える技術として活用するすべを探る魔導を極めようと頑張ってきた。
その影響でずっと研究室に引きこもっていたのが、私が良く陰鬱な女と言われる所以だ。
精霊炉――それは私が今研究している万能エネルギーだ。
今のところは石。いや、結晶の形をしているが、それは決まった形ではない。
一つの魔法を補助し、維持するためだけの魔導具は昔から存在していた。
つまり火属性の魔法を使って火をおこせば、魔導具に蓄積された魔力がそれを維持させ、料理に使用できる。
光属性の魔法で発光させれば魔導具の力でそのまま照明として活用できる。
だからこそ貴族に仕えるような使用人には、このあたりの基礎的な魔法を扱えることが絶対条件となっているのだ。
でも、もし魔導具の力だけで簡単に火を起こせたり、光を発生させたりできたとしたらどうだろう。
魔力さえ供給できれば何の技術を持たなくても簡単にその魔導具を扱うことができる。
――魔法が使えなかったとしても、不当な差別を受けることがなくなる。
専用の魔導具にこの精霊炉を繋げば、魔法を一度発動しなければならないという無駄な工程を省いてあらゆることができる。
まだ表に出せるほどのレベルじゃないけれど、この精霊炉を貴族、平民問わず王国に住む全員にいきわたらせることが私の夢なんだ。
「うん。ありがとう。頑張るよ」
――でも、私は研究者である以前に貴族令嬢だ。
その役目はしっかりと果たさなければいけない。
いつまでも、この家でのんびりしているわけにはいかないんだ。
だけど、今はこれからのことを考える余裕もなくなってしまった。
ユーリスと婚約を結べた時は、ようやく私も一人の女として立派な大人になれそうだと喜んでいたけれどなぁ。
彼も私の夢に賛同してくれたし、協力も惜しまないと言ってくれてたのに。
全部。全部嘘になっちゃったね。
お父様とお母さまは勿論、お兄様や弟、妹たちまで全員参加だ。
それなりに遅い時間だったけれど、誰も文句を言わずに集まってくれた、
「……そうか、そんなことがあったのか」
何とか今日起きてしまったことを全て話し終えると、お父様が重い口を開いた。
失望、しているのかな。
伯爵家としては、公爵家であるユーリスと結ばれるのはとても望ましいことだろう。
より上位の貴族と強い繋がりを持てるというのは、貴族界において非常に大きな意味を持つ。
両親も私とユーリスは相思相愛だと思っていただろうから、きっとがっかりしているに違いない。
そう思って私が震えていると、お父様が立ち上がって私の傍によってきて、ぽんと頭に手を乗せてきた。
「それは辛かっただろう。すまなかったな。そんな大事な時に傍にいてやれなくて」
そういって、私の頭を撫でてくれた。
すると私の緊張が解け、一気に力が抜けていった。
「しかし、大切な娘をそんな簡単に捨てるとはあまりに不誠実だ。いくら公爵家と言えど、一言くらい言ってやらんと気が済まん」
「ええまったくね。母としても黙っていられませんわ」
「お父様、お母様。でも――」
「こうなれば婚約などこちらからも願い下げだ。辛い思いをさせたな、シェリル」
「いいん、ですか? 公爵家との、大切な婚約。台無しにしちゃって……」
「娘より大事なものはないだろう。そんなことは気にするな」
そう言われて、押さえていたはずの涙がまた出てきてしまった。
そっか。私、捨てられちゃっても受け入れてもらえるんだ。
何より大事だったはずの婚約者に捨てられても、それ以上に私を大切に思ってくれる家族がいた。
そのことが嬉しくてたまらなかった。
「幸いシェリルには魔導の才能があるからな。シェリルの開発した精霊炉はやがて王国に欠かせないものとなるだろう。兄ではなく一人の男として考えると、私ならば決して縁を切りたくはないがな」
「そうそう。姉さんは凄いんだから、焦る必要なんてないんじゃない?」
「きっとこれからまたお姉さまに相応しいお相手が見つかりますよ!」
兄弟たちにも慰められてしまった。
そう。私は根っからの魔法及び魔導の研究者。
子供のころから夢のような現象を引き起こせる魔法が大好きで、その魔法を誰でも扱える技術として活用するすべを探る魔導を極めようと頑張ってきた。
その影響でずっと研究室に引きこもっていたのが、私が良く陰鬱な女と言われる所以だ。
精霊炉――それは私が今研究している万能エネルギーだ。
今のところは石。いや、結晶の形をしているが、それは決まった形ではない。
一つの魔法を補助し、維持するためだけの魔導具は昔から存在していた。
つまり火属性の魔法を使って火をおこせば、魔導具に蓄積された魔力がそれを維持させ、料理に使用できる。
光属性の魔法で発光させれば魔導具の力でそのまま照明として活用できる。
だからこそ貴族に仕えるような使用人には、このあたりの基礎的な魔法を扱えることが絶対条件となっているのだ。
でも、もし魔導具の力だけで簡単に火を起こせたり、光を発生させたりできたとしたらどうだろう。
魔力さえ供給できれば何の技術を持たなくても簡単にその魔導具を扱うことができる。
――魔法が使えなかったとしても、不当な差別を受けることがなくなる。
専用の魔導具にこの精霊炉を繋げば、魔法を一度発動しなければならないという無駄な工程を省いてあらゆることができる。
まだ表に出せるほどのレベルじゃないけれど、この精霊炉を貴族、平民問わず王国に住む全員にいきわたらせることが私の夢なんだ。
「うん。ありがとう。頑張るよ」
――でも、私は研究者である以前に貴族令嬢だ。
その役目はしっかりと果たさなければいけない。
いつまでも、この家でのんびりしているわけにはいかないんだ。
だけど、今はこれからのことを考える余裕もなくなってしまった。
ユーリスと婚約を結べた時は、ようやく私も一人の女として立派な大人になれそうだと喜んでいたけれどなぁ。
彼も私の夢に賛同してくれたし、協力も惜しまないと言ってくれてたのに。
全部。全部嘘になっちゃったね。
30
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる