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「あら? あらあらあら。これはこれは、いつにもまして陰鬱なご様子ですわねシェリル嬢。このような明るいパーティの席にそのような顔つきは相応しくないのではなくて?」
私の名前はシェリル=ブランヴェル。
今日は王家主催の夜会に出席している19歳の伯爵令嬢だ。
本来であれば私のような人間が参加するようなパーティではないのだけど、私の婚約者であるユーリスは公爵家の子息と言うこともあり、その付き添いで参加していた。
しかしユーリスとしばし離れている間、厄介な人に声をかけられてしまった。
「……これはナディア王女殿下。ご挨拶が遅れました。本日も私などでは及ばぬ美しいお姿で何よりでございます」
「うふふ、当然じゃない! 貴女もずっと彼の隣にいたいのであればまず私を見習うべきでしたわね」
「はい、ご忠告ありがとうございます。では――」
彼女は我が国の王族。王女ナディア。
私よりも数段上の輝かしいドレスに身を包んだ美しい女性だ。
年齢は確か、私の5つ上の24歳だ。
王族とは言え、そろそろ嫁ぎ遅れになるかもしれないと噂されているが……
(やっぱり、王女殿下はあの人を――)
最初こそ何故私がナディア王女に絡まれるのか分からなかったけれど、どうやら彼女は私の婚約者であるユーリスを狙っているらしい。
しかも最近はそれも露骨になってきて、事あるごとに彼との関係を断つよう暗に促してくるようになった。
確かに私は、正直言って容姿にそれほど自信がない。
生まれつきなのか、成長の過程によるものなのか分からないけれど、どうにも私は笑顔がへたくそで、目がやや小さく下向きのため、いつもどこか雰囲気が暗いと言われてしまう。
そんな私でも彼は私のことを真正面から可愛いと言ってくれた。
いつも物憂げな雰囲気の私を、落ち着いた頼りになる女性として扱ってくれた。
だから私は彼のことを安心して好きでいられる。
王女殿下に何を言われようとも、私は彼の婚約者であると自信をもって言える。
そのはずだったのに――
ナディア王女は私に向けて「ふんっ」と荒く鼻息を吹くと、何故かそのまま壇上に上がっていった。
「みなさま! ご注目くださいまし! 今から皆様に大切なご報告がございますの!」
マイクを片手にそう言い放ったナディア王女。
一瞬にして会場がざわつく。
なんだなんだと人が集まり、壇上の王女に視線が集まる。
「この度私、ナディアは彼――ユーリス=ヴァールハイト公爵子息と正式に婚約を結ぶことをここに宣言いたしますわ!」
「なっ――!?」
その言葉に流石に我が耳を疑った。
ユーリスとナディア王女が婚約!?
そんな馬鹿な。そんなの、冗談じゃない。
彼には私と言う婚約者がいるのだから、そんなの認められるはずがないでしょう!?
「さあ、上がってきなさいな。我が未来の夫、ユーリス」
またも会場がざわつく。
ユーリス殿は婚約者がいたはずだろう。
王女殿下は何を考えているのかと。
私だってそうだ。意味が分からない。
あの優しいユーリスがそんなもの、認めるはずがない。
しかしユーリスは王女の呼びかけに従って、そのまま壇上に上がってきてしまった。
ねえ、嘘でしょう? 嘘だと言ってよ。
「――シェリル。お前も来てくれ」
「えっ……」
「ほーら、貴女ですわよ。シェリル嬢。元婚約者様が呼んでいるのだから、早くおいでなさいな」
気づけば、周囲の視線は私に集まっていた。
何よこれ。一体何なの?
そう思いながらも、私は空気の重さに逆らえず、言われるがままに壇上へと足を運んだ。
これはきっと茶番だ。ここでユーリスは改めて私に告白してくれるサプライズなのだと信じて。
「……言いにくいが、お前とはもうやっていけなくなった。婚約を破棄しよう」
「――えっ?」
「お前よりも、王女殿下の方が俺には必要だ。すまない。出て行ってくれ」
――その瞬間、私の心の中で、何かが壊れた。
私の名前はシェリル=ブランヴェル。
今日は王家主催の夜会に出席している19歳の伯爵令嬢だ。
本来であれば私のような人間が参加するようなパーティではないのだけど、私の婚約者であるユーリスは公爵家の子息と言うこともあり、その付き添いで参加していた。
しかしユーリスとしばし離れている間、厄介な人に声をかけられてしまった。
「……これはナディア王女殿下。ご挨拶が遅れました。本日も私などでは及ばぬ美しいお姿で何よりでございます」
「うふふ、当然じゃない! 貴女もずっと彼の隣にいたいのであればまず私を見習うべきでしたわね」
「はい、ご忠告ありがとうございます。では――」
彼女は我が国の王族。王女ナディア。
私よりも数段上の輝かしいドレスに身を包んだ美しい女性だ。
年齢は確か、私の5つ上の24歳だ。
王族とは言え、そろそろ嫁ぎ遅れになるかもしれないと噂されているが……
(やっぱり、王女殿下はあの人を――)
最初こそ何故私がナディア王女に絡まれるのか分からなかったけれど、どうやら彼女は私の婚約者であるユーリスを狙っているらしい。
しかも最近はそれも露骨になってきて、事あるごとに彼との関係を断つよう暗に促してくるようになった。
確かに私は、正直言って容姿にそれほど自信がない。
生まれつきなのか、成長の過程によるものなのか分からないけれど、どうにも私は笑顔がへたくそで、目がやや小さく下向きのため、いつもどこか雰囲気が暗いと言われてしまう。
そんな私でも彼は私のことを真正面から可愛いと言ってくれた。
いつも物憂げな雰囲気の私を、落ち着いた頼りになる女性として扱ってくれた。
だから私は彼のことを安心して好きでいられる。
王女殿下に何を言われようとも、私は彼の婚約者であると自信をもって言える。
そのはずだったのに――
ナディア王女は私に向けて「ふんっ」と荒く鼻息を吹くと、何故かそのまま壇上に上がっていった。
「みなさま! ご注目くださいまし! 今から皆様に大切なご報告がございますの!」
マイクを片手にそう言い放ったナディア王女。
一瞬にして会場がざわつく。
なんだなんだと人が集まり、壇上の王女に視線が集まる。
「この度私、ナディアは彼――ユーリス=ヴァールハイト公爵子息と正式に婚約を結ぶことをここに宣言いたしますわ!」
「なっ――!?」
その言葉に流石に我が耳を疑った。
ユーリスとナディア王女が婚約!?
そんな馬鹿な。そんなの、冗談じゃない。
彼には私と言う婚約者がいるのだから、そんなの認められるはずがないでしょう!?
「さあ、上がってきなさいな。我が未来の夫、ユーリス」
またも会場がざわつく。
ユーリス殿は婚約者がいたはずだろう。
王女殿下は何を考えているのかと。
私だってそうだ。意味が分からない。
あの優しいユーリスがそんなもの、認めるはずがない。
しかしユーリスは王女の呼びかけに従って、そのまま壇上に上がってきてしまった。
ねえ、嘘でしょう? 嘘だと言ってよ。
「――シェリル。お前も来てくれ」
「えっ……」
「ほーら、貴女ですわよ。シェリル嬢。元婚約者様が呼んでいるのだから、早くおいでなさいな」
気づけば、周囲の視線は私に集まっていた。
何よこれ。一体何なの?
そう思いながらも、私は空気の重さに逆らえず、言われるがままに壇上へと足を運んだ。
これはきっと茶番だ。ここでユーリスは改めて私に告白してくれるサプライズなのだと信じて。
「……言いにくいが、お前とはもうやっていけなくなった。婚約を破棄しよう」
「――えっ?」
「お前よりも、王女殿下の方が俺には必要だ。すまない。出て行ってくれ」
――その瞬間、私の心の中で、何かが壊れた。
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