私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK

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14話 

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「……夢?」

 地震による軽い揺れと音で、私は目を覚ました。
 部屋にあったソファで体を休めていたらいつの間にか寝てしまっていたようだった。
 目が覚めたばかりの私は、先ほどまで追っていた不思議な体験をはっきりと覚えている。

 あれはとある重大な使命を負った一人の女性が、危険を顧みずにそのチカラを以って何らかのバケモノを封印した光景。
 まるで魔法の如き超常の力を振るう彼女の正体は、恐らく前世の私。
 彼女が最後に使った術の反動は、私が秘術を維持していた時の状態ととても良く似ていた。

「あの人が、初代要の巫女……」

 生まれも育ちも、どんな顔をしているのかすら分からない。
 頭の中で先ほど見た空色の鮮やかな光をイメージしても、私はその光を生み出すことが出来なかった。
 あのチカラは何なのだろうか。あのバケモノは何者なのだろうか。

 知りたい。彼女の事を、もっと知りたい。そんな欲が湧き上がってくる。
 今まで生きてきた中で、中途半端な前世の記憶を追おうとしたことは何度かあった。
 けれど何故か初代や秘術に関する記録はほとんど残されておらず、誰に聞いてもまともな答えを得る事が出来なかった。

 でも、遂に今日。新しい手掛かりをつかむことに成功した。
 史実には記されていない、初代の記憶。

 初代はかつて、大地震・・・からディグランス王国を救ったとされている。
 それなのになんだ。あのバケモノは。
 あれではまるで、あのバケモノが大地震を引き起こしたとも捉えられるではないか。
 あんなものが存在したなんて、今まで一度も聞いたことはなかった。

「まさか、あの秘術は……」

 私たちランドロール家が代々引き継いできたであろう秘術。
 私は今までそれを用いて、王都から遠く離れたある場所・・・・の地下に存在する大地震ののようなものを抑え続けてきた。
 それが何なのかは見た事がないから分からない。
 でももしそれが、あのバケモノだったとしたら?

 私は今まで大地震の発生を抑えていたのではなく、あのバケモノの封印を維持し続けていたという事になる。
 だとすれば今頃ディグランス王国では――

「――っ!!」

 気づけば私は、無意識のうちに秘術を使おうとしていた。 
 当然、手ごたえは全くなかった。その代わりにまたも小さく地面が揺れる。
 言葉にできない胸のざわめきが私に襲い掛かった。

 確かに私はあの国を護る秘術を解いた。
 そして今まで押さえつけていた大地震があの国に襲い掛かることで私たち一族を貶めた罪が償われる。
 その後私たちは新天地で平和に暮らし、それで全てが終わる――はずだった。

 だが現実はそんな単純なものではなかったのかもしれない。
 私は取り返しのつかない過ちを犯してしまったのではないか?

 気づいた頃には、もう遅い。
 それは彼ら・・だけではなく、私にも言える事なのではないか?

「……いいや、忘れないと。考えたら、ダメ」

 これはもう、終わった事なのだ。そう自分に言い聞かせる。
 アガレス王国に来てしまった時点で、もうディグランス王国あの国にはもう関わらないと決めたはずだ。
 中途半端に呼び起された記憶のせいで余計な事を考えてしまったけれど、一旦忘れよう。
 もうあの国がどうなろうと、私たちには関係がないのだから。

 ひとつ気がかりがあるとすれば、ヴィリス王子――星剣士の生まれ変わりと呼ばれる青年の事だ。
 彼と話していた時に聞こえてきた「星剣士を導け」と言う幻聴や彼と接触した直後に呼び起された記憶も合わさって、私とヴィリス王子は何らかの重要な関係性があるのではないかと考えてしまう。

 ……多分このままでは終わらないんだろうな。

 そんな予感を浮かべながらも、私は仮初かもしれない平穏に浸るために現実逃避をする事にした。
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