9 / 32
9話 崩壊の日
しおりを挟む
その日、一つの国が崩壊の危機に瀕した。
第一波は、軽く。
カタカタと縦に揺れるような、微細な振動。
王都に住まう人々は若干動揺を示すも「また地震か……」と、慣れた動きで速やかに身の安全を確保し始める。
ここまではいつもと同じ正しい流れ。
地震が多い国に住まう人々の、正しい地震の対処法。
だが今回は、今回だけは間違いだ。
いつもと同じ動きではダメだ。
何故なら……
第二波――主要動。
第一波の揺れが継続する中、遅れて数秒後。
「――っ!?」
横波――激しい横方向への大震動。
右へ左へ、凄まじい勢いで大地が揺れる。
子供がテーブルを揺らすことで上に並べられた玩具が散乱するかの如く、人の手ではびくともしない家々が歪み、崩壊していく。
至る所で響く叫び声。収まらない揺れ。倒壊していく建物たち。
しばらくしてその激しい振動に耐えきれなかった地面に亀裂が入り、その亀裂はすさまじい勢いで大地を駆けていく。
勢いは落ちながらも王都の真下で発生した地震波はやがて国全体に届き、果ては隣国にまでその振動が伝わってしまうほど広がった。
平民区は勿論、より頑強に建築されたはずの建物が並ぶ貴族区をも地震は破壊した。
――否、むしろ位が高い者たちが住まう場所ほど被害が大きいとさえ思える。
そしてついに――王宮が、堕ちた。
王宮を支えていた大地が傾いたことでそのまま王宮も崩れ落ちたのだ。
それを契機にか、ようやく揺れが収まった。
暴虐の限りを尽くした大地震は、ひとときの安息を彼らに与えた。
だが――目の前に広がるのは、地獄の光景。
あれだけ活気に溢れていた町は気づけば白煙と悲鳴が上がる退廃の地へと変貌し、目の前で起きた現実を飲み込めない生き延びた僅かな人々が混乱を示している。
もはや無事な建物の方が少ないくらいだ。
そしてようやく状況を理解した人々は、己が救うべき人間を探して走り出す。
怪我を負って動けないものは懸命に助けを呼び、生き埋めにされた者たちは空を求めて足掻きだす。
そんな人々の有様を空から眺めて、彼は嗤う。
「――随分と遅い、約束の時間がやってきた。忌まわしき人間どもめ」
第一波は、軽く。
カタカタと縦に揺れるような、微細な振動。
王都に住まう人々は若干動揺を示すも「また地震か……」と、慣れた動きで速やかに身の安全を確保し始める。
ここまではいつもと同じ正しい流れ。
地震が多い国に住まう人々の、正しい地震の対処法。
だが今回は、今回だけは間違いだ。
いつもと同じ動きではダメだ。
何故なら……
第二波――主要動。
第一波の揺れが継続する中、遅れて数秒後。
「――っ!?」
横波――激しい横方向への大震動。
右へ左へ、凄まじい勢いで大地が揺れる。
子供がテーブルを揺らすことで上に並べられた玩具が散乱するかの如く、人の手ではびくともしない家々が歪み、崩壊していく。
至る所で響く叫び声。収まらない揺れ。倒壊していく建物たち。
しばらくしてその激しい振動に耐えきれなかった地面に亀裂が入り、その亀裂はすさまじい勢いで大地を駆けていく。
勢いは落ちながらも王都の真下で発生した地震波はやがて国全体に届き、果ては隣国にまでその振動が伝わってしまうほど広がった。
平民区は勿論、より頑強に建築されたはずの建物が並ぶ貴族区をも地震は破壊した。
――否、むしろ位が高い者たちが住まう場所ほど被害が大きいとさえ思える。
そしてついに――王宮が、堕ちた。
王宮を支えていた大地が傾いたことでそのまま王宮も崩れ落ちたのだ。
それを契機にか、ようやく揺れが収まった。
暴虐の限りを尽くした大地震は、ひとときの安息を彼らに与えた。
だが――目の前に広がるのは、地獄の光景。
あれだけ活気に溢れていた町は気づけば白煙と悲鳴が上がる退廃の地へと変貌し、目の前で起きた現実を飲み込めない生き延びた僅かな人々が混乱を示している。
もはや無事な建物の方が少ないくらいだ。
そしてようやく状況を理解した人々は、己が救うべき人間を探して走り出す。
怪我を負って動けないものは懸命に助けを呼び、生き埋めにされた者たちは空を求めて足掻きだす。
そんな人々の有様を空から眺めて、彼は嗤う。
「――随分と遅い、約束の時間がやってきた。忌まわしき人間どもめ」
234
お気に入りに追加
8,190
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

愛されない皇子妃、あっさり離宮に引きこもる ~皇都が絶望的だけど、今さら泣きついてきても知りません~
ネコ
恋愛
帝国の第二皇子アシュレイに嫁いだ侯爵令嬢クリスティナ。だがアシュレイは他国の姫と密会を繰り返し、クリスティナを悪女と糾弾して冷遇する。ある日、「彼女を皇妃にするため離縁してくれ」と言われたクリスティナは、あっさりと離宮へ引きこもる道を選ぶ。ところが皇都では不可解な問題が多発し、次第に名ばかり呼ばれるのはクリスティナ。彼女を手放したアシュレイや周囲は、ようやくその存在の大きさに気づくが、今さら彼女は戻ってくれそうもなく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる