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【最終章 理不尽賢者と魔王】
【理不尽賢者と魔王】
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「魔王様、シンダリア大陸から無数の飛空船が襲来してきました」獣王キャリクスが報告をしてきた。
こちらが先手を打つはずだったのが無駄に終わり魔王は静かに怒っていた。キャリクスが怯える。それは愉快だった。生き物が死ぬさまや怯えるさまを見ていると心地よく、まるで上等な酒を飲んだような気分になる。魔王は玉座から立ち上がった。そして漆黒のマントを翻し部下どもに言い放った。
「レッドドラゴンどもを野に放て重装オーク部隊、ゴブリン騎兵隊は不時着した飛空船を襲え!」
その頃、名匠フリューゲルが作ったアダマンタイト合金製の『アークノヴァ号』に乗ったローズマリーは初めて秘魔法『エクスプロージョン』を放った。
赤黒い閃光が走りやや遅れてジュドー―――――――ンという轟音が聞こえ魔王のいる大陸の3分の2が焦土と化し魔王が準備していた軍はあっけなく壊滅した。そして死ぬ気になって仲間に加わってくれたシンダリア大陸中の猛者たちに先駆けてローズマリーたちは魔王の城の大門に飛空船で突撃し大きな穴を空けた。城の中にはケルベロスやエンペラーデーモンがごまんといる。エンデュミオンとセレーナ、ルーンベルトが魔王討伐の初陣を切った。
「雑魚は任せろ!」
「行け、ローズマリー」
「私たちもすぐ追いつくからね」
「あばよ、ダチ公たち」ローズマリーは呟いた。新大陸で手に入れた赤い魔導石を割った。力がみなぎってくる。赤いポニーテールが翻る。玉座の間につくと今のローズマリーとはけた外れの力を持った存在が鎮座している。それが言葉を紡いだ。
「お前が大賢者ローズマリーか? 余の部下にならぬか? 噂に違わぬ殺気を持っている……キャリクスが逃げるわけだな」
「断る! お前は人のことを部下のことをモンスター1匹のことすら何とも思わないクズだ……!」
「それがどうした? この世界は余が支配することは必定。余を褒め称え、余を楽しませるために世界があるのだ!」
「黙れ!このクソ野郎が!」ローズマリーは転移の秘魔法を使い魔王の背後をとった。今だ! 奴はあたしの力を見切れていない。チャンスは2度はない。ローズマリーは持った杖で魔王の頭を殴り殺そうとした。しかし一気に力が抜ける。エクスプロージョンに、転移と秘魔法を使い過ぎたから反動が来たのだ。魔王は手にした杖でローズマリーの腹を殴った。
転がっていったローズマリーは吐血した。痛い、生まれて初めての経験だった。臓器が何個か駄目になっている。もう長くは持たないだろう……。ローズマリーの最後の枷が外れた。生きて皆と会いたいという淡い切望だ。
ローズマリーはゆっくりと立ち上がる。魔王はヘルファイアと言う暗黒魔法を放ち続けてくる。対するローズマリーは無防備、避けようとも耐えようともしないで、直立不動を貫いていた。
「小賢しいヒュームの娘ごときに手間取らせおって、死ぬがよい。カースオブデス!」魔王は即死魔法をかけてきた。しかし『大賢者の杖』には即・死・耐・性・がついている。すぐには死なない。ローズマリーは杖を捨てた。
「なぜ死なぬ。身体も内蔵はひしゃげかろうじて立っているだけの貴様に何故、余が恐怖するというのだ」
歩みを止めぬローズマリーに魔王は魔法を次々当てる。しかし距離がだんだんと近づいてくる。魔王は自分が壁にまで後退していたことにやっと気づいた。
「あたしはな……喧嘩で負けたことは一度もねえんだよ!」
ローズマリーは走り出し、拳を構えた。魔王は幾重にも結界を張る。何故こんなボロ雑巾のようなヒュームの女にこの魔王ナハトが……魔族の始祖が追い詰められているのだ。結界は拳で破壊され、魔王の顔面に拳がめり込む。勢いは止まらず魔王の体は壁にめり込む。そして拳の勢いは止まった。魔王はまだ息があった。
対するローズマリーは動かない。心の蔵の音が聞こえない。余は耐え切った。生きている方が勝ちなのだ。安堵した瞬間ローズマリーの付けているネックレスが壊れ、ローズマリーの今度こそ全てを賭けた一撃だ。魔王は死を感じる前にこと切れていた。
そしてローズマリーは大の字になって倒れた。崩れた天井から蒼穹が見える。ローズマリーは母や麻衣、エンデュミオンやルーンベルト、セレーナ、クリフトに、カーヴァイン、ギル、そしてリリスのことを思った。あたしは最後まで最強だったぜ……。拳を高らかに天に向かって突き出す。そして安らかな眠りについた。
北から冷たい風が吹いた。少女の長い髪をたなびかせる。
「ローズマリーお姉様来てくれたの?」リリスは独り言を言った。
そして風は上昇し西へ西へと運ばれていく。
「マリー母ちゃん?」ギルは抱き上げられたかのような気持ちになった。
そして風は霧散しローズマリーの伝説だけが残った。
「ローズマリーのお話を知ってるかい?」特攻服を着た獣人族の剣士が子供たちに問う。
子供たちは笑いながら答えた。
「最強!最強?理不尽賢者ローズマリーを夜露死苦!」
こちらが先手を打つはずだったのが無駄に終わり魔王は静かに怒っていた。キャリクスが怯える。それは愉快だった。生き物が死ぬさまや怯えるさまを見ていると心地よく、まるで上等な酒を飲んだような気分になる。魔王は玉座から立ち上がった。そして漆黒のマントを翻し部下どもに言い放った。
「レッドドラゴンどもを野に放て重装オーク部隊、ゴブリン騎兵隊は不時着した飛空船を襲え!」
その頃、名匠フリューゲルが作ったアダマンタイト合金製の『アークノヴァ号』に乗ったローズマリーは初めて秘魔法『エクスプロージョン』を放った。
赤黒い閃光が走りやや遅れてジュドー―――――――ンという轟音が聞こえ魔王のいる大陸の3分の2が焦土と化し魔王が準備していた軍はあっけなく壊滅した。そして死ぬ気になって仲間に加わってくれたシンダリア大陸中の猛者たちに先駆けてローズマリーたちは魔王の城の大門に飛空船で突撃し大きな穴を空けた。城の中にはケルベロスやエンペラーデーモンがごまんといる。エンデュミオンとセレーナ、ルーンベルトが魔王討伐の初陣を切った。
「雑魚は任せろ!」
「行け、ローズマリー」
「私たちもすぐ追いつくからね」
「あばよ、ダチ公たち」ローズマリーは呟いた。新大陸で手に入れた赤い魔導石を割った。力がみなぎってくる。赤いポニーテールが翻る。玉座の間につくと今のローズマリーとはけた外れの力を持った存在が鎮座している。それが言葉を紡いだ。
「お前が大賢者ローズマリーか? 余の部下にならぬか? 噂に違わぬ殺気を持っている……キャリクスが逃げるわけだな」
「断る! お前は人のことを部下のことをモンスター1匹のことすら何とも思わないクズだ……!」
「それがどうした? この世界は余が支配することは必定。余を褒め称え、余を楽しませるために世界があるのだ!」
「黙れ!このクソ野郎が!」ローズマリーは転移の秘魔法を使い魔王の背後をとった。今だ! 奴はあたしの力を見切れていない。チャンスは2度はない。ローズマリーは持った杖で魔王の頭を殴り殺そうとした。しかし一気に力が抜ける。エクスプロージョンに、転移と秘魔法を使い過ぎたから反動が来たのだ。魔王は手にした杖でローズマリーの腹を殴った。
転がっていったローズマリーは吐血した。痛い、生まれて初めての経験だった。臓器が何個か駄目になっている。もう長くは持たないだろう……。ローズマリーの最後の枷が外れた。生きて皆と会いたいという淡い切望だ。
ローズマリーはゆっくりと立ち上がる。魔王はヘルファイアと言う暗黒魔法を放ち続けてくる。対するローズマリーは無防備、避けようとも耐えようともしないで、直立不動を貫いていた。
「小賢しいヒュームの娘ごときに手間取らせおって、死ぬがよい。カースオブデス!」魔王は即死魔法をかけてきた。しかし『大賢者の杖』には即・死・耐・性・がついている。すぐには死なない。ローズマリーは杖を捨てた。
「なぜ死なぬ。身体も内蔵はひしゃげかろうじて立っているだけの貴様に何故、余が恐怖するというのだ」
歩みを止めぬローズマリーに魔王は魔法を次々当てる。しかし距離がだんだんと近づいてくる。魔王は自分が壁にまで後退していたことにやっと気づいた。
「あたしはな……喧嘩で負けたことは一度もねえんだよ!」
ローズマリーは走り出し、拳を構えた。魔王は幾重にも結界を張る。何故こんなボロ雑巾のようなヒュームの女にこの魔王ナハトが……魔族の始祖が追い詰められているのだ。結界は拳で破壊され、魔王の顔面に拳がめり込む。勢いは止まらず魔王の体は壁にめり込む。そして拳の勢いは止まった。魔王はまだ息があった。
対するローズマリーは動かない。心の蔵の音が聞こえない。余は耐え切った。生きている方が勝ちなのだ。安堵した瞬間ローズマリーの付けているネックレスが壊れ、ローズマリーの今度こそ全てを賭けた一撃だ。魔王は死を感じる前にこと切れていた。
そしてローズマリーは大の字になって倒れた。崩れた天井から蒼穹が見える。ローズマリーは母や麻衣、エンデュミオンやルーンベルト、セレーナ、クリフトに、カーヴァイン、ギル、そしてリリスのことを思った。あたしは最後まで最強だったぜ……。拳を高らかに天に向かって突き出す。そして安らかな眠りについた。
北から冷たい風が吹いた。少女の長い髪をたなびかせる。
「ローズマリーお姉様来てくれたの?」リリスは独り言を言った。
そして風は上昇し西へ西へと運ばれていく。
「マリー母ちゃん?」ギルは抱き上げられたかのような気持ちになった。
そして風は霧散しローズマリーの伝説だけが残った。
「ローズマリーのお話を知ってるかい?」特攻服を着た獣人族の剣士が子供たちに問う。
子供たちは笑いながら答えた。
「最強!最強?理不尽賢者ローズマリーを夜露死苦!」
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