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【第5章理不尽賢者と新大陸】
【理不尽賢者と奴隷の子Ⅲ】
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新大陸までの道のりは長そうだった。ここ一週間でギルの寝小便の回数は激減していた。これはローズマリーが何かしたわけではなくギルが努力して減らしたのだった。ローズマリーはギルと寝る時も特攻服を脱ぐことはなかった。そして最初の時こそ悲鳴を上げたが、それからはぴったりと静かになった。
「いつまで持つのかね」酒を飲んで乗り物恐怖症から逃れようとしているエンデュミオンが言った。
「ふっ、そういうお前こそ、剣術を指南していたではないか」
「けっ、ルーンのでこっぱちが剣の1つも扱えなかったら大人になった時困ると思ったからだ」
「でもあの子、筋は良いみたいね」セレーナが言った。
ローズマリーがギルのことを湯あみさせていた。最初体を洗われるのを怖がったギルだが泡ができる石鹸を見て面白がっていた。洗った後はギルは見違えるほど綺麗になった。
「ギル、湯あみはどうだった?」ローズマリーが頭を撫でてやる。
「気持ち良かった、また洗ってくれるか? マリー母ちゃん」ギルは」甘えてローズマリーに抱きついた。
「ああ、これからも一緒だぞ」
「マリー母ちゃん大好きだ」
ローズマリーは返事の代わりに抱擁してやった。まるで親子みたいだと他の3人は笑い合っていた。
その晩からギルは寝小便をしなくなった。安心したのだろうとローズマリーは思った。親の愛を知らずに育つなんて1番辛い筈だ。お母さんがしてくれたことに及ばなくても気持ちだけでも分かってくれたら良いと願っていた。
次の日の昼のことである調理室でセレーナが昼食を作っているとギルが慌てて駆け込んできた。
「どうしたのかしら、ギルちゃん? マリー母ちゃんが島を見つけたって!」
セレーナは危うく火傷するところだった。急いで調理室を出て運転席のローズマリーに話を聞きに行った。他の2人はすでに話を聞き終えたところらしい。
「セレーナ見てくれ三日月形の大きな島だ。ここを中継地点にすれば西の新大陸からも帰って来れるんじゃないかな?」
飛空船が20は停まれそうなお大きさだ。あとは危険なモンスター外にないかどうかが重要になってくる。
「1度降りてみてみましょう」
「そだね、ヤバいモンスターとかいたら退治しとかなきゃね」
「ふっ、久しぶりに冒険者らしい仕事ができそうだ」
「腕が鳴るぜ」
「マリー母ちゃん、俺はここに1人か?」悲しそうに耳が垂れる。その姿を見てローズマリーは決断した。
「ギル一緒に行くぞ、あたしの実力を見せてやるよ」
「母ちゃんは強いのか?」
「ああ、シンダリア大陸で一番強いのがお前の母ちゃんだぜ。ギルの坊や」
「しんだりあ? なんだそれ?」
4人はショックを覚えた。ギルは街の子供でも分かるような常識も教えられず生きてきたのだ。
「こりゃ、大変だな。取り合えず島を一周してから考えることにしようぜ」とエンデュミオン。
「ふっ、絵本でもあれば教えやすいのだがな……難儀なことだ」
「新大陸には一族みんなで行った集団もいるらしいから、絵本くらいならあるかもしれないわね」
「しっかし、本当にぐうの音も出ねえくらいの畜生な爺だったんだな」
ギルは何か自分がしでかしてしまったのかと恐怖で身をすくめている。きっとあの爺さんのところではこれくらいのことで殴られたり蹴られたりヲ繰り返されていた為本能的に怖がってしまうのだろう。
「ギル、お前は将来何になりたい?」ローズマリーは痩せっぽっちなギルを抱きあげて言った。
「俺はマリー母ちゃんみたいな冒険者になりたい。もっと沢山いろんな場所を見て歩きたい」
「よーし、分かった。じゃあその最初として少し勉強をしなきゃいけないからな」
「ばんきょう?」
「そうだ、勉強だ。ギルはお金の計算はできるか?」
「分からない」だからあのクソ爺はギルを使ったのだ。持ち逃げされないように。
「そこから始めような? 母ちゃんとの約束だぞ?」
「うん、分かった。マリー母ちゃんの言うことは絶対守る」
「そうだ、約束は絶対守る。それが漢ってもんだ。母ちゃんと約束したことは絶対守れよ? 一生の約束だ」
ローズマリーはリリスと接した時と似たような気持になった。アイツも孤独だったもんな。ましてやまだギルは子供生きていく力もない。この子をどうやったら大人になった時まともな生き方ができるように育てれば良いかローズマリーは考え込むのであった。
「いつまで持つのかね」酒を飲んで乗り物恐怖症から逃れようとしているエンデュミオンが言った。
「ふっ、そういうお前こそ、剣術を指南していたではないか」
「けっ、ルーンのでこっぱちが剣の1つも扱えなかったら大人になった時困ると思ったからだ」
「でもあの子、筋は良いみたいね」セレーナが言った。
ローズマリーがギルのことを湯あみさせていた。最初体を洗われるのを怖がったギルだが泡ができる石鹸を見て面白がっていた。洗った後はギルは見違えるほど綺麗になった。
「ギル、湯あみはどうだった?」ローズマリーが頭を撫でてやる。
「気持ち良かった、また洗ってくれるか? マリー母ちゃん」ギルは」甘えてローズマリーに抱きついた。
「ああ、これからも一緒だぞ」
「マリー母ちゃん大好きだ」
ローズマリーは返事の代わりに抱擁してやった。まるで親子みたいだと他の3人は笑い合っていた。
その晩からギルは寝小便をしなくなった。安心したのだろうとローズマリーは思った。親の愛を知らずに育つなんて1番辛い筈だ。お母さんがしてくれたことに及ばなくても気持ちだけでも分かってくれたら良いと願っていた。
次の日の昼のことである調理室でセレーナが昼食を作っているとギルが慌てて駆け込んできた。
「どうしたのかしら、ギルちゃん? マリー母ちゃんが島を見つけたって!」
セレーナは危うく火傷するところだった。急いで調理室を出て運転席のローズマリーに話を聞きに行った。他の2人はすでに話を聞き終えたところらしい。
「セレーナ見てくれ三日月形の大きな島だ。ここを中継地点にすれば西の新大陸からも帰って来れるんじゃないかな?」
飛空船が20は停まれそうなお大きさだ。あとは危険なモンスター外にないかどうかが重要になってくる。
「1度降りてみてみましょう」
「そだね、ヤバいモンスターとかいたら退治しとかなきゃね」
「ふっ、久しぶりに冒険者らしい仕事ができそうだ」
「腕が鳴るぜ」
「マリー母ちゃん、俺はここに1人か?」悲しそうに耳が垂れる。その姿を見てローズマリーは決断した。
「ギル一緒に行くぞ、あたしの実力を見せてやるよ」
「母ちゃんは強いのか?」
「ああ、シンダリア大陸で一番強いのがお前の母ちゃんだぜ。ギルの坊や」
「しんだりあ? なんだそれ?」
4人はショックを覚えた。ギルは街の子供でも分かるような常識も教えられず生きてきたのだ。
「こりゃ、大変だな。取り合えず島を一周してから考えることにしようぜ」とエンデュミオン。
「ふっ、絵本でもあれば教えやすいのだがな……難儀なことだ」
「新大陸には一族みんなで行った集団もいるらしいから、絵本くらいならあるかもしれないわね」
「しっかし、本当にぐうの音も出ねえくらいの畜生な爺だったんだな」
ギルは何か自分がしでかしてしまったのかと恐怖で身をすくめている。きっとあの爺さんのところではこれくらいのことで殴られたり蹴られたりヲ繰り返されていた為本能的に怖がってしまうのだろう。
「ギル、お前は将来何になりたい?」ローズマリーは痩せっぽっちなギルを抱きあげて言った。
「俺はマリー母ちゃんみたいな冒険者になりたい。もっと沢山いろんな場所を見て歩きたい」
「よーし、分かった。じゃあその最初として少し勉強をしなきゃいけないからな」
「ばんきょう?」
「そうだ、勉強だ。ギルはお金の計算はできるか?」
「分からない」だからあのクソ爺はギルを使ったのだ。持ち逃げされないように。
「そこから始めような? 母ちゃんとの約束だぞ?」
「うん、分かった。マリー母ちゃんの言うことは絶対守る」
「そうだ、約束は絶対守る。それが漢ってもんだ。母ちゃんと約束したことは絶対守れよ? 一生の約束だ」
ローズマリーはリリスと接した時と似たような気持になった。アイツも孤独だったもんな。ましてやまだギルは子供生きていく力もない。この子をどうやったら大人になった時まともな生き方ができるように育てれば良いかローズマリーは考え込むのであった。
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