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【第5章理不尽賢者と新大陸】
【理不尽賢者と奴隷の子Ⅱ】
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「これはこれはお待ちしておりました。ローズマリー様」
「おい? この奴隷を差し向けたのはお前だな、クソ爺」
「なんと! あれほど、人に迷惑をかけるねと言ったのに……何か悪さをしたのですかな?」
あくまで白を切るつもりだな、このクソ爺は。だったら……久し振りに暴れたくなったローズマリーだった。
「喧嘩で負けた方が全財産払うってのはどうだ?」
「ほほほ、威勢だけは良いですな。しかしこちらには数百人の奴隷がいますぞ。金貨と銀貨を全て置いていったら許して差し上げますよ」
ローズマリーはセレーナに杖を投げ渡した。相手は仕方なく戦っている奴隷本気でボコるのはあの爺さんだけで十分だ。
「やれ! お前たち金貨も、銀貨もすべて奪え」
しかし皆動かない。視線はギルに注がれていた。ギルはビクついている。
「なんで、動かんのじゃ⁈ わしがお前らの主人じゃぞ」
「もうたくさんだ、悪事の片棒を担がされるのは!」コボルトの青年が言った。
「お、お前たちに飯を食わせているのは誰だ! 言ってみろ!」
「好きで奴隷になったわけじゃないんだ、もう疲れた」と鳥獣人。
「これ、何故だ! この国ではわしが一番偉いんじゃ、言うことを聞かんか!」
「皆この子を羨ましがっているのさ、腹がこんなに膨れるくらい飯を食わせてもらっているからさ」
「何⁈ なら、わしはお前ら奴隷にももっと飯を食わせてやる! ほら誰か運んでこんかい?」
族長エネロの叫びは虚しく木霊した。そしてローズマリーは思いっきりエネロの顔にビンタを食らわせた。エネロは気絶した。
すると奴隷たちから歓声の声が上がった。皆気付いたのだ。このクソ爺は裸の王様だということを。
奴隷たちは皆エネロの食料やお金を分け合い、逃げていった。
ローズマリーは迷惑料として族長エネロが死ぬほど欲しがっていたリンデ小銀貨を1枚置いてギルを伴って飛空船に戻った。
「それでこのダニだらけの坊やを本気で育てる気かよ」エンデュミオンが呆れていた。
「仕方ないだろう、あのままあそこにいてもギルは働けないんだから……」
「お母さんって呼んで良いのか」ギルは猫耳の先端が欠けていた。話を聞くと以前夜中に寝小便を垂れ死ぬほど鞭で打たれた時の傷跡だそうだ。コイツがちゃんと生きていけるような場所を見つけるまでは、あたしはコイツの母ちゃんだ。
「良いぞ、好きに呼びな」
「マリーお母ちゃん!」ギルはダニだらけだったがローズマリーは気にせず抱き上げた獣人族で、8歳でこの体重かきっと奴隷たちのガス抜きに使われていたんだろう。あちこちに鞭の跡がついている。可哀想に思いローズマリーはギュッとギルを抱きしめた
「ローズマリーお客さんが来たわよ」セレーナが集まった獣人族を見て言った。
「どうしたお前たち? もう自由だろ」
「この恩は一生忘れません、ローズマリー様。私らにできるのはこれだけです」山ほどの魔法石が運ばれてきた。律義な奴らだなとローズマリーは思った。
「その代わりと言ったらなんなんですが……私らにも名前を付けてくれませんか?」コボルトの青年が言った。
ローズマリーは集まった数百人の獣人族に名前を付けていった。名づけは昼間から深夜に及んだ。
「じゃあな、ペコニャン! 達者でな」獣人たちには思いつく限りの名前を付けてやった。頭をフルスロットルで使ったローズマリーはぐったりとベッドで横になった。ギルは一緒に寝て良いかと聞いてきたから、良いぞと言ったらギルはまたローズマリーに抱きつき甘えてきた。
そして朝方ローズマリーは生れて初めて悲鳴を上げた。ギルが寝小便をし特攻服が小便まみれになってしまったからだ。
他の3人は青ざめギルを守るように囲んだ。あの特攻服に関してはデリケートに扱わないとキレるローズマリーだ。3人は命懸けでギルを守ろうと誓い合った。
しかしローズマリーは井戸の方へ行き石鹸で特攻服を洗うだけだった。しかもがっくりとして。
「ごめん、マリー母ちゃん。もう寝小便は垂れないから許して」
「良いぞ、寝小便くらいガキはするもんだ。ギルがもっと早く大人になれるように寝小便をしないおまじないをかけてやるからな」
「ふっ、まるで本当の母親のようだな……」ルーンベルトが冷や汗を拭きながら言った。
「ホントね、人間ってこんなに変わるものなのかしら」とセレーナ。
「いつまで続くか見ものだな」とエンデュミオン。
こうしてローズマリーは18歳ながら一児の母親になってしまった。
「おい? この奴隷を差し向けたのはお前だな、クソ爺」
「なんと! あれほど、人に迷惑をかけるねと言ったのに……何か悪さをしたのですかな?」
あくまで白を切るつもりだな、このクソ爺は。だったら……久し振りに暴れたくなったローズマリーだった。
「喧嘩で負けた方が全財産払うってのはどうだ?」
「ほほほ、威勢だけは良いですな。しかしこちらには数百人の奴隷がいますぞ。金貨と銀貨を全て置いていったら許して差し上げますよ」
ローズマリーはセレーナに杖を投げ渡した。相手は仕方なく戦っている奴隷本気でボコるのはあの爺さんだけで十分だ。
「やれ! お前たち金貨も、銀貨もすべて奪え」
しかし皆動かない。視線はギルに注がれていた。ギルはビクついている。
「なんで、動かんのじゃ⁈ わしがお前らの主人じゃぞ」
「もうたくさんだ、悪事の片棒を担がされるのは!」コボルトの青年が言った。
「お、お前たちに飯を食わせているのは誰だ! 言ってみろ!」
「好きで奴隷になったわけじゃないんだ、もう疲れた」と鳥獣人。
「これ、何故だ! この国ではわしが一番偉いんじゃ、言うことを聞かんか!」
「皆この子を羨ましがっているのさ、腹がこんなに膨れるくらい飯を食わせてもらっているからさ」
「何⁈ なら、わしはお前ら奴隷にももっと飯を食わせてやる! ほら誰か運んでこんかい?」
族長エネロの叫びは虚しく木霊した。そしてローズマリーは思いっきりエネロの顔にビンタを食らわせた。エネロは気絶した。
すると奴隷たちから歓声の声が上がった。皆気付いたのだ。このクソ爺は裸の王様だということを。
奴隷たちは皆エネロの食料やお金を分け合い、逃げていった。
ローズマリーは迷惑料として族長エネロが死ぬほど欲しがっていたリンデ小銀貨を1枚置いてギルを伴って飛空船に戻った。
「それでこのダニだらけの坊やを本気で育てる気かよ」エンデュミオンが呆れていた。
「仕方ないだろう、あのままあそこにいてもギルは働けないんだから……」
「お母さんって呼んで良いのか」ギルは猫耳の先端が欠けていた。話を聞くと以前夜中に寝小便を垂れ死ぬほど鞭で打たれた時の傷跡だそうだ。コイツがちゃんと生きていけるような場所を見つけるまでは、あたしはコイツの母ちゃんだ。
「良いぞ、好きに呼びな」
「マリーお母ちゃん!」ギルはダニだらけだったがローズマリーは気にせず抱き上げた獣人族で、8歳でこの体重かきっと奴隷たちのガス抜きに使われていたんだろう。あちこちに鞭の跡がついている。可哀想に思いローズマリーはギュッとギルを抱きしめた
「ローズマリーお客さんが来たわよ」セレーナが集まった獣人族を見て言った。
「どうしたお前たち? もう自由だろ」
「この恩は一生忘れません、ローズマリー様。私らにできるのはこれだけです」山ほどの魔法石が運ばれてきた。律義な奴らだなとローズマリーは思った。
「その代わりと言ったらなんなんですが……私らにも名前を付けてくれませんか?」コボルトの青年が言った。
ローズマリーは集まった数百人の獣人族に名前を付けていった。名づけは昼間から深夜に及んだ。
「じゃあな、ペコニャン! 達者でな」獣人たちには思いつく限りの名前を付けてやった。頭をフルスロットルで使ったローズマリーはぐったりとベッドで横になった。ギルは一緒に寝て良いかと聞いてきたから、良いぞと言ったらギルはまたローズマリーに抱きつき甘えてきた。
そして朝方ローズマリーは生れて初めて悲鳴を上げた。ギルが寝小便をし特攻服が小便まみれになってしまったからだ。
他の3人は青ざめギルを守るように囲んだ。あの特攻服に関してはデリケートに扱わないとキレるローズマリーだ。3人は命懸けでギルを守ろうと誓い合った。
しかしローズマリーは井戸の方へ行き石鹸で特攻服を洗うだけだった。しかもがっくりとして。
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「良いぞ、寝小便くらいガキはするもんだ。ギルがもっと早く大人になれるように寝小便をしないおまじないをかけてやるからな」
「ふっ、まるで本当の母親のようだな……」ルーンベルトが冷や汗を拭きながら言った。
「ホントね、人間ってこんなに変わるものなのかしら」とセレーナ。
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こうしてローズマリーは18歳ながら一児の母親になってしまった。
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