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【第5章理不尽賢者と新大陸】
【理不尽賢者とドワーフの国Ⅱ】
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「えーと、ミリアのギルドの名前って何だっけ?」
「マグナギアよ、しっかり覚えておいてね」
飛空船を透明化させるとローズマリーはマグナギアの裏庭に船を着陸させた。そして半年を超えて再びリントの街の大地に降り立った。少しばかり感慨深くなった。
「ローズマリー、こっちよ。裏口から入りましょう、騒ぎになったら大変よ」
「了解!」
「お前の今までしでかした、悪行の数々が噂になっていやがるからな」ケラケラと笑うエンデュミオン。
「そんなにまた壁に埋まりたいのかよエンデュミオン?」
「や、やめろ! いくら強くなったとはいえお前には敵わねえぜ」
「ふっ、領主たちから逃げるようにして出奔したからな、懐かしい」
「こんちはーミリアはいるかい?」できるだけひっそりと声を出した。
「はーい、どなたさ、まって! えええ! 大賢者様!」
「ちょっと黙ってくれよ。頼むから!」
「……わ、分かったわ。何か事情があるのね裏庭で話を聞くわ」
……ローズマリーの今までしでかしたことは話に尾ひれがついて広まっていったようだ。オルケイアの話に至っては王子を下僕にして国王にしてオルケイア国を事実上の支配下においたということになっていた。他にもモンスターを一晩で何千万という数を拳1つでぶち殺したとか……。
「大分話がややこしくなっているみたいだな」
「私も最初は嘘だと思っていたけれどエンシェントドラゴンを殴り殺した時のことを思い出して信じてしまったわ」
「で、頼みがある。あたしをマグナギアの正式メンバーにして欲しい」
「それは有り難い話だけれど、何か企んでるんじゃないでしょうね?」
「情報が欲しい。魔王の城への正確な地図が欲しいんだ」
「良いわ、国王様のサインが本当は必要だけれど、後で了承をとるわ。ちょっと待ってってね」
ミリアは銀髪をたなびかせてマグナギアの建物に入っていった。それから約10分後ミリアは埃まみれになって古い地図を持ってきた。
「これが2年前にとある冒険者が決死隊を編成して作った地図よ。北の大陸モリガルアへの地図よ」
「作成に携わったのはアラム騎士団とか言う連中か?」
「よく知ってるじゃない?」
「クリフトの親父から聞いた」
「クリフトって『あの慈悲の名君』クリフト王? 獣人族と人間族を歴史上初めて公平にしたって言う……あの御方?」
「クリフトは、エンデュミオンやセレーナ、ルーンベルトと同じであたしのダチ公だよ」
「あいつも今じゃ忙しくててんてこ舞いだろうな」
「ふっ、王侯貴族とはただ玉座に座っていれば良いというようなものではないのだ。寝る暇もないだろうに……」
「クリフトにもゴブリッシュ飲ませてあげたかったわね……」
各々クリフトに対する思いは深いようだった。それを見たミリアが言った。
「本当に仲の良い友人だったようね。その人もきっとローズマリー達のことを大事に思っている筈よ」
「そ、そういえばカーヴァインって言う名前を知らないか? ミリア?」
「カーヴァイン! あの人のこと知っていたの? 恥ずかしいわ」
「知り合ったきっかけはキッカ草の花だろう?」
「も―あの人ったら口は堅いように見えたのに……そうよ森の中で20年に一度咲くキッカ草の花をあの人が見ていたの……それで……その格好良くて……私からアプローチしたの」
「来年キッカ草の花をまた来ようって日記に書いてあったぞ。ミリアのことをキッカ草の花に例えていたんだな」色白なミリアは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
「あいつもあたしのダチ公だよ。えらい目に遭いそうになったけれどね」
「あの人なんでしょう? 私の呪いを解いてくれたのは……ああ早く会いたいわ……カーヴァイン」
「んじゃ、地図はもらっていくよ」
「ま、待って。これからどこに行くのだけ教えて?」
「ドワーフの国だよ。腕が良い鍛冶屋を探しているんだ」
「それならマグナギアのケイネア支店に行くと良いわ、推薦状を書いておくわね」
「ケイネアねえ、腕利きの職人は探してくれるのかね」
「それは神様に祈るしかないわ、雷神トールにね、ちょっと待っててね。推薦状を書いてくるから」
ミリアの銀の長い髪が揺らいでいく。ローズマリーはそれを目で追っていた。この街の牧歌的な風景だけは守らなければならない。あたしの背中の文字が泣くようなことは絶対に起こさせない。あたしの目的は魔王をぶち倒すことなのだから。
「マグナギアよ、しっかり覚えておいてね」
飛空船を透明化させるとローズマリーはマグナギアの裏庭に船を着陸させた。そして半年を超えて再びリントの街の大地に降り立った。少しばかり感慨深くなった。
「ローズマリー、こっちよ。裏口から入りましょう、騒ぎになったら大変よ」
「了解!」
「お前の今までしでかした、悪行の数々が噂になっていやがるからな」ケラケラと笑うエンデュミオン。
「そんなにまた壁に埋まりたいのかよエンデュミオン?」
「や、やめろ! いくら強くなったとはいえお前には敵わねえぜ」
「ふっ、領主たちから逃げるようにして出奔したからな、懐かしい」
「こんちはーミリアはいるかい?」できるだけひっそりと声を出した。
「はーい、どなたさ、まって! えええ! 大賢者様!」
「ちょっと黙ってくれよ。頼むから!」
「……わ、分かったわ。何か事情があるのね裏庭で話を聞くわ」
……ローズマリーの今までしでかしたことは話に尾ひれがついて広まっていったようだ。オルケイアの話に至っては王子を下僕にして国王にしてオルケイア国を事実上の支配下においたということになっていた。他にもモンスターを一晩で何千万という数を拳1つでぶち殺したとか……。
「大分話がややこしくなっているみたいだな」
「私も最初は嘘だと思っていたけれどエンシェントドラゴンを殴り殺した時のことを思い出して信じてしまったわ」
「で、頼みがある。あたしをマグナギアの正式メンバーにして欲しい」
「それは有り難い話だけれど、何か企んでるんじゃないでしょうね?」
「情報が欲しい。魔王の城への正確な地図が欲しいんだ」
「良いわ、国王様のサインが本当は必要だけれど、後で了承をとるわ。ちょっと待ってってね」
ミリアは銀髪をたなびかせてマグナギアの建物に入っていった。それから約10分後ミリアは埃まみれになって古い地図を持ってきた。
「これが2年前にとある冒険者が決死隊を編成して作った地図よ。北の大陸モリガルアへの地図よ」
「作成に携わったのはアラム騎士団とか言う連中か?」
「よく知ってるじゃない?」
「クリフトの親父から聞いた」
「クリフトって『あの慈悲の名君』クリフト王? 獣人族と人間族を歴史上初めて公平にしたって言う……あの御方?」
「クリフトは、エンデュミオンやセレーナ、ルーンベルトと同じであたしのダチ公だよ」
「あいつも今じゃ忙しくててんてこ舞いだろうな」
「ふっ、王侯貴族とはただ玉座に座っていれば良いというようなものではないのだ。寝る暇もないだろうに……」
「クリフトにもゴブリッシュ飲ませてあげたかったわね……」
各々クリフトに対する思いは深いようだった。それを見たミリアが言った。
「本当に仲の良い友人だったようね。その人もきっとローズマリー達のことを大事に思っている筈よ」
「そ、そういえばカーヴァインって言う名前を知らないか? ミリア?」
「カーヴァイン! あの人のこと知っていたの? 恥ずかしいわ」
「知り合ったきっかけはキッカ草の花だろう?」
「も―あの人ったら口は堅いように見えたのに……そうよ森の中で20年に一度咲くキッカ草の花をあの人が見ていたの……それで……その格好良くて……私からアプローチしたの」
「来年キッカ草の花をまた来ようって日記に書いてあったぞ。ミリアのことをキッカ草の花に例えていたんだな」色白なミリアは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
「あいつもあたしのダチ公だよ。えらい目に遭いそうになったけれどね」
「あの人なんでしょう? 私の呪いを解いてくれたのは……ああ早く会いたいわ……カーヴァイン」
「んじゃ、地図はもらっていくよ」
「ま、待って。これからどこに行くのだけ教えて?」
「ドワーフの国だよ。腕が良い鍛冶屋を探しているんだ」
「それならマグナギアのケイネア支店に行くと良いわ、推薦状を書いておくわね」
「ケイネアねえ、腕利きの職人は探してくれるのかね」
「それは神様に祈るしかないわ、雷神トールにね、ちょっと待っててね。推薦状を書いてくるから」
ミリアの銀の長い髪が揺らいでいく。ローズマリーはそれを目で追っていた。この街の牧歌的な風景だけは守らなければならない。あたしの背中の文字が泣くようなことは絶対に起こさせない。あたしの目的は魔王をぶち倒すことなのだから。
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