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【第4章理不尽賢者と魔導皇国グリムズガーデン】
【理不尽賢者と魔剣士Ⅺ】
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門を出るとそこは庭園だった。見たこともない鳥や小動物が駆けまわっている。この世界の動物のようだけど、どこか違和感がある。なんというか博物館で昔の生き物の模型を見ているような気分だ。
「違和感に気付いたようだな。ここは『原初』の庭、遥か昔に滅んだ生き物たちが未だなお生きている」
「『原初』ってヤツは単なる悪い奴じゃないのか?」
「いや、この庭園も奴が気まぐれで作り出したもの。気分次第ですぐ消すこともあり得るだろう」
「なんかつかみどころがない奴だな、聞いた感じだと……」
「その通りだ。うかつな発言は気を付けることだ。もうこの庭園に来たことは感知されたようだ」
古代に栄えた動物たちが一斉に離れて行く。代わりに先程戦ったツァークとよく似た魔獣が群れを成して現れた。これも、もしかして元は人間だったのか? それにカーヴァインが答えた。
「これらは『原初』に弄ばれた人間たちだ。分かっただろう。奴は気まぐれで飽き性で善でも悪でもない……もっとも醜悪な者の1つだ」
「こいつらは治せないのか?」
「無理だ。時間が経ちすぎている。恐らくは古エルフ族だろう。さて私も本気を出させてもらおうか」
カーヴァインの周りに光の波紋のようなものが出始めた。それは段々と幾何学的な模様に変わっていき、ローズマリーが見たこともない魔方陣を形成していった。
「マギア グラディオ」叫ぶと何もない空間から赤黒い光の剣が現れた。
おおっ!これがカーヴァインの本気か……ローズマリーはワクワクしていた。そしてカーヴァインは「【残像剣】」と呟くとカーヴァインが5人に分身した。そしてあっという間に魔獣たちに近づくと間髪入れず首を斬り全滅させてしまった。1分もかからなかった。カーヴァインに声をかけようと思った時後ろから何かが現れる気配がした。
「「流石は主様が見込んだお人ですー」」機械でできた双子の人形だった。
「なんだ? お前らは?」
「ワタシはリルですー」
「ワタシはルリですー」
「「偉大なる主様の作られた執事兼戦闘人形ですー」」
「そいつらに構う必要はない。ただ戯言を言うだけの邪魔な存在だ」
「「失礼なのですー」」
「お前ら『原初』の場所知ってんのか?」
「「ちゃんと主様の名前を呼んでくださいなのですー」」
「やめておけ私が名前を言わない理由も察しが付くだろう」
「名前呼んだだけで魅了されちまうのか……おっかねえ奴だな
「「ローズマリー様のことを主様は長い間お待ちになっておりますー」」
「だからあたしがこっちに来るようにクリフトの国を滅茶苦茶にしようとしたのか?」
「「分かりませんー」」
ローズマリーは人生で初めて本気で怒った。魔力が上昇し赤い色のオーラが体の周りを覆った。そして地面を殴った。すると庭園やその奥の宮殿が崩れ始めた。全ては幻、【未来予知】のスキルを全開で発動させた。『原初』と呼ばれる者との会話も自分がその真意を聞きブチぎれるのもその後のことも全て分かった。
「ロ、ローズマリーどうしたというのだ?」
「リリスはただブチのめすだけじゃ、あたしの怒りは収まらない」
「お前、何故『原初』の名前を……まさか【未来予知】のスキルか?」
「カーヴァインあんたもあたしをここに連れてくるように仕組まれていたのさ。リントの街で瀕死の重体になっているギルドの長ミリアに呪いをかけたのも全てはあたしをここに連れてくる為の罠だったんだ」
「何⁈ そんなことまで分かるのか……私の恋人ミリアが呪いを受けたのは私が前回来た時奴の要求をのまなかったからだと思っていた」
「もしこのままそこの木偶人形達と一緒にリリスのところへ行ったらあんたは殺されていた……そういう未来が見えた」
「何! 私が殺されるだと!」
「あんたが言った通り善悪の見境の無い最低野郎だってことは良く分かったよ」
「あたしが今までしでかしやがったことを後悔するくらいにぶん殴ってやる」
ローズマリーの拳の一撃でグリムズエルデンは暗黒の世界になった。そして白い光を放つ存在が1人現れた。膝まづく2体の機械人形。身構えるカーヴァイン。相手はリリスだろう。近くにやって来たリリスは筆舌し難い完璧な美しさを持っていた。銀色の長いストレートの髪、琥珀色の澄んだ瞳、背中には妖精を思わせる羽根がついている。そして布切れ1枚つけず宙を舞い興味深げにローズマリーを見ている。
「貴女がローズマリーね。初めましての挨拶にしてはやり過ぎじゃないかしら」
「あたしのダチ公の兄貴や幼馴染を殺した報いは受けてもらうよ」
「そんなちっぽけな理由でワタシの庭を遥々超えてやって来たの?」
「あんたの作ったこのグリムズガーデン皇国は腐ってる。死にたくても死ねない『不老人』、魔力を吸収し続ける土地、どの都市でも見られる奴隷市場……あんたは人の命や人生を何だと思っているんだ」
「ただの暇つぶしよ。こうして貴方と話しているのもね。私たち妖精族には寿命が無いの。だから私の力で6つの種族を作って遊んでいただけよ……」
「今からあんたをボコボコにする。覚悟は良いな?」
リリスはふふっと笑い。地に降りた。ローズマリーは身構えた。何をする気だ?
「アストラルドレイン」とリリスがつぶやくように言うとローズマリーの魔力がすべて奪われた。これが目的だったのか? ほぼ魔力ゼロのローズマリーは地に膝を立てた。
「違和感に気付いたようだな。ここは『原初』の庭、遥か昔に滅んだ生き物たちが未だなお生きている」
「『原初』ってヤツは単なる悪い奴じゃないのか?」
「いや、この庭園も奴が気まぐれで作り出したもの。気分次第ですぐ消すこともあり得るだろう」
「なんかつかみどころがない奴だな、聞いた感じだと……」
「その通りだ。うかつな発言は気を付けることだ。もうこの庭園に来たことは感知されたようだ」
古代に栄えた動物たちが一斉に離れて行く。代わりに先程戦ったツァークとよく似た魔獣が群れを成して現れた。これも、もしかして元は人間だったのか? それにカーヴァインが答えた。
「これらは『原初』に弄ばれた人間たちだ。分かっただろう。奴は気まぐれで飽き性で善でも悪でもない……もっとも醜悪な者の1つだ」
「こいつらは治せないのか?」
「無理だ。時間が経ちすぎている。恐らくは古エルフ族だろう。さて私も本気を出させてもらおうか」
カーヴァインの周りに光の波紋のようなものが出始めた。それは段々と幾何学的な模様に変わっていき、ローズマリーが見たこともない魔方陣を形成していった。
「マギア グラディオ」叫ぶと何もない空間から赤黒い光の剣が現れた。
おおっ!これがカーヴァインの本気か……ローズマリーはワクワクしていた。そしてカーヴァインは「【残像剣】」と呟くとカーヴァインが5人に分身した。そしてあっという間に魔獣たちに近づくと間髪入れず首を斬り全滅させてしまった。1分もかからなかった。カーヴァインに声をかけようと思った時後ろから何かが現れる気配がした。
「「流石は主様が見込んだお人ですー」」機械でできた双子の人形だった。
「なんだ? お前らは?」
「ワタシはリルですー」
「ワタシはルリですー」
「「偉大なる主様の作られた執事兼戦闘人形ですー」」
「そいつらに構う必要はない。ただ戯言を言うだけの邪魔な存在だ」
「「失礼なのですー」」
「お前ら『原初』の場所知ってんのか?」
「「ちゃんと主様の名前を呼んでくださいなのですー」」
「やめておけ私が名前を言わない理由も察しが付くだろう」
「名前呼んだだけで魅了されちまうのか……おっかねえ奴だな
「「ローズマリー様のことを主様は長い間お待ちになっておりますー」」
「だからあたしがこっちに来るようにクリフトの国を滅茶苦茶にしようとしたのか?」
「「分かりませんー」」
ローズマリーは人生で初めて本気で怒った。魔力が上昇し赤い色のオーラが体の周りを覆った。そして地面を殴った。すると庭園やその奥の宮殿が崩れ始めた。全ては幻、【未来予知】のスキルを全開で発動させた。『原初』と呼ばれる者との会話も自分がその真意を聞きブチぎれるのもその後のことも全て分かった。
「ロ、ローズマリーどうしたというのだ?」
「リリスはただブチのめすだけじゃ、あたしの怒りは収まらない」
「お前、何故『原初』の名前を……まさか【未来予知】のスキルか?」
「カーヴァインあんたもあたしをここに連れてくるように仕組まれていたのさ。リントの街で瀕死の重体になっているギルドの長ミリアに呪いをかけたのも全てはあたしをここに連れてくる為の罠だったんだ」
「何⁈ そんなことまで分かるのか……私の恋人ミリアが呪いを受けたのは私が前回来た時奴の要求をのまなかったからだと思っていた」
「もしこのままそこの木偶人形達と一緒にリリスのところへ行ったらあんたは殺されていた……そういう未来が見えた」
「何! 私が殺されるだと!」
「あんたが言った通り善悪の見境の無い最低野郎だってことは良く分かったよ」
「あたしが今までしでかしやがったことを後悔するくらいにぶん殴ってやる」
ローズマリーの拳の一撃でグリムズエルデンは暗黒の世界になった。そして白い光を放つ存在が1人現れた。膝まづく2体の機械人形。身構えるカーヴァイン。相手はリリスだろう。近くにやって来たリリスは筆舌し難い完璧な美しさを持っていた。銀色の長いストレートの髪、琥珀色の澄んだ瞳、背中には妖精を思わせる羽根がついている。そして布切れ1枚つけず宙を舞い興味深げにローズマリーを見ている。
「貴女がローズマリーね。初めましての挨拶にしてはやり過ぎじゃないかしら」
「あたしのダチ公の兄貴や幼馴染を殺した報いは受けてもらうよ」
「そんなちっぽけな理由でワタシの庭を遥々超えてやって来たの?」
「あんたの作ったこのグリムズガーデン皇国は腐ってる。死にたくても死ねない『不老人』、魔力を吸収し続ける土地、どの都市でも見られる奴隷市場……あんたは人の命や人生を何だと思っているんだ」
「ただの暇つぶしよ。こうして貴方と話しているのもね。私たち妖精族には寿命が無いの。だから私の力で6つの種族を作って遊んでいただけよ……」
「今からあんたをボコボコにする。覚悟は良いな?」
リリスはふふっと笑い。地に降りた。ローズマリーは身構えた。何をする気だ?
「アストラルドレイン」とリリスがつぶやくように言うとローズマリーの魔力がすべて奪われた。これが目的だったのか? ほぼ魔力ゼロのローズマリーは地に膝を立てた。
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