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【第4章理不尽賢者と魔導皇国グリムズガーデン】
【理不尽賢者と魔剣士Ⅸ】
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漆黒の魔法騎士ツァークは古強者の親衛隊長ベルフェインが破れたのを感知した。やはり奴が再び現れたか……カーヴァイン。
「やはり俺が出なければ方はつかないか……。カーヴァイン、今度こそ昔の借りを返させてもらう」
漆黒の鎧をまとった戦士はおのずと大剣に手をかけるのであった。
「近いぞ、気を付けろ!」
「分かってるよ、半端ない強さの気配がするもん」
「ならば良い」
螺旋階段はどこまでも繋がっていくような長い道のりだった。空とか飛べたら楽なのになー、とやや気が散った。
しかし、相手はこのカーヴァインが注目する相手だ。気を引き締めなければならない。それに『鍵』はどうやら持ち運びに不便らしい。先に門を繋ぐ方法を聞いていてよかったと思った。
間もなく霧の間の大扉にたどり着いた。
重々しい扉をカーヴァインが両手で押し開けた。部屋は仮眠用だと思われる簡素なベッドの他には普通の日常で使う物がなかった。その代わり目を引くのは部屋の中央に存在する青い結晶と中に入った『鍵』だ。たぶんカーヴァインが前に使っていた魔法石だろう……『鍵』が壊れないように常に魔力を与え続けているということか?
「久しいな、カーヴァイン」
「お前こそ、以前とは桁違いに強くなったようだな」
「それはそうだ。あんな屈辱忘れるわけがない」
ベルフェインは漆黒の兜を脱いだ。中性的美しいな顔だちだった。しかし眉間によく見ると傷がついている。たぶんカーヴァインがつけたものなんだろう。
「女の顔に一太刀浴びせ、門を通ったことを後悔させてやる」
「ええ! あんた女騎士なのかよ?!」
「だったらなんだ……バカにしているのか?」
「いや、今まで戦った相手は皆男ばかりだったから、ついびっくりしただけさ……」
「ローズマリー! 『鍵』は任せたぞ!」
「了解!」
カーヴァインがツァークに迫る。ツァークは手に持っていた大剣を構えた。
金属音がなる度に衝撃波が広がる。ドンッという衝撃音がするたびに建物自体が揺れる。
ローズマリーが『鍵』に近づこうとするとベルフェインは大剣を片手に持ち換え中級魔法を連発してきた。詠唱をしていないが普通の戦士なら致命的な威力を発揮していた。こいつかなり強い。ローズマリーは中級魔法を、手に魔力を込めて切り裂き無力化していた。あと少し2、3メートルで『鍵』に手が届く。
「させるか!」ツァークは大剣を2つに分解した。あの大剣は二刀流にもできるギミックがあったのだ。そして『鍵』に近づいたローズマリーの頭を狙い投げつけてきた。その動作の早さはカーヴァインでも見切れなかったらしく防げなかった。
あわやローズマリーに剣が届くと思われた瞬間に剣は何かに弾かれたように地面に転がった。ローズマリーは魔法障壁というバリアーのようなものを新たに身につけていた。
「っつ!」ツァークは何が起きたのか分からず一瞬だが唖然としていた。その隙を逃すカーヴァインではない。もう1つの剣もカーヴァインの猛攻に耐えきれず手から離れた。
これで『鍵』は奪えた。そう思ったが『鍵』は空中を舞い吸い込まれるようにツァークの手に渡った。
そして言った。
「『原初』の御方よりし賜われし『鍵』よ、我が魂を喰らい異界の魔獣と化せ!」
カーヴァインが叫んだ。
「よせ、たかが『鍵』ぐらいのことで死ぬな。我が友よ!」
「さらばだ。カーヴァイン……」
『鍵』がツァークの心臓に入り脈動する音が聞こえる。筋肉は盛り上がり四肢も大きく禍々しい形に変わっていく。元の体の3倍は大きい赤い狼人間のような魔獣になってしまった。天井は壊れ更に巨大化を続ける。
「くそ! なぜ『原初』に忠を尽くす! 己の命も尊厳も捧げても全く意に返さない者に!」
カーヴァインは天を見上げて叫んだ。その声には絶望が混じっていた。
「やはり俺が出なければ方はつかないか……。カーヴァイン、今度こそ昔の借りを返させてもらう」
漆黒の鎧をまとった戦士はおのずと大剣に手をかけるのであった。
「近いぞ、気を付けろ!」
「分かってるよ、半端ない強さの気配がするもん」
「ならば良い」
螺旋階段はどこまでも繋がっていくような長い道のりだった。空とか飛べたら楽なのになー、とやや気が散った。
しかし、相手はこのカーヴァインが注目する相手だ。気を引き締めなければならない。それに『鍵』はどうやら持ち運びに不便らしい。先に門を繋ぐ方法を聞いていてよかったと思った。
間もなく霧の間の大扉にたどり着いた。
重々しい扉をカーヴァインが両手で押し開けた。部屋は仮眠用だと思われる簡素なベッドの他には普通の日常で使う物がなかった。その代わり目を引くのは部屋の中央に存在する青い結晶と中に入った『鍵』だ。たぶんカーヴァインが前に使っていた魔法石だろう……『鍵』が壊れないように常に魔力を与え続けているということか?
「久しいな、カーヴァイン」
「お前こそ、以前とは桁違いに強くなったようだな」
「それはそうだ。あんな屈辱忘れるわけがない」
ベルフェインは漆黒の兜を脱いだ。中性的美しいな顔だちだった。しかし眉間によく見ると傷がついている。たぶんカーヴァインがつけたものなんだろう。
「女の顔に一太刀浴びせ、門を通ったことを後悔させてやる」
「ええ! あんた女騎士なのかよ?!」
「だったらなんだ……バカにしているのか?」
「いや、今まで戦った相手は皆男ばかりだったから、ついびっくりしただけさ……」
「ローズマリー! 『鍵』は任せたぞ!」
「了解!」
カーヴァインがツァークに迫る。ツァークは手に持っていた大剣を構えた。
金属音がなる度に衝撃波が広がる。ドンッという衝撃音がするたびに建物自体が揺れる。
ローズマリーが『鍵』に近づこうとするとベルフェインは大剣を片手に持ち換え中級魔法を連発してきた。詠唱をしていないが普通の戦士なら致命的な威力を発揮していた。こいつかなり強い。ローズマリーは中級魔法を、手に魔力を込めて切り裂き無力化していた。あと少し2、3メートルで『鍵』に手が届く。
「させるか!」ツァークは大剣を2つに分解した。あの大剣は二刀流にもできるギミックがあったのだ。そして『鍵』に近づいたローズマリーの頭を狙い投げつけてきた。その動作の早さはカーヴァインでも見切れなかったらしく防げなかった。
あわやローズマリーに剣が届くと思われた瞬間に剣は何かに弾かれたように地面に転がった。ローズマリーは魔法障壁というバリアーのようなものを新たに身につけていた。
「っつ!」ツァークは何が起きたのか分からず一瞬だが唖然としていた。その隙を逃すカーヴァインではない。もう1つの剣もカーヴァインの猛攻に耐えきれず手から離れた。
これで『鍵』は奪えた。そう思ったが『鍵』は空中を舞い吸い込まれるようにツァークの手に渡った。
そして言った。
「『原初』の御方よりし賜われし『鍵』よ、我が魂を喰らい異界の魔獣と化せ!」
カーヴァインが叫んだ。
「よせ、たかが『鍵』ぐらいのことで死ぬな。我が友よ!」
「さらばだ。カーヴァイン……」
『鍵』がツァークの心臓に入り脈動する音が聞こえる。筋肉は盛り上がり四肢も大きく禍々しい形に変わっていく。元の体の3倍は大きい赤い狼人間のような魔獣になってしまった。天井は壊れ更に巨大化を続ける。
「くそ! なぜ『原初』に忠を尽くす! 己の命も尊厳も捧げても全く意に返さない者に!」
カーヴァインは天を見上げて叫んだ。その声には絶望が混じっていた。
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