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【第4章理不尽賢者と魔導皇国グリムズガーデン】
【理不尽賢者と魔剣士Ⅶ】
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ここは霧の都市ダースレイクあたしとカーヴァインはこの街の領主に話があって来ていた。大魔皇宮グリムズエルデンに最も近い都市だ。霧もただの霧ではなく魔力を宿した魔霧だ。普通の人間ならばマスクをつけないと肺が魔力の過剰負担で壊れ死んでしまう。だが2人の強者には全く関係なかった。
1人はこの世界では最強の剣士と謳われている魔剣士カーヴァイン、もう1人は魔法を使わずともモンスターを両手の拳で理不尽に虐殺する鬼畜賢者。このコンビのことを聞いたら、魔王対策で密に連携をとっている各国の王族は卒倒してしまうだろう。
「お前はただのヒュームではないと私は思っている。私の魔眼をもってしても分からぬ加護が理不尽なまでにかかっている」先日ゴブリンの村でもらったゴブリンの火酒ゴブリッシュの13年物の大吟醸を飲み干しへべれけになり仮面が外れたカーヴァインは普通に話すようになった。
「あたしもスキル鑑定士の能力で自分を見ても文字だらけでウザったいだけなんだよね。逆に呪いなんじゃないかと思えてくるよ」
「お前には勝てんな、ローズマリー」初めてちゃんと名前で呼んでくれたんじゃなかろうか? ローズマリーは純粋に嬉しかった。コイツとは良いダチ公になれそうだ。
「だが、お前はこの世界での戦闘回数が少なすぎる『原初』と戦うにはそれがネックだと思っている」
「そだね。カーヴァインは数千年も生きているから経験値で言ったら比べようが無いよね」
「しかしユニークスキル【未来予知】などと聞いたこともなかった。やはりこのまま進むべきだと感じるのか?」
「うん……あたしの感覚では魔王は倒せるんだ。だけどそれはここの主に会わないといけないって気がするんだ」
「分かった、私たちは今から運命共同体だな」
「短く言えば仲間って言うんだよ」
2人は蒸気街区ゲンガを歩いていた。ここは他の区よりも魔霧の濃さが高い。それだけに集まっているのは強者だらけだ。筋肉隆々のヒュームの武闘家、魔法使いとみられる老ダークエルフ、素性のしれぬ甲冑を着た戦士……。グリムズガーデンではこの程度は当たり前のレベルらしいがどいつもこいつも外の国に出たら一騎当千の戦士達だろう。だがローズマリーの価値観は狂っている。
「どいつもこいつもマスクばっかで大した奴がいないねえ」
「大口……いや正直すぎるぞ、ローズマリーよ」
「そうだね。口は禍の元って言うしね」
「なんだそれは……?」
「あたしのいた世界でのことわざだよ。下手なことを言うと厄介ごとに巻き込まれるって意味……さ」
さっきまでいた連中がこちらを追いかけ始めた。2人は全力で走り屋根の上に跳びあがった。そして屋根伝いに中央区ロンドスへの門を目指した。
「なんで連中襲おうとしてきたんだろう?」
「ヒュームに、エルフ、ドワーフの人間族や魔族は倒すとそれだけ高い魔力が得られるのだ。そして間抜けな私とお前はマスクをつけ忘れていた。だから倒せば高い魔力が得られると見込まれて襲われそうになったのだろう」
「この国でまともな場所は森の中とゴブリンの村くらいだな」
「同感だな……」
「それにしても何故『原初』を封滅しようと思ったんだい?」
「それは奴に会ったときにわかるだろう」
「勿体ぶっちゃってケチ」
「男には二言は無きものと心得ている」侍精神かよ?良く分からんがなどと気をそれせていると突然太陽の光が消えた。
ズドーン大きな爆風とふっ飛ばされた2人は混乱して何が起きたのか分からなかった。
「奴がこの蒸気街区ゲンガのまとめ役と見た。名を名乗れ!大男よ!」
重い筈のフルプレートアーマーをつけ、そして人間2,3人なら軽く潰せそうなハンマーには雷が纏わりついているそいつは名前も名乗らず次の行動に出た。地奔る雷の広範囲魔法グラウンドサンダーだ。多分持っているハンマーに特殊なスキルが付いているんだろう……。あたしはこの世界に来てから避けて済むなら全てかわしてきた。なんとなく当たったら負けのような気がしたからだ。当たっても無傷だけど。あたしは大きくバックステップし、距離を離した。
しかしカーヴァインは距離を詰めた。このあたしさえも避ける為に距離を取ったのに避けながら距離を詰めていく。そして一閃……巨漢の戦士の首と胴は亡き別れになった。
あたしは自分の力を少しでも超える奴をこの世界でまだ見たことがなかったので興奮がピークに達した。それが甘さだった。背後から忍び寄ってきたアサシンに毒針を刺されそうになった。避ける力を利用してケリを入れ体勢が崩れたアサシンの体にビリケンを当てた。相手は一瞬で気絶した。
それを見たカーヴァインが言った。
「何故殺さない? また起きたら攻撃してくるかもしれんのだぞ?」
「あたしは根っからの悪だと思ったものしか殺したりはしてないんだ」
「その甘さ致命的な弱点になるぞ……私が即死魔法をかけられそうになって、それが相手を倒す唯一のチャンスだったらお前はどうするのだ? ローズマリーよ……」
「あんたの盾になる!」ダチ公は必ず守るそれがあたしの信念だ。
「もっと冷徹になれ! ローズマリーよ。お前はまだ目の前で成す術もなく大切な仲間や友人が死んだりしたことを経験していないだろう。だから甘いのだ」
「あんたもあたしのダチ公だから言わせてもらう……あたしは死んでもダチ公を見捨てない」
「……ふ……ふはははは! そこまではっきりと言うとはな……逆に天晴だな」
中央区ロンドスの門が見えてきた。あとは、この霧の都市ダースレイクの主人からいかに『鍵』を奪えるかが重要だ。
1人はこの世界では最強の剣士と謳われている魔剣士カーヴァイン、もう1人は魔法を使わずともモンスターを両手の拳で理不尽に虐殺する鬼畜賢者。このコンビのことを聞いたら、魔王対策で密に連携をとっている各国の王族は卒倒してしまうだろう。
「お前はただのヒュームではないと私は思っている。私の魔眼をもってしても分からぬ加護が理不尽なまでにかかっている」先日ゴブリンの村でもらったゴブリンの火酒ゴブリッシュの13年物の大吟醸を飲み干しへべれけになり仮面が外れたカーヴァインは普通に話すようになった。
「あたしもスキル鑑定士の能力で自分を見ても文字だらけでウザったいだけなんだよね。逆に呪いなんじゃないかと思えてくるよ」
「お前には勝てんな、ローズマリー」初めてちゃんと名前で呼んでくれたんじゃなかろうか? ローズマリーは純粋に嬉しかった。コイツとは良いダチ公になれそうだ。
「だが、お前はこの世界での戦闘回数が少なすぎる『原初』と戦うにはそれがネックだと思っている」
「そだね。カーヴァインは数千年も生きているから経験値で言ったら比べようが無いよね」
「しかしユニークスキル【未来予知】などと聞いたこともなかった。やはりこのまま進むべきだと感じるのか?」
「うん……あたしの感覚では魔王は倒せるんだ。だけどそれはここの主に会わないといけないって気がするんだ」
「分かった、私たちは今から運命共同体だな」
「短く言えば仲間って言うんだよ」
2人は蒸気街区ゲンガを歩いていた。ここは他の区よりも魔霧の濃さが高い。それだけに集まっているのは強者だらけだ。筋肉隆々のヒュームの武闘家、魔法使いとみられる老ダークエルフ、素性のしれぬ甲冑を着た戦士……。グリムズガーデンではこの程度は当たり前のレベルらしいがどいつもこいつも外の国に出たら一騎当千の戦士達だろう。だがローズマリーの価値観は狂っている。
「どいつもこいつもマスクばっかで大した奴がいないねえ」
「大口……いや正直すぎるぞ、ローズマリーよ」
「そうだね。口は禍の元って言うしね」
「なんだそれは……?」
「あたしのいた世界でのことわざだよ。下手なことを言うと厄介ごとに巻き込まれるって意味……さ」
さっきまでいた連中がこちらを追いかけ始めた。2人は全力で走り屋根の上に跳びあがった。そして屋根伝いに中央区ロンドスへの門を目指した。
「なんで連中襲おうとしてきたんだろう?」
「ヒュームに、エルフ、ドワーフの人間族や魔族は倒すとそれだけ高い魔力が得られるのだ。そして間抜けな私とお前はマスクをつけ忘れていた。だから倒せば高い魔力が得られると見込まれて襲われそうになったのだろう」
「この国でまともな場所は森の中とゴブリンの村くらいだな」
「同感だな……」
「それにしても何故『原初』を封滅しようと思ったんだい?」
「それは奴に会ったときにわかるだろう」
「勿体ぶっちゃってケチ」
「男には二言は無きものと心得ている」侍精神かよ?良く分からんがなどと気をそれせていると突然太陽の光が消えた。
ズドーン大きな爆風とふっ飛ばされた2人は混乱して何が起きたのか分からなかった。
「奴がこの蒸気街区ゲンガのまとめ役と見た。名を名乗れ!大男よ!」
重い筈のフルプレートアーマーをつけ、そして人間2,3人なら軽く潰せそうなハンマーには雷が纏わりついているそいつは名前も名乗らず次の行動に出た。地奔る雷の広範囲魔法グラウンドサンダーだ。多分持っているハンマーに特殊なスキルが付いているんだろう……。あたしはこの世界に来てから避けて済むなら全てかわしてきた。なんとなく当たったら負けのような気がしたからだ。当たっても無傷だけど。あたしは大きくバックステップし、距離を離した。
しかしカーヴァインは距離を詰めた。このあたしさえも避ける為に距離を取ったのに避けながら距離を詰めていく。そして一閃……巨漢の戦士の首と胴は亡き別れになった。
あたしは自分の力を少しでも超える奴をこの世界でまだ見たことがなかったので興奮がピークに達した。それが甘さだった。背後から忍び寄ってきたアサシンに毒針を刺されそうになった。避ける力を利用してケリを入れ体勢が崩れたアサシンの体にビリケンを当てた。相手は一瞬で気絶した。
それを見たカーヴァインが言った。
「何故殺さない? また起きたら攻撃してくるかもしれんのだぞ?」
「あたしは根っからの悪だと思ったものしか殺したりはしてないんだ」
「その甘さ致命的な弱点になるぞ……私が即死魔法をかけられそうになって、それが相手を倒す唯一のチャンスだったらお前はどうするのだ? ローズマリーよ……」
「あんたの盾になる!」ダチ公は必ず守るそれがあたしの信念だ。
「もっと冷徹になれ! ローズマリーよ。お前はまだ目の前で成す術もなく大切な仲間や友人が死んだりしたことを経験していないだろう。だから甘いのだ」
「あんたもあたしのダチ公だから言わせてもらう……あたしは死んでもダチ公を見捨てない」
「……ふ……ふはははは! そこまではっきりと言うとはな……逆に天晴だな」
中央区ロンドスの門が見えてきた。あとは、この霧の都市ダースレイクの主人からいかに『鍵』を奪えるかが重要だ。
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