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【第4章理不尽賢者と魔導皇国グリムズガーデン】
【理不尽賢者と魔剣士Ⅳ】
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ローズマリーは塔の上に立ち都市を見ていた。ここは魔導工房都市ラサリエス。城のような大きさの歯車が回り、そこから大小様々な歯車が回っていて、所々で煙が出ている。暁に照らされた魔導工房都市ラサリエスは美しかった。
「誰もが初めて見るとそんな調子になるのだ。ここまでのスケールの大きさの工房都市はシンダリア帝国さえ持ち合わせてはいなかった。まあ、シンダリア帝国の工房都市ロートレックは今は魔樹の森に取り込まれて見る影もないがな……。」
ポツンとカーヴァインは独り言を言った。こいつは色々不憫な奴なんだろうなとローズマリーは察した。
「まあ、若いあたしが言うのもなんだけれど、過去に縛られ過ぎるなよ。明るく考えていれば良い未来がやって来るさ」
「明るく考える……か。確かにそうかもしれないな。俺は未来に否定的な気持ちしか持っていないかもしれんな」
「じゃ、そろそろ飯にいこう」
「そうだな。燕麦パンも食べ飽きていたところだ。ちなみに聞くが貴様はこの国の金は持っているのか?」
「ぎゃひー、すっかり忘れていた。両替商とかいないよね?」
「無論だ。この国にはそもそも貨幣がない。代わりに魔力を捧げるのだ」
「そうなのか……」
「ではこの国の飯を存分に味わうが良い」
眠り羊のステーキとグリムズキャベツのスープを食べた。ローズマリーは久々にまともな食事をしご満悦の様子であった。
対照的にカーヴァインは食事を最低限度までしかとらなかった。
「食べないのか? 魔力切れたら大変だぞ?」
「私は貴様らとは違い。始祖から産まれた古エルフ族のハーフ、貴様と同じで魔力は使いきれないほどあるのだ」
「でももっと人生は楽しむべきだとあたしは思うよ」
「それは貴様ら貧弱なヒュームの考え方だ。俺は快楽を過剰に求めるのは好きではない」
「堅物だなー。ノバクの街で読んだ本だと、誰にでも優しく朗らかだって書いてあったけどな」
「過去のことだ。あまり詮索されるのは好きではない」
「わーったよ」
これから先もこんな調子だとこっちが参っちゃいそうだな。何とか弱味の1つでも握れないだろうか?
「外に出てくる。荷物には触るなよ」
「はいはーい、いってらー」
ローズマリーはカーヴァインの荷物を漁った。すると出てきたのは日記と指輪だけだった。ローズマリーは日記を読み始めた。内容はキッカ草が花をつけ綺麗だから来年またリントの街に来ようと言うような内容や村人の幼子をあやしてやり笑顔が可愛らしかったなどとおよそあの反応からは考えられない日記だった。そして指輪をつかもうとしたら、カーヴァインが丁度帰ってきた。
「よせ! それに触れるな!」しかし、時すでに遅くローズマリーは指輪をつけていた。変な感覚が起きた。まるで自分の中の大切なものが奪われていくような気がした。そしてローズマリーは人生で初めて気絶した。
「う……ん、あたしはどうにかなっちまったのか?」
「この指輪はつけた者の魔力を半分奪い取る魔法道具だ」
「急に目眩がしたのはそのせいか?」
「だるいとか虚無感はないか?」
「いや全くもって元気だよ」
「貴様と俺とでは潜在的な魔力の大きさの桁が大幅に違うようだな……」
「あの指輪で何をするつもりだったんだ?」
「『原初』から魔力を奪うつもりだった。だがこの指輪か機能を回復するには50年はかかる。今回は出直しだな……!」
「あんたが帰ってもあたしは行くよ」
「無茶だ。我々の『原初』だぞ、どんな力を持っているかわからんのだぞ?」
「あたしのスキル【未来予知】で合間見えるって分かるのさ。どうやらその後じゃないと魔王をぶち殺すのは無理らしい」
「だからあんた抜きでもいくよ。魔王をぶち殺さないと大切な人達に会えないんだ」
「……ふん。良いだろう。ついていってやる。ところでどこにいるのかは分かっているのか?」
「いや全く分かんない」
「阿呆なのか器がデカいのかよくわからん奴だな貴様は。大魔皇宮グリムズエルデンに奴はいる」
一晩ラサリエスに泊まり次の街ノースマンサに向かった。カーヴァインの話によると次に新月になるまでにグリムズエルデンにたどり着かないとまた最初の街からスタートになってしまうらしい。
「誰もが初めて見るとそんな調子になるのだ。ここまでのスケールの大きさの工房都市はシンダリア帝国さえ持ち合わせてはいなかった。まあ、シンダリア帝国の工房都市ロートレックは今は魔樹の森に取り込まれて見る影もないがな……。」
ポツンとカーヴァインは独り言を言った。こいつは色々不憫な奴なんだろうなとローズマリーは察した。
「まあ、若いあたしが言うのもなんだけれど、過去に縛られ過ぎるなよ。明るく考えていれば良い未来がやって来るさ」
「明るく考える……か。確かにそうかもしれないな。俺は未来に否定的な気持ちしか持っていないかもしれんな」
「じゃ、そろそろ飯にいこう」
「そうだな。燕麦パンも食べ飽きていたところだ。ちなみに聞くが貴様はこの国の金は持っているのか?」
「ぎゃひー、すっかり忘れていた。両替商とかいないよね?」
「無論だ。この国にはそもそも貨幣がない。代わりに魔力を捧げるのだ」
「そうなのか……」
「ではこの国の飯を存分に味わうが良い」
眠り羊のステーキとグリムズキャベツのスープを食べた。ローズマリーは久々にまともな食事をしご満悦の様子であった。
対照的にカーヴァインは食事を最低限度までしかとらなかった。
「食べないのか? 魔力切れたら大変だぞ?」
「私は貴様らとは違い。始祖から産まれた古エルフ族のハーフ、貴様と同じで魔力は使いきれないほどあるのだ」
「でももっと人生は楽しむべきだとあたしは思うよ」
「それは貴様ら貧弱なヒュームの考え方だ。俺は快楽を過剰に求めるのは好きではない」
「堅物だなー。ノバクの街で読んだ本だと、誰にでも優しく朗らかだって書いてあったけどな」
「過去のことだ。あまり詮索されるのは好きではない」
「わーったよ」
これから先もこんな調子だとこっちが参っちゃいそうだな。何とか弱味の1つでも握れないだろうか?
「外に出てくる。荷物には触るなよ」
「はいはーい、いってらー」
ローズマリーはカーヴァインの荷物を漁った。すると出てきたのは日記と指輪だけだった。ローズマリーは日記を読み始めた。内容はキッカ草が花をつけ綺麗だから来年またリントの街に来ようと言うような内容や村人の幼子をあやしてやり笑顔が可愛らしかったなどとおよそあの反応からは考えられない日記だった。そして指輪をつかもうとしたら、カーヴァインが丁度帰ってきた。
「よせ! それに触れるな!」しかし、時すでに遅くローズマリーは指輪をつけていた。変な感覚が起きた。まるで自分の中の大切なものが奪われていくような気がした。そしてローズマリーは人生で初めて気絶した。
「う……ん、あたしはどうにかなっちまったのか?」
「この指輪はつけた者の魔力を半分奪い取る魔法道具だ」
「急に目眩がしたのはそのせいか?」
「だるいとか虚無感はないか?」
「いや全くもって元気だよ」
「貴様と俺とでは潜在的な魔力の大きさの桁が大幅に違うようだな……」
「あの指輪で何をするつもりだったんだ?」
「『原初』から魔力を奪うつもりだった。だがこの指輪か機能を回復するには50年はかかる。今回は出直しだな……!」
「あんたが帰ってもあたしは行くよ」
「無茶だ。我々の『原初』だぞ、どんな力を持っているかわからんのだぞ?」
「あたしのスキル【未来予知】で合間見えるって分かるのさ。どうやらその後じゃないと魔王をぶち殺すのは無理らしい」
「だからあんた抜きでもいくよ。魔王をぶち殺さないと大切な人達に会えないんだ」
「……ふん。良いだろう。ついていってやる。ところでどこにいるのかは分かっているのか?」
「いや全く分かんない」
「阿呆なのか器がデカいのかよくわからん奴だな貴様は。大魔皇宮グリムズエルデンに奴はいる」
一晩ラサリエスに泊まり次の街ノースマンサに向かった。カーヴァインの話によると次に新月になるまでにグリムズエルデンにたどり着かないとまた最初の街からスタートになってしまうらしい。
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