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【第4章理不尽賢者と魔導皇国グリムズガーデン】

【理不尽賢者とカイザードラゴンⅣ】

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「う……む。寝ていたのか……」カイザードラゴンは起き上がり異変に気が付いた懐に抱いている筈の卵が無いのだ。

「卵はどこだ? ワタクシの卵は!!」

「キーキー」と鳴く声が聞こえるまさか……。

「おい! カイザードラゴンよ、お前の赤ちゃん、ちゃんと生まれたみたいだぞ」小さな龍の幼体がカイザードラゴンに擦りよってくる。

『良かった。無事に生まれて』

『そうだな良かったな。お前が寝っ転がっている時にあたしの魔力をほんの少し分けたらすぐに孵化したよ』

『お前いつの間に念話を覚えたのだ。しかもほんの少しとは! 私があと1万年は魔力を分け与えなければ孵化するはずがないのに』

『あたしの感覚ではほんの少しだね。あたしはあんたの気配を前から感じてたけれどちょっとは強そうだと思っていたから残念だよ』

『で、お願いがあるんだけれど良いかい?』

『なんだ。言ってみろ。こちらにとっては我が子が無事生まれた恩がある』

『さっきの奴隷の印の話を他の3人には言わないで欲しいんだ。あと私には魔王をぶち殺す使命があるから、これでさよならだ』

『たったそれだけで良いのか、ふん。ワタクシにもプライドがある。貴様らにはこれをくれてやろう』

 カイザードラゴンは自らの爪で体から数枚の鱗を渡してきた。セレーナが傅き他の3人もそれに倣った。

「……これは吾輩を打ち倒した証だ。一流の腕を持つ職人に渡せば、アダマンタイトよりも固く鳥の羽根よりも軽い鎧が作れるだろう……」

「……そしてエルフの3人組よ……お主らには更なる褒美をやろう」

カイザードラゴンが光り輝き始めた。どんどんちいさくなっていくそして人型の姿になった。

「……ワタクシとこれから修行をしてもらおう……」

「「「え?」」」

「貴様らとローズマリーとでは力の差があり過ぎる。これから先旅を続けても足手まといにしかならぬぞ」

「そ、それはそうだけど……唐突過ぎてなんて言ったら良いのか分からないぜ」

「相棒の意見に賛成だ。話が飲み込めん」

「魔王はワタクシよりも強いぞ。ワタクシと3対1で勝負をし勝てるまで稽古をつけてやる」

「私たちを魔王と互角まで行かなくても足元を脅かすぐらいの力を持たせてくださるってことね」

「その通りだ」



 3人はローズマリーの方を不安げに見た。ローズマリーはずっと黙ったままだった。ローズマリーは考えていた。

 ダチ公が魔王と戦うとなった時、犠牲になったりしたら自分はどう思うだろう。そのまま使命とやらが果たされて元の世界に戻れてもこの世界のダチ公が死んでいなくなってしまうようではあたしは自分を許すことができないだろう。よしここはカイザードラゴンの意見に賛成しよう。少なからず後ろ髪を引かれる気分はあったが、これもこいつらの為ローズマリーは敢えてにこやかに言った。



「はっはっはっはっは、お前たち良い機会じゃないか……精々頑張ってあたしのことをあっと驚かせてみるんだね」その時自然に頬を涙が濡らした。急いで拭くが止まらない。

「まったくバカなんだから寂しいなら寂しいって言いなさいよ。バカ賢者!」セレーナも涙ぐみながらローズマリーを抱きしめた。他の2人もやってきた。



「無理すんなよ、大賢者でも喧嘩が強くても女なんだからな」

「ふっ、永遠の別れではないのだ。強くなりお前を驚かせてやろう」

「うるさいぞ、2人共。さっさと強くなってくれよ。お前らダチ公とはたった数ヶ月の仲だったけれど絶対に迎えに来るからな」



 カイザードラゴンが手を合わせて音を出した何もない空間から2つの銀色の結晶が地面に転がった。

 「これは『龍結晶』1つを砕けばもう1つも砕ける。訓練が終わったらこれを砕く。それが再開の合図だ。そしてその間はローズマリーよ、ワタクシの鱗を加工できる職人を探すが良い」

「でも当てがないぞ。あたしはこの世界のことあまり詳しくは知らないし……」

「仕方がない……ワタクシがお前に秘められし能力を引き出してやろう」



 そう言ってカイザードラゴンはローズマリーの額を指で押した。ローズマリーは暗い洞窟の中で一滴の光る雫が落ち周りが明るくなるような幻を見た。



『一体何をしたんだよ』ローズマリーは今までとは何か根本的に自分が違ってしまったことを自覚した。

『お前の勘いや【未来予知】のスキルを完全覚醒させたのだ』

『あたしが感じてたのは気配じゃなくていずれは会う相手だったてことか?』

『その通りだ。そしてお主は魔王の前に会わなければならない相手が分かる筈だ』

『南のグリムズガーデン皇国に行かなければならないのか。でもこの感覚ずっと続いたら気が変になっちまいそうだ』カイザードラゴンは指先をまたローズマリーの額に当てた。



 心が鎮まっていく。心拍数が上がっていたのが元に戻っていく。もう一度あの幻覚を見た。



『ふうー分かったよ。これで何とか【未来予知】のスキルを制御できそうだ』

「じゃあお前ら早く腕を上げろよ。それまで待っているからな」

「おう! またなダチ公」

「すぐに連絡するからな」

「危ないことしちゃだめだからね」



手を振り全力で飛空船に向かった。涙が溢れてくるからだ。それらを振り切ってローズマリーは飛空船に乗り込んだ。

「またな、ダチ公」龍結晶をしまうと全速力で飛空船を南に向けた。

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