上 下
63 / 92
【第4章理不尽賢者と魔導皇国グリムズガーデン】

【理不尽賢者とカイザードラゴンⅢ】

しおりを挟む
「この突然の突風ローズマリーが怒ったんじゃない?」セレーナが心配そうに言う。

「逆かもしれないぜ、ローズマリーがカイザードラゴンを怒らせたのかもしれない」

「ふっ、その可能性は大いにあるな。何せオルケイアでも国王に溜口、そして不敬な態度をとっていたらな」

「どちらにせよ、心配だわ……」セレーナは神に祈った。どうかローズマリーが無事で帰ってきますようにと。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……こ、これはこんな莫大な魔力を纏っているとは……!」カイザードラゴンは明らかに狼狽している。しかしそんなことも関係なしにローズマリーは魔力を全身に込めていた。

「うおおおぉぉぉ!」

 バリバリと電流が流れローズマリは黄金色のオーラを纏った。カイザードラゴンの足がズルズルと地面を擦ってローズマリーに引き寄せられていく。

「くっ、では死ぬが良い!グワハーーッ」カイザードラゴンは灼熱のブレスをを吐きだし

 しかし、ローズマリーには火傷の跡すら見えない。

「ならば、これでどうだ!」尻尾による凪払いだこれで崖から地上まで落ちて死ぬだろうとカイザードラゴンは思ったがローズマリーの位置は全く変わっていない。というか尻尾の凪払いを片手で受け止めている。

「……わ、分かった降参だ! 吾輩の先ほどの言葉は取消す。どうか怒りを鎮めてくれ……」

 フッとローズマリーは暴走しかけ魔力を抑え込んだ。

「最初から分かればいいんだよ。それに、あんた『吾輩』じゃないだろう?」

「何? どうしてそれが分かったのだ」

「大切な卵を抱えているんだろう? だから自由に動けない違うか?」

「貴様も魔王と同じでワタクシの子を奪おうと言うのか!」

「違う! 違う! あたしはこの世界の過去のことを知りたいだけなんだよ」

「具体的には何千年前なのだ。古代シンダリア帝国のことか?」

「オルケイア国のことだよ。一体誰が作ったのかなって不思議に思っていたんだ? あたしと同じ異世界からの民だろ?」

「『原初』から別れし種族の国は多い、オルケイアと言われてもワタクシにも分からぬことは多いのだ。何か分かりやすい手がかりはないのか?」

「そうだな……あ、あれだ!」

 ローズマリーは絵をかき始めた。勿論『大賢者の杖』を使ってだ。カイザードラゴンはにも分かりやすいように元の世界の一軒家くらいの大きさで絵を描いた。



「どうだ? このシンボルを旗にしている国だ。何か知らないか?」

「ワタクシにはこれは国のシンボルとは言えぬ。これは奴隷の証だ」

「え? どういうことだよ、これは『原初』の種族から6つの種族が生まれたって言う平等の証だって王様は言ってたぞ」

「多分何処かで話が捻じ曲げられたのであろう。『原初』は6つの種族をすべからく奴隷としていたらしい」

「らしいってことは、アンタもまだ生まれる前ってことか!」

「その前に……そこに隠れている者たちよ、姿を現せ!」

 手を上げてエンデュミオン達が現れた。

「エルフ族の戦士か? 見たところどれも若造……お主の足手まといにしかならぬだろう。下僕か従者か?」

「あ、あたしのダチ公を下僕扱いすんな――!」

 つい軽く殴ってしまった。カイザードラゴンの横っ面にもろにクリーンヒットした。

 他の3人は口をあんぐりと開けて驚いていた。

 カイザードラゴンは「グヒン」と鳴くと力なく首が倒れた。さっきの珍妙呼ばわりでストレスが溜まっていたからな……でも本気で殴らなくて良かったとローズマリーは思った。



 カイザードラゴンが目を覚ますまでには数時間を要した。その間セレーナやルーンベルトにお説教を喰らった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門
ファンタジー
宇宙の崩壊と共に、別宇宙の神々によって魂の選別(ドラフト)が行われた。 野球ゲームの育成モードで遊ぶことしか趣味がなかった底辺労働者の男は、野球によって世界の覇権が決定される宇宙へと記憶を保ったまま転生させられる。 その宇宙の神は、自分の趣味を優先して伝説的大リーガーの魂をかき集めた後で、国家間のバランスが完全崩壊する未来しかないことに気づいて焦っていた。野球狂いのその神は、世界の均衡を保つため、ステータスのマニュアル操作などの特典を主人公に与えて送り出したのだが……。 果たして運動不足の野球ゲーマーは、マニュアル育成の力で世界最強のベースボールチームに打ち勝つことができるのか!? ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

スナッチ ボクに魔力はありません 王都学院の異端児

hakusuya
ファンタジー
 コーネル家唯一の男子として生まれたロアルドには生まれつき魔法の才がなかった。使える魔法なし、魔力ゼロ。あるのは意味不明の特性「スナッチ」。その卑怯なチートスキルは温厚で聡明なロアルドだから許されたものだった。  十二歳になったロアルドは父のコネで、三人の優秀な姉が通う王都学院に進学する。 「どろぼうだなんて、ちょっと借りるだけです」  そんなセリフを何度も口にすることになろうとは思いもしなかった。

そして、アドレーヌは眠る。

緋島礼桜
ファンタジー
長く続いた大戦、それにより腐りきった大地と生命を『奇跡の力』で蘇らせ終戦へと導いた女王――アドレーヌ・エナ・リンクス。 彼女はその偉業と引き換えに長い眠りについてしまいました。彼女を称え、崇め、祀った人々は彼女の名が付けられた新たな王国を創りました。 眠り続けるアドレーヌ。そこに生きる者たちによって受け継がれていく物語―――そして、辿りつく真実と結末。 これは、およそ千年続いたアドレーヌ王国の、始まりと終わりの物語です。 *あらすじ* ~第一篇~ かつての大戦により鉄くずと化し投棄された負の遺産『兵器』を回収する者たち―――狩人(ハンター)。 それを生業とし、娘と共に旅をするアーサガ・トルトはその活躍ぶりから『漆黒の弾丸』と呼ばれていた。 そんな彼はとある噂を切っ掛けに、想い人と娘の絆が揺れ動くことになる―――。 ~第二篇~ アドレーヌ女王の血を継ぐ王族エミレス・ノト・リンクス王女は王国東方の街ノーテルの屋敷で暮らしていた。 中肉中背、そばかすに見た目も地味…そんな引け目から人前を避けてきた彼女はある日、とある男性と出会う。 それが、彼女の過去と未来に関わる大切な恋愛となっていく―――。 ~第三篇~ かつての反乱により一斉排除の対象とされ、長い年月虐げられ続けているイニム…ネフ族。 『ネフ狩り』と呼ばれる駆逐行為は隠れ里にて暮らしていた青年キ・シエの全てを奪っていった。 愛する者、腕、両目を失った彼は名も一族の誇りすらも捨て、復讐に呑まれていく―――。 ~第四篇~ 最南端の村で暮らすソラはいつものように兄のお使いに王都へ行った帰り、謎の男二人組に襲われる。 辛くも通りすがりの旅人に助けられるが、その男もまた全身黒尽くめに口紅を塗った奇抜な出で立ちで…。 この出会いをきっかけに彼女の日常は一変し歴史を覆すような大事件へと巻き込まれていく―――。 * *2020年まで某サイトで投稿していたものですがサイト閉鎖に伴い、加筆修正して完結を目標に再投稿したいと思います。 *他小説家になろう、アルファポリスでも投稿しています。 *毎週、火・金曜日に更新を予定しています。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

転生幼女は魔王様のペットになります

睦月
ファンタジー
苦学生の柴田恵理奈は、ある時目覚めると異世界にいた。狼に襲われ瀕死の状態を魔王に救われ、恵理奈改めリナは魔王のペットとして生きる道を選ぶ。

貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。 ※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。 ※2020-01-16より執筆開始。

処理中です...