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【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】
【理不尽賢者とその舎弟Ⅹ】
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「クリフト様、お帰りなさいませ」福侍従長のヘンネルが心底嬉しいと言った顔で出迎えた。
「王宮の様子はどうだ、ヘンネル?」
「日が経つごとに影が広がっていくような寒々とした感じです。特に王がワタクシを除いてメイドさえも近づけないでいるので不安でなりません。半年前、倒れられてから様子がおかしいような気がしてなりません」
「僕もそう思う。兄アザリスが獣人族弾圧政策を叫び始めたのもその頃だ。僕の兄ローレンヌはアザリスに殺されたのだと思っている」
「なんと! アザリス様は気性が荒く大変気難しいお方ですが、そこまでするでしょうか?」
「現に僕は何度か刺客とやり合っている。ロレンツィオ叔父様が兵を貸してくれなかったら打ち首にされていただろう……ローレンヌ兄さんと侍従長を殺したという罪で」
「兎に角王の間へとお急ぎください。王侯貴族の御方々が聖女様を見ようと待っています」
「分かった、またね、ヘンネル」
「はい、クリフト様」にこやかに手を振りクリフトと同じ20代くらいの女性が走り去っていった。
「おい! 舎弟? 今の女は誰だ?」あの歳で副侍従長? 凄すぎだろ。
「はいっ! 僕の幼馴染です。乳母兄妹と言う関係です。昔はよくイジメられて泣かされたものです」
「おいおい、クリフト隅に置けねえな」と気安く肩を組もうとするエンデュミオンをセレーナが制した。
「やめなさい! ここは魔の入り口だってクリフトがさっき言っていたじゃない? ふざけるのも大概にしなさい!」
「すまん、つい暗い雰囲気だからよ。この王宮ってのは……」
「2人共お気遣いありがとう。ではここの部屋でお待ちください、僕は服を着替えてきますから」
応接間なのだろうがバカに広い100人は入れそうだ。調度品も豪奢なものばかりで椅子さえも金貨単位の代物だなとローズマリーは大商人のスキル【鑑定】を使って調べた。
数分後マントを纏った別人のように変わったクリフトが現れた。まるで本物の王子様みたいだとローズマリーは舎弟の身分を忘れ考えていた。
「おい! 舎弟、お前そっちの方が似合ってるぞ」と言うとクリフトは肩を落とした。
「はあ、やはり僕は冒険者向きではないのかな……」
「あ、違うな。ごめん、冒険者も様にはなっていたけど、そっちの方が自然体だなって意味だ」
「僕が冒険者の真似事をしたのはこの1ヶ月です。それは嬉しいですね」クリフトの顔から笑みがこぼれる。
「てか野宿はどうしてたんだよ? ラーベンナの街に来る間一人だったのか?」
「いえ……それは……」言いかける前にドーンとドアが開いた。そして紳士服を纏った巨漢が現れた。
「クリフト様ー!!」巨漢の紳士はクリフトが大きな人形に見えるほどデカかった。
「ゴリアテ、客人の前だ! よさないか!」
「し、しかし……拙はラーベンナまでクリフト様をお送りさせていただいた後も心配でしょうがなかったのです!」ゴリアテは穴と言う穴から汁を振りまき泣いていた。そうか、この大男がお供をしていたということか……。
「この方はローズマリー様、噂の聖女様だ。約束しただろう、聖女様を連れて必ず帰ってくると」
「では! そこにいるエルフの方が聖女様なのですか?」
「違うよ、僕の横の赤毛のポニーテールの方が聖女様だよ」
大男はローズマリーの手を掴みぶんぶんと力任せに握った。ローズマリーは面倒くさそうに相手をしてやった。
「この王宮で今何が起きているんだ? ズバッと解決してやるから、教えろよ。えと……ゴリラのおっさん」
「おお! その格好良い上着。聖女様は宮廷のつまらない噂よりも気高い御方なのですね」おお! この世界で初めてこの特攻服の良さが分かる人間にあったぞ。ローズマリーはゴリアテの評価を180度変えた。
「何言ってんだよ! この珍妙な……アババババ」ローズマリーはエンデュミオンの肩に触れビリケンを発動させた。
「何と不思議な技をお使いになさる……。それにこの幾つもの修羅場を生き残った狼のような気配、あなたはただの聖女様じゃありませんね」勘の良いオヤジだ。あたしのことを警戒している……そうか、コイツはクリフトの番犬のような存在なんだ。
「そうさあたしは茨城県のトップレディースの総長兼特攻隊長さ!」ローズマリーとゴリアテを除いて皆ポカンとした顔になった。
「おおっ素晴らしい!いばらきけんのれでぃーすと言うのがちょっと分かりませんでしたが、要はリーダー兼切り込み隊長ということですね。なんとまあ気が合うことでしょう。拙も戦場では先駆け一番槍を喰らわしたものです」クリフトが説明に回った。
「ゴリアテは僕の近衛兵隊長なんだ。昔は傭兵のリーダーをやっていて、獣人族たちの英雄だったんだ」
「しかし、前王の親衛隊に捕縛され、今は第一線からは身を引きクリフト様を守る盾に徹しています」
「ゴリアテは謙遜し過ぎだよ。獣人族の女の子を人質に取られて大人しく捕まったんじゃないか」
「それはその……。はっ!そういえば忘れていました。王が皆様をお待ちです」途端に暗い顔になった。
やはり何か良くないものが潜んでいるようだ。ローズマリーの第六感は冴えに冴えていた。
こうしてオルケイア国第三王子クリフトはローズマリー達と王の間へ向かうことになった。
「王宮の様子はどうだ、ヘンネル?」
「日が経つごとに影が広がっていくような寒々とした感じです。特に王がワタクシを除いてメイドさえも近づけないでいるので不安でなりません。半年前、倒れられてから様子がおかしいような気がしてなりません」
「僕もそう思う。兄アザリスが獣人族弾圧政策を叫び始めたのもその頃だ。僕の兄ローレンヌはアザリスに殺されたのだと思っている」
「なんと! アザリス様は気性が荒く大変気難しいお方ですが、そこまでするでしょうか?」
「現に僕は何度か刺客とやり合っている。ロレンツィオ叔父様が兵を貸してくれなかったら打ち首にされていただろう……ローレンヌ兄さんと侍従長を殺したという罪で」
「兎に角王の間へとお急ぎください。王侯貴族の御方々が聖女様を見ようと待っています」
「分かった、またね、ヘンネル」
「はい、クリフト様」にこやかに手を振りクリフトと同じ20代くらいの女性が走り去っていった。
「おい! 舎弟? 今の女は誰だ?」あの歳で副侍従長? 凄すぎだろ。
「はいっ! 僕の幼馴染です。乳母兄妹と言う関係です。昔はよくイジメられて泣かされたものです」
「おいおい、クリフト隅に置けねえな」と気安く肩を組もうとするエンデュミオンをセレーナが制した。
「やめなさい! ここは魔の入り口だってクリフトがさっき言っていたじゃない? ふざけるのも大概にしなさい!」
「すまん、つい暗い雰囲気だからよ。この王宮ってのは……」
「2人共お気遣いありがとう。ではここの部屋でお待ちください、僕は服を着替えてきますから」
応接間なのだろうがバカに広い100人は入れそうだ。調度品も豪奢なものばかりで椅子さえも金貨単位の代物だなとローズマリーは大商人のスキル【鑑定】を使って調べた。
数分後マントを纏った別人のように変わったクリフトが現れた。まるで本物の王子様みたいだとローズマリーは舎弟の身分を忘れ考えていた。
「おい! 舎弟、お前そっちの方が似合ってるぞ」と言うとクリフトは肩を落とした。
「はあ、やはり僕は冒険者向きではないのかな……」
「あ、違うな。ごめん、冒険者も様にはなっていたけど、そっちの方が自然体だなって意味だ」
「僕が冒険者の真似事をしたのはこの1ヶ月です。それは嬉しいですね」クリフトの顔から笑みがこぼれる。
「てか野宿はどうしてたんだよ? ラーベンナの街に来る間一人だったのか?」
「いえ……それは……」言いかける前にドーンとドアが開いた。そして紳士服を纏った巨漢が現れた。
「クリフト様ー!!」巨漢の紳士はクリフトが大きな人形に見えるほどデカかった。
「ゴリアテ、客人の前だ! よさないか!」
「し、しかし……拙はラーベンナまでクリフト様をお送りさせていただいた後も心配でしょうがなかったのです!」ゴリアテは穴と言う穴から汁を振りまき泣いていた。そうか、この大男がお供をしていたということか……。
「この方はローズマリー様、噂の聖女様だ。約束しただろう、聖女様を連れて必ず帰ってくると」
「では! そこにいるエルフの方が聖女様なのですか?」
「違うよ、僕の横の赤毛のポニーテールの方が聖女様だよ」
大男はローズマリーの手を掴みぶんぶんと力任せに握った。ローズマリーは面倒くさそうに相手をしてやった。
「この王宮で今何が起きているんだ? ズバッと解決してやるから、教えろよ。えと……ゴリラのおっさん」
「おお! その格好良い上着。聖女様は宮廷のつまらない噂よりも気高い御方なのですね」おお! この世界で初めてこの特攻服の良さが分かる人間にあったぞ。ローズマリーはゴリアテの評価を180度変えた。
「何言ってんだよ! この珍妙な……アババババ」ローズマリーはエンデュミオンの肩に触れビリケンを発動させた。
「何と不思議な技をお使いになさる……。それにこの幾つもの修羅場を生き残った狼のような気配、あなたはただの聖女様じゃありませんね」勘の良いオヤジだ。あたしのことを警戒している……そうか、コイツはクリフトの番犬のような存在なんだ。
「そうさあたしは茨城県のトップレディースの総長兼特攻隊長さ!」ローズマリーとゴリアテを除いて皆ポカンとした顔になった。
「おおっ素晴らしい!いばらきけんのれでぃーすと言うのがちょっと分かりませんでしたが、要はリーダー兼切り込み隊長ということですね。なんとまあ気が合うことでしょう。拙も戦場では先駆け一番槍を喰らわしたものです」クリフトが説明に回った。
「ゴリアテは僕の近衛兵隊長なんだ。昔は傭兵のリーダーをやっていて、獣人族たちの英雄だったんだ」
「しかし、前王の親衛隊に捕縛され、今は第一線からは身を引きクリフト様を守る盾に徹しています」
「ゴリアテは謙遜し過ぎだよ。獣人族の女の子を人質に取られて大人しく捕まったんじゃないか」
「それはその……。はっ!そういえば忘れていました。王が皆様をお待ちです」途端に暗い顔になった。
やはり何か良くないものが潜んでいるようだ。ローズマリーの第六感は冴えに冴えていた。
こうしてオルケイア国第三王子クリフトはローズマリー達と王の間へ向かうことになった。
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