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【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】

【理不尽賢者とその舎弟Ⅴ】

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オークションには舎弟の顔パスで入れた。やはりこいつはただのボンボンではないのだろうか? ローズマリーは前から思っていた疑問を確信に変え始めた。ちょっとこいつの行動を注視しておこう。

 オークションの開場にはざっと1000人は超える歴戦の商人たちが溢れていた。ルーンベルトは果たして儲けることができるのだろうか?いや上手くいくはずがない。【鑑定】のスキルさえ持っていないのだ。審美眼がどうとかそんなレベルとは次元が違う。



 オークションの司会者が木製のハンマーを叩いて叫んだ。

「ただ今よりオークションを開始致します。できるだけ静かにお願い致します」

 数人の男たちが運んできたのは真っ白な大理石でてきた筋肉隆々の雷神トールの彫刻だった。ローズマリーが大商人のスキル【鑑定】で見てみると第二期シンダリア帝国製と書いてあった。数千年前の作品だろ。大金貨200枚は軽く超えるだろう。

「さあ皆さんこの雷神トールの彫刻はシンダリア帝国が最も栄えた時代のものです。まずは大金貨50枚からでございます」



「100枚」

「120枚」

「ならば300枚。これでどうだ!」

「1000枚」とすぐそばのルーンベルトが叫んだ。

「何?! 精々300枚でかたがつくと思っていたのにそんな値打ちがあるのか?」



 会場全体に衝撃が走った。そして次々と商品を高値で買っていくルーンベルト。こいつの実家潰れたりしないよな。ローズマリーは心配になってきた。



 オークションの途中で『灰色のマリア像』というのが出された時ローズマリーは驚いた。

 何と! ローズマリーその人のような(胸は違う)商品が出品されていた。これには他の一行も驚いてしまった。



「これは最近北の地方で新たに起こった新興宗教『聖灰教』のご神体だそうです。珍妙な服が斬新ですね。値段は大金貨5枚からです」

「あの司会者後でぶん殴る」

「ローズマリーやらないとは思うけどやっちゃダメだからね」セレーナに言われなかったらやってしまうだろう。あたしも特攻服については誇りがある分貶されるとカッとなりやすい。そろそろ大人にならなければ……。



「2000枚」ルーンベルトが叫んだ。会場にまたもや激震が走った。

 そしてルーンベルトが全ての商品を破格の値段で買い占めた。



「今日のオークションは最低だったな」

「どっかの金持ちが買い漁りやがったからな」

「まあ、良いさ。大損するだろう、ざまあないぜ」



 などと商人連中からたっぷりと恨みを買ったルーンベルトだが、本人はまったくどこ吹く風のようだった。というかご満悦のようで特にホッゴという画家の作品を何度も見ては喜ぶのを繰り返していた。

 呆れた相棒エンデュミオンが言った。



「お前が当主になったらベルファイア家は潰れるな」

「本当にリンデンハイムの四大貴族の方だったのですね」

「ふっ、潰れるものか!我が家には白金貨が山のようにあるのだぞ」

「私のおうきゅ、じゃなかった家にも白金貨は天高くつまれています。まあ、扱えるのはお、じゃなかった父上と長兄だけですけどね」



 港から物品を運ぶ馬車をチャーターし、ルーンベルトのオークションで買った品を運んでもらった。オークションで買った品を保管するためののデカい金庫がある宿屋だ。この街ではそれが当たり前だと言う。

そして夜事件は起きた。



「大変です! 大変ですよお客様! 」その声でローズマリーも皆起きた。

ドアを開けると宿屋のオヤジが汗を垂らしながら事情を説明し始めた。何でも金庫の鍵が開けられルーンベルトの美術品が全て盗まれたというのだ。



「おい、おっちゃん鍵はいつもどこに保管してるんだよ?」

「ああ聖女様、厳重に守られた美術品管理組合の保管庫です。夜の間はわたしも含めて一般人は入る許可が出ません」

そしてこの紙切れのみが残されていました。

『宝はもらいうけた。アルセインより』

「ほら、俺が言ったとおりになったじゃねえか」エンデュミオンが火に油を注ぐ。

「ふ、ふざけるなよ……盗人が……」ルーンベルトがブチキレた。



 こうして謎の剣士クリフトと怪盗探しが始まった。
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