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【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】
【理不尽賢者とその舎弟Ⅲ】
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ローズマリーと3人の仲間と1人の舎弟は次の街華の都リリンツェを目指していた。対モンスター用ゴーレムがあちこちで見られモンスターに遭遇することはなかった。
ただ、これまでのようにローズマリーは駄々をこねることがなかった。
理由は簡単クリフトがウザすぎだからである。ことあるごとにローズマリーを誉め称え、愛の歌を歌う。正直1度プッツンしかけて殴りそうになったほどである。3人に必死で止められたが。
だがローズマリーもクリフトが悪いやつではないことは分かっていた。だから怒りは何とか抑えられた。
「ローズマリー様、私の国の技術力は大したものでしょう?」
「まあなでもゴーレムくらいじゃ驚かないよ。あたしはあれ以上に厄介な相手を倒したからね」
「デススコーピオンのことですか?」
「ああそだよ」
いきなりクリフトは身を縮こませた。そして自分の責任だとでも言うように話し始めた。
「あれは我が国が南の魔導皇国グリムズガデーデンに対抗しようとして造られたもの……私の先祖が行ったこととは言え本当に申し訳なく思っています」
「お前の先祖は技術屋だったのか?」
「えっ……ま、まあそんなところです」
「お前ただの軟派な奴だと思っていたけど筋は通すタイプなんだな。少し感心したよ」
「おおっ!愛する方にそのように誉めていただけるとは嬉しい限りです。愛しの君よ」
「それやめてくんないか? 腹が立つ……と言うか恥ずかしいからさ」
「何をでございましょうか?」やっぱこいつは天然だわ。
「そのあたしを愛してるとかずっと騒ぎ続けることだよ」
「何と!我が愛の言葉ではなく、心の声を聞きたいと言うことですか?」
「黙ってくれるならそれで良いよ」
「分かりました。聖女様」
「その聖女っていうのもやめろって!」
「何故ですか?真実の話でも貴女はレビの村やウルテジナ盗賊団いや護衛団をお癒しになられたではありませんか?」
「まあ、そうだけど……何かイラつくんだよ」
「……僕、じゃなくて、私の配慮の無さをお許しください。ローズマリー様」
「ああ、頼むよ」
それからクリフトは一切誉めちぎるのをやめたのだった。ローズマリーは最初は天然バカかと思ったが、どうやらそうではないようだ。きちんと理由を話したら話は聞くんだなと見方を変えた。それにこいつのおかげで宿をとったり人気の観光名所に並ばずにいられたのだ。感謝しなければな……。しかし夜野宿をするためにキャンプを設置することになった後、またローズマリーの心の中のランキングが下がることになった。
「テントの中に布をしいただけで寝る? 君たちはバカなのかい? 普通なら天幕を作ってベッドで寝るだろう?」
「何を冗談を言ってやがるんだ? そんなの王公貴族くらいだぜ。なぁルーン?」
「ふっ、笑えないジョークだ。俺もリンデンハイムの貴族の端くれ。だが旅をするのに執事やメイドがいては邪魔だろう? それに慣れてしまえば案外寝やすいぞ」
「ぽ、僕は、じゃなかった、私だってそれくらいは知っている。そのただのジョークだ……そうただのな」
「つべこべ言わずキャンプの薪に火をつけろよ、舎弟」
「わ、分かりました。ローズマリー様」
しかしクリフトは薪を全部燃やそうとしたり強すぎる魔法で1日分の薪を燃やしてしまったりと散々だった。こいつは舎弟としてはまだまだだな。ローズマリーは心の中で思った。
深夜ローズマリーが寝ていると叫び声が聞こえた。
「ぼ、僕に近づくな! このモンスターが!」
見ると下半身を濡らしたパジャマ姿のクリフトがヴァイパーファングに丸腰で囲まれている。
やれやれと思いながらローズマリーはヴァイパーファングをすべて拳で血のしぶきに変えた。
「あ、貴女は大賢者様じゃないんですか? 何故こ、拳でモンスターを……倒せるのですか?ぼ、僕が描いていた戦いかたと違う……野蛮すぎる」
「小便垂れてる舎弟に非難される覚えはないね。あたしは基本的に魔法を使わないんだ。何故なら……」ファイアボールとローズマリーは呟いた。すると空高くで炎の塊が爆散し一瞬昼間のように明るくなった。
「最下級魔法でその威力……、強すぎる……ば、化け物じみてる……」
「皆が気づかないうちに服を着替えなよ」ローズマリーは素っ気なく手を振ってテントに戻った。
こうして謎の剣士クリフトの恋心は爆散した。
ただ、これまでのようにローズマリーは駄々をこねることがなかった。
理由は簡単クリフトがウザすぎだからである。ことあるごとにローズマリーを誉め称え、愛の歌を歌う。正直1度プッツンしかけて殴りそうになったほどである。3人に必死で止められたが。
だがローズマリーもクリフトが悪いやつではないことは分かっていた。だから怒りは何とか抑えられた。
「ローズマリー様、私の国の技術力は大したものでしょう?」
「まあなでもゴーレムくらいじゃ驚かないよ。あたしはあれ以上に厄介な相手を倒したからね」
「デススコーピオンのことですか?」
「ああそだよ」
いきなりクリフトは身を縮こませた。そして自分の責任だとでも言うように話し始めた。
「あれは我が国が南の魔導皇国グリムズガデーデンに対抗しようとして造られたもの……私の先祖が行ったこととは言え本当に申し訳なく思っています」
「お前の先祖は技術屋だったのか?」
「えっ……ま、まあそんなところです」
「お前ただの軟派な奴だと思っていたけど筋は通すタイプなんだな。少し感心したよ」
「おおっ!愛する方にそのように誉めていただけるとは嬉しい限りです。愛しの君よ」
「それやめてくんないか? 腹が立つ……と言うか恥ずかしいからさ」
「何をでございましょうか?」やっぱこいつは天然だわ。
「そのあたしを愛してるとかずっと騒ぎ続けることだよ」
「何と!我が愛の言葉ではなく、心の声を聞きたいと言うことですか?」
「黙ってくれるならそれで良いよ」
「分かりました。聖女様」
「その聖女っていうのもやめろって!」
「何故ですか?真実の話でも貴女はレビの村やウルテジナ盗賊団いや護衛団をお癒しになられたではありませんか?」
「まあ、そうだけど……何かイラつくんだよ」
「……僕、じゃなくて、私の配慮の無さをお許しください。ローズマリー様」
「ああ、頼むよ」
それからクリフトは一切誉めちぎるのをやめたのだった。ローズマリーは最初は天然バカかと思ったが、どうやらそうではないようだ。きちんと理由を話したら話は聞くんだなと見方を変えた。それにこいつのおかげで宿をとったり人気の観光名所に並ばずにいられたのだ。感謝しなければな……。しかし夜野宿をするためにキャンプを設置することになった後、またローズマリーの心の中のランキングが下がることになった。
「テントの中に布をしいただけで寝る? 君たちはバカなのかい? 普通なら天幕を作ってベッドで寝るだろう?」
「何を冗談を言ってやがるんだ? そんなの王公貴族くらいだぜ。なぁルーン?」
「ふっ、笑えないジョークだ。俺もリンデンハイムの貴族の端くれ。だが旅をするのに執事やメイドがいては邪魔だろう? それに慣れてしまえば案外寝やすいぞ」
「ぽ、僕は、じゃなかった、私だってそれくらいは知っている。そのただのジョークだ……そうただのな」
「つべこべ言わずキャンプの薪に火をつけろよ、舎弟」
「わ、分かりました。ローズマリー様」
しかしクリフトは薪を全部燃やそうとしたり強すぎる魔法で1日分の薪を燃やしてしまったりと散々だった。こいつは舎弟としてはまだまだだな。ローズマリーは心の中で思った。
深夜ローズマリーが寝ていると叫び声が聞こえた。
「ぼ、僕に近づくな! このモンスターが!」
見ると下半身を濡らしたパジャマ姿のクリフトがヴァイパーファングに丸腰で囲まれている。
やれやれと思いながらローズマリーはヴァイパーファングをすべて拳で血のしぶきに変えた。
「あ、貴女は大賢者様じゃないんですか? 何故こ、拳でモンスターを……倒せるのですか?ぼ、僕が描いていた戦いかたと違う……野蛮すぎる」
「小便垂れてる舎弟に非難される覚えはないね。あたしは基本的に魔法を使わないんだ。何故なら……」ファイアボールとローズマリーは呟いた。すると空高くで炎の塊が爆散し一瞬昼間のように明るくなった。
「最下級魔法でその威力……、強すぎる……ば、化け物じみてる……」
「皆が気づかないうちに服を着替えなよ」ローズマリーは素っ気なく手を振ってテントに戻った。
こうして謎の剣士クリフトの恋心は爆散した。
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