49 / 92
【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】
【理不尽賢者とその舎弟Ⅱ】
しおりを挟む
「クリフト様が奴隷だって! 聞いた?」
「聞いたわ。あの糞聖女なぶり殺しにしてやりたいわ! よくも私のクリフト様を」
「誰が私のクリフト様よ! クリフト様は俺様のものよ」
「黙りなさいこのオカマ! クリフト様はあんたのものじゃないわよ」
「見て見て! クリフト様が船頭みたいに先を歩かされているわ」
「お可哀想に……ぐうの音も出ない鬼畜聖女ね」
なんか街の人からのあたしに対する視線が厳しいような気がするな。このバカ男を舎弟にしてから三日経つが日に日に、店屋や宿屋のオヤジの対応が悪くなっていっている気がする。コイツはやっぱあれだ。疫病神ってヤツだ。早く追い払いたいが……しかし……。
「おおっクリフト様お会いできるとは思いませんでした。この握っていただいた手一生洗いませぬ」道具屋のオヤジが感激して料金を半額にしてくれた。今泊まっている宿屋も一等良い部屋をタダで泊めてくれた。不本意だがこの舎弟は中々利用しがいのある奴だ。ある一点を除けば……。
「ああローズマリー様あなたのその髪まるで英雄神イサリの妻アドリのそれのように美しい」
「あそ……」
「そのつれない所も純粋さを感じ増々惚れ込んでしまいます」
「そか……」
の、ループだ。三日三晩こんな具合だから正直嫌になってしまう。口を開けば「ローズマリー様」「聖女様」と褒め称えるのを連呼してくる。誰か叱ってくれと思うのだが、皆とは打ち解けた様だ。特に仲が良いのがエンデュミオンだ。同じバカ同士共鳴し合っているのか仲良くしている。
「おい、こら。クリフト! のどか沸いたから水もらってこい」邪険に扱ってみても笑顔で承諾し「この辺で一番美味しい井戸の水ですよ」と言ってのける。まるでこちらが悪いことをしているような気にさせられる。何ともつかみどころがない奴だ。
「クリフトよぉ? お前の使ってる居合切りには名前とかあるのか?」
「エンデュミオン、よくぞ聞いてくれた。我が一閃の名は【閃光剣斬】だ」
「おおっ良いネーミングセンスしてやがるじゃねえか? 誰に教わったんだ?」
「このえへ……、じゃなくて……お爺ちゃんから習ったんだよ、じゃなくて、習ったのさ」
「へえまだ生きてるのかい?」
「ああ、わ、私の実家でね」
「家は首都サザールにあるのかい? やっぱ良家のお坊ちゃんなのか?」
「いや一般庶民さ」そう言って髪をかき上げた。
クリフトは3日程滞在したラーベンナの魅力を十分に味合わせてくれた。こんなやつでも舎弟は舎弟、労ってやらねばと思い大衆酒場に連れて行った。ローズマリーは20歳じゃないので飲まないがクリフトは成人しているというのでエールを4人前頼んだ。ローズマリーはミルクを頼んだ。これはいつものことだ。
「これがエールか……?サザールでは葡萄酒しか飲んだことがなかったからなあ」
「本当かよ、クリフト! それ人生半分損しているぜ」
「ふっ、やはり相棒の読みは正しかったようだな。良家のお坊ちゃんというのは正解だろう」
「ぼ、僕は! じゃなかった、私はあまり酒は飲まないから詳しくないだけさ」
「エールは最高だぜ! クリフト! まあ一杯飲んでみろよ」
クリフトは並々と木のジョッキに盛られたエールを口にした。
「ゴホッ、何だこれは! 泥水ではないか⁈」ゴホッゴホッとクリフトはむせた。
「エールはこうやって飲み切った後に美味さが分かるんだぜ」エンデュミオンはお手本のようにジョッキいっぱいのエールを飲み切った。
「プハーッ、生きてるって素晴らしいぜ」
「相棒の言うとおりだ。エールは良いぞ、クリフト」
「でもエンデュミオンみたいに酒が無いと生きていけない人間になっちゃ駄目よ」
「分かった、私も男だ。飲んでみよう」
ゴクゴクと飲み切った。口には泡で髭が付いてる。エンデュミオンが肩を組む。
「どうっだった? なんかスカッとしただろ?」
「確かに……おうきゅ、いや家で飲む葡萄酒とは全く違う新鮮さがある」
「分かってきたじゃないか? 新たな世界への扉が開いたぜ」
「ほら次だ次、漢なら吐くまで飲め!」
……などと騒ぎながら謎の剣士クリフトとの旅は始まるのであった。
「聞いたわ。あの糞聖女なぶり殺しにしてやりたいわ! よくも私のクリフト様を」
「誰が私のクリフト様よ! クリフト様は俺様のものよ」
「黙りなさいこのオカマ! クリフト様はあんたのものじゃないわよ」
「見て見て! クリフト様が船頭みたいに先を歩かされているわ」
「お可哀想に……ぐうの音も出ない鬼畜聖女ね」
なんか街の人からのあたしに対する視線が厳しいような気がするな。このバカ男を舎弟にしてから三日経つが日に日に、店屋や宿屋のオヤジの対応が悪くなっていっている気がする。コイツはやっぱあれだ。疫病神ってヤツだ。早く追い払いたいが……しかし……。
「おおっクリフト様お会いできるとは思いませんでした。この握っていただいた手一生洗いませぬ」道具屋のオヤジが感激して料金を半額にしてくれた。今泊まっている宿屋も一等良い部屋をタダで泊めてくれた。不本意だがこの舎弟は中々利用しがいのある奴だ。ある一点を除けば……。
「ああローズマリー様あなたのその髪まるで英雄神イサリの妻アドリのそれのように美しい」
「あそ……」
「そのつれない所も純粋さを感じ増々惚れ込んでしまいます」
「そか……」
の、ループだ。三日三晩こんな具合だから正直嫌になってしまう。口を開けば「ローズマリー様」「聖女様」と褒め称えるのを連呼してくる。誰か叱ってくれと思うのだが、皆とは打ち解けた様だ。特に仲が良いのがエンデュミオンだ。同じバカ同士共鳴し合っているのか仲良くしている。
「おい、こら。クリフト! のどか沸いたから水もらってこい」邪険に扱ってみても笑顔で承諾し「この辺で一番美味しい井戸の水ですよ」と言ってのける。まるでこちらが悪いことをしているような気にさせられる。何ともつかみどころがない奴だ。
「クリフトよぉ? お前の使ってる居合切りには名前とかあるのか?」
「エンデュミオン、よくぞ聞いてくれた。我が一閃の名は【閃光剣斬】だ」
「おおっ良いネーミングセンスしてやがるじゃねえか? 誰に教わったんだ?」
「このえへ……、じゃなくて……お爺ちゃんから習ったんだよ、じゃなくて、習ったのさ」
「へえまだ生きてるのかい?」
「ああ、わ、私の実家でね」
「家は首都サザールにあるのかい? やっぱ良家のお坊ちゃんなのか?」
「いや一般庶民さ」そう言って髪をかき上げた。
クリフトは3日程滞在したラーベンナの魅力を十分に味合わせてくれた。こんなやつでも舎弟は舎弟、労ってやらねばと思い大衆酒場に連れて行った。ローズマリーは20歳じゃないので飲まないがクリフトは成人しているというのでエールを4人前頼んだ。ローズマリーはミルクを頼んだ。これはいつものことだ。
「これがエールか……?サザールでは葡萄酒しか飲んだことがなかったからなあ」
「本当かよ、クリフト! それ人生半分損しているぜ」
「ふっ、やはり相棒の読みは正しかったようだな。良家のお坊ちゃんというのは正解だろう」
「ぼ、僕は! じゃなかった、私はあまり酒は飲まないから詳しくないだけさ」
「エールは最高だぜ! クリフト! まあ一杯飲んでみろよ」
クリフトは並々と木のジョッキに盛られたエールを口にした。
「ゴホッ、何だこれは! 泥水ではないか⁈」ゴホッゴホッとクリフトはむせた。
「エールはこうやって飲み切った後に美味さが分かるんだぜ」エンデュミオンはお手本のようにジョッキいっぱいのエールを飲み切った。
「プハーッ、生きてるって素晴らしいぜ」
「相棒の言うとおりだ。エールは良いぞ、クリフト」
「でもエンデュミオンみたいに酒が無いと生きていけない人間になっちゃ駄目よ」
「分かった、私も男だ。飲んでみよう」
ゴクゴクと飲み切った。口には泡で髭が付いてる。エンデュミオンが肩を組む。
「どうっだった? なんかスカッとしただろ?」
「確かに……おうきゅ、いや家で飲む葡萄酒とは全く違う新鮮さがある」
「分かってきたじゃないか? 新たな世界への扉が開いたぜ」
「ほら次だ次、漢なら吐くまで飲め!」
……などと騒ぎながら謎の剣士クリフトとの旅は始まるのであった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる