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【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】
【理不尽賢者とその舎弟Ⅱ】
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「クリフト様が奴隷だって! 聞いた?」
「聞いたわ。あの糞聖女なぶり殺しにしてやりたいわ! よくも私のクリフト様を」
「誰が私のクリフト様よ! クリフト様は俺様のものよ」
「黙りなさいこのオカマ! クリフト様はあんたのものじゃないわよ」
「見て見て! クリフト様が船頭みたいに先を歩かされているわ」
「お可哀想に……ぐうの音も出ない鬼畜聖女ね」
なんか街の人からのあたしに対する視線が厳しいような気がするな。このバカ男を舎弟にしてから三日経つが日に日に、店屋や宿屋のオヤジの対応が悪くなっていっている気がする。コイツはやっぱあれだ。疫病神ってヤツだ。早く追い払いたいが……しかし……。
「おおっクリフト様お会いできるとは思いませんでした。この握っていただいた手一生洗いませぬ」道具屋のオヤジが感激して料金を半額にしてくれた。今泊まっている宿屋も一等良い部屋をタダで泊めてくれた。不本意だがこの舎弟は中々利用しがいのある奴だ。ある一点を除けば……。
「ああローズマリー様あなたのその髪まるで英雄神イサリの妻アドリのそれのように美しい」
「あそ……」
「そのつれない所も純粋さを感じ増々惚れ込んでしまいます」
「そか……」
の、ループだ。三日三晩こんな具合だから正直嫌になってしまう。口を開けば「ローズマリー様」「聖女様」と褒め称えるのを連呼してくる。誰か叱ってくれと思うのだが、皆とは打ち解けた様だ。特に仲が良いのがエンデュミオンだ。同じバカ同士共鳴し合っているのか仲良くしている。
「おい、こら。クリフト! のどか沸いたから水もらってこい」邪険に扱ってみても笑顔で承諾し「この辺で一番美味しい井戸の水ですよ」と言ってのける。まるでこちらが悪いことをしているような気にさせられる。何ともつかみどころがない奴だ。
「クリフトよぉ? お前の使ってる居合切りには名前とかあるのか?」
「エンデュミオン、よくぞ聞いてくれた。我が一閃の名は【閃光剣斬】だ」
「おおっ良いネーミングセンスしてやがるじゃねえか? 誰に教わったんだ?」
「このえへ……、じゃなくて……お爺ちゃんから習ったんだよ、じゃなくて、習ったのさ」
「へえまだ生きてるのかい?」
「ああ、わ、私の実家でね」
「家は首都サザールにあるのかい? やっぱ良家のお坊ちゃんなのか?」
「いや一般庶民さ」そう言って髪をかき上げた。
クリフトは3日程滞在したラーベンナの魅力を十分に味合わせてくれた。こんなやつでも舎弟は舎弟、労ってやらねばと思い大衆酒場に連れて行った。ローズマリーは20歳じゃないので飲まないがクリフトは成人しているというのでエールを4人前頼んだ。ローズマリーはミルクを頼んだ。これはいつものことだ。
「これがエールか……?サザールでは葡萄酒しか飲んだことがなかったからなあ」
「本当かよ、クリフト! それ人生半分損しているぜ」
「ふっ、やはり相棒の読みは正しかったようだな。良家のお坊ちゃんというのは正解だろう」
「ぼ、僕は! じゃなかった、私はあまり酒は飲まないから詳しくないだけさ」
「エールは最高だぜ! クリフト! まあ一杯飲んでみろよ」
クリフトは並々と木のジョッキに盛られたエールを口にした。
「ゴホッ、何だこれは! 泥水ではないか⁈」ゴホッゴホッとクリフトはむせた。
「エールはこうやって飲み切った後に美味さが分かるんだぜ」エンデュミオンはお手本のようにジョッキいっぱいのエールを飲み切った。
「プハーッ、生きてるって素晴らしいぜ」
「相棒の言うとおりだ。エールは良いぞ、クリフト」
「でもエンデュミオンみたいに酒が無いと生きていけない人間になっちゃ駄目よ」
「分かった、私も男だ。飲んでみよう」
ゴクゴクと飲み切った。口には泡で髭が付いてる。エンデュミオンが肩を組む。
「どうっだった? なんかスカッとしただろ?」
「確かに……おうきゅ、いや家で飲む葡萄酒とは全く違う新鮮さがある」
「分かってきたじゃないか? 新たな世界への扉が開いたぜ」
「ほら次だ次、漢なら吐くまで飲め!」
……などと騒ぎながら謎の剣士クリフトとの旅は始まるのであった。
「聞いたわ。あの糞聖女なぶり殺しにしてやりたいわ! よくも私のクリフト様を」
「誰が私のクリフト様よ! クリフト様は俺様のものよ」
「黙りなさいこのオカマ! クリフト様はあんたのものじゃないわよ」
「見て見て! クリフト様が船頭みたいに先を歩かされているわ」
「お可哀想に……ぐうの音も出ない鬼畜聖女ね」
なんか街の人からのあたしに対する視線が厳しいような気がするな。このバカ男を舎弟にしてから三日経つが日に日に、店屋や宿屋のオヤジの対応が悪くなっていっている気がする。コイツはやっぱあれだ。疫病神ってヤツだ。早く追い払いたいが……しかし……。
「おおっクリフト様お会いできるとは思いませんでした。この握っていただいた手一生洗いませぬ」道具屋のオヤジが感激して料金を半額にしてくれた。今泊まっている宿屋も一等良い部屋をタダで泊めてくれた。不本意だがこの舎弟は中々利用しがいのある奴だ。ある一点を除けば……。
「ああローズマリー様あなたのその髪まるで英雄神イサリの妻アドリのそれのように美しい」
「あそ……」
「そのつれない所も純粋さを感じ増々惚れ込んでしまいます」
「そか……」
の、ループだ。三日三晩こんな具合だから正直嫌になってしまう。口を開けば「ローズマリー様」「聖女様」と褒め称えるのを連呼してくる。誰か叱ってくれと思うのだが、皆とは打ち解けた様だ。特に仲が良いのがエンデュミオンだ。同じバカ同士共鳴し合っているのか仲良くしている。
「おい、こら。クリフト! のどか沸いたから水もらってこい」邪険に扱ってみても笑顔で承諾し「この辺で一番美味しい井戸の水ですよ」と言ってのける。まるでこちらが悪いことをしているような気にさせられる。何ともつかみどころがない奴だ。
「クリフトよぉ? お前の使ってる居合切りには名前とかあるのか?」
「エンデュミオン、よくぞ聞いてくれた。我が一閃の名は【閃光剣斬】だ」
「おおっ良いネーミングセンスしてやがるじゃねえか? 誰に教わったんだ?」
「このえへ……、じゃなくて……お爺ちゃんから習ったんだよ、じゃなくて、習ったのさ」
「へえまだ生きてるのかい?」
「ああ、わ、私の実家でね」
「家は首都サザールにあるのかい? やっぱ良家のお坊ちゃんなのか?」
「いや一般庶民さ」そう言って髪をかき上げた。
クリフトは3日程滞在したラーベンナの魅力を十分に味合わせてくれた。こんなやつでも舎弟は舎弟、労ってやらねばと思い大衆酒場に連れて行った。ローズマリーは20歳じゃないので飲まないがクリフトは成人しているというのでエールを4人前頼んだ。ローズマリーはミルクを頼んだ。これはいつものことだ。
「これがエールか……?サザールでは葡萄酒しか飲んだことがなかったからなあ」
「本当かよ、クリフト! それ人生半分損しているぜ」
「ふっ、やはり相棒の読みは正しかったようだな。良家のお坊ちゃんというのは正解だろう」
「ぼ、僕は! じゃなかった、私はあまり酒は飲まないから詳しくないだけさ」
「エールは最高だぜ! クリフト! まあ一杯飲んでみろよ」
クリフトは並々と木のジョッキに盛られたエールを口にした。
「ゴホッ、何だこれは! 泥水ではないか⁈」ゴホッゴホッとクリフトはむせた。
「エールはこうやって飲み切った後に美味さが分かるんだぜ」エンデュミオンはお手本のようにジョッキいっぱいのエールを飲み切った。
「プハーッ、生きてるって素晴らしいぜ」
「相棒の言うとおりだ。エールは良いぞ、クリフト」
「でもエンデュミオンみたいに酒が無いと生きていけない人間になっちゃ駄目よ」
「分かった、私も男だ。飲んでみよう」
ゴクゴクと飲み切った。口には泡で髭が付いてる。エンデュミオンが肩を組む。
「どうっだった? なんかスカッとしただろ?」
「確かに……おうきゅ、いや家で飲む葡萄酒とは全く違う新鮮さがある」
「分かってきたじゃないか? 新たな世界への扉が開いたぜ」
「ほら次だ次、漢なら吐くまで飲め!」
……などと騒ぎながら謎の剣士クリフトとの旅は始まるのであった。
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