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【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】
【理不尽賢者と女盗賊Ⅳ】
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「くっ殺せ! 私は戦士だ。薄汚い盗賊に辱めを受けるくらいなら死んだ方がマシだ!」セレーナは叫んだ。
しかし牢屋の番をしているダフネという女盗賊ウルテジナの右腕らしい男は何もしてこない。代わりに三食まともな食事とベッドまで用意されていた。
「女には甘いのかしら? いやでも私の手合わせした感じだとそんな生易しい女ではない」
「お頭! 先ほどはお疲れさまでした。やはりお頭はお強い」「
「ダフネお世辞は良い。お前の援護のおかげだ」
「はっありがたいお言葉で……」ダフネは敬礼した。まるで軍隊みたいに規律が維持されている。この女は舐めては駄目だと改めて思った。
「大賢者様のお仲間さん、アンタには特別に用があってきたんだ」
「ダフネ! 開けな」ダフネはセレーナのいる牢屋のカギを開いた。何を考えているの?
数時間前夜のことであるセレーナは用を足そうとキャンプから離れた。そして戻ろうとした時に恐らく盗賊のスキル【探知阻害】を使ったウルテジナの手斧による猛攻を受けた。油断していたセレーナは咄嗟に反応はできたが攻撃をいなすので精いっぱいだった。そして隙が出たところをダフネという獣人族に拘束され昏睡草で作られたと思われる薬をかがされ意識を失い気が付いたらこの牢屋にいたのだった。
「セレーナの間抜けが普段あんなに説教垂れてるくせにあっさり捕まっちまうなんてよ……」エンデュミオンが意気消沈していた。そりゃそうだ。相手は盗賊普通に考えれば手籠めにされていてもおかしくない。
だがローズマリーはそうは思っていなかった。あの女はそういうゲスなタイプの女ではない。きちんと筋は通すタイプだとみていた。だからしばらくはセレーナは無事な筈だと思った。多分大事なのは次のチャンスだろう。
「エンデュミオン!ちょっと耳かせよ」ローズマリーは真意を打ち明け作戦を伝えた。
「分かった。済まねえな、ローズマリー!」
「ダチ公は必ず守るし、何があっても見捨てねえのがあたしの流儀なんでね」
「ふっ、俺は除け者か? 2人とも」
「わたくしにも何かお役に立てることはありませんか?」
ローズマリー達はセレーナを奪還するための作戦を考えた。ローズマリーの素案にルーンベルトが改良を少し加えるだけで作戦は結構あっさりと決まった。あとは待つだけだ。
「お頭、武器は隠しましたが拘束具を付けた方が良いのでは? このエルフは我々の誰よりも強いです」
「ふんっ、頭であるあたしに遠慮のかけらもなき意見をくれるとは流石はあたしの右腕だね」
「恐縮です」コボルトはウルテジナの部屋から退室した。
「エルフのお嬢ちゃん? あたしは今狙っている『お宝』があるんだ……」
「それで? 私を人質にあの商人のおじさんからお金をふんだくろうって言うの?」
「あんたまだ成人して間もない若いエルフだろう? 分かっていない。全く分かっていないよ……」
「じゃあ、何故私を人質にすぐ交渉に行かないの? 商人が逃げる可能性だってあるのに」
「あんた頭が固いね? 根本的に筋が違うのさ……。あたしが考えていることとあんたが考えていることはね」ウルテジナは葡萄酒を煽った。
「あんたも飲むかい? 首都サザールでしか手に入らない極上の葡萄酒さ」
「毒でも盛られたら嫌だから遠慮するわ」
「はっはっはっはっは。だからそんなことしても何のメリットもないだろ? あんた常識人過ぎるんだよ。ここは笑って飲む場面だよ。だから若いって言ってるんだよ」
「じゃあ良いわ。飲んであげるわよ」
「そうそう、大事な客人なんだ。礼は尽くすさ」
「っ!」不覚にも美味かった。声が出ない。
「初めてこの葡萄酒を飲む奴は今のあんたみたいな顔をするんだ」そう言ってウルテジナは笑いセレーナと酒を飲んでいった。笑うウルテジナに対してセレーナは始終無言だった。
この女盗賊何を考えているの? 全く今まで相手をしたことがない器の大きさの違いに戦慄さえセレーナは覚えた。
しかし牢屋の番をしているダフネという女盗賊ウルテジナの右腕らしい男は何もしてこない。代わりに三食まともな食事とベッドまで用意されていた。
「女には甘いのかしら? いやでも私の手合わせした感じだとそんな生易しい女ではない」
「お頭! 先ほどはお疲れさまでした。やはりお頭はお強い」「
「ダフネお世辞は良い。お前の援護のおかげだ」
「はっありがたいお言葉で……」ダフネは敬礼した。まるで軍隊みたいに規律が維持されている。この女は舐めては駄目だと改めて思った。
「大賢者様のお仲間さん、アンタには特別に用があってきたんだ」
「ダフネ! 開けな」ダフネはセレーナのいる牢屋のカギを開いた。何を考えているの?
数時間前夜のことであるセレーナは用を足そうとキャンプから離れた。そして戻ろうとした時に恐らく盗賊のスキル【探知阻害】を使ったウルテジナの手斧による猛攻を受けた。油断していたセレーナは咄嗟に反応はできたが攻撃をいなすので精いっぱいだった。そして隙が出たところをダフネという獣人族に拘束され昏睡草で作られたと思われる薬をかがされ意識を失い気が付いたらこの牢屋にいたのだった。
「セレーナの間抜けが普段あんなに説教垂れてるくせにあっさり捕まっちまうなんてよ……」エンデュミオンが意気消沈していた。そりゃそうだ。相手は盗賊普通に考えれば手籠めにされていてもおかしくない。
だがローズマリーはそうは思っていなかった。あの女はそういうゲスなタイプの女ではない。きちんと筋は通すタイプだとみていた。だからしばらくはセレーナは無事な筈だと思った。多分大事なのは次のチャンスだろう。
「エンデュミオン!ちょっと耳かせよ」ローズマリーは真意を打ち明け作戦を伝えた。
「分かった。済まねえな、ローズマリー!」
「ダチ公は必ず守るし、何があっても見捨てねえのがあたしの流儀なんでね」
「ふっ、俺は除け者か? 2人とも」
「わたくしにも何かお役に立てることはありませんか?」
ローズマリー達はセレーナを奪還するための作戦を考えた。ローズマリーの素案にルーンベルトが改良を少し加えるだけで作戦は結構あっさりと決まった。あとは待つだけだ。
「お頭、武器は隠しましたが拘束具を付けた方が良いのでは? このエルフは我々の誰よりも強いです」
「ふんっ、頭であるあたしに遠慮のかけらもなき意見をくれるとは流石はあたしの右腕だね」
「恐縮です」コボルトはウルテジナの部屋から退室した。
「エルフのお嬢ちゃん? あたしは今狙っている『お宝』があるんだ……」
「それで? 私を人質にあの商人のおじさんからお金をふんだくろうって言うの?」
「あんたまだ成人して間もない若いエルフだろう? 分かっていない。全く分かっていないよ……」
「じゃあ、何故私を人質にすぐ交渉に行かないの? 商人が逃げる可能性だってあるのに」
「あんた頭が固いね? 根本的に筋が違うのさ……。あたしが考えていることとあんたが考えていることはね」ウルテジナは葡萄酒を煽った。
「あんたも飲むかい? 首都サザールでしか手に入らない極上の葡萄酒さ」
「毒でも盛られたら嫌だから遠慮するわ」
「はっはっはっはっは。だからそんなことしても何のメリットもないだろ? あんた常識人過ぎるんだよ。ここは笑って飲む場面だよ。だから若いって言ってるんだよ」
「じゃあ良いわ。飲んであげるわよ」
「そうそう、大事な客人なんだ。礼は尽くすさ」
「っ!」不覚にも美味かった。声が出ない。
「初めてこの葡萄酒を飲む奴は今のあんたみたいな顔をするんだ」そう言ってウルテジナは笑いセレーナと酒を飲んでいった。笑うウルテジナに対してセレーナは始終無言だった。
この女盗賊何を考えているの? 全く今まで相手をしたことがない器の大きさの違いに戦慄さえセレーナは覚えた。
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