最強!最凶?理不尽賢者ローズマリーを夜露死苦!

日置弓弦

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【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】

【理不尽賢者と女盗賊Ⅱ】

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数日間礫砂漠を歩いているが盗賊にも弱いモンスターすらにも出会わなかった。



「なあルーンよ」エンデュミオンが突然声をかけた。

「ふっ、どうしたというのだ相棒よ」

「勝負しねえか」

「な、何を馬鹿なことを!」

「もう何もねえ砂漠を歩くのはうんざりなんだよ」

「それはこちらも同じ……というか皆同じだろう」

「そうよ」

「そだぜ」

「ルーンよ、お前アダマンタイトの鉱石とデュラハンの鎧持ってただろうアレを賞品に勝負しようぜ」

「お前の頭は何も詰まっていないのか⁈ 、お前はもう伝説のゴブリンの火酒、ゴブリッシュを飲んでしまっただろう? 賭けるものがない相手に何故俺が不利な条件で戦わなければならないのだ」

「負けるのが怖いんだろう」

「ふ……ふっ、そんなに戦いたいのであればよかろう。前はよくも俺の恥ずかしい過去をバラシてくれたな! 許さん!」

ルーンベルトは幼いころ女装させられ女の子として育てられたらしい。リンデンハイム王国の四大貴族のうちの1つベルファイア家の奥方は女の子が欲しかったからだったという。エンデュミオンと出会ったのもその時らしく一騒動あったらしい。



「やめなさい!! 2人とも!!」セレーナが大声を上げた。

「しかし、セレーナよ、ここまで挑発されたのだぞ。虫の居所が収まらない」

「冷静になりなさい。そんなことしたら相手に怪我させるかもしれないでしょう?」諭すようにセレーナが言う。

「そん時はローズマリーに回復してもらえば良いじゃねえか」

「あたしはやらないよ、そんな阿呆な理由で怪我しても助けたくないからね」

 エンデュミオンとルーンベルトはお互いを見つめ合う。

「悪かったな、ルーンよ」

「ふっ、それはこちらのセリフだ」



 そらからまた歩くこと数時間何も起きなかったが皆黙々と歩いていた。

 昼になったので前の村で購入したデーツというナツメヤシに似た乾燥された実を皆で食べた。味は黒砂糖に近く美味しい。

 しばらく雑談をして気を紛らわせた。シンダリア教の話になったなんでもそれぞれの種族を代表する神がいるらしい、ドワーフは雷神トール、エルフは魔法王オベリウス、ヒュームは英雄イサリといった具合だ。他にも獣人族や魔族の神々もいるがそれは異端として排斥されているらしい。特にここオルケイアでは獣人族が多く弾圧されているという話だ。



 雑談もこれまでと言ったところで地平線に土煙が上がっているのが見えた。盗賊だ。恐らくは。どんどん近づいてくる。十数分後最初に現れたのは商人風の恰好をした老人だった。



「た、助けてください。盗賊団に追われているのです。見ず知らずのもので厚かましいと思いますがどうかお願い致します。報酬は大金貨で払いますので……」

「いいよ、報酬なんて。あたし達も盗賊にはご縁があるから丁度良かったよ」

「なんと! しかしその珍妙な服……オルケイア首都サザールの方ですか?」

「珍妙……ね」ローズマリーを中心に風が吹き始めた。

「おい、おっさん死にたくなかったらローズマリー、珍妙って言ったこと謝罪しろ。殺されるぞ」

「す、すみません。大・賢・者・ローズマリー様」

「分かればいい……ってなんであたしのこと知ってるんだよ?」

「いえレビの村から早馬が来まして。今ローズマリー様の話でオルケイアの街々では噂になっておりますよ。首都の王族の方々にも知らせは届いているでしょう」げっとローズマリーは厄介ごとが増えたという顔になった。



 そんなやり取りをしていると盗賊が十数人現れた。いずれもそれなりの強さはあるようだ。

「お頭! こいつらもまとめて身ぐるみ剥ぎますかい?」獣人族のコボルトが言った。

「おかしら、おれはらがへった。ごはんうばおうよ」間の抜けた感じの大男が女盗賊に言った。

「ダフネに、イギ! あたしの名前をちゃんと呼びなってのが分からないのかい?」お頭と呼ばれた女盗賊が言った。

「おい! あんたがこの辺で悪さをしているウルテジナっていう団長か?」ローズマリー―が言った。

「ああ、そうさ! あたしらが狙った獲物は必ずしとめてるのさ」ウルテジナは淡々と話した。

「おかしら、はらがへったよ……」イギとか言う大男がまた同じことを言った。

「イギ! 少し黙んないと飯抜きだよ」ウルテジナが強い語調で言った。

「わかった、おかしら」大男は黙った。

「あたしの名前はローズマリー、あんたと交渉に来た。それなりの金も用意できる。なっルーンベルト!」

「ふっ、ベルファイア家は金貨程度容易く用意して見せよう」

「……ローズマリー……あんた……あの大・賢・者・ローズマリーかい?」

 盗賊にさえ名前が知られていたらしい。これは予想外だ。

「その通りだよ。で、お願いがあるんだけれど……。盗賊団解散してくれないかい?」

「はっ! 馬鹿ぬかすのはその珍妙な服だけにしな」ヤバい、エンデュミオンとルーンベルトは一様に思いを同じにした。

「珍妙だと」バリバリと音を立ててローズマリーの周りに金色のオーラと雷が流れる。

「うっ、皆ここは退くよ。でもその商人は必ずあたしらがもらうんだからね」ウルテジナは颯爽と馬を転進させ逃げて行った。他のものもあっという間に遠くへ逃げた。鮮やかな逃げ方だなとローズマリーは感心した。



「ローズマリー! いつまで演技しているの?」セレーナが声をかけた。

「バレてたか……」すぐに逆立っていた髪と翻っていたポニーテールが元に戻った。

「あなたが本気で怒ったらまずは手が出るでしょう、多分。それに前の村でも同じようなことがあったとリビドさんから聞いたけど随分大人しくなったって聞いたのよ」

「そかそか」笑いながらセレーナに声をかけた。

「あの女盗賊死んだなと思ったぜ」

「相棒と同じ意見だ」

「お前らあたしのこと誤解していないか? あたしは人を殺したりはしないよ」エンデュミオンとルーンベルトは信じられないと言った顔をした。

 そこにおずおずと話に割って入って来たのはさっきの商人だ。

「大賢者様、どうかオルケイアの最初の街ブタストまでお送り願いたいのですが……」

「分かってるよ、レビの村でも聞いたよ、あの盗賊団は一度狙った獲物は必ずしとめるって。それにまた来てくれた方がこっちも話し合いがいやすいからね」

「ありがとうございます。数時間歩けばあまり知られていないオアシスがあります。そこまで道案内させていただきます」

「ちなみにおっちゃんの名前は?」

「おおっ失礼をしました。ダビトと申します」白い髭と帽子を被った中太りの商人は自己紹介した。

「じゃっ、オアシスに行くか!」



オアシスに着き、ダビドから「大賢者ローズマリーの伝説」は話にあることないこと尾ひれがついて大変なことになっていることを聞かされローズマリーは愕然とするのはまだ先のことであった。



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