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【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】

【理不尽賢者と大砂漠Ⅰ】

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「あっちいなあ……」ローズマリーたちはアレイネ山脈の麓の樹海を抜けてようやくオルケイア大砂漠にたどり着いた。しかし、ローズマリーはもちろん他の3人とも砂漠での冒険をしたことがなかった。

照りつける太陽、乾燥してからからの空気が体中から水分を奪っていく。

「ローズマリー、水出してくれよ」枯れた声でエンデュミオンが言った。

「スプラッシュウォーター……」

ローズマリーの手から水がほとばしり池ができる。エンデュミオンと他の2人は手で水をすくいガブガブと飲み干した。そして水筒がわりのの皮袋に水をいれた。

本来ならばそこら辺の村人でもスプラッシュウォーター程度の下級魔法は使えて当然なのだが魔力を消費する。喉が渇く度に水を出していたら、魔力切れで死んでしまう。この世界で魔力とは生命エネルギーのようなものなのだ。

その点ローズマリーは無限にも等しい魔力を持っている。なので皆が水を欲しがったら出すのはローズマリーの役割になるのだ。

「おい、ローズマリーよ、リガイア共和国でもらった地図はほんとうに正しいのか?歩いても歩いてもオアシスのそばにあるレビの村なんぞまったく見えてこないぞ?」

リガイア共和国でもらった地図ではオルケイア大砂漠の最初の村レビまでは記されている。そこから先は記されていないのでレビの村で地図と食料品を調達しなければならない。ローズマリーも他の3人もいい加減ただの砂地の風景にも飽きていたところだ。

そしてまた、アイツがやって来たのが地面の揺れで分かる。

「クゥーン」と言う耳に響く鳴き声が聞こえ4人の足元からジャイアントワームが現れた。

この砂漠一帯の捕食者の頂点に存在するモンスターだ。身体はミミズのように細長く頭部には目がなく人一人くらいなら簡単に飲み込める大きな口がある。体には螺旋状の節があり、鋭い刺がある。しかし攻撃パターンは簡単でデカい口で相手を飲み込もうとするか消化液を吐き出すだけだ。もう既に攻撃パターンを見切っているローズマリーやエンデュミオン、ルーンベルト、セレーナは手早く攻撃を開始し登頂部に生えた弱点である触角のようなものに剣を刺し簡単に倒してしまった。あたりには鼻を刺激する刺激臭が漂った。



「まったくコイツらは何でこんなに次から次へと沸きやがるんだ」エンデュミオンは心底うんざりしていた。今回ばかりはローズマリーも同意見だった。最初はワクワクして相手をしていたが、数匹倒しただけで飽きてしまった。

「このモンスターは多分私たちの足音を感知して襲ってきているのよ」とセレーナが言った。

「足音を消すなら盗賊王のスキル【静音】を使えばもう遇わなくて済むんじゃないかな」

「ほう、試してみる価値は充分すぎるほどあるな」ルーンベルトが砂でごわごわになった前髪を弄っていた。

「よしじゃあスキル【静音】!」ちなみに1度【探知阻害】も使ったがどうやら砂の振動を感知しているらしく意味がなかった。

 そして数時間後太陽が傾き始めた頃、ようやく第1のオアシスのそばにあるレビの村が見えてきた。一行は心のそこからホッとした。何せ3日も歩いてきたわけだから疲れは少なからずたまっている。

だがローズマリーはまともに相手になるモンスターがいなかったのがストレスになっていただけだったが……。

「くぅー早く村に行ってキンキンに冷えたエールを飲みたいぜ!」

「ふっ、今回ばかりは相棒と同じ意見だな」

「服の中にまで砂が入って不快だわ。早く水浴びがしたいわ」



 しかし道のりは遠かった。蜃気楼に惑わされているのかと思うほど道のりは長くレビの村に着いたのは夜になってからだった。

 村はそこそこ発展しているようだが外では一人っ子一人見当たらなかった。宿屋に行くと主人は生気の無い目で「いらっしゃいませ……」と言い代金を支払うと何も言わなかった。

 何かおかしい。普通なら世間話や村の見所を陽気に話すのが宿屋の主人の姿だ。

「おっちゃん、この村には何か問題でもあるのか?」ローズマリーが問うと主人は「関わらない方が身のためです……」と言ったきり黙りこくってしまった。

この村には何かある。ローズマリーは真相を明らかにしようと心に決めた。
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