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【第2章 理不尽賢者ローズマリーとリガイア共和国】

【理不尽賢者とケンカ祭りⅫ】

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死を覚悟したデモラティウスは最後の手段に打って出た最強の攻撃魔法を使おうというのだ。しかしこれにはリスクがある、命を代価にするということだ。

「魔界の主ナハトよ我の贄を糧に我に力を!」デモティウスが叫ぶと闘技場内の魔物全てが苦しみ衰弱し始めた。デモラティウスは「チェインオブデスフレア」と叫んだ。するとあろうことか空中にある魔方陣に魔法を放った。そして逃げた。デモラティウスは魔王軍数万匹の命を代価に泣きながら逃げていった。生涯で一番早く飛んだ。

 これにはローズマリーも驚きを隠せなかった、そして憤慨した。

「ダチ公の命より自分の命を大事にするなんて糞外道だな」お前が言うなと死の間際にいるモンスター達は思いながら死んでいった。



「おーい、ローズマリー! 無事か?」エンデュミオン達だ。結界がさっきの魔王軍の幹部デモティウスによって破壊されたため入ってこれたのだ。

「ああ……まあね」ローズマリーはがっかりしていた。それを見た他の3人は驚いていた、数万のモンスターを1人で倒したことよりも……。それはそうだろう、3人で旅をして数ヶ月ローズマリーが落ち込んだことなど1度も見たことがなかったからだ。

「まあ、無事で何よりだぜ」エンデュミオンが気を使い肩を叩いた。しかし、数秒経ちエンデュミオンは固まってしまった。

「どうした? 相棒よ」ルーンベルトが言うとエンデュミオンが闘技場の中心を指差した。ルーンベルトの顔から血の気が引いていく。

「……ローズマリー、お前はまさか『大賢者の杖』を持たずに戦ったのか?」横にいるセレーナも絶句している。

「ああ、前の世界では素手で戦っていたからな」と多少は元気を取り戻した様子で答えた。

「観客席が焼け落ちてるけど……上級魔法でも使ったのかしら?」とセレーナ。

「いや、普通のファイアボールをデーモンの群れに撃っただけだよ」

「詠唱はしたのよね? まさか詠唱破棄だったとかじゃあ……」魔法の威力は詠唱することで本来の威力が出る。詠唱破棄することはつまり魔法の威力を極小にするということだ。

「んにゃ、いつも通りの詠唱破棄だよ」ケロリと答えた。

  3人は頭を抱えてしまった。そしてローズマリーは重要なことを言った。

「そういえば、敵の玉無しの魔族の幹部が、新しい魔王軍の幹部を決める闘いだって言ってたぞ」

「「「ほんと?!」」」

 本当ならばリンデンハイム国の王や冒険者ギルドに伝えるべき内容だ。だが、この賢者は言うことを聞かないだろう。そもそも魔王討伐軍の司令官にされそうになり、逃げてきた経緯もある。



「ローズマリー、あなたの名前は出さないからこの件については次の街で冒険者ギルド協会に知らせるわよ?」

「わ、分かった。あたしにもそのくらいの責任感……くらいあるよ」

「しっかしひでえ有り様だな」エンデュミオンが転がっていたヴァンパイアの死体を足でどけた。

「虐殺だな、一方的な……」ルーンベルトがあたりを見回す。

「王都の学院の教科書に出てくることになるくらいの事件だわ」

 ローズマリーは頭をかいた。あたしがやることなすこと全てがおかしいのか?それともこの世界の連中が弱すぎるのか?まあ考えても仕方ない。念のためローズマリーはこの闘技場を悪の眷属が寄れないよう結界をはっておくことにした。ゾンビドラコンとかを作る輩が出ないようにするためだ。陣を作るとローズマリーから青白いオーラが出て髪が揺れた。

 それを見た3人は不思議なものを見た顔になっていた。

「どした?みんな?」

「そうやって神聖な結界をはったりしてる時は聖なる大賢者って感じでほんとうに美しいのよね……」

 セレーナの意見に他の二人も頷いた。

「そ、そっか……」ローズマリーは産まれてこのかた「格好良い」とか「イケメン」とかは言われたことがあるが「美しい」とは言われたことがなかったので照れてしまった。

「みんな、またメーワクかけるかもしれないけどよろしくな」

「おうよ、お前の旅が終わる頃には真の神速のエンデュミオンになってお前をサポートできるくらいにはなってやらぁ」

「ふっ、相棒の意見に同意だ」

「わ、私もローズマリーの足を引っ張らないように頑張るわ」オークに捕まったトラウマがよぎったのかセレーナは声がうわずった。

「じゃあキャンプに戻るか」

 ローズマリーは赤いポニテールを翻しながら暗い森のなかに戻っていった。

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