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【第2章 理不尽賢者ローズマリーとリガイア共和国】
【理不尽賢者と麦畑Ⅳ】
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「盗賊だ!」「盗賊が出たぞー!」大きな声で、夕食を食べていたローズマリーを除く3人は屋敷を飛び出て麦畑に向かった。途中で領主にやはり危険だからやめておいた方が良いと食い下がられたが振りほどいた。
3人が駆けつけると既にローズマリーが着いていた。
「……早かったな、ローズマリー……」ルーンベルトが声をかけた。ローズマリーは振り向くと3人に事の次第を話した。
「あたしは転移の魔法で一番先にここに来たんだ。だけど麦は大分刈り取られた後だった」
「……街の住民が気付くのが遅かっただけじゃないのか?……」
「そうだぜ。気付いた時には遅かったのかもしれないぜ」
「まあでも撤退が鮮やか過ぎるのが腑に落ちないところではあるはね」
「あれだけの小麦の束を運ぶのには馬車が必要になるじゃん?」
「言われてみれば馬の声も聞こえなかったわね」
領主が走って追いかけてきた。
「ふうふう皆さん、どうでしたか?」
「逃げられちゃった。いつもこんな感じなの?」
「こんな感じとは?」
「あたしは街の人が盗賊に気付いた時にすぐ転移の魔法を使ってこの麦畑に来た。だけど盗賊は影も形も無かった。街には見回りの衛兵もいるし、何処に雲隠れしたのか分からない……」
「たまたま衛兵が眠りこけていた可能性もありますよ」領主は言った。
「う……む」ローズマリーはそれっきり黙り込んでしまった。
「それに盗賊をあなた様方が見つけたとしても相手は100人。全員を相手になどできますまい?」
「それは問題ないぜ、領主様よ。この大賢者ローズマリー様はあのエンシェントドラゴンを杖で一撃加えただけで倒しちまったんだからよ」エンデュミオンが自慢げに言った。
「そ、それは本当ですか?」急にビクつく領主。
「……うん」
「ちなみにあと何日程逗留されるのですか?」
「できれば早くオルケイアに行きたいけれど……」
「そうですよね……。そんなに長いはできませんよね」
「でも、今まで取り逃がした獲物は片手の指の数しかいない。最近は獣王キャリクスくらい」
「え? ええええええ⁉ あの魔王軍の一番有名な幹部と戦ったのですか!」
領主は卒倒しそうになっている。
「まあ、いいや次・に・も・し・来・る・な・ら・ば・ボッコボコにしてやるから」
「ああ! そうですか! ならば安心だ……」
帰り道、エンデュミオンとルーンベルトが囁いていた。
「……なあルーン、ローズマリーが少し変じゃないか?」
「……相棒よ。俺もそれは感じた」
「図書館で本でも読み過ぎて頭がパンクしたんじゃないか?」
「……まあ、そんなところかもしれんな」
「2人とも聞こえてるから。あたし盗賊王のスキル【盗聴】使えるからね」
「「うっ」」2人は静かになった。
ローズマリーは考えていた。盗賊ならば金品を掠奪しに来る筈だ。しかし、今回の盗賊は麦をしかも製粉前のものを刈り取っていた。何かが引っかかる。
ローズマリーが頭を抱えていると、セレーナが声をかけてきた。
「ローズマリー何一人で考えているの? 私で良ければ相談に乗るわよ」
「うん……それがさー」ローズマリーは疑問に思ったことをセレーナに話した。セレーナは誰にも聞こえないようにローズマリーに策を与えた。
3人が駆けつけると既にローズマリーが着いていた。
「……早かったな、ローズマリー……」ルーンベルトが声をかけた。ローズマリーは振り向くと3人に事の次第を話した。
「あたしは転移の魔法で一番先にここに来たんだ。だけど麦は大分刈り取られた後だった」
「……街の住民が気付くのが遅かっただけじゃないのか?……」
「そうだぜ。気付いた時には遅かったのかもしれないぜ」
「まあでも撤退が鮮やか過ぎるのが腑に落ちないところではあるはね」
「あれだけの小麦の束を運ぶのには馬車が必要になるじゃん?」
「言われてみれば馬の声も聞こえなかったわね」
領主が走って追いかけてきた。
「ふうふう皆さん、どうでしたか?」
「逃げられちゃった。いつもこんな感じなの?」
「こんな感じとは?」
「あたしは街の人が盗賊に気付いた時にすぐ転移の魔法を使ってこの麦畑に来た。だけど盗賊は影も形も無かった。街には見回りの衛兵もいるし、何処に雲隠れしたのか分からない……」
「たまたま衛兵が眠りこけていた可能性もありますよ」領主は言った。
「う……む」ローズマリーはそれっきり黙り込んでしまった。
「それに盗賊をあなた様方が見つけたとしても相手は100人。全員を相手になどできますまい?」
「それは問題ないぜ、領主様よ。この大賢者ローズマリー様はあのエンシェントドラゴンを杖で一撃加えただけで倒しちまったんだからよ」エンデュミオンが自慢げに言った。
「そ、それは本当ですか?」急にビクつく領主。
「……うん」
「ちなみにあと何日程逗留されるのですか?」
「できれば早くオルケイアに行きたいけれど……」
「そうですよね……。そんなに長いはできませんよね」
「でも、今まで取り逃がした獲物は片手の指の数しかいない。最近は獣王キャリクスくらい」
「え? ええええええ⁉ あの魔王軍の一番有名な幹部と戦ったのですか!」
領主は卒倒しそうになっている。
「まあ、いいや次・に・も・し・来・る・な・ら・ば・ボッコボコにしてやるから」
「ああ! そうですか! ならば安心だ……」
帰り道、エンデュミオンとルーンベルトが囁いていた。
「……なあルーン、ローズマリーが少し変じゃないか?」
「……相棒よ。俺もそれは感じた」
「図書館で本でも読み過ぎて頭がパンクしたんじゃないか?」
「……まあ、そんなところかもしれんな」
「2人とも聞こえてるから。あたし盗賊王のスキル【盗聴】使えるからね」
「「うっ」」2人は静かになった。
ローズマリーは考えていた。盗賊ならば金品を掠奪しに来る筈だ。しかし、今回の盗賊は麦をしかも製粉前のものを刈り取っていた。何かが引っかかる。
ローズマリーが頭を抱えていると、セレーナが声をかけてきた。
「ローズマリー何一人で考えているの? 私で良ければ相談に乗るわよ」
「うん……それがさー」ローズマリーは疑問に思ったことをセレーナに話した。セレーナは誰にも聞こえないようにローズマリーに策を与えた。
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