17 / 92
【第2章 理不尽賢者ローズマリーとリガイア共和国】
【理不尽賢者と麦畑Ⅱ】
しおりを挟む
ローズマリー一行は領主ノバク・チラーノの屋敷に招待された。意外にも質素な屋敷で驚いた。オルトリンとコネがあるだろうし相当儲けている筈だが……。リントの街の館とは正反対に執事やメイドの数が少ない。2階から降りてきたこれまた質素な服を着た中年のヒュームが現れた。
「ようこそ、我が屋敷へ。あまり贅沢ではありませんが朝食を用意しました。お口に合えば良いのですが」
出されたのは燕麦で作られたパンとミルク粥だった。領主も同じものを食べている。おおよそ権力者が口にしないものだった。リントの街の領主はブラックベアーの串焼きなどを食べていた。
少し戸惑いを覚えたローズマリーに領主は言った。
「盗賊に小麦を半分以上略奪されたのは私が不甲斐ないばかり、どうして贅沢ができましょうか」
「領主のおっさん、あんたのことあたしは気に入った。盗賊討伐はあたしらに任せてくんな」
「それはありがたいお申し出なのですがあいては100人は優に超える数です。衛兵をおつけいたします」
「いや、邪魔だからいらない」
「なんと! たった4人で討伐されるのですか?」
エンデュミオンが啖呵を切った。
「俺たちはいずれは魔王を下す者だ。盗賊ごときに遅れはとらないさ」
「……素晴らしい、では衛兵は街の防衛に回らせます」
「……他に情報はないのかい……? ……例えば次に盗賊が現れそうな場所とか……」気落ちした貴族のボンボンのルーンベルトが声を出した。
「それがさっぱり分からないのです。近くの村にも聞いたのですが盗賊など見ていないと」
「この辺には盗賊がアジトにしてそうな山や森も無い。定期的に現れるのかい?」
「ええ、まあ」何となく違和感をローズマリーは感じ取っていた。妙に歯切れが悪い。
「それじゃあたしたちは麦畑の粉引き小屋に泊まらせてもらうよ。その方が盗賊をぶち倒すのにも都合が良いだろう?
「そんな! あなた達のような方を粗末な粉引き小屋に泊めるなど滅相もない」領主は慌てふためき始めた。
「分かった、粉引き小屋に泊まるのはやめておくよ」
領主はホッとしたようだ。この領主は本当に人が良いようだ。
その晩ローズマリー達は領主の屋敷に泊まった。最初は麦畑に近い最初に泊まった宿に泊まると言ったのだが領主がしつこく食い下がるので仕方なく屋敷に泊まった。夜が世界を支配する頃になってもその日は盗賊の現れる気配がなかった。
次の日、ローズマリーは独りで麦畑に行った。もとの世界つまり日本にいた頃は見たことがなかったからだ。
「こんなに綺麗なんて!」独りで叫んだ。
黄金色の湖がそよ風に揺られさざ波が立つ。それが麦畑全体に広がっていく。どんな金銀財宝よりも美しいとローズマリーは思った。
帰る途中粉引き小屋に寄った。最近はまったく使っていないのかボロボロだった。確かにこれじゃあ泊まると言われて困るだろうと合点がいった。
屋敷に戻るとルーンベルトが2人はデートに行っていると言った。少し元気が戻った様だ。もうあと半刻で昼食の時間だ。すぐに戻ってくるだろう。
戻ってきた2人に声をかけるとセレーナがやや照れながら街の様子を教えてくれた。なんでも、麦畑の他にも精巧なガラス細工の職人や比較的大きな図書館があるらしい。後で散歩がてら寄ってみるか……。
「ようこそ、我が屋敷へ。あまり贅沢ではありませんが朝食を用意しました。お口に合えば良いのですが」
出されたのは燕麦で作られたパンとミルク粥だった。領主も同じものを食べている。おおよそ権力者が口にしないものだった。リントの街の領主はブラックベアーの串焼きなどを食べていた。
少し戸惑いを覚えたローズマリーに領主は言った。
「盗賊に小麦を半分以上略奪されたのは私が不甲斐ないばかり、どうして贅沢ができましょうか」
「領主のおっさん、あんたのことあたしは気に入った。盗賊討伐はあたしらに任せてくんな」
「それはありがたいお申し出なのですがあいては100人は優に超える数です。衛兵をおつけいたします」
「いや、邪魔だからいらない」
「なんと! たった4人で討伐されるのですか?」
エンデュミオンが啖呵を切った。
「俺たちはいずれは魔王を下す者だ。盗賊ごときに遅れはとらないさ」
「……素晴らしい、では衛兵は街の防衛に回らせます」
「……他に情報はないのかい……? ……例えば次に盗賊が現れそうな場所とか……」気落ちした貴族のボンボンのルーンベルトが声を出した。
「それがさっぱり分からないのです。近くの村にも聞いたのですが盗賊など見ていないと」
「この辺には盗賊がアジトにしてそうな山や森も無い。定期的に現れるのかい?」
「ええ、まあ」何となく違和感をローズマリーは感じ取っていた。妙に歯切れが悪い。
「それじゃあたしたちは麦畑の粉引き小屋に泊まらせてもらうよ。その方が盗賊をぶち倒すのにも都合が良いだろう?
「そんな! あなた達のような方を粗末な粉引き小屋に泊めるなど滅相もない」領主は慌てふためき始めた。
「分かった、粉引き小屋に泊まるのはやめておくよ」
領主はホッとしたようだ。この領主は本当に人が良いようだ。
その晩ローズマリー達は領主の屋敷に泊まった。最初は麦畑に近い最初に泊まった宿に泊まると言ったのだが領主がしつこく食い下がるので仕方なく屋敷に泊まった。夜が世界を支配する頃になってもその日は盗賊の現れる気配がなかった。
次の日、ローズマリーは独りで麦畑に行った。もとの世界つまり日本にいた頃は見たことがなかったからだ。
「こんなに綺麗なんて!」独りで叫んだ。
黄金色の湖がそよ風に揺られさざ波が立つ。それが麦畑全体に広がっていく。どんな金銀財宝よりも美しいとローズマリーは思った。
帰る途中粉引き小屋に寄った。最近はまったく使っていないのかボロボロだった。確かにこれじゃあ泊まると言われて困るだろうと合点がいった。
屋敷に戻るとルーンベルトが2人はデートに行っていると言った。少し元気が戻った様だ。もうあと半刻で昼食の時間だ。すぐに戻ってくるだろう。
戻ってきた2人に声をかけるとセレーナがやや照れながら街の様子を教えてくれた。なんでも、麦畑の他にも精巧なガラス細工の職人や比較的大きな図書館があるらしい。後で散歩がてら寄ってみるか……。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
テンプレを無視する異世界生活
ss
ファンタジー
主人公の如月 翔(きさらぎ しょう)は1度見聞きしたものを完璧に覚えるIQ200を超える大天才。
そんな彼が勇者召喚により異世界へ。
だが、翔には何のスキルもなかった。
翔は異世界で過ごしていくうちに異世界の真実を解き明かしていく。
これは、そんなスキルなしの大天才が行く異世界生活である..........
hotランキング2位にランクイン
人気ランキング3位にランクイン
ファンタジーで2位にランクイン
※しばらくは0時、6時、12時、6時の4本投稿にしようと思います。
※コメントが多すぎて処理しきれなくなった時は一時的に閉鎖する場合があります。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
ハイパー営業マン恩田、異世界へ。
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
ファンタジー
フリーランスの営業マンが何故か事故って異世界に来てしまうが、トランクと営業の能力を武器に、案外なんとか生きていけそうな話。
(不定期更新)
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる