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【第2章 理不尽賢者ローズマリーとリガイア共和国】

【理不尽賢者と麦畑Ⅱ】

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ローズマリー一行は領主ノバク・チラーノの屋敷に招待された。意外にも質素な屋敷で驚いた。オルトリンとコネがあるだろうし相当儲けている筈だが……。リントの街の館とは正反対に執事やメイドの数が少ない。2階から降りてきたこれまた質素な服を着た中年のヒュームが現れた。



「ようこそ、我が屋敷へ。あまり贅沢ではありませんが朝食を用意しました。お口に合えば良いのですが」



 出されたのは燕麦で作られたパンとミルク粥だった。領主も同じものを食べている。おおよそ権力者が口にしないものだった。リントの街の領主はブラックベアーの串焼きなどを食べていた。

少し戸惑いを覚えたローズマリーに領主は言った。



「盗賊に小麦を半分以上略奪されたのは私が不甲斐ないばかり、どうして贅沢ができましょうか」

「領主のおっさん、あんたのことあたしは気に入った。盗賊討伐はあたしらに任せてくんな」

「それはありがたいお申し出なのですがあいては100人は優に超える数です。衛兵をおつけいたします」

「いや、邪魔だからいらない」

「なんと! たった4人で討伐されるのですか?」

 エンデュミオンが啖呵を切った。

「俺たちはいずれは魔王を下す者だ。盗賊ごときに遅れはとらないさ」

「……素晴らしい、では衛兵は街の防衛に回らせます」

「……他に情報はないのかい……? ……例えば次に盗賊が現れそうな場所とか……」気落ちした貴族のボンボンのルーンベルトが声を出した。

「それがさっぱり分からないのです。近くの村にも聞いたのですが盗賊など見ていないと」

「この辺には盗賊がアジトにしてそうな山や森も無い。定期的に現れるのかい?」

「ええ、まあ」何となく違和感をローズマリーは感じ取っていた。妙に歯切れが悪い。

「それじゃあたしたちは麦畑の粉引き小屋に泊まらせてもらうよ。その方が盗賊をぶち倒すのにも都合が良いだろう?

「そんな! あなた達のような方を粗末な粉引き小屋に泊めるなど滅相もない」領主は慌てふためき始めた。

「分かった、粉引き小屋に泊まるのはやめておくよ」



 領主はホッとしたようだ。この領主は本当に人が良いようだ。



 その晩ローズマリー達は領主の屋敷に泊まった。最初は麦畑に近い最初に泊まった宿に泊まると言ったのだが領主がしつこく食い下がるので仕方なく屋敷に泊まった。夜が世界を支配する頃になってもその日は盗賊の現れる気配がなかった。

 次の日、ローズマリーは独りで麦畑に行った。もとの世界つまり日本にいた頃は見たことがなかったからだ。

「こんなに綺麗なんて!」独りで叫んだ。

黄金色の湖がそよ風に揺られさざ波が立つ。それが麦畑全体に広がっていく。どんな金銀財宝よりも美しいとローズマリーは思った。



 帰る途中粉引き小屋に寄った。最近はまったく使っていないのかボロボロだった。確かにこれじゃあ泊まると言われて困るだろうと合点がいった。

屋敷に戻るとルーンベルトが2人はデートに行っていると言った。少し元気が戻った様だ。もうあと半刻で昼食の時間だ。すぐに戻ってくるだろう。



 戻ってきた2人に声をかけるとセレーナがやや照れながら街の様子を教えてくれた。なんでも、麦畑の他にも精巧なガラス細工の職人や比較的大きな図書館があるらしい。後で散歩がてら寄ってみるか……。

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