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【第1章 理不尽賢者ローズマリーの誕生】
【出奔】
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ケロット領主や地方の貴族などがテーブルに座していた。面持ちは皆真剣そのものだった。
「ケロットよ、エンシェントドラゴンを一撃で倒したり、魔王軍のかの獣王キャリクスを退けた賢者がいると言うのは真か?」
「私も信じられなかったのですが、真実であります。彼女は珍妙な格好をしていますが、確かにシンダリア帝国の予言の通りの人物でした」
ドンッと壁を殴るような音が聞こえ、ケロットは怯えた。
「こればかりは実際にこの目で見ないと信じられぬな」
「今隣室で待機していただいているので後で紹介致します」
「うむ、分かった」
「あとですね……これは生死に関わることなので守って頂かなければならないのですが、その……彼女の格好を珍妙だとか……」
ドンッとまた隣室から壁を叩く音がした。ローズマリーは盗賊王の職業も極めているので【盗聴】のスキルを使っているのだろう。
「兎に角格好を馬鹿にしないでください!」
貴族達の中にはいまだにことの重要性を分かっていない者もいるようだ。
その頃隣室のローズマリーはケロットが提供したリンデン地鶏の丸焼きやブラックベアーの串焼きなどを食べていた。だだ、隣で何を話しているのか気になるので盗賊王のスキル【盗聴】で会話を聞いていた。またローズマリーの特攻服を珍妙とケロットが表現したので壁を叩いた。壁は大きく凹んでしまった。
まったくもとの世界と言いこの異世界といい特攻服の格好良さがわからないとは残念な連中が多すぎる。
それにしても最近は暇だ。あの獣王キャリクスとか言う骨のあるやつが現れた時、森のモンスターのほぼ全てを最下級の魔法ファイアボールで消滅させてしまった為森に今いるのは知能の低い獣、ラピットウサギやカミナリイノシシ、ブラックベアーくらいしか生息していない。あ、あとスライムがいたな。まあスライムはローズマリーが踏んだだけで死ぬのであまりに印象が低いが……。
これからどうするかな……ローズマリーは考えた。自分のもといた世界に戻るにはどうやら魔王をぶっ殺さないといけないらしい。何となくだが北の方に禍々しい気配がするので恐らくは北に行けば魔王を見つけられるかもしれない。
だがスキル【盗聴】で話を聞いていると、この大陸のすべての国を集めローズマリーをリーダーにして魔王を数の力で倒そうという流れになっている。もとの世界でもそうだがローズマリーは大集団でつるむのは好きではない。ましてや各国の軍隊の総司令官などに抜擢されるのは甚だ迷惑である。
「悪いな、領主のおっさん」ローズマリーは【探知阻害】のスキルを使い、屋敷を後にした。
街から出ようと門の前まで来ると見覚えのある人物がいた。エンデュミオンとその仲間のエルフの戦士たちだ。
「見送りかい? エンデュミオン」
「いやその逆さ。俺たちをあんたの仲間にしてくれないか?」
「別に良いけどあたしは気ままに旅をして魔王をぶち殺しにいくわけだけどあんたたちの強さじゃ役には立たないよ」
槍使いのエルフが気障っぽく言った。
「俺たちは実力こそまだ低いが必ずあなた様の役に立って見せます。どうかよろしくお願いします」
エルフの女剣士は片膝をつき傅いたかしずいた。
「必ずや魔王討伐のために貴女のサポートを致します。私も是非戦列につらなわせてください」
「あ、そうそうこいつらの名前を紹介しなくちゃな。このでこぱっちがルーンベルト、都の大貴族のボンボンだ。で、もう一人が俺の恋人でもある戦士セレーナだ。よろしく頼むぜ、大賢者様」
ローズマリーは少し考えた。あたしは魔王がどこにいるかは分かっている。必要なのはそこまでいく移動手段だ。それらを手に入れるには仲間が必要になるのではないか? 特にルーンベルトとかいう貴族のボンボンは旅をする上で資金繰りに悩まずに済みそうだし、エンディミオンはともかくセレーナとかいう女剣士とは良い関係を築けそうだ。
「どうだ? この話受けてくれるか?」
「オーケーさ。あたしはまだこの世界に来て1ヶ月も満たない。分からないことだらけだから、そこをサポートしてくれさえば良いから」
「よっしゃ決まりだな」エンディミオンたちは握手を求めてきた。こちらも握手に応える。
良い仲間に恵まれたようだ。早くこの世界からお母さんや麻衣たちのいるもとの世界に戻りたいが一足跳びにはいかないようだし、しばらくは旅を楽しもう。
こうして4人はリントの街を後にした。
数時間後、ローズマリーが失踪したことが分かるとリントの街は大混乱になった。
「ケロットよ、エンシェントドラゴンを一撃で倒したり、魔王軍のかの獣王キャリクスを退けた賢者がいると言うのは真か?」
「私も信じられなかったのですが、真実であります。彼女は珍妙な格好をしていますが、確かにシンダリア帝国の予言の通りの人物でした」
ドンッと壁を殴るような音が聞こえ、ケロットは怯えた。
「こればかりは実際にこの目で見ないと信じられぬな」
「今隣室で待機していただいているので後で紹介致します」
「うむ、分かった」
「あとですね……これは生死に関わることなので守って頂かなければならないのですが、その……彼女の格好を珍妙だとか……」
ドンッとまた隣室から壁を叩く音がした。ローズマリーは盗賊王の職業も極めているので【盗聴】のスキルを使っているのだろう。
「兎に角格好を馬鹿にしないでください!」
貴族達の中にはいまだにことの重要性を分かっていない者もいるようだ。
その頃隣室のローズマリーはケロットが提供したリンデン地鶏の丸焼きやブラックベアーの串焼きなどを食べていた。だだ、隣で何を話しているのか気になるので盗賊王のスキル【盗聴】で会話を聞いていた。またローズマリーの特攻服を珍妙とケロットが表現したので壁を叩いた。壁は大きく凹んでしまった。
まったくもとの世界と言いこの異世界といい特攻服の格好良さがわからないとは残念な連中が多すぎる。
それにしても最近は暇だ。あの獣王キャリクスとか言う骨のあるやつが現れた時、森のモンスターのほぼ全てを最下級の魔法ファイアボールで消滅させてしまった為森に今いるのは知能の低い獣、ラピットウサギやカミナリイノシシ、ブラックベアーくらいしか生息していない。あ、あとスライムがいたな。まあスライムはローズマリーが踏んだだけで死ぬのであまりに印象が低いが……。
これからどうするかな……ローズマリーは考えた。自分のもといた世界に戻るにはどうやら魔王をぶっ殺さないといけないらしい。何となくだが北の方に禍々しい気配がするので恐らくは北に行けば魔王を見つけられるかもしれない。
だがスキル【盗聴】で話を聞いていると、この大陸のすべての国を集めローズマリーをリーダーにして魔王を数の力で倒そうという流れになっている。もとの世界でもそうだがローズマリーは大集団でつるむのは好きではない。ましてや各国の軍隊の総司令官などに抜擢されるのは甚だ迷惑である。
「悪いな、領主のおっさん」ローズマリーは【探知阻害】のスキルを使い、屋敷を後にした。
街から出ようと門の前まで来ると見覚えのある人物がいた。エンデュミオンとその仲間のエルフの戦士たちだ。
「見送りかい? エンデュミオン」
「いやその逆さ。俺たちをあんたの仲間にしてくれないか?」
「別に良いけどあたしは気ままに旅をして魔王をぶち殺しにいくわけだけどあんたたちの強さじゃ役には立たないよ」
槍使いのエルフが気障っぽく言った。
「俺たちは実力こそまだ低いが必ずあなた様の役に立って見せます。どうかよろしくお願いします」
エルフの女剣士は片膝をつき傅いたかしずいた。
「必ずや魔王討伐のために貴女のサポートを致します。私も是非戦列につらなわせてください」
「あ、そうそうこいつらの名前を紹介しなくちゃな。このでこぱっちがルーンベルト、都の大貴族のボンボンだ。で、もう一人が俺の恋人でもある戦士セレーナだ。よろしく頼むぜ、大賢者様」
ローズマリーは少し考えた。あたしは魔王がどこにいるかは分かっている。必要なのはそこまでいく移動手段だ。それらを手に入れるには仲間が必要になるのではないか? 特にルーンベルトとかいう貴族のボンボンは旅をする上で資金繰りに悩まずに済みそうだし、エンディミオンはともかくセレーナとかいう女剣士とは良い関係を築けそうだ。
「どうだ? この話受けてくれるか?」
「オーケーさ。あたしはまだこの世界に来て1ヶ月も満たない。分からないことだらけだから、そこをサポートしてくれさえば良いから」
「よっしゃ決まりだな」エンディミオンたちは握手を求めてきた。こちらも握手に応える。
良い仲間に恵まれたようだ。早くこの世界からお母さんや麻衣たちのいるもとの世界に戻りたいが一足跳びにはいかないようだし、しばらくは旅を楽しもう。
こうして4人はリントの街を後にした。
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