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一章 藤野 玄人、転生しました。

2話 藤野 玄人、決闘しました。

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 俺は朝起きて、自分のスキルのことを思い出した。

「そういえば、《好奇心》でドロップ2倍じゃなかったっけ?」

 俺は、昨日倒したゴブリンからドロップした短剣をもう一本探すことにした。

 それは、案外近くにあった。俺が気づかなかっただけみたいだ。

 俺は短剣を拾い、《情報視認α》で見る。

 [錆びついた短剣]
 ランク:G
 《スキル》
 無し

 あれ?確か、昨日拾ったやつのランクはEだったような…状態とかで違うのかもしれないな。

 俺は短剣を腰につけておいた。

 今日は、町に出たいな。

 ということで、木に登って高いところから探してみることにした。

 …と。

「グギャッ!」

 ゴブリンだ。今日のは、青い。


「スキル《情報視認α》!」

『アイスゴブリン Lv3

 《スキル》

 《水魔法:初級》

 《氷魔法:初級》』

 《スキル視認》が加わって進化したからスキルも見れるようになったわけか。

「グギャッッ!」

 アイスゴブリンは氷魔法を放ってきた。

「うおっ!」

 俺の氷よりも大きいっ!

 俺はとっさに回避する。

「グギャッグギャッ!」

 アイスゴブリンは氷魔法を連発してきた。

「…そうだ!スキル《冷蔵庫》!」

 俺は冷蔵庫のドアを地面と平行に出す。

 そして、アイスゴブリンの氷を、冷凍庫にーー取り込むっ!

「きたっ!《冷蔵庫》っ!」

 今度は近くに冷蔵庫を発現し、氷を握る。

 これは、俺が作った氷だ。

「ふっ!」

「グギャッ」

 ゴブリンは水魔法で俺が投げた氷を落とした。

「やるなっ…」

「グッキャッ!」

「くっ!」

 ゴブリンは魔法を連発してくる。

「クッソ!」

 俺は木の後ろに隠れた。

「どうするか…そうだ!」

 俺は《冷蔵庫》を発現し、冷凍庫に、短剣を入れて設定温度を下げて凍らせる。

 これで、一回殴ったくらいで折れることはないだろう。

 続けて俺は、氷と氷を水でくっつける。これで、拳二つ分くらいのこおりになった。

 俺はその氷を持って、アイスゴブリンに向かって走り出す。

「うおおっ!」

 ゴブリンはそんな俺に驚いたのか、すぐさま魔法を放とうとしてくる。

「させるかっ!」

 俺はもう、だいぶ近くにいた。

 そこから、氷を投げつける。

 ゴブリンはそれに向かって氷魔法を放つ。

 パキン、と俺の氷は割れた。

「かかったな!」

 その氷は、目くらましだ。

 細かく割れた氷がゴブリンの視界を狭くする。

「《冷蔵庫》っ!そこっ!」

 俺は冷凍庫から凍らせた短剣を取り出し、ゴブリンの顎めがけて突き刺す。

「グギャ…」

「ふぅ…」

『アイスゴブリンを倒しました』

 なんとか倒せたな。

 アイスゴブリンは、粒になって消えていった。

 ドロップ品は、無しか。

 短剣は回収しとかないとな。

「うっ…」

 めまいがする。

 さっき短剣を凍らせた時に魔力を使いすぎたんだろうか。

 取り敢えず、木の中に戻ろう。

 それから俺は、めまいが収まるまでゆっくりしていた。



 昼と夕方の間ぐらいにめまいは収まったので、俺は木に登って町を探すことにした。

「よいしょ…ほっ…だあっと!」

 案外怖くなかった。スキル《好奇心》のおかげだろうな。

 あたりを見渡すと、町があった。塀で囲まれている。

「あそこだな」

 俺はその町に向かってみることにした。

 まあ、もう少しで日が暮れるから、明日になるだろうが。

 俺は今日も夜ご飯としてきのみを食べ、水ときのみを《冷蔵庫》に入れておいた。



 次の日。転生したということが、だいぶ現実味を帯びてきた。

「よし、行くか」

 少し進むと、所々、木に爪痕があった。

 クマだろうか。いや、そもそもこの世界にクマはいるのか?

「大型のモンスターだったら、まずいなあ…」

 俺は少し走ってそこを抜けていった。

 また少し進むと、そこには泉があった。

 泉の周りは、10mほどだろうか。木が生えていなかった。

 俺は泉へ向かって歩いていく。

 何匹か動物?かモンスター?がいる。

 そこの定義がわからないからなんとも言えんが。

 鹿のようなやつが三匹だった。

 三匹は俺に怯える様子もなく、水を飲んでいる。

 俺も飲めるのだろうか。

「スキル《情報視認α》」

『精霊水
 ランク:D
 《効果》
 喉を潤す。
 魔力を小回復。
 どの種族でも飲める。』

 まじか。魔力回復はありがたいな。

 ほかの生き物に迷惑がかからない量を《冷蔵庫》に入れておいた。

 その場でも少し飲んだが、なんだか少し甘い気がして美味しかった。

 それから30分ほど歩くと、ゴブリンに遭遇した。

「スキル《情報視認α》」

『ノーマルゴブリン Lv3
 《スキル》
 無し」

 これなら余裕で倒せそうだ。

「スキル《冷蔵庫》!」

「グギャッ!」

 ゴブリンは手に持っていたこん棒を振り上げ、走ってくる。

 俺は冷凍庫から短剣を取り出す。

「うおっ」

 ゴブリンはいつのまにか、俺の目の前にいた。

「グギャッ!」

 なんとか半身でかわした。

 その遠心力をそのままに、短剣で斬りかかる。

「はあっ!」

 だが、その攻撃が当たることはなかった。

「グギャッ!」

 ゴブリンがジャンプして、上からこん棒で殴ってくる。

「くっ!スキル《冷蔵庫》っ!」

 俺は咄嗟に拳大の氷を取り出し、ゴブリンに向かって軽く投げる。

「ギャッ!」

 こん棒は氷にあたった。

 氷は弾けて、目くらましとなる。

 俺はその先に背後に回り、着地したゴブリンのうなじに短剣を突き刺す。

「ギャッ…」

 ゴブリンはそのまま、粒になって消えていった。

「はあ、はあ…」

 危なかった。ああ、精霊水を飲んでおかないと。

 まためまいがして、そこへゴブリンが来たらおしまいだ。

『ノーマルゴブリンを倒しました。
 レベルが上がりました。』

 すると、俺の息切れが治った。

 レベルが上がると回復するみたいだ。

 てか、ファイアやアイスよりノーマルの方が強いんだな。

『木の棒がドロップしました』

 俺は二本の木の棒を拾う。

「…そうだ!これをこうして、あとは…っと」

 俺は、凍った短剣と木の棒をツタで縛った。

「スキル、《冷蔵庫》」

 後は、冷凍庫に入れるだけだ。

 …よし。これで槍が2本完成したぞ。これで随分楽になるな。

 まあ、もう氷が小さいのしかなく、拳大のものが作れそうにないから、もう会わないようにしないと。

「慎重に、迅速に、だな」

 そこからは何事も無く、なんとか町に着くことができた。

 ただ、警備員がいるみたいだ。

 ラノベみたいに、止められなければいいが。

 というか、言葉は通じるのだろうか。

『スキルが派生しました。
 《転生者》→《自動翻訳》が派生しました。』

 お、ラッキー。

「…よし、行くか」

 俺は門まで歩いていく。

「すみません、通してもらえますか?」

「では、通行許可証のご提示、または、通行料金50万クラウンの支払いをお願いします」

 あー、やっぱりか。

「そうですか。ありがとうございます」

 これからどうしようか。そう考えていると、なにやら少し離れたところにある別の門から声が聞こえてきた。

 どうしたんだろうか。

「だーかーらー、通してっていってるんです!」

「ですから、通行許可証か50万クラウンの支払いを!」

「んなもんっ、あるわけないでしょーが!」

「なら無理です!」

「ねえ、通してよ!私の家はこの中なの!」

「中の者ならば、通行許可証をお持ちのはずだ」

 あー、そういうことか。

「あの」

「なによっ!」「なんですかっ!」

「はぁ…警備員さんがその人と一緒に中に入って、そっちの人が家で通行許可証を見せればいいんじゃないですか?もし無いなら、それ相応の処罰を下せばいいと思いますし」

「あなた、いいこと言うのね!そうよ、そうしましょ!」

「無理だな。私の代わりになる警備員がいない」

「いや、連絡すればいいじゃないですか」

「はあ…お前は中のことを何も知らんのだな。この際だから教えてやろう。いいか、この町ディクトリアの領主様はだな…」

「領主様が、どうしたって?」

「警備隊長!」

「まさか、謀反など起こすつもりではあるまいな?」

「はいっ!今、この者が中に入りたいといっていたのですが、通行許可証を持ち合わせておらず、通行料も払えないと言ったので入れられないと…」

「わかった。あとで聞こう。お前は事細かに報告するから長くなる」

「はっ!」

 うわぁ、自分から聞いておいて後でとか、なんて理不尽な。

「あなた方は、中に入りたいのだな?だが、その為に必要なものを持っていないと…よし、ならば、私と決闘しないか?私に勝てば、一度だけ通行料を無しにしてやろう」

「それはいいですね。でも、なんでですか?俺たちを無料で通すとか、それこそ謀反なのでは?それに、なんのメリットもない」

 俺がそう告げると、

「いや、私が立て替えるだけだ。それに、最近強い奴がいなくてな。退屈していたところだ」

 あー、そういうことか。この人いい人だ。理不尽だけど。

「それって、私も闘うんですよね?」

「いや、どちらかでいいぞ」

「なら、お願いしていいかしら?私、決闘は得意じゃ無くて…」

「わかりました」



 俺たちは少し離れたところまできた。

 今は審判として、べつの警備員が来ている。

 俺たち2人は、紙二枚にサインした。
 双方が、一枚ずつ持ち、決闘を無効にしない為だ。

「2人とも、準備はよろしいですか?」

「ああ」

「いつでもどうぞ」

「では…藤野玄人と、アンド=フォルトによる決闘を執り行います。……始めっ!」

「スキル《レフォース》!」

 え、なにそれ。

「す、スキル《冷蔵庫》っ!」

「何っ!空間魔法か!」

 そうなんだ。《冷蔵庫》は空間魔法なのか。知らなんだ。

「…いくぞっ!」

「来いっ!…は?」

 いや、消えたんだけど。

 その瞬間、後ろから蹴飛ばされた。

「ぐっ!」

 俺は何mか飛ばされる。

「ふんっ、この程度か。空間魔法の使い手だと思って期待していたが…」

 バカにしたな。

 俺はすぐさま起き上がる。

「だったら、次はこっちからだ!」

 俺は、冷凍庫からさっき作った槍を取り出す。

 ちなみに、この槍は精霊水を使って凍らせた、ちょっと特別製だ。

「…なんだ?その槍は」

「俺のオリジナルだよっ!」

 俺は真っ直ぐに駆け出す。

「まずい、か…いやぁ、楽しくなるなぁ!」

 なんで笑ってんだよ。怖いわ。

 俺は走りながら、もう一本の凍らせた短剣を取り出す。これは普通に凍らせたやつだ。

 俺はその短剣を投げる。

 そして、俺は気づいた。魔力切れるかも、と。

 そうなったら、どこかで精霊水を飲まなければいけない。

「くっそ…隙を作らせる!」

「ふっ!」

 アンド隊長は、剣を抜き、短剣を叩き落とす。

 そして、こっちに近づいてくる

 …ん? 

 俺は、二つの不思議なことに気づいた。

 一つ目は、まだ魔力切れを起こしていないこと。さっきまでなら、もうめまいがしてもおかしくなかったのに。

 二つ目は、今はアンド隊長の動きが見えること。

 俺もアンド隊長も走っているのに、余裕で見える。

 考えられるのは、一つ。

(この槍、か!)

 思考を戻すと、隊長がすぐそこにいた。

「ふっ!」

「ぜあっ!」

 俺はすぐに後ろへ飛び退いた。

 そこを、隊長の剣が一閃した。

「…やるな。本領発揮か」

 知らん。

「いくぞっ!はっ!」

 俺は、槍で突くふりをしーー思いっきり、横に薙いだ。

「ぐっ!」

 隊長は剣で受け止めるーーと、バキンッ!と音を立てて、剣が、折れた。

「…私の負けだ」

 え、強すぎだろ。

「…スキル《情報視認α》」

『精霊槍
 ランク:C
 《スキル》
【自動発動】
 《レフォース》
 《魔力回復》
【任意発動】
 《アイスミット》』

 わーお。つよーい。(棒)

「君、すまないが、その槍を見せてもらっていいだろうか?」

「あ、はい」

「スキル《鑑定》…やはり、Cランクか。ありがとう」

「えと、やはりってなんですか?」

「ああ、あれは私の練習用の剣でね、Dランクなのだよ。まあ、切られてしまったのは、そのせいだ…っと、では、町の中に入ろうか」

「あ、はい」

 さっきの人が、じっとこちらを見つめてくる。

「なんですか?」

「あなたって、強いのね!」

 そうなのか。ま、転生者だしな!

「じゃ、行きましょうっ!」

「あ、はい」

 その前に、短剣も回収しておいた。

 ただ、凍っていたのが溶けてしまっていた。

 少し気になったが、放置しすぎたからだな、と自己解決して、俺はついていった。

 そんなこんなで、俺はやっと町の中に入ることができた。
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