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【野分】Nowaki

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◆この話の中でイタリア語の会話かありますが、文法誤り等ゆるい目でご覧くださいませ◆


「か~つ~ら~ちゃん」

玄関先で掃除をしていた鬘がふと振り向き、そのまま凍りついた。

「急にいなくなるから心配したんだよ~」
鬘の目の前には玉木 和夫の姿があった。鬘は慌ててパンションの中へ駆け込んで戸を閉めた。

「そんな態度取るなんて寂しいな~。曲がりなりにも一線を越えようとした仲じゃないか」
和夫が中の鬘に聞こえるように話す。
「僕は、そんなつもりありません。貴方が勝手に襲ってきたんじゃないですか」
鬘は精一杯反論した。
「つれないな~。でもいいよ、許してあげる。俺は心の広い男だからさ。また来るからね~」

和夫の気配が消えると、鬘の体がブルブルと震え始めた。

「鬘君、どうしたの?」
さわがしい玄関に里華がキッチンからやって来た。
「鬘君、大丈夫?こんなに震えて。顔、真っ青よ」
里華が鬘に駆け寄った。
「だ、大丈夫ですから」
鬘は心配かけまいと気丈に振る舞い、「少し休みます」と自室へ向かった。

事の一部始終を二階の窓からある人物が見ていた。


「あれから鬘ちゃん部屋から出てこないわね」
休むと言って部屋に篭った鬘は翌朝になっても出てこなかった。里華はヒカルに連絡を入れた。

「鬘君も心配だけど大型の台風が近づいているんですって。嫌だわ」
里華が腕を組んで片頬に手を当てた。
「夕霧君、こんな天気じゃ部活はないわよね。雨戸閉めるの手伝ってくれる?」
里華と夕霧が手分けしてパンション中の雨戸を閉め始めた。

「ここで待っていろ。台風の影響で風が強いから、車から出るんじゃねえぞ」
ヒカルの車が花散里の前で停車した。ヒカルは車内の人物に声を掛けてパンションの中へと入っていった。

二階の雨戸を閉めようと窓を開けた夕霧がヒカルの車に気がついた。
「あれはあいつの」
夕霧が忌々しそうに見ていると後部座席から誰かが出てきた。
「亜衣?」
夕霧が身を乗り出して亜衣を目で追いかけるともう一人の人物が車内から出てきた。その人物は亜衣を捕まえるとしゃがみこんで何かを言い聞かせているようだった。
亜衣がじたばたと暴れるが亜衣の両腕をしっかりと押さえ何かを話している。
亜衣が嫌々と首を振り上を向いた。
「あ、夕霧お兄様―」
亜衣が夕霧に気がついて大きな声で呼んだ。もう一人の人物が亜衣の声に反応して夕霧を見上げた。

(何て気品に満ちた美しい人なんだ)
夕霧はその人物の美しさと輝きに目を奪われた。

「紫上かあ様、夕霧お兄様がいるよ」
亜衣が夕霧を指差すとその人物は風に靡く髪を抑え夕霧に向かって会釈した。

(紫上かあさま?あの人が紫上さん。男の人とは聞いていたけど、何て綺麗で品があるんた。まるでたおやかな花のようだ)
夕霧は頬を頬が熱くなるのを感じながら会釈すると、紫上と亜衣は車内へ戻った。

(今まで紫上さんに会わせて貰ったことはない。年に一度、亜衣と食事をするときはいつもあいつと三人だから。あいつが僕に会わせたくないのはそう言う事か。あんな素敵な人が何であいつなんかと)
夕霧は言いようもない嫉妬に身を焦がした。


「鬘、入るぞ」
ヒカルは鬘の同意を待たずに中へと入りドアを閉めた。カーテンを閉め切った真っ暗な室内にヒカルが明かりを灯す。

「何があった」
ヒカルは布団の中で震える鬘にそっと手を置いた。

鬘がガバッと布団から飛び出しヒカルにしがみ付く。
「あいつが。あの家のあいつが昨日ここに来て」
ヒカルは鬘の怯えようから九州の養父だと察した。

「心配するな、俺が何とかする」
ヒカルは鬘を宥めた。
「寝てねえだろ」
鬘の目の下のクマにヒカルはまずは眠るように勧めた。
「無理です。眠れっこありません」
ガタガタと体を震わせる鬘の恐怖は相当だった。ヒカルは鬘を眠らせる方法を一つしか考え付かなかった。

「仕方ねえな」
ヒカルは鬘の下の衣服を脱がせた。

「声だすなよ」
ヒカルは鬘の両足首をそれぞれの手で握り左右に開き、その中心部へと顔を寄せた。

「んふっ」
ぺろりと尻の窄まりを舐められた鬘の体が悦びに打ち震える。ヒカルは唾液を送り込みながら舌先を捻じ込む。ヒカルに潤される鬘の尻の窄まりがヒカルの舌を徐徐に飲み込んだ。

「足、持ってろ」
ヒカルが鬘に指示を出すと三本の指を舐め、鬘の尻の窄まりを抉じ開ける。

「んふっ」
性急な行為にもかかわらずヒカルの愛撫を知る鬘の体が打ち震える。ヒカルは時折唾液を足しながら指で前立腺を刺激しないように鬘の奥を突き上げる。内部を扱かれることに鬘の体が無常の悦びを表すようにヒカルの指を締め付ける。

「いい反応だ」
ヒカルは鬘の顔を眺めながら指の動きを僅かずつ早める。

「時間ねえんだけどな」
ヒカルが残念そうに呟くが、声を抑えることにいっぱいいっぱいの鬘には聞こえていないようだった。

「んふっ、んふっ」
鬘の呼吸が荒くなる。と同時に締め付けるだけだった鬘の内部も蠢く。ヒカルは指の感触で鬘の内部が前立腺に触れずとも既に女の膣と同じ性感帯と化したことを実感していた。

「んふっ、んっふっ、ふっ、んんっ」
鬘の呼吸がますます荒くなり鬘が体を捩った瞬間、鬘の内部が大きく収縮を繰り返す。

「中だけで出さずにイッたか」
ヒカルは鬘の順応性の高さに舌を巻く。そして鬘の将来を決める一つの可能性を見出した。鬘の性器が先走りという名の滴を流す。

「俺が仕込んでやる」
決意したヒカルは指の動きを再開する。ビクビクと鬘が体を震わせるが鬘の内部をより極上のものにするために指で扱く。

「体で覚えろ。あれを虜にする手段を叩き込め。お前があれを虜にさせるんだ」
一度甘い汁を覚えた鬘の内部が再び大きく収縮した。それでもヒカルは開放することなく鬘を高みへと押し上げる。放置され続ける鬘の性器は涙を流し続ける。

「んんっ、んんっん」
鬘が息を詰めるたびドライを迎える。何度も鬘をドライに導きながらヒカルは自信を深めた。

「ん、んんっんー」
大きく体を震わせた鬘がそのまま意識を飛ばした。ヒカルは最後の仕上げに今まではぐらかしていた鬘の前立腺を強めに擦り上げる。

「ん、ん」
ヒカルの長い指が二度ほど前立腺を往復しただけで鬘の性器は待ち望んだように弾けた。鬘の精液をもう一方の手で受け止めたヒカルが期待以上の結果にほくそ笑んだ。

「このまま眠れ」
ヒカルは鬘の衣服を正し、部屋のドアを開けた。

「お前か。立ち聞きなんて良い趣味じゃねえな」
ドアの前には夕霧がいた。
「久しぶりに会ったのにそれだけかよ」
夕霧がヒカルの目を見ずに文句をいった。
「元気そうじゃねえか。顔を見ればわかる。お前は俺のコピーだからな」
夕霧が部屋の中に視線を向けると、ヒカルが電気を消してドアを閉めた。
「鬘は眠った。起きるまで邪魔するなよ」
ヒカルは父親らしい言葉もかけずに一階へ降りていった。

(何だよコピーって。確かにあいつを知る人はみんな口々にあいつのガキの頃にそっくりだと言うけど、僕はそんなの嬉しくない。紫上さんだけじゃなく、鬘さんまでもあいつの事を認めるのかよ。僕は、僕だけは認めない)

「まだ敵わないのかよ」

一人残された夕霧は悔しそうに俯いた。


礼汰の両親に挨拶を済ませた浅賀はその足で国際空港へと車を走らせた。

「ここは」
礼汰が訳もわからずに浅賀を見上げる。
「国際空港です」
「そんなのはわかるよ。どうして、Whyだよ」
礼汰が突っ込みを入れた。
「ああ、そのことですか。結婚式ですよ」
浅賀がしれっとトンでもないことを言い出した。
「誰の?」
「私たちのです」
浅賀は真面目に答える。
「あんた大学は?俺だって講義があるんだけど」
「それは大丈夫です。学長には弱みを握っていますから」
浅賀がまたしれっとトンでもないことを口走る。

「なんか、頭痛くなってきた」
ついていけない会話に礼汰の頭は飽和した。

「待たせましたね。手続きはもう済んでますか?」
既に待ち構えていた忠臣に浅賀が確認した。
「臣様、全て滞りなく」
忠臣は一礼すると去っていった。

「あんたのスケールにはマジ驚かされるわ」
礼汰が呆れたように呟く。
「お気を悪くしましたか?」
浅賀が不安そうな表情で礼汰を見つめる。
「こんなことでいちいちお気を悪くしてたらあんたと結婚するなんて口が裂けても言わないよ。だけど」
礼汰の前向きな発言に浅賀はほっとしたが、礼汰が何を言い出すかと再び不安に陥った。
「ドレスは着ないからな」
礼汰の突拍子もない発言に浅賀は声を上げて笑い出した。

「何だよ、そこ重要だろ」
礼汰がムッとする。
「すみません。私の想像の斜め上をいきますね、君は。二人ともタキシードでいいじゃないですか」
礼汰が本気で胸を撫で下ろした。

日本を出発して約十三時間かけローマへと降り立った浅賀と礼汰は国内線を乗り継いで約一時間後ナポリに着いた。ナポリ中央駅からサレルノ駅まで鉄道一時間半、そこからバスに乗り継ぎ一時間十五分、ようやくアマルフィ海岸へとたどり着いた。初めての海外と長旅に礼汰は疲れを隠せなかった。

「疲れましたよね」
礼汰の荷物と浅賀の荷物の入った大きなスーツケースを引きながら浅賀が礼汰を気遣った。
「まあ、ちょっとは。でもあんたの方が疲れてるだろ。スーツケースよこせよ」
礼汰もずっと荷物持ちをする浅賀を心配した。
「私なら大丈夫ですよ。慣れていますから」
浅賀には疲労の色は見えない。

「なあ、何でイタリアなんだよ」
礼汰がずっと疑問に思っていた事を口にした。
「ああ、そのことですか。イタリアは同姓婚が認められている国ですし、それに」
「Omi!」
浅賀の言葉を遮るように一人のイタリア人らしき人物が二人の元に近づいてきた。

「Signor Ladislao,e passato tanto tempo」
(お久しぶりです、ラディズラーオさん)
「E passato tanto tempo,Omi」
(本当に久しぶりだな、臣)

浅賀は流長にイタリア語で会話するが礼汰には全くわからない。

「Tua moglie?」
(あれが雌か?)
男が親指の先を礼汰に向けた。
「Moglie!」
(嫁、です!)
「Che bello!」
(美人だな)
男がニヤニヤと笑いながら礼汰を見ると礼汰は男をキッと睨みつけた。
「Ma certo!」
(当然でしょ)
浅賀が自慢げに礼汰を見た。
「ところで、貴方日本語話せるでしょう。私はイタリア語があまり得意ではないの知っててわざとやってますよね」
浅賀が急に日本語で男に怒鳴った。浅賀の怒鳴り声を初めて聞いた礼汰が驚きで目を丸くする。

「こちら奥尻 礼汰君。奥尻君、紹介します。彼は私の友人で写真家の」
「【Ladislao Superiore Valentino】(ラズディラーオ スペリオーレ ヴァレンティーノ)といいます。ラズと呼んでください」
ラズは礼汰の手を取りすかさず甲にキスをした。
「全くラズは手が早い」
浅賀がラズの手を抓る。
「Bello(美人)は老若男女問わず大好物なんだ」
ラズがワハハと笑い声を上げた。

「ラズディラーオ スペリオーレ ヴァレンティーノってあの世界的写真家の?」
礼汰が素っ頓狂な声で叫ぶ。
「お、Moglie(モーリエ)は俺を知ってるのかい?」
ラズが礼汰に「俺もちっとは有名になったな」とまたしてもワハハと笑った。
「知ってるもなにも、世界的写真家じゃん。あんたこんな有名人と知り合いなのかよ」
礼汰が浅賀のネットワークに驚く。

三人はラズの車で目的地へと向かった。

「Omiとは俺の個展で知り合ったんだ。俺のミドルネームSperiore(スペリオーレ)は日本語じゃ優秀って意味なんだろ。Omiも優秀な臣だって聞いてそこから意気投合したのさ。
ああそれと、臣とは肉体関係はないから安心しろよ、Moglie(モーリエ)。臣は見た目はBello(美人)だが俺は根っからの雄を抱くほど雌には不自由しちゃいねえからな」
ラズがワハハと笑う。
「もしかして、ラズに日本語教えたの、あんた?」
礼汰が浅賀をジト目で見た。浅賀が気まずそうに脇を向いた。

「ねえ、さっきから気になってるんだけどモーリエってなんだよ。俺は奥尻 礼汰って紹介しただろ」
礼汰がラズに尋ねた。

「雌」
「嫁」
ラズと浅賀が同時に答えた。

「貴方はどうして間違った日本語ばかり覚えるんですか」
浅賀が罵声を飛ばした。
「そうか?どっかの誰かさんの教えかたが悪かったんじゃねーの?」
ラズの言葉に浅賀が舌を巻いて脇を見た。

「嫁、か」
礼汰がしみじみと呟く。
「あれ、嫌でしたか。奥尻君はいい嫁になると思って。いえ、嫌なら私が嫁でも」
浅賀があたふたと取り繕う。
「おーおー、かつてのプレイボーイの影無しか」
ラズが口笛を吹いた。

「着いたぜ」
目的地に到着した三人の目の前には。
「サンタ・トロフィメナ教会です。私たちの結婚式の場所です」
礼汰は浅賀に促されるように控え室へと入った。浅賀はスーツケースを開き、純白のタキシードを礼汰に手渡す。
「サイズはたぶん大丈夫だと思います。私は隣の部屋で着替えますから」
浅賀はもう一着の純白のタキシードを持って隣室へと姿を消した。突如として現実味を帯びた情景に礼汰が緊張しながらも着替え終えた。

「奥尻君、入りますよ」
浅賀が中へと入り礼汰の姿を目にするとハッとしたように固まった。

「似合っています。とても」
浅賀の声が震えているように礼汰には感じられた。浅賀のタキシード姿を見た礼汰もドキリとした。

「では、いきましょうか」

パイプオルガンの演奏の中、浅賀のエスコートでバージンロードを二人で歩く。
二人だけの結婚式。そして親にも言えない結婚式。礼汰の胸に様々な思いが去来する。礼汰は泣きそうになるのを堪えながら歩いた。

神父の前に二人で立つと神父がイタリア語で何かを話し始めた。

(病める時も健やかなる時もっていってんのかな)
礼汰は緊張した面持ちで神父の話に耳を傾けた。
指輪の交換になり、浅賀と礼汰は向き合った。

「奥尻君、大事にします。君のこと」
浅賀はいつの間にか用意していたマリッジリングを礼汰の左手の薬指に嵌めた。礼汰もそれに習って浅賀の指に嵌めると、浅賀が礼汰の頬を両手で優しく包んだ。

(誓いのキスか)
礼汰がそっと目を瞑る。体を繋いでいるときの情熱的なキスとは間逆の、触れるか触れないかの優しく触れるキス。浅賀の言葉通り礼汰の唇に大事そうに触れるキスが礼汰の心を熱くした。

教会の外に出た直後、浅賀と礼汰の上から何かが降ってきた。周りを見ると十人近い男女が浅賀と礼汰に何かを投げている。
「ライスシャワーですね。ラズも粋な事をしますね」
浅賀が嬉しそうな笑みを浮かべ礼汰を見た。
「イタリアでは親族や友人が米粒を投げてお祝いをする風習があるそうです。なんでも米の発音と祝福の発音が似ているから、らしいですよ」
浅賀の解説に礼汰の表情が驚きから喜びに変化した。

「お二人さん、こっち向いてくれ」
声の先にはカメラを構えたラズの姿。顔を見合わせた浅賀と礼汰は今までで一番の笑顔を見せた。


ラズにホテルまで送ってもらい、最上階のスウィートルームに入ると礼汰はようやく一息ついたように部屋の中央にあるキングサイズのベッドの上に突っ伏して脱力した。

浅賀が部屋の内装を確認するように見回した。ベッドの正面には作りつけのデスク、その壁には巨大なTV、デスクの上にはランプ、大き目の花瓶に生けられた生花とウェディングに相応しく純白のドレスとタキシードに着飾ったテディベア。ベッドの上の壁面には大きなアンティーク調の鏡、そして奥には寛げるためのラグジュアリーソファが鎮座していた。

「ラズに頼んだにしてはまともな部屋で助かりました」
浅賀が一人ごちると礼汰に視線を移した。
「大丈夫ですか?日本を出てからほぼ丸一日移動でしたから」
浅賀が礼汰に声を掛けると礼汰がごろりと寝返りを打ち、左手を天井のシャンデリアに翳した。
「本当に結婚したんだな、俺達」
礼汰が光を反射する指輪を見つめながら一人ごちた。

「まさか、嫌になったわけでは」
浅賀がベッドに近づいた。
「いや、そうじゃない。結婚するって決めてからあっと言う間だったから現実味がなかっただけ。心配しなくても直ぐに離婚はしないよ」
礼汰が多少の皮肉を交えると、浅賀が苦笑した。

「嫁、か」
「やっぱり嫌ですよね。だったら私が」
礼汰の言葉に浅賀が慌てふためいて取り繕う。
「何かさ、それでもいいって思ったんだ。上手く言えないけどあんたの嫁なら良いかなって」
礼汰が浅賀ににんまりと笑いかけた。

「秀臣」
礼汰が真剣な顔で浅賀を呼んだ。浅賀は礼汰の傍に膝を折る。
「ちょっとやそっとで離婚する気はないからな。大事にしろよ、俺のこと」
浅賀は了承の意味を込めて礼汰に触れるだけのやさしいキスをした。


豪華なスウィートルームの静寂の中でクチュクチュと滑った音だけが響き渡る。

「お腹、すいたでしょう」
浅賀が珍しく恍惚とした表情でキスの合間に礼汰に尋ねる。
「後でいい」
気持ち良さそうに蕩けた顔の礼汰が浅賀を欲する。
「では後でルームサービスを取りましょう」
礼汰の同意を得た浅賀は礼汰の服を脱がせると、礼汰もまた浅賀の服を剥ぎ取るように脱がせた。

浅賀の唇が礼汰の首筋を降りて行き胸の頂を含んだ。もう一方の手で礼汰の空いている胸に手を伸ばしヤワヤワと指先で擽る。
「俺、そこはあんま感じないんだよ」
礼汰が他の直接的な場所を求める。
「では、これからゆっくりと礼汰の性感帯にしていきましょうね」
浅賀はあっさりとそこから離脱すると下へ下へと舌を滑らす。腹部の窪みに尖らせた舌先で念入りに襞を潤す。
「そこ、やあっ」
礼汰が上半身をくねらせて抗議する。
「お臍は嫌?むしろ気持ち良さそうだけど」
浅賀は礼汰のペニスで確認すると涙目の礼汰と目が合った。
「だって、尻がむずむずするんだよ。そこ舐められると」
礼汰が恥ずかしそうに手の甲を口に当てた。
「もう少しだけ」
浅賀がやんわりと却下して礼汰の臍を重点的に舐めながら、両手を胸に伸ばした。

「ん、っく。んん、っく」
礼汰が悶えながらも浅賀を受け入れる。浅賀の指先のしこりが硬く形を成し浅賀の指がそれを擦り上げる。
「ん、ん」
礼汰が上体を反らした。それは礼汰が中に渦巻く快楽を逃す手段だった。それを良く知る浅賀は舐め潤すだけだった舌先を尖らせ、まるで下肢を打ちつけるかのように奥を突く。
「んああっ、あんっ、あっ」
礼汰が息も絶え絶えに喘ぐ。浅賀は胸を弄っていた片方の手で礼汰の尻をほぐし始める。やや閉じかけの礼汰の尻は浅賀の指により次第に蕩けていった。

「早く、あんたのくれよ」
礼汰が浅賀に強請った。
「お臍でイクのは嫌?」
浅賀が臍を嬲りながら礼汰に尋ねると礼汰が「あんたので、イキたい。早く」と浅賀を求め急かした。

「挿入れるよ、礼汰」
浅賀が礼汰に四つんばいにさせて下肢を大きく開かせると背後からゆっくりとペニスを埋め始めた。
「あ、んっく、はぁ、んんっ」
礼汰の肩甲骨が苦しそうに僅かに動くが、浅賀にとってはなまめかしい光景に映る。

「一日半ぶりの礼汰の中」
挿入途中の浅賀がその気持ちよさに吐息と共に呟いた。
「奥いくよ、礼汰」
浅賀が下肢に力を込めて押し付ける。

「ひ、秀臣っんんああーーーっ」
全てを収めると礼汰が両手を突っ張りブルブルと震えながら上半身と顔を大きく仰け反らせ咆哮を上げた。いつもよりきつく締められた浅賀も心地よさに釣られ、礼汰の腰を鷲掴み下肢を押し付けながら上体を反らせた。

精を吐出し終えた礼汰が崩れるようにベッドに沈み込んだ。浅賀は礼汰に覆いかぶさるように上から抱きつく。
「感極まって出しちゃったの、礼汰」
浅賀が礼汰の顔を見つめながら囁く。
「うん。今日はいろいろあったし。でも悪い、あんたまだなのに」
興奮冷めやらぬ礼汰が申し訳なさそうに浅賀の頬に手を当てた。
「礼汰が気持ちいいなら私も感無量です。でもまだまだ付き合ってもらいますからね」
浅賀は礼汰とともに体を起こし、礼汰の両膝を掬い上げると後背位からピストン運動をし始める。
「いつもより深い」
礼汰の自重で浅賀を深く受け入れる。浅賀の興奮が浅賀の体を通じて礼汰に何度も送り込まれる。

「クリ、触ってぇ」
礼汰が甘えると浅賀が礼汰の両足の拘束を解き、礼汰のペニスを両手で包む。左手でエラの括れを扱き右の手のひらを亀頭の先端に被せるように押し当てて擦り上げる。
「んああ、いい、いいよぉ」
礼汰が気持ち良さそうに啼き声で確認しながら浅賀もピストン運動を続ける。

「クリ、好き。礼汰、クリ、好き」
礼汰は夢中になると自分を名前呼びする。平静時の男らしさから一転するこの豹変も浅賀には魅力的だった。
「いっぱい擦ってあげる、礼汰」
浅賀は礼汰の奥を突き上げながら礼汰のペニスを刺激し続けた。
「あん、秀臣、もう止めて、ゾワゾワしてなんか漏れそう」
礼汰が浅賀を制すると浅賀は再び礼汰の両足を掬い上げた。
「あん、あ、あん。出る、もう無理ぃ。秀臣、ひで、お」
浅賀が礼汰の唇に喰らいついた瞬間。

ビュッ、ビュッ、ビュッ。
M字に開かれた下肢の中心から三度に渡り潮が噴き出すと、礼汰のペニスが力尽きてくたりと垂れ下がった。浅賀はその瞬間を見逃さなかった。初めて目の当たりにした光景に浅賀の興奮が頂点に達し、下肢を震わせた。

「ん、ん、んふっ」
潮を噴いた後の余韻と礼汰の中で広がる浅賀の熱い興奮に礼汰が満足そうに鼻音を繰り返す。

「礼汰、可愛かったよ」
ようやく礼汰の口を開放した浅賀がギュッと抱き締めた。
「潮噴くくらい気持ちよかった?」
浅賀が喜々として礼汰の目を覗き込んだ。
「潮噴きしたのか、俺」
礼汰が視線を逸らして下を向く。
「礼汰?」
浅賀が不安そうに名を呼ぶと「やっぱ嫁ポジションは俺じゃん」礼汰が屈託のない笑みを浅賀に返した。浅賀は胸が熱くなり礼汰を力強く抱き締めた。
「最高の嫁を貰えて私は果報者です。一生、私の嫁でいて下さい」
浅賀は改めて誓いを立てた。


「俺の名前は【譚 貞太郎】(Tan Teitarou)。この名前を聞きゃあ俺の職業は誰でもわかるだろ。そう、俺は探偵。そしてこの【探偵太郎事務所】(Tanteitaroujimusyo)の社長だ。俺のクライアントは世界中のセレブたち。俺の敏腕に世界中から依頼が殺到する。そして今もまた俺を頼って一人の」
「あんた、いつまで鏡とくっちゃべってんだい。早く電話出なよ、うるさいね」
譚の目の前の鏡に泣く子をあやす女がくっきりと青筋を立てている姿が映る。
「俺のワイフは少しばかり気が短い」
そういいながら譚は携帯の通話ボタンを押した。
「はい。探偵太郎事務所。
お、お世話になってーおります、宮内COO。はい、どうもすみませんです。ちょーっと仕事が立て込んでおりまして」
『そうか、なら今回は他に回すか』
「そんな事おっしゃらず。宮内COO様あっての我が探偵事務所ではあーりませんか」
『別に無理しなくていいんだぞ』
「何をおっしゃる。宮内COOの依頼とあればこの譚 貞太郎たとえ火の中水の中。一生ついてまいります」
譚が直立不動で背筋をピンと伸ばす。
『そうか、安心した。今回の依頼は』
譚の電話の主はヒカルだった。ヒカルは譚にある事を依頼した。

「ひぇー、危ない危ない。久しぶりの依頼がパーになるとこだったぜ」
冷や汗をかいた譚が携帯を切り再び鏡を見つめた。

「俺の名前は譚 貞太郎。この名前を」
「あんた、いつまでそうしてる気だい。COOからの依頼ならがっぽりふんだくれるだろ。最近しょぼい依頼しかなくてこっちはイライラしてんだ。事務所の家賃もあるしさっさと稼ぎにいってきな」
譚は追い出されるようにぼろアパートの一室から放り出された。


「ヒカルさん、今度ミカ君をここに呼んでもいいかな?一緒に勉強したいって言われて」
慧が不安げにヒカルに尋ねた。
「ああ、最近できたお前の大学の友人か」
ヒカルは慧の口からよく出る名前に無関心そうに「お前の好きにしろ。お前の家なんだから」とぶっきら棒に答えた。
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