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【朝顔】Asagao
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「今週の土曜日に中学校時代の生徒会の同窓会があるんですけど出席してもいいですか?」
ある日の夕食後の片づけをしながら紫上がヒカルに同意を求めるように問いかけた。
「中学の同窓会?この十年何もなかったのに、か?」
ヒカルの表情が僅かに曇った。
「はい。十年ぶりだから集まろうって先輩から久しぶりに連絡があったんです」
紫上がおずおずと説明すると、ヒカルは目線だけを紫上に向けた。
「ふーん。もしかして、あの野郎も来るのか?」
ヒカルの声のトーンが下がった。ヒカルの言うあの野郎とは中学時代に紫上に告白し、紫上の首元にキスマークを付けた奥尻 礼汰を指していた。結果、ヒカルと紫上は結ばれたが、それを口にする勇気は紫上には無かった。
ヒカルの雰囲気で察した紫上は、まさかその礼汰からの誘いだとは言えなくなった。
「はい。礼先輩も、来ると、思います」
紫上はヒカルを刺激しないように気を使った発言をした。嘘が下手な紫上の態度で大体を予想したヒカルは社から持ってきた社内報を鞄から取り出し、リビングのソファにドカリと座るとそれに目を通し始めた。
「だめ、ですか?」
何も言わないヒカルに、紫上が困ったような表情を浮かべた。
「いいんじゃねーの、十年ぶりに会うんだろ」
ヒカルは社内報を読みながらぶっきら棒に答えた。
「なるべく遅くならないように帰ってきますね」
ヒカルに許しを貰った紫上は嬉しそうに、そしてホッとして微笑むと皿洗いを再開した。
紫上の姿を横目に見たヒカルは再び社内報を読み始めた。
四半期ごとに発行される社内報の今回のメインはもちろんのこと朱雀の結婚記事だった。
「五輪モータースとの業務提携の裏にはこんなからくりもあったのか」
ヒカルはフンと鼻を鳴らして社内報を放り出した。
朱雀に別れを告げられた月夜は一週間ほど社を休んだが、その翌週からは何事も無かったかのように出社するとヒカルの元で働き始めた。人前では平静を装いながらも、月夜の心は鬱々としていた。
実家に戻ることが出来ない月夜に、朱雀の購入したマンションの名義を月夜に変更したとの連絡をヒカルから受けた月夜は、その後も二人で暮らしていたマンションに暮らしていた。真っ暗なマンションに一人戻ると月夜はキッチンへと真っ直ぐに向かった。
「ちくしょう。バカ朱雀。こんな広いマンション、僕一人でどうしろっていうんだよ。手切れ金のつもりかよ」
シンクを握り締める月夜の指から血の気が引く。朱雀が出て行った後も、月夜はすべてそのままの状態にしていた。そんな時、ふとぺティナイフが月夜の視界にはいった。最後に朱雀が月夜のために調理した時に使い、洗った後入れておく洗いかごの中にある食器やまな板の隙間からきらりと光ったのが目に付いたのだった。月夜は何とはなしにそのぺティナイフに手を伸ばした。
「痛っ」
日頃料理を一切しない月夜が誤って、刃の部分に手を伸ばしたため指先が切れてしまったのだった。月夜は慌てて血の出る指を口に加えると、ハッとしたように顔を上げた。月夜の中に澱のように溜まる朱雀に対してのどろどろとしたものが、ぺティナイフで指を切った瞬間にスーッと消えたように感じたためだった。月夜の心臓がある種の高鳴りを覚えるのを月夜は痛みとともに甘受しながらキッチンに佇んでいた。
その日から、月夜の自傷行為が始まりを迎えた。
奥尻 礼汰は某大学の理学部数学科を卒業した後、大学院へと進んでいた。礼汰は指示する助教授である【浅賀 臣】(Asaga Omi)の部屋にいた。
浅賀は三十二歳という若さで助教授を務め、ストイックな雰囲気と端正な顔立ちで女子学生からも人気があり、専門である統計学の著書もいくつか出版していた。
「私の専門は統計学ですが、人間の心にも大いに関心があるんですよ」
浅賀は時折ブレイクタイムに礼汰に持論を聞かせていた。
「奥尻君は今まで何人の女性と付き合ったことがありますか?」
浅賀は唐突にこう切り出した。
「俺ですか?そうですね」
礼汰は顎に手を当て俯くと数秒考えた後、浅賀の方に向き直った。
「十人位、ですかね」
「ほー。それはまた」
浅賀が礼汰に感心したように相槌を打った。
「あれ?多いですか?俺あんまり執着心がないみたいで、女の子から告白されて付き合っても、長続きしないんですよね」
礼汰が恥ずかしそうに俯くと、浅賀に切り返した。
「ちなみに先生は?」
「私は二人。二人ですよ」
穏やかな口調で浅賀も正直に答えた。
「えー?二人ですか?」
礼汰が驚いたように大きなリアクションをした。
「君に比べたら少くないですね。でも私は一度お付き合いをした人をなかなか手放せない性格でね」
浅賀が真っ直ぐに礼汰を見据えた。
「でもつい先日、別れたばかりなんですよ」
あっけらかんと話す浅賀の態度には、つい先日恋人と別れた傷心は一切無かった。
「どうしても手に入れたいという衝動が抑えられないほどの人物に出会ってしまいましてね。私から別れを切り出したんですよ。ですがどうやってアプローチしたら良いものかと心を痛めていましてね」
浅賀の発言に礼汰が身を乗り出した。
「先生ほどの人なら、百発百中なんじゃないですか?先生、モテますし、世間的地位だってあるじゃないですか」
礼汰が一般論を持ち出した。
「だといいのですけどね」
浅賀が困り果てたと言う顔をすると、逆に礼汰に聞き返した。
「奥尻君は執着しないと言っていましたが、本当に今までに誰もいなかったのですか?」
浅賀の問いに礼汰は迷うことなく答えた。
「いえ、実は一人だけいるんですよね。俺にも」
礼汰の意外な発言に今度は朝賀が食いついたように身を乗り出した。
「ほおー。学部内だけじゃなく大学内でモテ捲くっている君ほどの人物に、ですか?」
「止めてくださいよ、俺、そんなにモテ捲くってないですよ。それに中学の時の話ですから。まだ餓鬼の頃の思い出ですよ。でも十年ぶりにそいつに会うんですよ、今週の土曜日に。ちょっと楽しみなんですよね」
礼汰が照れくさそうに笑うと、浅賀も釣られたように微笑み返した。
「では、十年ぶりの再会でもう一度その方に」
「いえいえ」
浅賀の言葉を遮る様に礼汰が手を浅賀に翳した。
「中学の卒業式の日に告って玉砕したんですよ。今更そんな」
朝賀が礼汰の目をじっと見つめて眼鏡を外した。
「欲しいものは待っていても手に入らないものですよ。少々強引でも人は絆される生き物ですからね。奪うくらい情熱的な方が相手の心も引き摺られやすいんですよ。例えば一度肉体関係を結んだ相手とはあまり好意を持っていなくても体のほうは引き摺られてしまうものです。そうしているうちに心まで引き摺られてしまう確率は意外に高いんですよ」
浅賀の持論に礼汰が反論した。
「でも、それってレイプと変わらないじゃないですか。こっちは好きでも相手にとっては」
浅賀は言葉を続けようとする礼汰の口元に人差し指を近づけて制した。
「それは子供の心理です。大人はそうではないのですよ。
子供の頃は視野も世界も狭い。しかし時を隔てるにつれて多くの情報を貯えます。知識、経験、そして感情を。その感情こそが人たるゆえん、なのです。君も二十五年の人生の中で割り切れなかった経験、ありませんか?その時は割り切れなくてもその後の歳月や様々な経験によりその割り切れなかった感情がいつしか消化されることもあるのです」
浅賀の発言が礼汰の中で封印していた何かを引きずり出した。礼汰の目の奥で光る黒い影を見つけた浅賀は無表情のまま穏やかな笑みを浮かべていた。
「飲み会は今晩か。嫌な予感しかしねえんだよな」
土曜の昼下がりにヒカルはリビングでタバコをふかしながら独り言を呟いた。
「信じてねえ訳じゃないんだが」
ヒカルは大きくタバコの煙と共に溜息を吐き出すと同時に立ち上がり、寝室に置いてある鞄の中から封の切っていないパッケージを取り出して中身だけをスラックスのポケットに捻じ込むと、紫上のいるバスルームへと向った。
「紫上、お前何時に出かけるんだ?」
バスルームで洗濯物を干していた紫上がヒカルの言葉に振り向いた。
「あと一時間位したら着替えて出かけようかと」
紫上がヒカルに貰った腕時計の文字盤を見て答えた。
「じゃあ、十分間に合うな」
ヒカルはそのまま中へと入り、フワリと紫上を抱き締めた。
「間に合うって、何がですか?」
ヒカルの腕の中の紫上が意味もわからずにヒカルの目を見つめた。
「俺の悪巧み」
ヒカルはそれだけを言うと、紫上に口付けた。動揺しつつもヒカルの舌に応える紫上がヒカルにされるがままに受け入れた。紫上の上顎を舌でくすぐるように撫でると、「んふっ」と紫上が鼻から吐息を零す。暫くすると呑み込め切れない唾液が紫上の口元から溢れ出た。徐徐に体から力の抜ける紫上を正面から救い上げる様に抱き上げると、紫上がヒカルの腰に足を絡ませてしがみ付く。ヒカルは互いの下肢の温度を確認する様に引き寄せた。
「お前の、もう硬くなってる」
口付けの合間にヒカルが囁き、互いの熱を持った下肢を擦り合わせた。ヒカルの色を伴った声色に紫上が反応する。
「ああっ」
紫上が僅かに声を発すると、ヒカルはすぐさま口付けを再開した。
ヒカルは口付けを離さないまま紫上と寝室へと入り、優しく紫上をベッドの上に下ろした。ヒカルは紫上に問い詰める機会を与えないように紫上の口内を愛撫しながら、紫上のスラックスを脱がせた。
「ん、んん」
紫上が何かを言いたげに口を開くが、すぐさまヒカルに口を覆うように塞がれた。ヒカルはその行為の先を強引に推し進めた。ヒカルは自らのスラックスのジッパーを下し既に剛直になっているペニスをすぐさま紫上の中に挿入れ始めた。ヒカルに口を塞がれて言葉を発することができない紫上が何度も鼻音を出すが、ヒカルが下肢を打ちつけると、それは喘ぎに次第に変わっていった。
「ん、んーっ」
程なくして紫上が体を震わせて達すると、ようやくヒカルが紫上への口付けを離した。
「イッたか」
「ヒカルさ、どうして?」
紫上が戸惑いと事後の余韻の目をヒカルに向ける。
「今朝もしたからな、でかい方の便所はまあ、大丈夫だろ」
ヒカルが紫上の疑問には答えることなく独り言を呟いた。ヒカルは紫上にゆっくりと下肢を打ちつけながら今度は自らの快楽を得るように動き始めた。
「あまり突いたらやべえか」
ヒカルがまたしても独り言を呟くと、おもむろに繋がったまま紫上の体を反転させ、二人が繋がった場所に体重を掛けるように押し付けながら下肢を何度も打ちつける。その度にベッドのスプリングがギシッと悲鳴を上げた。
「脚、開け」
紫上はヒカルに従ってシーツの上で足を滑らせる。ヒカルはカエルの様に割り開かれた紫上の尻を両手で大きく開きながらなおも下肢を打ちつけた。紫上はシーツを握り締めながら喘ぎを抑えていた。徐々にヒカルの下肢が紫上の中に重さを伴って突き刺さる。
紫上は短い呼吸を繰り返しながらシーツを握る手に力を込めた。
「出すぞ」
ヒカルはそのまま上半身を仰け反らせながら下肢を震わせて息を吐いた。体の奥深くでヒカルの精を受け取った紫上が「んああっ」と一啼きした。
ヒカルは息を吐きながらもより奥へ押し込むように小刻みに下肢を埋め込む。精を全て開放しきったヒカルは、紫上の中からペニスを引き抜く際に竿に残る残渣までも出し切るようにリング状にした指に力を込めた。抱かれた後、体に力の入らない紫上はベッドにうつ伏せたまま動かなかった。それを知るヒカルはスラックスのポケットから卵の形状をした物体とステンレス製の輪になった部分がワイヤーで繋がった何かを取り出して、卵の形状の物を紫上の尻の奥深くに埋め込んで紫上の体を反転させて仰向けにすると、今度は反対側の輪になっている方を紫上の睾丸の根元嵌め、外れないように合わせ目の部分にカチャリと鍵を掛けた。
「ヒカルさ、これ何ですか?どうしてこんな事?」
紫上が戸惑いと不安の色を隠さないままにヒカルを見つめていた。
「悪りいな。お前のことは信じてるが、他の奴らは信じられねえんだ。単なるお守りだ。腹、壊す前に帰って来い」
ヒカルは自らのペニスの先に僅かに残る精液を掬い取り、紫上の耳の後ろに塗りつける動作のカムフラージュのために紫上の頭を撫でた。
紫上は頬を染め、下肢の違和感にもじもじしながらマンションを後にした。
紫上が出て行くのを見送ったヒカルは、リビングで一服しながら携帯で何かを操作し始めた。
同窓会の待ち合わせの居酒屋で十年ぶりに顔を合わせた元生徒会メンバーに会った紫上の記憶は、ものの一時間ほどで途切れた。
「おい、兵部大丈夫か?」
「お前が酒はあまり飲めないって言ってた兵部にビール飲ませたからだろ」
「まさかこんなに弱いなんて思ってなかったんだよ」
悪い悪いと言いながら、礼汰が周りから非難を受けつつも、心の中ではほくそ笑んでいた。
「おい、宮田の奴も寝ちまったのか?弱いなあ。あいつ、兵部の残したビールを間接キスだってがぶがぶ飲んだからじゃねえ?ったく」
それから生徒会の元メンバーたちは二時間ほどで一次会をお開きにした。
「おい、起きろ宮田。やべえ、全然起きねえな。しゃあねえ、引き摺ってくか。おい、礼汰、二次会はカラオケだぞ。知ってんだろ、場所。宮田は俺が連れてくから」
礼汰に声を掛けた男に「俺、兵部送ってくわ」と言うと礼汰は酔って寝ている紫上の腕を肩に回して他のメンバーを見送った。
礼汰はすぐ脇で目を閉じる紫上の横顔を見た。
「ますます綺麗になったな。にしても腹立つ。どうせお前の好きだって言ってた奴なんだろ?そんな男の匂い付けて来て。普通気がつくだろ、その匂い。ったく、半端ねえ独占欲じゃん、そいつ」
礼汰の心に激しい嫉妬と共に黒い欲望が渦巻いていた。
「俺が奪ってやる、そいつから」
礼汰はホテル街の方へと紫上を誘った。
ホテルの部屋に着いた礼汰ははやる気持ちを抑えきれずに紫上の服を脱がし始めた。シャツのボタンを外し、露になった紫上の肌が白く艶かしくホテルの薄ぐらい部屋の明かりに晒された。
「やっぱ綺麗だ。俺が抱いたどんな女より」
礼汰がごくりと喉を鳴らした。
礼汰はもっと見ようと紫上のスラックスを脱がせ、ボクサーパンツを剥ぎ取った瞬間息を飲んだ。
「なんだよ、これ?」
礼汰の目は紫上の下肢に釘付けになった。紫上の睾丸の根元に嵌る銀色のリング。そしてそれに繋がるワイヤーの先は紫上の尻の中へと消えていた。礼汰は迷うことなくそのワイヤーを引っ張ると卵の形をした物がずるりと姿を現した。
「な、何なんだよ、これは?」
紫上の睾丸で止められたリングは力づくでは外せぬ仕組みになっていた。
「ローター?お前、いったいどんな奴と付き合ってんだよ」
礼汰がワナワナと震えていると、紫上の尻からコプッと何かが流れ落ちてきた。
「ちょっ」
それが何であるかは男である礼汰には一目瞭然だった。
「匂い付けるだけじゃなくてこんなのも仕込んでたのかよ、兵部に」
「うーん」
紫上が僅かに身じろいだが、起きる気配は無かった。
「くそっ。なら俺もヤッてやる」
礼汰が自分の服を脱ぎ始めた、その時だった。
「フロントの者です。先ほどの会計にミスがありまして」
ノックと共に男の声が礼汰の耳に届いた。
「くそっ、いいとこなのに」
礼汰が苛立ちながらドアに近づいてドアスコープを覗いたが真っ暗で何も見えなかった。仕方なく礼汰がドアを開けた。
「んぐっ」
と同時に礼汰が鳩尾を押さえながらその場に崩れ落ちた。
「やっぱりな」
そこに立っていたのはワイヤレスのイヤホンを付けたヒカルだった。ヒカルはドアスコープを人差し指で押さえ中から外を見えなくさせて礼汰にドアを開けさせたのだった。
「盗聴器、仕込んどいて正解だったな」
ヒカルはベッドで眠る紫上をチラリと見るや否や腹を押さえたまま動けない礼汰を引き摺りのベッドヘッドに引っかかるように通し、痕が残らない手錠を両手に嵌めた。
「な、何すんだ?」
ガチャガチャと金属音を立てながら、辛うじて声を発した礼汰がヒカルを睨む。
「それはこっちの台詞だ。お前こそ俺のもんに何しやがんだ」
ヒカルがドスの利いた声で礼汰を見下ろすと礼汰が怯んだように大人しくなったが、それだけではなかった。ヒカルのおそろしい程に整った顔立ちに目を奪われたのだった。
「お前、モデルか何かか?お前か?お前だろ?お前が兵部にこんな仕打ちしたんだろ」
礼汰はヒカルの凍りつくような圧と目を見張る容姿にそれ以上言葉が出なかった。
「俺はこいつの旦那だよ」
「旦那って、日本じゃ結婚できねえだろ」
礼汰の威勢にヒカルがフンと鼻で笑い、礼汰の傍で横たわる紫上の衣服を整え始めた。
「兵部じゃねえ、今こいつは宮内だ。俺の籍に入ってるんでね」
紫上の衣服を元に戻したヒカルが今度は礼汰に近づいた。
「他人のもんは獲ったらいけねえって学校で習わなかったのか?」
「兵部にこんなことするあんたより、ずっと俺の方が兵部を大事にしてやれる」
礼汰の台詞にヒカルは再び鼻で笑うと、「しかたねえな」と呟いた。
「なら、二度とそんな気にならねえ様に仕置けしかねえな」
ヒカルはクラッチバックの中から三つの物を取り出すと、礼汰の服を剥ぎ取り体に取り付けた後、紫上を抱き上げると「大人しくそこで待ってるんだな」と捨て台詞を残して部屋を出て行った。
部屋を出たヒカルは同じフロアの別の部屋の鍵を取り出して中へと入ると紫上をベッドに寝かせて布団を掛け、部屋に鍵を掛けて礼汰のいる部屋へと戻った。
「おい、これ外せよ」
ガチャガチャと手錠を慣らしながら礼汰はベッドの上でもがいていた。
「言ったろ。もう紫上にちょっかい出そうなんて気にならなくするって。
気持ちいいだろ、尻とおっぱい」
ヒカルはベッドサイドに座ってタバコに火をつけた。礼汰に着けたのはエネマグラと乳首専用のローターだった。
ヒカルはのんびりと一服しながら礼汰を放置した。
「んああ、やだ、これやだ」
その間も礼汰はもがき続けたが、暫くすると甘い声を上げながら下肢をシーツで擦り始めた。
「初対面の俺の前でオナニーショーする気かよ」
ヒカルが鼻でせせら笑うと、「でも、それはダメだ」と言ってタバコを灰皿に置き胸ポケットからリップクリームを取り出した。
礼汰の体を無理やりごろりと反転させたヒカルが礼汰の硬く熱を帯びた下肢の中心をまじまじと見つめた。
「折角尻で気持ちよくなるために付き合ってやってんだ。ダメだろ、オスみたいに腰振ったら。腰振るのはオスの役目って相場が決まってんだ。これからメスになるお前にはもう必要ねえ。オスに腰振られて啼くメスのお前にはな」
ヒカルは暴れようとする礼汰の両足を体重を掛けて両すねで押さえつけ、リップクリームを満遍なく礼汰のペニスに塗りつけた。そのリップクリームは昔、雅に使用した物と同じ、痺れ薬の配合された物だった。
「くそ、何塗ってんだ。止めろ」
礼汰が涙目になりながらヒカルを睨む。
「もう終わったぜ」
ヒカルはそれから一時間も礼汰を放置した。初めのうちはシーツにペニスを擦り付けていた礼汰だったが、痺れ薬が効く頃にはペニスの感覚が麻痺したせいで直接的な刺激を得られないためかベッドに体を横たえたままひたすら喘いでいた。
「やだ、来る、また来る」
エネマグラのお陰で礼汰は初めてに関わらず何度も中イキを繰り返した。
「もうやだ、女になんてなりたくない」
礼汰が啜り泣きし始めた頃だった。
「コンコン。フロントの者です。先ほどの会計にミスがありまして」
ドア越しに男の声がした。
ヒカルがドアスコープから覗くと、ワイヤレスのイヤホンを着けた端正な顔立ちの眼鏡を掛けた男が立っていた。その男を一目見たヒカルが鼻でせせら笑いハッと息を吐き出すと迷うことなくドアを開けた。
「てめえの差し金か、臣」
ヒカルはその男に開口一番にそう呟くと、男は不敵な笑みを浮かべた。
「まさか。私のかわいい生徒が毒牙の手に掛かるのを阻止しようと思っただけですよ」
「どうだかな。どうせ発信機と盗聴器でどっかから見張ってたんだろ」
ヒカルは疑いの目で男を見ると、男は眼鏡を外し優雅な手つきで上着の内ポケットへと仕舞った。
「おやおや、ずいぶんな言いようですね?小学校のクラスメイトの私にむかって。それに発信機と盗聴器はお互い様ですし、貴方のように体の中に隠すなんて悪趣味なことはしてませんよ。私は奥尻君の誕生日プレゼントに送ったキーホルダーに仕掛けておいただけですから」
男はベッドに転がっている礼汰に近づくと礼汰の痴態を舐める様に観察した。過ぎた快楽の熱に浮かされた礼汰の顔を自分に向けさせると男は礼汰に話しかけた。
「奥尻君、私ですよ、わかりますか?」
その声に反応した礼汰は男に懇願した。
「先生、助けて、先生」
その男は礼汰が慕う大学助教授の浅賀だった。
「大丈夫ですよ、私に任せてください」
浅賀の言葉に礼汰が安堵したのを確認すると、浅賀は再びヒカルに向き合うとこう告げた。
「よくここまで仕込んでくれましたと礼をいいます。でも、ここから先はいけません。男にとっての初めての雄は一生忘れられない記憶に残りますからね」
浅賀はにこりと微笑んだ。
「ですからその役目は私じゃないと」
浅賀の言葉にヒカルは溜息をついた。
「今日のところは引くが、コイツが今後もし俺のもんに手を出すようなら今度は容赦しねえぞ」
ヒカルの威圧的な態度にも動じる気配のない浅賀は再びにこりと微笑んだ。
「大丈夫ですよ。貴方のご心配には及びません。これから奥尻君を私専用の雌に躾けて私が一生奥尻君の面倒をみますから」
「一生面倒見るんならせいぜい可愛がってやるんだな」
ヒカルは一言だけ告げると部屋を出て行こうとした。
「あ、忘れ物ですよヒカル君」
振り向いたヒカルに浅賀は手を差出した。
「あれの鍵を私にください」
浅賀の視線の先を追ったヒカルはポケットから手錠の鍵を浅賀に渡すと今度こそ部屋を出て行った。
ヒカルが出て行くと、朝賀はエネマグラと乳首のローターを外し、持っていたポーチから色々な物を取り出した。
「さてさてだいぶ雌化が進みましたね、奥尻君。君は雌化するとおちんちんがふにゃふにゃになるんですか?私としては硬くなっていてくれた方が好みなんですけれど」
「ちがっ、それは、あいつが変な薬塗って」
礼汰がよわよわしい口調で否定した。
「…ヒカル君、ですか。まあこの際どちらでもいいですけどね」
浅賀は穏やかに礼汰に微笑むと、礼汰に見られないように礼汰の腹部を跨いで座りその背中で隠すと、ゴム手袋嵌め、礼汰のペニスに極細の針の付いた注射器で局所麻酔を打った。
「糖尿病の方が打つインシュリン注射器と同じ針ですから痛みも感じないみたいですね」
「先生、何を、してる、ですか?」
礼汰が浅賀に息絶え絶えに尋ねた。
「処置が済んだら教えてあげますよ」
浅賀は礼汰の陰茎の裏側の部分に手に持ったニードルに押しあてて小さな穴を貫通させるとその穴に南京錠の掛け金の先を宛がった。鋭利に研がれている掛け金の先を浅賀は渾身の力を込めてその開けたばかりの穴に押し込んだ。
めりめりと掛け金が押し込まれていくが、礼汰は痛みを発しない為か力なくぐったりとしていた。ついに南京錠の針先が姿を現し掛け金が礼汰裏筋を通り抜けていく。
「私のネーム入りのフレナムはこれで完了。後もう一つは」
浅賀は小さめの極小のリングに丸い玉の付いた物を掛け金に通し、今度は陰嚢部分に再びニードルで開けた穴を通してその穴に南京錠の掛け金の針先を通し、出てきた針先を本体に開いている穴にそのまま押し込んだ。カチッという金属音がしてロックされると、それはハート型になった。ハート型の半分が南京錠の鍵本体、そしてもう半分がくり抜かれた掛け金になっていたのだった。
「ふう、これでハファダも完了ですね。私お気に入りのフレナムとハファダのコラボ、気に入っていただけるといいのですが」
礼汰のペニスの裏筋と睾丸が南京錠で一つの肉塊に変貌した。礼汰のペニスは陰毛から下に向かって睾丸で固定され、女の下肢のように平らに纏り、礼汰のペニスは二度と上を向くことは許されないように浅賀によって処置を施されたのだった。
一仕事を終えた浅賀は礼汰の方を向いて「出来ましたよ」と喜々とした表情で見やると、イキ疲れた礼汰はぐったりとしていた。
「これからがいいところなんですけれど」
浅賀はスラックスの前を寛がせて礼汰の中へ慎重にペニスを挿入れたが、寝息を立て始めた礼汰は夢の中で小さく喘ぐだけだった。
「一時間の休憩ですよ」
浅賀は礼汰の両膝の裏を両手で抑え、M字に開脚させながら自らの欲望を礼汰の中へ何度も押し込む。
「奥尻君の雌穴最高です。それに奥尻君のおちんちんと睾丸とを一体化させたハート型の南京錠もとても似合っています。こんなの着けたら挿入なんてまね、二度と出来ませんし、南京錠に通した丸い玉は発信機。女はもちろんのこと男漁りは絶対に許しませんから。まあ、この南京錠には私の紋章である朝顔が手彫りで装飾されていますから、その方面で男を漁ったとしても君をどうにかしようなんて命知らずな輩はいませんけどね。ああ、もちろん射精管理もお任せください。私は巷ではストイックなどと呼ばれていますが、こう見えて精力は強いんです。奥尻君には溜まる暇がないくらい毎日空っぽにしてあげますからね」
浅賀はピストン運動を与えられながらも根息を立てる礼汰に説明するように話しかけていた。
きっちり一時間後、浅賀はM字開脚で繋がったまま礼汰を起した。
「奥尻君、起きてください奥尻君」
ぼんやりと薄目を開けた礼汰は自分の置かれている状況が飲み込めずに口をパクパクと開けるばかりだった。
「せ、先生。俺、手錠嵌められて」
礼汰はようやく記憶の断片を思い始めていた。
「手錠は外しましたよ。だって、そんな無粋な物私たちには必要ないでしょう?」
浅賀は礼汰が全てを思い出し、暴れるのを懸念して意識のある礼汰を体から引きずり込む作戦に出た。
「あ、あっ、あっ」
浅賀は既に熟れ切っている礼汰の前立腺を熱い欲望で浅めに容赦なく擦り上げる。エネマグラで強制的に覚えさせられた快楽が礼汰を襲う。
「あ、ああっ、せんせ。やだ、だめ」
その度に礼汰はひっきりなしに嬌声を上げた。
「危ないところだったんですよ。君が見知らぬ雄に雌にさせられそうだったんですから」
浅賀はヒカルと顔見知りである事をあえて伏せた。浅賀の欲望により、礼汰の体は従順に快楽を集め増幅させていた。
「やあ、あっ、来る、くる」
「ですからね、そうなる前に私の雌にしたんですよ」
「な、で」
礼汰が快楽の渦にのまれながらも浅賀に尋ねた。
「言ったでしょう、どうしても手に入れたいという衝動が抑えられないほどの人物がいると。それが君、なんですよ」
雄の目をした浅賀の言葉に礼汰が目を見開いた。
「えっ、あん、俺?」
「そうですよ。どうやって手に入れようかと心を痛めていたのですが、怪我の巧妙でしたね」
雄の顔をした浅賀がピストン運動を早めた。
「や、くる、きちゃ、う」
礼汰が堪えきれずに中イキすると浅賀は一旦動きを止めた。
「これですっかり雌になりましたね、奥尻君」
浅賀が目を細めて嬉しそうな表情を浮かべた。
「君が眠っている間に君の体を私専用にさせてもらいました。ほら、私の所有物になった証を見てください」
浅賀は繋がったまま膝立ちすると礼汰の視界の先にあるペニスには既に礼汰の知るそれではなくなっていた。
「ああ、これじゃあ見えませんよね」
浅賀は怜汰の手を真新しく装着され南京錠へと導くと怜汰は悲痛の色を眼に浮かべた。
「や、やだ。何でこんな」
礼汰が泣きそうに顔を歪ませる。
「君の性に対する執着心の無さですよ、私が興味があるのは。だって、こうでもしないと君は言い寄る他の雌とすぐにセックスするでしょう?その防止策の一環ですよ」
「こんなの着けてたら俺もう、女の子と」
ついに礼汰の目から涙が零れ落ちた。
「私が君を一生面倒見ると決めましたから諦めてください。君の管理は私が全て引き受けますから安心してください。君がどんな風に絆されていくのかを見たいんですよ」
浅賀は再びピストン運動で礼汰の前立腺を擦り始めた。
「あっ、あっ、イッたばっか。やだ」
泣きながらも浅賀の送り込む快楽に啼く礼汰は浅賀に揺さぶられながら喘ぎ続けた。
「そうそう。雄の味をしめても浮気なんかできませんよ。君の居場所は二十四時間私が監視しますからね」
「じ、あん、人権、侵害。あ、ああっ。せんせい、またくる」
「雌になったとたんに随分と堪え性のない体になりましたね。他の雌とセックスしてる会話を聞く限りでは結構長持ちさせていたみたいですが、毎回一回なんてずいぶん淡白ですよね。それじゃあ雌を満足させられる雄にはなれませんよ。それだからこそまさに君は雌に選ばれし者なのですよ」
浅賀が目を輝かせて礼汰の耳元で囁いた。
「な、んで知って。あんっ」
礼汰が上体を捩って快楽を逃し始めた。
「君の中に挿入ってそろそろ一時間半。雌を満足させるには耐久時間と回数、そのどちらも必須なんですよ。それができない君はやはり雌なんです。私ももう限界です。さあ、味わいなさい。初めての雄の味を」
「あん、や、あんっ、やだ、出さないでー」
礼汰が断末魔のように叫び、礼汰が絶頂を迎えると同時に浅賀も礼汰の中で終わりを迎えた。
「先生の、爆発してる」と呟いた後、「あ、あああ、あああ」礼汰が快楽と絶望の入り混じった声を弱弱しく上げる。
「どうですか?始めての雄に体を開かれた気分は?君を直に味わえて感無量です。君を手に入れるこの日の事を心待ちにして、抜かずに溜めていた甲斐があります」
礼汰の中の収縮に押し戻されるように浅賀の出す精液が接合部がら溢れ出る。
「んん、いい。はあー。気持ち良くてまだ止まりません」
放心したように空ろな目をした礼汰が今度は静かに涙を流し始めた。
「諦めてください、奥尻君。君は一生私からは離れられないのですから」
浅賀が礼汰の耳にそっと告げた。
「ああ、でももったいないです。雌が雄の精液をこんなにはしたなく溢すなんて。まずは私の精液を零さずに飲めるようになってもらわないといけませんね、もう少し馴らしてからもっと深くで出してあげますね。これでも私は一回が長い方なんです。次に私が出すときまでには君の体は私を奥深くで喜びと共に受け入れることでしょう」
浅賀の微笑みは礼汰にとっては悪魔のように映った。
その後、浅賀の前立腺責めは礼汰が気絶するまで続けられた。礼汰が気を失うと浅賀は礼汰の体を担いでシャワーを浴びさせた後、再びベッドへと運んだ。
「意外に体力ないんですね」
浅賀が礼汰を見下ろした。
「まあ、別にどちらでもいいですけどね」
浅賀は礼汰の下肢の間に身を置いて礼汰の下肢をまじまじと凝視する。
「ヒカル君が使った薬は洗い流しましたからようやく可愛がってあげられますね」
浅賀は礼汰の亀頭の先端に舌を伸ばした。ぺろりとその先を舐めると意識のない礼汰の体がピクリと反応する。
「亀頭オナニー好きですもんね、君は」
浅賀は礼汰の部屋に仕掛けた隠しカメラで常に監視していたのだった。
浅賀はぺろぺろと舐めていた舌先を尖らせ尿道口へと捻じ込み内部をぐるりと一週させた。途端に礼汰が無意識に腰を上下に動かした。
「いけませんね、雌が腰なんか振ったら。腰を振るのは雄である私の役目なんですよ。ヒカル君にも言われたでしょう?」
浅賀は視界の片隅に入ったエネマグラを意識のない礼汰の尻に差込み、礼汰が腰を振らぬように両手でしっかりと押さえつけ再び尿道内に舌を這わせた。初めはゆっくりと時計回りに舐め、今度は反対周りにねっとりと舐め上げる。
「んくっ、んああっ」
礼汰が夢の中で声を上げる。浅賀は暫く舌先で礼汰のペニスを愛撫し続けた。礼汰が幾度も腰を上下に振ろうとするが浅賀によって阻まれ続けた。下肢の動きを封じられた礼汰はその代わりに上半身を幾度も撓らせ、時に仰け反りながら浅賀の与える快楽に包まれていた。
「君のペニスはもはや雌。クリトリスを弄ったら中が疼いて堪らなくなるまで止めませんからね」
浅賀のニヤリと微笑んだ先にいる礼汰の耳にはそれは届かなかった。
「イク、来る、イク」
礼汰が夢と現実の狭間で相反する言葉をしきりに繰り返す。
「そんなにここが好きなんですね。ちょっと舐められただけでビクビクさせて気持ちよくなれるんですね。亀頭オナニーの時も先ばかりを弄ってますし。やっぱり雌の才能ありますね」
浅賀が満足げに呟くと亀頭をすっぽりと咥えた上唇と下唇で大きく開かれた傘の部分を何度も強く食みながら舌先で尿道内を刺激した。
「んん、ああっ。くる、きちゃう」
下肢を押さえつけられたまま礼汰は浅賀の口内に盛大に精子を吐き出た。
「ふふっ、上出来。そろそろ、君の置かれた状況を把握してもらわないとね」
それを嚥下した浅賀は再び礼汰のペニスへ愛撫を再開した。エネマグラと浅賀の口で幾度も上り詰める礼汰の体は次第に浅賀の愛撫に飼い馴らされ、浅賀に拘束されなくても下肢を自ら振ることは無くなった。
「くる、くるぅ」
浅賀は礼汰が達する直前に亀頭責めを中断した。寸でのところで放り出された礼汰は「あ、やあっ、やあっ」と無意識に啼きながらしきりに雌の様に腰を振り始めた。
「いいですね、凄くいいですよ。淫乱でまさに雄に媚を売る雌です。
浅賀がうっとりと礼汰の姿を見下ろす。
「こんなに短時間で身の心も雌になった君にはご褒美をあげないと。でも、雌を喜ばすために腰を振るのは雄の仕事だと言いましたよね」
浅賀は礼汰の頬を軽く叩いて意識を取り戻させると、礼汰はまどろみながら焦点の合わない目を浅賀に向けた。
「せん、せ」
浅賀はエネマグラを外して変わりに自らの欲望をあてがった。
「さあ、今度こそ処女喪失です。君の真の処女膜突き破ってあげますね」
浅賀は正常位で礼汰に挿入れ、グッと再奥へと突き立てた。
「ん、やあっ」
奥を抉じ開けられた衝撃に礼汰が精子をぶちまけながら達した。
「君は本当にすばらしい」
浅賀は興奮の絶頂に包まれながら力強くピストン運転を繰り返し啼き疲れた礼汰の声が掠れる頃「君の初めてで唯一の雄に種付けされる悦びを身をもって知りなさい」と呟いて射精すると礼汰は「熱い、熱いよ」と魘されるように呟いた。
「君の体、今度は上手に全部飲み干しましたね」
薄らと汗の滲んだ額を拭うと浅賀は礼汰の体を繋がったまま伏せにした。
「次は雌らしく獣の姿で交尾しましょうね」
浅賀は礼汰の腰を持ち上げて掴み、猛烈な勢いで下肢をピストン運動し始めた。
「あん。やあ、あん」
浅賀の下肢の動きに乗じて礼汰の口から甘い嬌声が溢れ出る。
「雌は雄に翻弄されて可愛いく泣き叫ぶもの。やっと初夜らしくなってきましたね」
浅賀は有り余る精欲を礼汰にぶつけた。
「ご褒美です。クリトリスも触ってあげましょうね」
浅賀が礼汰の亀頭を人差し指で擦り始める。
「やぁ、ああ、あん、出る」
礼汰が堪らずに叫び始めた。
「出しなさい。雌は雄を喜ばせるために濡れるのですから」
浅賀が礼汰の亀頭をグリグリと抉る。
「あん、でちゃ、う」
礼汰が精液を吐き出しながら脱力した。浅賀は礼汰がイッた後もピストン運動しながら亀頭を抉る。
「や、やぁ、ああっ」
礼汰は嬌声を上げ続ける。
「そろそろ認めなさい、気持ちいいでしょう?雄に犯されるのは」
浅賀が雄の笑みを浮かべながら礼汰を見下ろす。
礼汰は浅賀にされるままに揺さぶられる。
「さあ、言いなさい。言って私専用の雌になりなさい。クリトリスをもっと苛めて、と。そうすれば君は楽になれるんですよ」
礼汰は浅賀に言われるがままに復唱した。
「せんせい、苛めて。礼汰の雌のクリ、もっと苛めて気持ち良くして」
礼汰がついに陥落した瞬間だった。
「ますます君のことが気に入りましたよ」
礼汰は浅賀に雌のように媚びる卑猥な言葉を何度も言わされながら犯された。
次の朝、浅賀よりも早く目が覚めた礼汰は昨晩を思い出しベッドから転げ落ちた。尻を伝う何かに手を伸ばし、それが精液と知ると慌ててそれをティッシュで拭い素早く服を着て逃げるようにホテルの部屋から出て行った。
礼汰の気配が消えた部屋では浅賀がニヤリと目を閉じたまま薄笑いを浮かべていた。
浅賀に鍵を渡して部屋を出たヒカルは紫上のいる部屋へと歩を進めた。
部屋の中の紫上は今だ夢の中にいた。
「起きろ」
ヒカルが紫上の名を呼ぶと、紫上はゆっくりと目を開けた。
「んん、ヒカル、さん?」
飲み会の途中で意識のない紫上は不思議そうな顔でヒカルを見つめた。
「お前が飲み過ぎて寝ちまったと俺に連絡があったんだ」
ヒカルは飲み会のメンバーには知り合いがいない事や礼汰に襲われそうになっていたことは敢えて伏せた。
「どうせ飲めねえ酒、飲んだんだろ。帰るぞ」
ヒカルは紫上を連れてマンションへと家路を急いだ。
マンションに戻ったヒカルは紫上をそのままバスルームへと誘った。
紫上に装着した発信機付きの盗聴器を外し紫上の体の隅々を洗った。紫上はいつもの日常にヒカルのされるがままだった。ヒカルは紫上のまだ柔らかいペニスをおもむろに口に含んだ。驚いた紫上は腰を引いてかわそうとしたが、それよりも早くヒカルのボディソープ付きの手が紫上の尻へと伸び、解しながら洗浄を始めたため、紫上はあられもなく啼く事しかできなくなった。シャワーの湯が紫上の尻を空にすると、ヒカルは今度は紫上の睾丸へとその標的を変えた。
「ヒカルさ、そこはだめ。そこはだめぇ」
紫上がヒカルの口を離そうとヒカルの肩に手を置くが力の入らない手ではどうすることもできなかった。取り残された紫上のペニスはピンク色を湛えたままフルフルと震えていた。ちゅぽんとヒカルが口から二つの玉を開放すると、紫上の体がぐらりと力なく崩れ落ちる。ヒカルはバスタオルで互いの体を拭うと紫上を抱えて寝室へと向った。
ベッドサイドに深く腰掛けたヒカルは後背位から紫上の中へと熱い肉棒を挿入れた。
「ん、んんっ」
紫上がその大きさに天井を向いた。ヒカルは気にすることなく紫上の右肩に左手を回して拘束し、右手で紫上の腹部を時計回りに撫で始めた。初めは優しく擦るようだった手触りが徐徐に紫上の腹の奥を撫でる様に力が篭る。
「えっ、えっ?」
すると動揺したように紫上が困惑の声を上げ始めた。ヒカルはなおも気にすることなく腹部を擦る手に力を込めた。
「あ、あ、ああっ」
紫上が目を見開いたまま小さく喘ぐ。
「気が付いたか」
ヒカルは紫上の肩口で独り言の様に呟いた。紫上は小さく被りを振りながら必死に何かに耐えていた。
「んんー」
セックスの最中にはほとんど声を発しないヒカルから快楽とも取れる唸り声が漏れた。
「ヒカルさ、ああん。ああっ」
いつもとは趣向が違う事に紫上が虚な瞳で振り返る。
「お前にもわかったろ。俺のを銜えるお前の中がもっともっとっていいながら奥へ奥へと引きずり込んでるのがな」
ヒカルは紫上の腹部への刺激を利用して、より深いところへと肉棒を潜り込ませたのだった。
「すげえ、な」
ヒカルが感嘆の声を上げた。
「いつもより興奮する」
ヒカルの声が上ずっているのが紫上にもわかった。
「その声だめです、あっあっ。イク、キスしたい」
イク時にはキスをせがむ紫上が力なく懇願する。
「だめだ。今日は仕置きだからな」
ヒカルは紫上の腹部をなおも撫でながら無慈悲に言い放った。
「早く戻れつったろ」
ヒカルの無慈悲な言葉とは裏腹に柔らかい口調に紫上は中から湧き起こる未知なる快楽に小刻みに体を震わせながら反省したように僅かに項垂れた。
「心配掛けやがって」
ヒカルは滅多に付けないキスマークを紫上の項に付く様に何度も吸い付く。
「あ、もう、イク、体が勝手に痙攣して。んああーっ」
紫上が大きく体を震わせながら絶叫した。ヒカルもまた呼応するように紫上の中で果てた。はあはあと肩で呼吸する紫上が放心したまま感想を漏らした。
「ヒカルさんの、こんな奥、始めて」
ヒカルは紫上の項の至るところに吸い付きながら「これで終わりじゃねえからな」と紫上へ囁いた。
「はい。沢山、してください。お仕置き」
ぐらりと前に倒れこみそうになる紫上の体をベッドの中央に引き摺り、伏せにさせて繋がった下肢のみを高く持ち上げると再び紫上の腹部を背後から回した手で撫で始めた。
「いい子だ。今晩は俺は動かねえぞ。こんなに奥まで挿入ったんだ。抜きたくねえからな。心配で気が気じゃなかった俺の気が済むまでお前にとことん俺を抱いてもらうぞ」
そう宣言したヒカルは早朝まで紫上の体を貪り続けた。
朝、紫上は腹の音で目が覚めた。
ぐるるる。
ハッとした紫上がトイレに行こうと身を捩ったが、ヒカルに羽交い締めされている紫上に抜け出す事は叶わなかった。
デジャヴに紫上の脳裏に過去の羞恥が過ぎったが紫上は諦めてヒカルを起した。
「ヒカルさん、トイレ、連れて行ってください」
強制的な便意にフルフルと震え耐える紫上にヒカルが紫上を後ろ抱きにする腕に力を込めた。
「ん、お前の中すげえビクビクしてんな」
悠長なヒカルの発言に切羽詰った紫上が声を張り上げた。
「は、早くしてください」
紫上の剣幕にヒカルはあくまでもゆっくりとした動作で紫上の体を包み込んだままで起き上がった。
「俺が中にいるんだからちょっとやそっとじゃ漏れねえよ」
生あくびをしてチュッとうなじに口付けるヒカルに紫上が下唇を噛んだ。
ぐるる。
「ん、はぁっ」
焦る紫上をよそにヒカルが音の発信源に手を当てた。
「すげえな、ここまで俺のが入り込んだのか」
昨晩の事を感慨深く回想するヒカルにお構いなしに紫上の腹が再び鳴った。
ぐるるるる。
ヒカルは素早く紫上の体を繋げたまま反転させた。
「ん、やあ、出る」
紫上があられもなく叫んだ。
「掴まってろ」
ヒカルが立ち上がると紫上はヒカルの体に足をしっかりと絡ませた。そしてヒカルに連れられてバスルームへと向かい、以前と同じようにヒカルの目の前で盛大に汚水を吐き出させられ、その後綺麗に洗われる羽目になった。前回と同じく紫上はまたしても脱兎のごとく寝室へと逃げ込んだ。
しかしそれから三十分も経たずに寝室から飛び出しトイレへと駆け込んだ。かつてないほどにヒカルを奥深くに迎え入れ、あまつさえコンドームなど使用しないヒカルにたっぷりと精を流し込まれたことで、いつもの洗浄では流し切れていなかったのだった。トイレに篭り便座に一人座る紫上は二度と同じ過ちを繰り返さないことを固く誓ったのだった。
「約束だ、亜衣は連れて行くぞ」
ヒカルは慧に冷たくそう告げた。慧は涙を堪えるかのように下を向いた。
「元々お前の役目は亜衣を俺のところへ連れてくるまでの約束だ。それに亜衣は俺の娘だ。お俺が育てるのが筋だ」
慧はヒカルの言葉を無言のままに聞いていた。
「出て行きたければ止めはしない。だがここから追い出すつもりはないから今までどおりここで暮らしてくれてかまわない。お前はまだ二十三だ、今後の自分の人生を考えるんだな。もし大学にでも行きたければ学費は俺が貸してやる。よく考えろ」
ヒカルは高卒のままドバイへ留学と言う名目の売春をしていた慧を案じて提案した。
「ありがとうございます。その件については少し時間をいただけませんか」
早急な決断を望まないヒカルは小さく「わかった」と告げた。
「でも、でも僕の、今の僕には亜衣が全てなんです。今更、僕たちの事を知ってしまった母のところへ戻れませんし、伯父も逮捕されてしまって」
一筋の涙が慧の頬を伝った。元々男にしては美しい顔立ちの慧は涙を流す聖母の様にヒカルには見えた。
「お願いです。抱いてください、もう一度。体だけでいいです。優しくしてほしいなんて言いませんから」
慧がヒカルのジャケットを握り締めて縋りついた。慧を哀れに思ったヒカルは「なら抱いてやる、自分で準備しろ」と抑揚無く言い放った。
リビングのソファで慧を抱いた後、ヒカルはソファに裸のまま力なく横たわる慧の傍に腰掛け、慧を見ることなくタバコに火をつけた。ヒカルの吐き出す紫煙とタバコからゆらゆらと立ち上る煙がリビングの天井に向って生き物のように蠢きながら形を変える。ヒカルはそれを見ながら口を開いた。
「明石 慶吾、お前の伯父がなぜ加納に手を貸したか、知りたいか?」
ヒカルの言葉に慧が手を付いて上半身を起した。その拍子に慧の尻の隙間からヒカルの精が溢れ出し慧の太股を伝った。慧は僅かに声を上げたが、ヒカルに話の続きを促すように上半身を捩ってヒカルを見つめた。そのしなやかでなまめかしい光景にヒカルの下肢がズクリと反応した。ヒカルが訪れるときだけ使われる灰皿でタバコの火を消すと再び口を開いた。
「脅されていたんだ、加納に」
慧は目でどうして?とヒカルに訴えた。
「明石 慶吾が、お前たちが実の父親だったからだ」
その衝撃的な内容に慧が口を半開きにしたまま硬直した。
「お前の母親が父親の事を言わなかったのは、言えなかったからだ。明石 由紀、お前の母親と明石 慶吾は実の兄妹で恋仲だった。そして授かったのがお前と姉の愛美だ。加納はどうやって知ったのかはわからねえがその事で明石 慶吾を脅した。断れば世間に公表する、とな」
「そんな、伯父さんが僕と姉さんの父親」
慧の顔から血の気が引く。今にも崩れそうな慧にヒカルは手を伸ばして慧の体を引き寄せ抱き締めた。ヒカルの優しい態度に慧が堰を切ったように泣き始めた。
「今までよく我慢したな」
泣きじゃくる慧に囁いたヒカルはスラックスのジッパーを下げ、再び熱く滾った肉棒を慧の中へと押し込んだ。その予期せぬ行動に慧が仰け反って嬌声を上げた。
「今は何も考えるな」
ヒカルは泣きながら啼く慧をひたすらに抱いた。
ヒカルは慧が気を失うまで抱きつぶすと、簡単に後処理をして慧を寝室へと運んだ。慧の頬に残る涙の痕をそっとなぞり、ヒカルは小さくため息をついた。
「これだから放っとけねえんだよな」
ヒカルが慧に呟いた後、亜衣を連れて紫上の待つマンションへと戻っていった。
「ヒカルと出かけるの初めてだ」
籐子の死後、たびたび冷泉の元を訪れていたヒカルは冷泉をある場所へと向かっていた。
「お母さんが死んだあの日から僕、ヒカルとの約束破ってないよ」
冷泉は『男ならもう泣くな。お前が泣いたら籐子が天国へ行けなくなる』というヒカルの言いつけの事を言ったのだった。
「そうか、えらいな」
ヒカルは冷泉の頭を撫でた。
「お前、またでかくなったな」
ヒカルは日に日に成長する冷泉に驚いた。
「当たり前でしょ、僕もうすぐ十五になるんだから」
冷泉は自慢するようにヒカルに伝えるとヒカルはもう一人の息子の事をふと思い出した。
(夕霧は十歳か)
ヒカルは滅多に会いにいかぬ夕霧に僅かながらの罪悪感を覚えた。
宮内家の菩提寺に着いたヒカルは冷泉と共に墓石の前に花とお供え物を置いて二人で手を合わせた。
ヒカルのこの行動は先日見た夢のせいだった。ヒカルの夢枕に立った籐子はヒカルに涙ながらに二人の関係は悔やんではいないが桐生に対しての裏切りに押し潰されそうだと切々と訴えていた。
その夢を見たヒカルは冷泉を連れて籐子の供養に来たのだった。
ヒカルが立ち上がってもなお手を合わせる冷泉を見つめるヒカルは、改めて冷泉を守る決心を強固な物にした。
ある日の夕食後の片づけをしながら紫上がヒカルに同意を求めるように問いかけた。
「中学の同窓会?この十年何もなかったのに、か?」
ヒカルの表情が僅かに曇った。
「はい。十年ぶりだから集まろうって先輩から久しぶりに連絡があったんです」
紫上がおずおずと説明すると、ヒカルは目線だけを紫上に向けた。
「ふーん。もしかして、あの野郎も来るのか?」
ヒカルの声のトーンが下がった。ヒカルの言うあの野郎とは中学時代に紫上に告白し、紫上の首元にキスマークを付けた奥尻 礼汰を指していた。結果、ヒカルと紫上は結ばれたが、それを口にする勇気は紫上には無かった。
ヒカルの雰囲気で察した紫上は、まさかその礼汰からの誘いだとは言えなくなった。
「はい。礼先輩も、来ると、思います」
紫上はヒカルを刺激しないように気を使った発言をした。嘘が下手な紫上の態度で大体を予想したヒカルは社から持ってきた社内報を鞄から取り出し、リビングのソファにドカリと座るとそれに目を通し始めた。
「だめ、ですか?」
何も言わないヒカルに、紫上が困ったような表情を浮かべた。
「いいんじゃねーの、十年ぶりに会うんだろ」
ヒカルは社内報を読みながらぶっきら棒に答えた。
「なるべく遅くならないように帰ってきますね」
ヒカルに許しを貰った紫上は嬉しそうに、そしてホッとして微笑むと皿洗いを再開した。
紫上の姿を横目に見たヒカルは再び社内報を読み始めた。
四半期ごとに発行される社内報の今回のメインはもちろんのこと朱雀の結婚記事だった。
「五輪モータースとの業務提携の裏にはこんなからくりもあったのか」
ヒカルはフンと鼻を鳴らして社内報を放り出した。
朱雀に別れを告げられた月夜は一週間ほど社を休んだが、その翌週からは何事も無かったかのように出社するとヒカルの元で働き始めた。人前では平静を装いながらも、月夜の心は鬱々としていた。
実家に戻ることが出来ない月夜に、朱雀の購入したマンションの名義を月夜に変更したとの連絡をヒカルから受けた月夜は、その後も二人で暮らしていたマンションに暮らしていた。真っ暗なマンションに一人戻ると月夜はキッチンへと真っ直ぐに向かった。
「ちくしょう。バカ朱雀。こんな広いマンション、僕一人でどうしろっていうんだよ。手切れ金のつもりかよ」
シンクを握り締める月夜の指から血の気が引く。朱雀が出て行った後も、月夜はすべてそのままの状態にしていた。そんな時、ふとぺティナイフが月夜の視界にはいった。最後に朱雀が月夜のために調理した時に使い、洗った後入れておく洗いかごの中にある食器やまな板の隙間からきらりと光ったのが目に付いたのだった。月夜は何とはなしにそのぺティナイフに手を伸ばした。
「痛っ」
日頃料理を一切しない月夜が誤って、刃の部分に手を伸ばしたため指先が切れてしまったのだった。月夜は慌てて血の出る指を口に加えると、ハッとしたように顔を上げた。月夜の中に澱のように溜まる朱雀に対してのどろどろとしたものが、ぺティナイフで指を切った瞬間にスーッと消えたように感じたためだった。月夜の心臓がある種の高鳴りを覚えるのを月夜は痛みとともに甘受しながらキッチンに佇んでいた。
その日から、月夜の自傷行為が始まりを迎えた。
奥尻 礼汰は某大学の理学部数学科を卒業した後、大学院へと進んでいた。礼汰は指示する助教授である【浅賀 臣】(Asaga Omi)の部屋にいた。
浅賀は三十二歳という若さで助教授を務め、ストイックな雰囲気と端正な顔立ちで女子学生からも人気があり、専門である統計学の著書もいくつか出版していた。
「私の専門は統計学ですが、人間の心にも大いに関心があるんですよ」
浅賀は時折ブレイクタイムに礼汰に持論を聞かせていた。
「奥尻君は今まで何人の女性と付き合ったことがありますか?」
浅賀は唐突にこう切り出した。
「俺ですか?そうですね」
礼汰は顎に手を当て俯くと数秒考えた後、浅賀の方に向き直った。
「十人位、ですかね」
「ほー。それはまた」
浅賀が礼汰に感心したように相槌を打った。
「あれ?多いですか?俺あんまり執着心がないみたいで、女の子から告白されて付き合っても、長続きしないんですよね」
礼汰が恥ずかしそうに俯くと、浅賀に切り返した。
「ちなみに先生は?」
「私は二人。二人ですよ」
穏やかな口調で浅賀も正直に答えた。
「えー?二人ですか?」
礼汰が驚いたように大きなリアクションをした。
「君に比べたら少くないですね。でも私は一度お付き合いをした人をなかなか手放せない性格でね」
浅賀が真っ直ぐに礼汰を見据えた。
「でもつい先日、別れたばかりなんですよ」
あっけらかんと話す浅賀の態度には、つい先日恋人と別れた傷心は一切無かった。
「どうしても手に入れたいという衝動が抑えられないほどの人物に出会ってしまいましてね。私から別れを切り出したんですよ。ですがどうやってアプローチしたら良いものかと心を痛めていましてね」
浅賀の発言に礼汰が身を乗り出した。
「先生ほどの人なら、百発百中なんじゃないですか?先生、モテますし、世間的地位だってあるじゃないですか」
礼汰が一般論を持ち出した。
「だといいのですけどね」
浅賀が困り果てたと言う顔をすると、逆に礼汰に聞き返した。
「奥尻君は執着しないと言っていましたが、本当に今までに誰もいなかったのですか?」
浅賀の問いに礼汰は迷うことなく答えた。
「いえ、実は一人だけいるんですよね。俺にも」
礼汰の意外な発言に今度は朝賀が食いついたように身を乗り出した。
「ほおー。学部内だけじゃなく大学内でモテ捲くっている君ほどの人物に、ですか?」
「止めてくださいよ、俺、そんなにモテ捲くってないですよ。それに中学の時の話ですから。まだ餓鬼の頃の思い出ですよ。でも十年ぶりにそいつに会うんですよ、今週の土曜日に。ちょっと楽しみなんですよね」
礼汰が照れくさそうに笑うと、浅賀も釣られたように微笑み返した。
「では、十年ぶりの再会でもう一度その方に」
「いえいえ」
浅賀の言葉を遮る様に礼汰が手を浅賀に翳した。
「中学の卒業式の日に告って玉砕したんですよ。今更そんな」
朝賀が礼汰の目をじっと見つめて眼鏡を外した。
「欲しいものは待っていても手に入らないものですよ。少々強引でも人は絆される生き物ですからね。奪うくらい情熱的な方が相手の心も引き摺られやすいんですよ。例えば一度肉体関係を結んだ相手とはあまり好意を持っていなくても体のほうは引き摺られてしまうものです。そうしているうちに心まで引き摺られてしまう確率は意外に高いんですよ」
浅賀の持論に礼汰が反論した。
「でも、それってレイプと変わらないじゃないですか。こっちは好きでも相手にとっては」
浅賀は言葉を続けようとする礼汰の口元に人差し指を近づけて制した。
「それは子供の心理です。大人はそうではないのですよ。
子供の頃は視野も世界も狭い。しかし時を隔てるにつれて多くの情報を貯えます。知識、経験、そして感情を。その感情こそが人たるゆえん、なのです。君も二十五年の人生の中で割り切れなかった経験、ありませんか?その時は割り切れなくてもその後の歳月や様々な経験によりその割り切れなかった感情がいつしか消化されることもあるのです」
浅賀の発言が礼汰の中で封印していた何かを引きずり出した。礼汰の目の奥で光る黒い影を見つけた浅賀は無表情のまま穏やかな笑みを浮かべていた。
「飲み会は今晩か。嫌な予感しかしねえんだよな」
土曜の昼下がりにヒカルはリビングでタバコをふかしながら独り言を呟いた。
「信じてねえ訳じゃないんだが」
ヒカルは大きくタバコの煙と共に溜息を吐き出すと同時に立ち上がり、寝室に置いてある鞄の中から封の切っていないパッケージを取り出して中身だけをスラックスのポケットに捻じ込むと、紫上のいるバスルームへと向った。
「紫上、お前何時に出かけるんだ?」
バスルームで洗濯物を干していた紫上がヒカルの言葉に振り向いた。
「あと一時間位したら着替えて出かけようかと」
紫上がヒカルに貰った腕時計の文字盤を見て答えた。
「じゃあ、十分間に合うな」
ヒカルはそのまま中へと入り、フワリと紫上を抱き締めた。
「間に合うって、何がですか?」
ヒカルの腕の中の紫上が意味もわからずにヒカルの目を見つめた。
「俺の悪巧み」
ヒカルはそれだけを言うと、紫上に口付けた。動揺しつつもヒカルの舌に応える紫上がヒカルにされるがままに受け入れた。紫上の上顎を舌でくすぐるように撫でると、「んふっ」と紫上が鼻から吐息を零す。暫くすると呑み込め切れない唾液が紫上の口元から溢れ出た。徐徐に体から力の抜ける紫上を正面から救い上げる様に抱き上げると、紫上がヒカルの腰に足を絡ませてしがみ付く。ヒカルは互いの下肢の温度を確認する様に引き寄せた。
「お前の、もう硬くなってる」
口付けの合間にヒカルが囁き、互いの熱を持った下肢を擦り合わせた。ヒカルの色を伴った声色に紫上が反応する。
「ああっ」
紫上が僅かに声を発すると、ヒカルはすぐさま口付けを再開した。
ヒカルは口付けを離さないまま紫上と寝室へと入り、優しく紫上をベッドの上に下ろした。ヒカルは紫上に問い詰める機会を与えないように紫上の口内を愛撫しながら、紫上のスラックスを脱がせた。
「ん、んん」
紫上が何かを言いたげに口を開くが、すぐさまヒカルに口を覆うように塞がれた。ヒカルはその行為の先を強引に推し進めた。ヒカルは自らのスラックスのジッパーを下し既に剛直になっているペニスをすぐさま紫上の中に挿入れ始めた。ヒカルに口を塞がれて言葉を発することができない紫上が何度も鼻音を出すが、ヒカルが下肢を打ちつけると、それは喘ぎに次第に変わっていった。
「ん、んーっ」
程なくして紫上が体を震わせて達すると、ようやくヒカルが紫上への口付けを離した。
「イッたか」
「ヒカルさ、どうして?」
紫上が戸惑いと事後の余韻の目をヒカルに向ける。
「今朝もしたからな、でかい方の便所はまあ、大丈夫だろ」
ヒカルが紫上の疑問には答えることなく独り言を呟いた。ヒカルは紫上にゆっくりと下肢を打ちつけながら今度は自らの快楽を得るように動き始めた。
「あまり突いたらやべえか」
ヒカルがまたしても独り言を呟くと、おもむろに繋がったまま紫上の体を反転させ、二人が繋がった場所に体重を掛けるように押し付けながら下肢を何度も打ちつける。その度にベッドのスプリングがギシッと悲鳴を上げた。
「脚、開け」
紫上はヒカルに従ってシーツの上で足を滑らせる。ヒカルはカエルの様に割り開かれた紫上の尻を両手で大きく開きながらなおも下肢を打ちつけた。紫上はシーツを握り締めながら喘ぎを抑えていた。徐々にヒカルの下肢が紫上の中に重さを伴って突き刺さる。
紫上は短い呼吸を繰り返しながらシーツを握る手に力を込めた。
「出すぞ」
ヒカルはそのまま上半身を仰け反らせながら下肢を震わせて息を吐いた。体の奥深くでヒカルの精を受け取った紫上が「んああっ」と一啼きした。
ヒカルは息を吐きながらもより奥へ押し込むように小刻みに下肢を埋め込む。精を全て開放しきったヒカルは、紫上の中からペニスを引き抜く際に竿に残る残渣までも出し切るようにリング状にした指に力を込めた。抱かれた後、体に力の入らない紫上はベッドにうつ伏せたまま動かなかった。それを知るヒカルはスラックスのポケットから卵の形状をした物体とステンレス製の輪になった部分がワイヤーで繋がった何かを取り出して、卵の形状の物を紫上の尻の奥深くに埋め込んで紫上の体を反転させて仰向けにすると、今度は反対側の輪になっている方を紫上の睾丸の根元嵌め、外れないように合わせ目の部分にカチャリと鍵を掛けた。
「ヒカルさ、これ何ですか?どうしてこんな事?」
紫上が戸惑いと不安の色を隠さないままにヒカルを見つめていた。
「悪りいな。お前のことは信じてるが、他の奴らは信じられねえんだ。単なるお守りだ。腹、壊す前に帰って来い」
ヒカルは自らのペニスの先に僅かに残る精液を掬い取り、紫上の耳の後ろに塗りつける動作のカムフラージュのために紫上の頭を撫でた。
紫上は頬を染め、下肢の違和感にもじもじしながらマンションを後にした。
紫上が出て行くのを見送ったヒカルは、リビングで一服しながら携帯で何かを操作し始めた。
同窓会の待ち合わせの居酒屋で十年ぶりに顔を合わせた元生徒会メンバーに会った紫上の記憶は、ものの一時間ほどで途切れた。
「おい、兵部大丈夫か?」
「お前が酒はあまり飲めないって言ってた兵部にビール飲ませたからだろ」
「まさかこんなに弱いなんて思ってなかったんだよ」
悪い悪いと言いながら、礼汰が周りから非難を受けつつも、心の中ではほくそ笑んでいた。
「おい、宮田の奴も寝ちまったのか?弱いなあ。あいつ、兵部の残したビールを間接キスだってがぶがぶ飲んだからじゃねえ?ったく」
それから生徒会の元メンバーたちは二時間ほどで一次会をお開きにした。
「おい、起きろ宮田。やべえ、全然起きねえな。しゃあねえ、引き摺ってくか。おい、礼汰、二次会はカラオケだぞ。知ってんだろ、場所。宮田は俺が連れてくから」
礼汰に声を掛けた男に「俺、兵部送ってくわ」と言うと礼汰は酔って寝ている紫上の腕を肩に回して他のメンバーを見送った。
礼汰はすぐ脇で目を閉じる紫上の横顔を見た。
「ますます綺麗になったな。にしても腹立つ。どうせお前の好きだって言ってた奴なんだろ?そんな男の匂い付けて来て。普通気がつくだろ、その匂い。ったく、半端ねえ独占欲じゃん、そいつ」
礼汰の心に激しい嫉妬と共に黒い欲望が渦巻いていた。
「俺が奪ってやる、そいつから」
礼汰はホテル街の方へと紫上を誘った。
ホテルの部屋に着いた礼汰ははやる気持ちを抑えきれずに紫上の服を脱がし始めた。シャツのボタンを外し、露になった紫上の肌が白く艶かしくホテルの薄ぐらい部屋の明かりに晒された。
「やっぱ綺麗だ。俺が抱いたどんな女より」
礼汰がごくりと喉を鳴らした。
礼汰はもっと見ようと紫上のスラックスを脱がせ、ボクサーパンツを剥ぎ取った瞬間息を飲んだ。
「なんだよ、これ?」
礼汰の目は紫上の下肢に釘付けになった。紫上の睾丸の根元に嵌る銀色のリング。そしてそれに繋がるワイヤーの先は紫上の尻の中へと消えていた。礼汰は迷うことなくそのワイヤーを引っ張ると卵の形をした物がずるりと姿を現した。
「な、何なんだよ、これは?」
紫上の睾丸で止められたリングは力づくでは外せぬ仕組みになっていた。
「ローター?お前、いったいどんな奴と付き合ってんだよ」
礼汰がワナワナと震えていると、紫上の尻からコプッと何かが流れ落ちてきた。
「ちょっ」
それが何であるかは男である礼汰には一目瞭然だった。
「匂い付けるだけじゃなくてこんなのも仕込んでたのかよ、兵部に」
「うーん」
紫上が僅かに身じろいだが、起きる気配は無かった。
「くそっ。なら俺もヤッてやる」
礼汰が自分の服を脱ぎ始めた、その時だった。
「フロントの者です。先ほどの会計にミスがありまして」
ノックと共に男の声が礼汰の耳に届いた。
「くそっ、いいとこなのに」
礼汰が苛立ちながらドアに近づいてドアスコープを覗いたが真っ暗で何も見えなかった。仕方なく礼汰がドアを開けた。
「んぐっ」
と同時に礼汰が鳩尾を押さえながらその場に崩れ落ちた。
「やっぱりな」
そこに立っていたのはワイヤレスのイヤホンを付けたヒカルだった。ヒカルはドアスコープを人差し指で押さえ中から外を見えなくさせて礼汰にドアを開けさせたのだった。
「盗聴器、仕込んどいて正解だったな」
ヒカルはベッドで眠る紫上をチラリと見るや否や腹を押さえたまま動けない礼汰を引き摺りのベッドヘッドに引っかかるように通し、痕が残らない手錠を両手に嵌めた。
「な、何すんだ?」
ガチャガチャと金属音を立てながら、辛うじて声を発した礼汰がヒカルを睨む。
「それはこっちの台詞だ。お前こそ俺のもんに何しやがんだ」
ヒカルがドスの利いた声で礼汰を見下ろすと礼汰が怯んだように大人しくなったが、それだけではなかった。ヒカルのおそろしい程に整った顔立ちに目を奪われたのだった。
「お前、モデルか何かか?お前か?お前だろ?お前が兵部にこんな仕打ちしたんだろ」
礼汰はヒカルの凍りつくような圧と目を見張る容姿にそれ以上言葉が出なかった。
「俺はこいつの旦那だよ」
「旦那って、日本じゃ結婚できねえだろ」
礼汰の威勢にヒカルがフンと鼻で笑い、礼汰の傍で横たわる紫上の衣服を整え始めた。
「兵部じゃねえ、今こいつは宮内だ。俺の籍に入ってるんでね」
紫上の衣服を元に戻したヒカルが今度は礼汰に近づいた。
「他人のもんは獲ったらいけねえって学校で習わなかったのか?」
「兵部にこんなことするあんたより、ずっと俺の方が兵部を大事にしてやれる」
礼汰の台詞にヒカルは再び鼻で笑うと、「しかたねえな」と呟いた。
「なら、二度とそんな気にならねえ様に仕置けしかねえな」
ヒカルはクラッチバックの中から三つの物を取り出すと、礼汰の服を剥ぎ取り体に取り付けた後、紫上を抱き上げると「大人しくそこで待ってるんだな」と捨て台詞を残して部屋を出て行った。
部屋を出たヒカルは同じフロアの別の部屋の鍵を取り出して中へと入ると紫上をベッドに寝かせて布団を掛け、部屋に鍵を掛けて礼汰のいる部屋へと戻った。
「おい、これ外せよ」
ガチャガチャと手錠を慣らしながら礼汰はベッドの上でもがいていた。
「言ったろ。もう紫上にちょっかい出そうなんて気にならなくするって。
気持ちいいだろ、尻とおっぱい」
ヒカルはベッドサイドに座ってタバコに火をつけた。礼汰に着けたのはエネマグラと乳首専用のローターだった。
ヒカルはのんびりと一服しながら礼汰を放置した。
「んああ、やだ、これやだ」
その間も礼汰はもがき続けたが、暫くすると甘い声を上げながら下肢をシーツで擦り始めた。
「初対面の俺の前でオナニーショーする気かよ」
ヒカルが鼻でせせら笑うと、「でも、それはダメだ」と言ってタバコを灰皿に置き胸ポケットからリップクリームを取り出した。
礼汰の体を無理やりごろりと反転させたヒカルが礼汰の硬く熱を帯びた下肢の中心をまじまじと見つめた。
「折角尻で気持ちよくなるために付き合ってやってんだ。ダメだろ、オスみたいに腰振ったら。腰振るのはオスの役目って相場が決まってんだ。これからメスになるお前にはもう必要ねえ。オスに腰振られて啼くメスのお前にはな」
ヒカルは暴れようとする礼汰の両足を体重を掛けて両すねで押さえつけ、リップクリームを満遍なく礼汰のペニスに塗りつけた。そのリップクリームは昔、雅に使用した物と同じ、痺れ薬の配合された物だった。
「くそ、何塗ってんだ。止めろ」
礼汰が涙目になりながらヒカルを睨む。
「もう終わったぜ」
ヒカルはそれから一時間も礼汰を放置した。初めのうちはシーツにペニスを擦り付けていた礼汰だったが、痺れ薬が効く頃にはペニスの感覚が麻痺したせいで直接的な刺激を得られないためかベッドに体を横たえたままひたすら喘いでいた。
「やだ、来る、また来る」
エネマグラのお陰で礼汰は初めてに関わらず何度も中イキを繰り返した。
「もうやだ、女になんてなりたくない」
礼汰が啜り泣きし始めた頃だった。
「コンコン。フロントの者です。先ほどの会計にミスがありまして」
ドア越しに男の声がした。
ヒカルがドアスコープから覗くと、ワイヤレスのイヤホンを着けた端正な顔立ちの眼鏡を掛けた男が立っていた。その男を一目見たヒカルが鼻でせせら笑いハッと息を吐き出すと迷うことなくドアを開けた。
「てめえの差し金か、臣」
ヒカルはその男に開口一番にそう呟くと、男は不敵な笑みを浮かべた。
「まさか。私のかわいい生徒が毒牙の手に掛かるのを阻止しようと思っただけですよ」
「どうだかな。どうせ発信機と盗聴器でどっかから見張ってたんだろ」
ヒカルは疑いの目で男を見ると、男は眼鏡を外し優雅な手つきで上着の内ポケットへと仕舞った。
「おやおや、ずいぶんな言いようですね?小学校のクラスメイトの私にむかって。それに発信機と盗聴器はお互い様ですし、貴方のように体の中に隠すなんて悪趣味なことはしてませんよ。私は奥尻君の誕生日プレゼントに送ったキーホルダーに仕掛けておいただけですから」
男はベッドに転がっている礼汰に近づくと礼汰の痴態を舐める様に観察した。過ぎた快楽の熱に浮かされた礼汰の顔を自分に向けさせると男は礼汰に話しかけた。
「奥尻君、私ですよ、わかりますか?」
その声に反応した礼汰は男に懇願した。
「先生、助けて、先生」
その男は礼汰が慕う大学助教授の浅賀だった。
「大丈夫ですよ、私に任せてください」
浅賀の言葉に礼汰が安堵したのを確認すると、浅賀は再びヒカルに向き合うとこう告げた。
「よくここまで仕込んでくれましたと礼をいいます。でも、ここから先はいけません。男にとっての初めての雄は一生忘れられない記憶に残りますからね」
浅賀はにこりと微笑んだ。
「ですからその役目は私じゃないと」
浅賀の言葉にヒカルは溜息をついた。
「今日のところは引くが、コイツが今後もし俺のもんに手を出すようなら今度は容赦しねえぞ」
ヒカルの威圧的な態度にも動じる気配のない浅賀は再びにこりと微笑んだ。
「大丈夫ですよ。貴方のご心配には及びません。これから奥尻君を私専用の雌に躾けて私が一生奥尻君の面倒をみますから」
「一生面倒見るんならせいぜい可愛がってやるんだな」
ヒカルは一言だけ告げると部屋を出て行こうとした。
「あ、忘れ物ですよヒカル君」
振り向いたヒカルに浅賀は手を差出した。
「あれの鍵を私にください」
浅賀の視線の先を追ったヒカルはポケットから手錠の鍵を浅賀に渡すと今度こそ部屋を出て行った。
ヒカルが出て行くと、朝賀はエネマグラと乳首のローターを外し、持っていたポーチから色々な物を取り出した。
「さてさてだいぶ雌化が進みましたね、奥尻君。君は雌化するとおちんちんがふにゃふにゃになるんですか?私としては硬くなっていてくれた方が好みなんですけれど」
「ちがっ、それは、あいつが変な薬塗って」
礼汰がよわよわしい口調で否定した。
「…ヒカル君、ですか。まあこの際どちらでもいいですけどね」
浅賀は穏やかに礼汰に微笑むと、礼汰に見られないように礼汰の腹部を跨いで座りその背中で隠すと、ゴム手袋嵌め、礼汰のペニスに極細の針の付いた注射器で局所麻酔を打った。
「糖尿病の方が打つインシュリン注射器と同じ針ですから痛みも感じないみたいですね」
「先生、何を、してる、ですか?」
礼汰が浅賀に息絶え絶えに尋ねた。
「処置が済んだら教えてあげますよ」
浅賀は礼汰の陰茎の裏側の部分に手に持ったニードルに押しあてて小さな穴を貫通させるとその穴に南京錠の掛け金の先を宛がった。鋭利に研がれている掛け金の先を浅賀は渾身の力を込めてその開けたばかりの穴に押し込んだ。
めりめりと掛け金が押し込まれていくが、礼汰は痛みを発しない為か力なくぐったりとしていた。ついに南京錠の針先が姿を現し掛け金が礼汰裏筋を通り抜けていく。
「私のネーム入りのフレナムはこれで完了。後もう一つは」
浅賀は小さめの極小のリングに丸い玉の付いた物を掛け金に通し、今度は陰嚢部分に再びニードルで開けた穴を通してその穴に南京錠の掛け金の針先を通し、出てきた針先を本体に開いている穴にそのまま押し込んだ。カチッという金属音がしてロックされると、それはハート型になった。ハート型の半分が南京錠の鍵本体、そしてもう半分がくり抜かれた掛け金になっていたのだった。
「ふう、これでハファダも完了ですね。私お気に入りのフレナムとハファダのコラボ、気に入っていただけるといいのですが」
礼汰のペニスの裏筋と睾丸が南京錠で一つの肉塊に変貌した。礼汰のペニスは陰毛から下に向かって睾丸で固定され、女の下肢のように平らに纏り、礼汰のペニスは二度と上を向くことは許されないように浅賀によって処置を施されたのだった。
一仕事を終えた浅賀は礼汰の方を向いて「出来ましたよ」と喜々とした表情で見やると、イキ疲れた礼汰はぐったりとしていた。
「これからがいいところなんですけれど」
浅賀はスラックスの前を寛がせて礼汰の中へ慎重にペニスを挿入れたが、寝息を立て始めた礼汰は夢の中で小さく喘ぐだけだった。
「一時間の休憩ですよ」
浅賀は礼汰の両膝の裏を両手で抑え、M字に開脚させながら自らの欲望を礼汰の中へ何度も押し込む。
「奥尻君の雌穴最高です。それに奥尻君のおちんちんと睾丸とを一体化させたハート型の南京錠もとても似合っています。こんなの着けたら挿入なんてまね、二度と出来ませんし、南京錠に通した丸い玉は発信機。女はもちろんのこと男漁りは絶対に許しませんから。まあ、この南京錠には私の紋章である朝顔が手彫りで装飾されていますから、その方面で男を漁ったとしても君をどうにかしようなんて命知らずな輩はいませんけどね。ああ、もちろん射精管理もお任せください。私は巷ではストイックなどと呼ばれていますが、こう見えて精力は強いんです。奥尻君には溜まる暇がないくらい毎日空っぽにしてあげますからね」
浅賀はピストン運動を与えられながらも根息を立てる礼汰に説明するように話しかけていた。
きっちり一時間後、浅賀はM字開脚で繋がったまま礼汰を起した。
「奥尻君、起きてください奥尻君」
ぼんやりと薄目を開けた礼汰は自分の置かれている状況が飲み込めずに口をパクパクと開けるばかりだった。
「せ、先生。俺、手錠嵌められて」
礼汰はようやく記憶の断片を思い始めていた。
「手錠は外しましたよ。だって、そんな無粋な物私たちには必要ないでしょう?」
浅賀は礼汰が全てを思い出し、暴れるのを懸念して意識のある礼汰を体から引きずり込む作戦に出た。
「あ、あっ、あっ」
浅賀は既に熟れ切っている礼汰の前立腺を熱い欲望で浅めに容赦なく擦り上げる。エネマグラで強制的に覚えさせられた快楽が礼汰を襲う。
「あ、ああっ、せんせ。やだ、だめ」
その度に礼汰はひっきりなしに嬌声を上げた。
「危ないところだったんですよ。君が見知らぬ雄に雌にさせられそうだったんですから」
浅賀はヒカルと顔見知りである事をあえて伏せた。浅賀の欲望により、礼汰の体は従順に快楽を集め増幅させていた。
「やあ、あっ、来る、くる」
「ですからね、そうなる前に私の雌にしたんですよ」
「な、で」
礼汰が快楽の渦にのまれながらも浅賀に尋ねた。
「言ったでしょう、どうしても手に入れたいという衝動が抑えられないほどの人物がいると。それが君、なんですよ」
雄の目をした浅賀の言葉に礼汰が目を見開いた。
「えっ、あん、俺?」
「そうですよ。どうやって手に入れようかと心を痛めていたのですが、怪我の巧妙でしたね」
雄の顔をした浅賀がピストン運動を早めた。
「や、くる、きちゃ、う」
礼汰が堪えきれずに中イキすると浅賀は一旦動きを止めた。
「これですっかり雌になりましたね、奥尻君」
浅賀が目を細めて嬉しそうな表情を浮かべた。
「君が眠っている間に君の体を私専用にさせてもらいました。ほら、私の所有物になった証を見てください」
浅賀は繋がったまま膝立ちすると礼汰の視界の先にあるペニスには既に礼汰の知るそれではなくなっていた。
「ああ、これじゃあ見えませんよね」
浅賀は怜汰の手を真新しく装着され南京錠へと導くと怜汰は悲痛の色を眼に浮かべた。
「や、やだ。何でこんな」
礼汰が泣きそうに顔を歪ませる。
「君の性に対する執着心の無さですよ、私が興味があるのは。だって、こうでもしないと君は言い寄る他の雌とすぐにセックスするでしょう?その防止策の一環ですよ」
「こんなの着けてたら俺もう、女の子と」
ついに礼汰の目から涙が零れ落ちた。
「私が君を一生面倒見ると決めましたから諦めてください。君の管理は私が全て引き受けますから安心してください。君がどんな風に絆されていくのかを見たいんですよ」
浅賀は再びピストン運動で礼汰の前立腺を擦り始めた。
「あっ、あっ、イッたばっか。やだ」
泣きながらも浅賀の送り込む快楽に啼く礼汰は浅賀に揺さぶられながら喘ぎ続けた。
「そうそう。雄の味をしめても浮気なんかできませんよ。君の居場所は二十四時間私が監視しますからね」
「じ、あん、人権、侵害。あ、ああっ。せんせい、またくる」
「雌になったとたんに随分と堪え性のない体になりましたね。他の雌とセックスしてる会話を聞く限りでは結構長持ちさせていたみたいですが、毎回一回なんてずいぶん淡白ですよね。それじゃあ雌を満足させられる雄にはなれませんよ。それだからこそまさに君は雌に選ばれし者なのですよ」
浅賀が目を輝かせて礼汰の耳元で囁いた。
「な、んで知って。あんっ」
礼汰が上体を捩って快楽を逃し始めた。
「君の中に挿入ってそろそろ一時間半。雌を満足させるには耐久時間と回数、そのどちらも必須なんですよ。それができない君はやはり雌なんです。私ももう限界です。さあ、味わいなさい。初めての雄の味を」
「あん、や、あんっ、やだ、出さないでー」
礼汰が断末魔のように叫び、礼汰が絶頂を迎えると同時に浅賀も礼汰の中で終わりを迎えた。
「先生の、爆発してる」と呟いた後、「あ、あああ、あああ」礼汰が快楽と絶望の入り混じった声を弱弱しく上げる。
「どうですか?始めての雄に体を開かれた気分は?君を直に味わえて感無量です。君を手に入れるこの日の事を心待ちにして、抜かずに溜めていた甲斐があります」
礼汰の中の収縮に押し戻されるように浅賀の出す精液が接合部がら溢れ出る。
「んん、いい。はあー。気持ち良くてまだ止まりません」
放心したように空ろな目をした礼汰が今度は静かに涙を流し始めた。
「諦めてください、奥尻君。君は一生私からは離れられないのですから」
浅賀が礼汰の耳にそっと告げた。
「ああ、でももったいないです。雌が雄の精液をこんなにはしたなく溢すなんて。まずは私の精液を零さずに飲めるようになってもらわないといけませんね、もう少し馴らしてからもっと深くで出してあげますね。これでも私は一回が長い方なんです。次に私が出すときまでには君の体は私を奥深くで喜びと共に受け入れることでしょう」
浅賀の微笑みは礼汰にとっては悪魔のように映った。
その後、浅賀の前立腺責めは礼汰が気絶するまで続けられた。礼汰が気を失うと浅賀は礼汰の体を担いでシャワーを浴びさせた後、再びベッドへと運んだ。
「意外に体力ないんですね」
浅賀が礼汰を見下ろした。
「まあ、別にどちらでもいいですけどね」
浅賀は礼汰の下肢の間に身を置いて礼汰の下肢をまじまじと凝視する。
「ヒカル君が使った薬は洗い流しましたからようやく可愛がってあげられますね」
浅賀は礼汰の亀頭の先端に舌を伸ばした。ぺろりとその先を舐めると意識のない礼汰の体がピクリと反応する。
「亀頭オナニー好きですもんね、君は」
浅賀は礼汰の部屋に仕掛けた隠しカメラで常に監視していたのだった。
浅賀はぺろぺろと舐めていた舌先を尖らせ尿道口へと捻じ込み内部をぐるりと一週させた。途端に礼汰が無意識に腰を上下に動かした。
「いけませんね、雌が腰なんか振ったら。腰を振るのは雄である私の役目なんですよ。ヒカル君にも言われたでしょう?」
浅賀は視界の片隅に入ったエネマグラを意識のない礼汰の尻に差込み、礼汰が腰を振らぬように両手でしっかりと押さえつけ再び尿道内に舌を這わせた。初めはゆっくりと時計回りに舐め、今度は反対周りにねっとりと舐め上げる。
「んくっ、んああっ」
礼汰が夢の中で声を上げる。浅賀は暫く舌先で礼汰のペニスを愛撫し続けた。礼汰が幾度も腰を上下に振ろうとするが浅賀によって阻まれ続けた。下肢の動きを封じられた礼汰はその代わりに上半身を幾度も撓らせ、時に仰け反りながら浅賀の与える快楽に包まれていた。
「君のペニスはもはや雌。クリトリスを弄ったら中が疼いて堪らなくなるまで止めませんからね」
浅賀のニヤリと微笑んだ先にいる礼汰の耳にはそれは届かなかった。
「イク、来る、イク」
礼汰が夢と現実の狭間で相反する言葉をしきりに繰り返す。
「そんなにここが好きなんですね。ちょっと舐められただけでビクビクさせて気持ちよくなれるんですね。亀頭オナニーの時も先ばかりを弄ってますし。やっぱり雌の才能ありますね」
浅賀が満足げに呟くと亀頭をすっぽりと咥えた上唇と下唇で大きく開かれた傘の部分を何度も強く食みながら舌先で尿道内を刺激した。
「んん、ああっ。くる、きちゃう」
下肢を押さえつけられたまま礼汰は浅賀の口内に盛大に精子を吐き出た。
「ふふっ、上出来。そろそろ、君の置かれた状況を把握してもらわないとね」
それを嚥下した浅賀は再び礼汰のペニスへ愛撫を再開した。エネマグラと浅賀の口で幾度も上り詰める礼汰の体は次第に浅賀の愛撫に飼い馴らされ、浅賀に拘束されなくても下肢を自ら振ることは無くなった。
「くる、くるぅ」
浅賀は礼汰が達する直前に亀頭責めを中断した。寸でのところで放り出された礼汰は「あ、やあっ、やあっ」と無意識に啼きながらしきりに雌の様に腰を振り始めた。
「いいですね、凄くいいですよ。淫乱でまさに雄に媚を売る雌です。
浅賀がうっとりと礼汰の姿を見下ろす。
「こんなに短時間で身の心も雌になった君にはご褒美をあげないと。でも、雌を喜ばすために腰を振るのは雄の仕事だと言いましたよね」
浅賀は礼汰の頬を軽く叩いて意識を取り戻させると、礼汰はまどろみながら焦点の合わない目を浅賀に向けた。
「せん、せ」
浅賀はエネマグラを外して変わりに自らの欲望をあてがった。
「さあ、今度こそ処女喪失です。君の真の処女膜突き破ってあげますね」
浅賀は正常位で礼汰に挿入れ、グッと再奥へと突き立てた。
「ん、やあっ」
奥を抉じ開けられた衝撃に礼汰が精子をぶちまけながら達した。
「君は本当にすばらしい」
浅賀は興奮の絶頂に包まれながら力強くピストン運転を繰り返し啼き疲れた礼汰の声が掠れる頃「君の初めてで唯一の雄に種付けされる悦びを身をもって知りなさい」と呟いて射精すると礼汰は「熱い、熱いよ」と魘されるように呟いた。
「君の体、今度は上手に全部飲み干しましたね」
薄らと汗の滲んだ額を拭うと浅賀は礼汰の体を繋がったまま伏せにした。
「次は雌らしく獣の姿で交尾しましょうね」
浅賀は礼汰の腰を持ち上げて掴み、猛烈な勢いで下肢をピストン運動し始めた。
「あん。やあ、あん」
浅賀の下肢の動きに乗じて礼汰の口から甘い嬌声が溢れ出る。
「雌は雄に翻弄されて可愛いく泣き叫ぶもの。やっと初夜らしくなってきましたね」
浅賀は有り余る精欲を礼汰にぶつけた。
「ご褒美です。クリトリスも触ってあげましょうね」
浅賀が礼汰の亀頭を人差し指で擦り始める。
「やぁ、ああ、あん、出る」
礼汰が堪らずに叫び始めた。
「出しなさい。雌は雄を喜ばせるために濡れるのですから」
浅賀が礼汰の亀頭をグリグリと抉る。
「あん、でちゃ、う」
礼汰が精液を吐き出しながら脱力した。浅賀は礼汰がイッた後もピストン運動しながら亀頭を抉る。
「や、やぁ、ああっ」
礼汰は嬌声を上げ続ける。
「そろそろ認めなさい、気持ちいいでしょう?雄に犯されるのは」
浅賀が雄の笑みを浮かべながら礼汰を見下ろす。
礼汰は浅賀にされるままに揺さぶられる。
「さあ、言いなさい。言って私専用の雌になりなさい。クリトリスをもっと苛めて、と。そうすれば君は楽になれるんですよ」
礼汰は浅賀に言われるがままに復唱した。
「せんせい、苛めて。礼汰の雌のクリ、もっと苛めて気持ち良くして」
礼汰がついに陥落した瞬間だった。
「ますます君のことが気に入りましたよ」
礼汰は浅賀に雌のように媚びる卑猥な言葉を何度も言わされながら犯された。
次の朝、浅賀よりも早く目が覚めた礼汰は昨晩を思い出しベッドから転げ落ちた。尻を伝う何かに手を伸ばし、それが精液と知ると慌ててそれをティッシュで拭い素早く服を着て逃げるようにホテルの部屋から出て行った。
礼汰の気配が消えた部屋では浅賀がニヤリと目を閉じたまま薄笑いを浮かべていた。
浅賀に鍵を渡して部屋を出たヒカルは紫上のいる部屋へと歩を進めた。
部屋の中の紫上は今だ夢の中にいた。
「起きろ」
ヒカルが紫上の名を呼ぶと、紫上はゆっくりと目を開けた。
「んん、ヒカル、さん?」
飲み会の途中で意識のない紫上は不思議そうな顔でヒカルを見つめた。
「お前が飲み過ぎて寝ちまったと俺に連絡があったんだ」
ヒカルは飲み会のメンバーには知り合いがいない事や礼汰に襲われそうになっていたことは敢えて伏せた。
「どうせ飲めねえ酒、飲んだんだろ。帰るぞ」
ヒカルは紫上を連れてマンションへと家路を急いだ。
マンションに戻ったヒカルは紫上をそのままバスルームへと誘った。
紫上に装着した発信機付きの盗聴器を外し紫上の体の隅々を洗った。紫上はいつもの日常にヒカルのされるがままだった。ヒカルは紫上のまだ柔らかいペニスをおもむろに口に含んだ。驚いた紫上は腰を引いてかわそうとしたが、それよりも早くヒカルのボディソープ付きの手が紫上の尻へと伸び、解しながら洗浄を始めたため、紫上はあられもなく啼く事しかできなくなった。シャワーの湯が紫上の尻を空にすると、ヒカルは今度は紫上の睾丸へとその標的を変えた。
「ヒカルさ、そこはだめ。そこはだめぇ」
紫上がヒカルの口を離そうとヒカルの肩に手を置くが力の入らない手ではどうすることもできなかった。取り残された紫上のペニスはピンク色を湛えたままフルフルと震えていた。ちゅぽんとヒカルが口から二つの玉を開放すると、紫上の体がぐらりと力なく崩れ落ちる。ヒカルはバスタオルで互いの体を拭うと紫上を抱えて寝室へと向った。
ベッドサイドに深く腰掛けたヒカルは後背位から紫上の中へと熱い肉棒を挿入れた。
「ん、んんっ」
紫上がその大きさに天井を向いた。ヒカルは気にすることなく紫上の右肩に左手を回して拘束し、右手で紫上の腹部を時計回りに撫で始めた。初めは優しく擦るようだった手触りが徐徐に紫上の腹の奥を撫でる様に力が篭る。
「えっ、えっ?」
すると動揺したように紫上が困惑の声を上げ始めた。ヒカルはなおも気にすることなく腹部を擦る手に力を込めた。
「あ、あ、ああっ」
紫上が目を見開いたまま小さく喘ぐ。
「気が付いたか」
ヒカルは紫上の肩口で独り言の様に呟いた。紫上は小さく被りを振りながら必死に何かに耐えていた。
「んんー」
セックスの最中にはほとんど声を発しないヒカルから快楽とも取れる唸り声が漏れた。
「ヒカルさ、ああん。ああっ」
いつもとは趣向が違う事に紫上が虚な瞳で振り返る。
「お前にもわかったろ。俺のを銜えるお前の中がもっともっとっていいながら奥へ奥へと引きずり込んでるのがな」
ヒカルは紫上の腹部への刺激を利用して、より深いところへと肉棒を潜り込ませたのだった。
「すげえ、な」
ヒカルが感嘆の声を上げた。
「いつもより興奮する」
ヒカルの声が上ずっているのが紫上にもわかった。
「その声だめです、あっあっ。イク、キスしたい」
イク時にはキスをせがむ紫上が力なく懇願する。
「だめだ。今日は仕置きだからな」
ヒカルは紫上の腹部をなおも撫でながら無慈悲に言い放った。
「早く戻れつったろ」
ヒカルの無慈悲な言葉とは裏腹に柔らかい口調に紫上は中から湧き起こる未知なる快楽に小刻みに体を震わせながら反省したように僅かに項垂れた。
「心配掛けやがって」
ヒカルは滅多に付けないキスマークを紫上の項に付く様に何度も吸い付く。
「あ、もう、イク、体が勝手に痙攣して。んああーっ」
紫上が大きく体を震わせながら絶叫した。ヒカルもまた呼応するように紫上の中で果てた。はあはあと肩で呼吸する紫上が放心したまま感想を漏らした。
「ヒカルさんの、こんな奥、始めて」
ヒカルは紫上の項の至るところに吸い付きながら「これで終わりじゃねえからな」と紫上へ囁いた。
「はい。沢山、してください。お仕置き」
ぐらりと前に倒れこみそうになる紫上の体をベッドの中央に引き摺り、伏せにさせて繋がった下肢のみを高く持ち上げると再び紫上の腹部を背後から回した手で撫で始めた。
「いい子だ。今晩は俺は動かねえぞ。こんなに奥まで挿入ったんだ。抜きたくねえからな。心配で気が気じゃなかった俺の気が済むまでお前にとことん俺を抱いてもらうぞ」
そう宣言したヒカルは早朝まで紫上の体を貪り続けた。
朝、紫上は腹の音で目が覚めた。
ぐるるる。
ハッとした紫上がトイレに行こうと身を捩ったが、ヒカルに羽交い締めされている紫上に抜け出す事は叶わなかった。
デジャヴに紫上の脳裏に過去の羞恥が過ぎったが紫上は諦めてヒカルを起した。
「ヒカルさん、トイレ、連れて行ってください」
強制的な便意にフルフルと震え耐える紫上にヒカルが紫上を後ろ抱きにする腕に力を込めた。
「ん、お前の中すげえビクビクしてんな」
悠長なヒカルの発言に切羽詰った紫上が声を張り上げた。
「は、早くしてください」
紫上の剣幕にヒカルはあくまでもゆっくりとした動作で紫上の体を包み込んだままで起き上がった。
「俺が中にいるんだからちょっとやそっとじゃ漏れねえよ」
生あくびをしてチュッとうなじに口付けるヒカルに紫上が下唇を噛んだ。
ぐるる。
「ん、はぁっ」
焦る紫上をよそにヒカルが音の発信源に手を当てた。
「すげえな、ここまで俺のが入り込んだのか」
昨晩の事を感慨深く回想するヒカルにお構いなしに紫上の腹が再び鳴った。
ぐるるるる。
ヒカルは素早く紫上の体を繋げたまま反転させた。
「ん、やあ、出る」
紫上があられもなく叫んだ。
「掴まってろ」
ヒカルが立ち上がると紫上はヒカルの体に足をしっかりと絡ませた。そしてヒカルに連れられてバスルームへと向かい、以前と同じようにヒカルの目の前で盛大に汚水を吐き出させられ、その後綺麗に洗われる羽目になった。前回と同じく紫上はまたしても脱兎のごとく寝室へと逃げ込んだ。
しかしそれから三十分も経たずに寝室から飛び出しトイレへと駆け込んだ。かつてないほどにヒカルを奥深くに迎え入れ、あまつさえコンドームなど使用しないヒカルにたっぷりと精を流し込まれたことで、いつもの洗浄では流し切れていなかったのだった。トイレに篭り便座に一人座る紫上は二度と同じ過ちを繰り返さないことを固く誓ったのだった。
「約束だ、亜衣は連れて行くぞ」
ヒカルは慧に冷たくそう告げた。慧は涙を堪えるかのように下を向いた。
「元々お前の役目は亜衣を俺のところへ連れてくるまでの約束だ。それに亜衣は俺の娘だ。お俺が育てるのが筋だ」
慧はヒカルの言葉を無言のままに聞いていた。
「出て行きたければ止めはしない。だがここから追い出すつもりはないから今までどおりここで暮らしてくれてかまわない。お前はまだ二十三だ、今後の自分の人生を考えるんだな。もし大学にでも行きたければ学費は俺が貸してやる。よく考えろ」
ヒカルは高卒のままドバイへ留学と言う名目の売春をしていた慧を案じて提案した。
「ありがとうございます。その件については少し時間をいただけませんか」
早急な決断を望まないヒカルは小さく「わかった」と告げた。
「でも、でも僕の、今の僕には亜衣が全てなんです。今更、僕たちの事を知ってしまった母のところへ戻れませんし、伯父も逮捕されてしまって」
一筋の涙が慧の頬を伝った。元々男にしては美しい顔立ちの慧は涙を流す聖母の様にヒカルには見えた。
「お願いです。抱いてください、もう一度。体だけでいいです。優しくしてほしいなんて言いませんから」
慧がヒカルのジャケットを握り締めて縋りついた。慧を哀れに思ったヒカルは「なら抱いてやる、自分で準備しろ」と抑揚無く言い放った。
リビングのソファで慧を抱いた後、ヒカルはソファに裸のまま力なく横たわる慧の傍に腰掛け、慧を見ることなくタバコに火をつけた。ヒカルの吐き出す紫煙とタバコからゆらゆらと立ち上る煙がリビングの天井に向って生き物のように蠢きながら形を変える。ヒカルはそれを見ながら口を開いた。
「明石 慶吾、お前の伯父がなぜ加納に手を貸したか、知りたいか?」
ヒカルの言葉に慧が手を付いて上半身を起した。その拍子に慧の尻の隙間からヒカルの精が溢れ出し慧の太股を伝った。慧は僅かに声を上げたが、ヒカルに話の続きを促すように上半身を捩ってヒカルを見つめた。そのしなやかでなまめかしい光景にヒカルの下肢がズクリと反応した。ヒカルが訪れるときだけ使われる灰皿でタバコの火を消すと再び口を開いた。
「脅されていたんだ、加納に」
慧は目でどうして?とヒカルに訴えた。
「明石 慶吾が、お前たちが実の父親だったからだ」
その衝撃的な内容に慧が口を半開きにしたまま硬直した。
「お前の母親が父親の事を言わなかったのは、言えなかったからだ。明石 由紀、お前の母親と明石 慶吾は実の兄妹で恋仲だった。そして授かったのがお前と姉の愛美だ。加納はどうやって知ったのかはわからねえがその事で明石 慶吾を脅した。断れば世間に公表する、とな」
「そんな、伯父さんが僕と姉さんの父親」
慧の顔から血の気が引く。今にも崩れそうな慧にヒカルは手を伸ばして慧の体を引き寄せ抱き締めた。ヒカルの優しい態度に慧が堰を切ったように泣き始めた。
「今までよく我慢したな」
泣きじゃくる慧に囁いたヒカルはスラックスのジッパーを下げ、再び熱く滾った肉棒を慧の中へと押し込んだ。その予期せぬ行動に慧が仰け反って嬌声を上げた。
「今は何も考えるな」
ヒカルは泣きながら啼く慧をひたすらに抱いた。
ヒカルは慧が気を失うまで抱きつぶすと、簡単に後処理をして慧を寝室へと運んだ。慧の頬に残る涙の痕をそっとなぞり、ヒカルは小さくため息をついた。
「これだから放っとけねえんだよな」
ヒカルが慧に呟いた後、亜衣を連れて紫上の待つマンションへと戻っていった。
「ヒカルと出かけるの初めてだ」
籐子の死後、たびたび冷泉の元を訪れていたヒカルは冷泉をある場所へと向かっていた。
「お母さんが死んだあの日から僕、ヒカルとの約束破ってないよ」
冷泉は『男ならもう泣くな。お前が泣いたら籐子が天国へ行けなくなる』というヒカルの言いつけの事を言ったのだった。
「そうか、えらいな」
ヒカルは冷泉の頭を撫でた。
「お前、またでかくなったな」
ヒカルは日に日に成長する冷泉に驚いた。
「当たり前でしょ、僕もうすぐ十五になるんだから」
冷泉は自慢するようにヒカルに伝えるとヒカルはもう一人の息子の事をふと思い出した。
(夕霧は十歳か)
ヒカルは滅多に会いにいかぬ夕霧に僅かながらの罪悪感を覚えた。
宮内家の菩提寺に着いたヒカルは冷泉と共に墓石の前に花とお供え物を置いて二人で手を合わせた。
ヒカルのこの行動は先日見た夢のせいだった。ヒカルの夢枕に立った籐子はヒカルに涙ながらに二人の関係は悔やんではいないが桐生に対しての裏切りに押し潰されそうだと切々と訴えていた。
その夢を見たヒカルは冷泉を連れて籐子の供養に来たのだった。
ヒカルが立ち上がってもなお手を合わせる冷泉を見つめるヒカルは、改めて冷泉を守る決心を強固な物にした。
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