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【須磨】Suma

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社内でのヒカルの立場はますます悪くなる一方だった。朱雀が総帥になりはしたが、血族であるヒカルもまた後継者の資格を有することで、懸念した右代派が、この噂に乗じてヒカルの失脚を目論んでいた為であった。
その動きを封じることの出来ない左代は一計を案じ先手を打った。

「ヒカル君、近々君に事例が下る。神戸市須磨区で私の腹心の部下が支社長をしていてね。ドバイに新たな支社を新設するプロジェクトの責任者をしている。このままでは右代の思う壺だ。社内の空気が落ち着くまでの辛抱だと思ってその辞令を受けて欲しい」
左代が「君にしてやれる私の最善の策なんだ」とヒカルに告げた。


「ヒカルと飲むのは初めてじゃないか?」
その夜、左代 中将はヒカルを夜の街へと誘った。
中将は爽やかな笑みを浮かべて「ここだここだ」と案内した。
中将に連れてこられたのは高級クラブだった。
二人は他愛もない話をしながら酒を酌み交わしていた。

「ここはね、最近噂になっている占い師がいるクラブなんだ」
中将がヒカルにクラブへ連れてきた本当の理由を伝えた。
「占いね」
ヒカルが鼻でせせら笑うとそこへ一人の老女が現れた。
「お呼びと伺いました」
老女はしわがれた声で挨拶をすると軽く会釈をした。
「待っていたよ、先生」
中将が喜々とした表情でヒカルに老女を紹介した。
「彼は義理の弟なんだ。せっかくだから先生にみてもらおうと思ってわざわざ連れて来たんですよ」
中将をよそ目に見ながらヒカルは興味無しとばかりに酒を煽った。
「せっかくなんだ、みてもらえよ。当たるって有名なんだ」
中将のごり押しにヒカルは渋々老女と向き合った。

「あんた、なにで占いつもりなんだ?」
ヒカルがぶっきら棒に老女に質問した。
「足裏でございます」
しわがれた声で老女は答えた。老女は「なにぶん個人情報でございますので左代様は向こうのお席に」と中将を離れた席へと座らせた。
「足裏?」
ヒカルが訝しげな顔をした。
「さようでございます。靴下をお脱ぎくださいませ」
ヒカルは老女の言葉のままに靴下を脱いで両足の裏を老女に見せた。
ヒカルの足裏を睨んだ老女が暫く無言を貫いた。
ヒカルは気にすることなく酒を煽り続けた。
ふいに、老女が唸り声を発した。ヒカルは気にも留めずにタバコに火をつけた。

「まこと奇なる相にございます」
老女がそのまま押し黙った。ヒカルが二本目のタバコに火をつけたところで老女が口を開いた。

「貴方様は一度ご結婚をされてますね。そして、そのお相手はもうお亡くなりになっておられます」
老女の言葉にヒカルは中将にでも聞き及んだのであろうと高を括っていた。
「その者との間にお子が一人おられますね」
ヒカルは、中将は老女に何処まで自分の事を話したのだろうと少し憤慨した。
それからまた老女は少し押し黙り、ようやく口を開いた。

「貴方様は三人のお子をなし、二人は男。そのうちの一人は大会社の総帥の座に、もう一人は多少劣りますが大会社の重役の座に、そして残る一人は女。その者は玉の輿に乗り大きな地位を得るでしょう。また、貴方様も総帥の座とまでは参りませんがそれに準ずる位にまで上り詰めるでしょう」
と老女が告げた。
「そして貴方様のお子達の母君は全て違う女性から生まれいずるでしょう」
と付け足した。

眉唾物と考えていたヒカルだったが、一瞬冷泉と夕霧を思い出し、直ぐに否定した。
老女はそれだけを告げると席を立ち中将の元へと去って行った。
席に戻ってきた中将がヒカルの反応を伺うべくヒカルの言葉を待ったが、ヒカルは何も答えなかった。

「代金は俺が支払ったんだ、少しは教えてくれてもいいだろうに」
中将が至極残念そうに呟いたが、半信半疑のヒカルはやはり何も答えなかった。
その後も他愛のない四方山話をした二人はお互いの家路へと戻って行った。


正式に辞令が下った夜に帰宅したヒカルは紫上に出迎えられた。
「おかえりなさい」
いつものように紫上が玄関先でヒカルに抱きつくと、ヒカルは紫上の首筋に顔を埋めて包み込むように抱き締めた。
「今すぐ抱きてえ」
ヒカルの性急とも言える求めに、紫上は頷くことで了承した。

いつものようにヒカルに全裸にされ、バスルームで尻を解され洗浄された後、寝室へと二人は移動した。ヒカルは紫上の体の隅々まで念入りに舌を這わせた。紫上の全てを目に焼き付けるかのように。そして最後に辿りついた紫上のペニスに至っては特に時間を掛けていた。

「んん、あっ、あっ」
ヒカルに下肢の中心を愛撫され続ける紫上が息も絶え絶えにヒカルの名を呼ぶ。
「ヒカルさん、あ、ん、ヒカルさ」
紫上の手がヒカルを探すように空を掴む。ヒカルは紫上に手を伸ばしてその手を握り締めた。
「俺に体を開かれて五年も経つのにお前のここは変わんねえな。未だ産毛しか生えてねえ」
ヒカルは紫上のペニスの周辺もじっくりと舐めまわす。紫上のペニスは喜びに硬く震え、ヒカルの愛撫を甘受していた。
「あ、ああっ」
「そしてここもずっと綺麗なピンク色だ」
ヒカルが感慨深く呟くと、紫上のペニスを口内の奥深くに誘い込んでは唇で扱き続けた。
「ああっ、ヒカルさ、もう僕」
ヒカルの手を握る紫上の手に力が篭る。

「出したいのか?今、挿れてやる」
ヒカルの短い問いに紫上がコクコクと頷いた。体を起こしたヒカルは了承の意味を込めて紫上の尻に熱く滾った肉棒を宛がうと、紫上の体を気遣うように挿入した。
「あ、あ、あ」
紫上は奥深くにヒカルを受け入れるまで苦しそうに声を上げた。
「変わらず狭めえな」
ヒカルも若干苦しそうな表情を浮かべながらも下肢に力を込めた。
「はぁ、はぁ」
ヒカルと一つに繋がると、紫上が安堵したように息を吐いた。そんな紫上の姿を見下ろしながら、ヒカルが紫上に覆いかぶさった。
「でも、俺を受け入れると安心した様に中全体で吸い付いて離さねえとこもな、相変わらずだ。
キツイか?もう少し馴染むまでこのままでいるか?」
ヒカルが紫上を労わるように、しかし色の篭った声色で囁くと、ビクンと紫上の体が反応した。
「んん、ヒカルさん、その声反則です」
突然息の荒くなった紫上に「その反応もいつも通りだな」とまた囁いた。
「んやあ」
紫上がゾクリと背を震わせて首を竦めた。
「その反応、堪んねえ。やっぱ特別、なんだよな」
紫上が身悶えるのもお構い無しにヒカルは囁いた。
「ダメです、その声で囁かれたら僕もう」
紫上がもう堪えきれないとばかりに叫んだ。
「ああ、イキたいんだろ。でも、俺が突いてやらなくちゃ、イケねえもんなお前は」
ヒカルが本格的に下肢を打ちつけ始めた。
「ああ、ああ、ああっ」
ヒカルの律動に合わせるように紫上が嬌声を上げる。ヒカルは次第に力強く紫上の中を抉り始めた。
「触ってやらなくても良いか?」
ヒカルが紫上にペニスへの愛撫を尋ねると、紫上がフルフルと首を振り、ヒカルの背に腕を回してしがみ付いた。
「前、はいいので、キス、したいです。もう、イキたい」
イキそうになるとキスをせがむ紫上に、ヒカルが噛み付くように口付けた。

くぐもった声と熱気が真っ暗な寝室を満たし始め、一つの塊が蠢きながら次第に終焉へとその動きを加速して行く。

「んんんーーっ」
紫上が甲高い声を喉奥から発すると、それを合図のように一つの塊が大きく震えた。

ぱたり、と脱力した紫上の腕がシーツの上に力なく落ちた。ヒカルは身じろぎ一つせず精を放つと快感の渦に漂う紫上の唇を甘噛みし、やさしく喰んだりといつまでも紫上の唇を愛撫し後戯を続けた。

「ヒカルさん」
まどろみの中から少しずつ引き戻ってきた紫上がぼんやりとヒカルを見つめた。
「気持ちよくイケたか?」
ヒカルはまだ反応の浅い紫上の唇を喰んでいた。
「はい」
紫上が少しずつヒカルの口付けに応え始め、ヒカルは紫上が落ち着いた事を確認した。
最後にチュッとリップ音を立て、紫上の唇を開放したヒカルは身を起して紫上の下肢を、正確にはペニスを確認した。
紫上のペニスからは何も出てはいなかった。紫上は十九歳になった今もヒカルの前では射精行為をしたことは無かった。

「まだ、足りねえ」
紫上の中で一度萎えたヒカルのペニスは再び勢いを取り戻していた。正常位のままヒカルが律動を開始した。ヒカルの大きな手にペニスを優しく擦られると、紫上の目に涙が滲んだ。
「んああっ、ああん」
その涙が快楽による物と知っているヒカルは、下肢を打ちつけながらも紫上をペニスでの刺激で昂ぶらせようとしていた。
「ヒカルさ、ん。手、離して」
シーツを握り締める紫上が涙目でヒカルにペニスから手を離すように訴えた。
「嫌か?こっちは」
「嫌っていうか、強すぎて、刺激が」
紫上はペニスを触られながらイクのをなぜか好まなかった。
「でも、今日は、今日だけは止めてやらねえよ」
ヒカルがやんわりと断ると、紫上に口付けた。
「ん、ん、ふう、ううう」
ヒカルの下肢の律動と同じリズムでペニスを擦られながら、紫上がヒカルのキスに応えるように夢中でヒカルの舌を追いかけた。
「んん、ヒカルさん、ヒカルさん、んんっ」
ヒカルに奥深くを抉られ、ヒカルの手の中の紫上のペニスは滴を溢れさせる。
「んん、イク、あああーっ」
ヒカルの手に擦られたペニスと共に弾けたように紫上が体全体を震わせたと同時にヒカルは紫上の中で吐精した。しかし、ヒカルの手の中の紫上のペニスからは何も出ることなく、クタリと力を失った。
「やっぱ、出ねえか」
ヒカルは再び紫上のペニスを見つめた。


紫上の体は『逆行性射精』だった。
それがわかったのは紫上と始めて体を繋げて数ヶ月してからのことだった。
毎晩のように紫上を抱くヒカルが、勃起はしても射精しないことに疑問を持ったことに端を発した。

「病院で見てもらうか」
同じ男であるヒカルが紫上の体の発育を心配して紫上を病院に連れて行った。そこでいくつかの検査を受けた結果『逆行性射精』が判明したのだった。
通常であれば射精に至る所、紫上の場合、精液が膀胱に逆流していたのだった。つまり紫上は射精感はあるが、外に出ることなく、自らの膀胱に射精していたのだった。
医者の話ではこの症状に至る原因としては糖尿病、脊髄損傷、薬物的要因などいくつか挙げられるが、紫上にはそのどれも当てはまらず、重篤な病との関連性はないと診断された。

「原因はわかりませんが先天的な症状であることは間違いないようですね。ただ、将来的に子供を作る事を考える意味では私は手術をお勧めしますね」
という医師の最終的見解に終わった。

「僕はこのままで十分だよ。ヒカルさんのパートナーとして生きる上では射精するしないは関係ないじゃないですか」
紫上はにっこりと微笑んで手術と言う選択肢を否定した。ヒカルもまた、紫上に重篤な病が隠されていないことがわかり、紫上の意思を尊重したのだった。


「ヒカルさん、僕は普通じゃなくても良いんです。だからいつも通りにしてください。でもヒカルさんがこんな体じゃ抱けないって言うのなら僕は、手術でも何でも受けます」
紫上が不安げにヒカルを見つめていた。
「ああ、わかった。悪かった。もうお前が嫌だと言うならこんな抱き方はしない。ただ、お前の出すもんなら、例え精液だろうが味わってみたかったんだ」
ヒカルは紫上に覆いかぶさって強く抱きしめると「悪かった」と謝った。
「今度はいつもみてえに抱いてやる」
ヒカルは繋がったまま紫上の体を反転し、後ろ抱きにするとそのまま仰向けに転がった。
串刺しにされたままヒカルの体の上に仰向けになった紫上が、不安定な状態から心もとなげにシーツを握ろうとするが、ヒカルの体の厚みのせいでうまく握れずにいた。その為、ヒカルの腹部をくすぐる結果となった。
「おい、くすぐったいだろ」
クスリと笑みを浮かべたヒカルは枕を重ねて自身の頭部を高くして、上半身に角度をつけた。すると、一緒に持ち上げられた紫上の上体がヒカルに凭れた。
ヒカルに凭れかかった紫上が体の力を抜いてヒカルの首筋に鼻先を摺り寄せて安堵の溜息を吐いた。
「これで良いか?」
ヒカルが確認するように紫上に囁くと「ん」と小さく吐息で返事をした。
ヒカルは両手を紫上の胸の頂にするりと這わせた。ぷにぷにと柔らかなそこの周辺をヒカルはくるくると撫で回す。
途端に「はあーっ」と紫上の吐息に色が篭り始めた。
「最初はくすぐったいって言うだけだったな」
紫上が独り言を呟きながらも人差し指の腹で撫でながらじっくりと紫上の快楽を引き出すように焦れた動きを繰り返す。ヒカルの指の摩擦熱で薄ピンク色の紫上の乳輪が濃いピンクに変化する。
「どこもかしこもピンク色だよな、お前の体。誰の体液にも犯されてない証拠だ」
嬉しそうに紫上の乳輪のみを可愛がるヒカルに紫上は返事の変わりに熱の篭った吐息を零すだけだった。
「触って欲しそうに勃ってきたぜ。触って欲しくねえか?俺に」
ヒカルが荒い呼吸を繰り返す紫上に「ん?」と言葉での返答を求めた。
「はあ、触って、ヒカルさん」
やっとのことで言葉に出した紫上に追い討ちをかけるようにヒカルが意地悪をするように紫上の硬く勃ち上がったペニスから溢れる滴を根元から扱くように拭った。
「んやあっ。そっちじゃないです」
紫上がつられるように大きく啼いた。ヒカルは気にすることなく紫上の体液の付いた手を舐める。手のひらをべろりと舐め、その指先に至っては根元まで口に含みゆっくりと引き抜く。ヒカルの長い指先がヒカルの唇を離れる瞬間に「チュッ」と音をたてる。
「あ、ああっ、やっ」
その卑猥な音を間近で聞く紫上が羞恥を訴える。
「やっ、っやっ」
五本の指を舐め上げる間、紫上はひたすらに羞恥に打ち震えた。

「美味かった。後でゆっくり直に味わわせてもらうからな。でも、まずはこっちからだ」
全ての指を舐め上げたヒカルが真顔で紫上を見つめた。首まで赤く染め、何も言わない紫上を横目に見ながらヒカルが決定事項とばかりに宣言すると、紫上の中が嬉しそうにヒカルのペニスを締め付けた。
ヒカルは、形を成しピンと勃ち上がった紫上の胸の頂に再び手を這わせた。
「あん、あ、ああん」
胸の頂を捏ね繰り回すヒカルの指に、紫上が翻弄されるように啼き続ける。
「気持ち良いか?紫上?」
ヒカルの扇情的な声色に紫上はゾクゾクと体を震わせた。
「やっ、ヒカルさ、声、声」
紫上があられもなく叫ぶが、ヒカルは容赦しなかった。
「気持ちいいって言えよ」
ヒカルが紫上に再び問いかけた。
「いい。気持ち、いい。から」
紫上の言葉に気を良くしたヒカルは長い時間を掛けて紫上の胸の頂を愛撫し続けた。

「ヒカルさん、僕」
次第に紫上が両膝を擦り合わせ、もじもじと下肢をくねらせ始めた。
「そのうち胸だけでイケそうだな」
ヒカルが思いついたように呟くが、直ぐに小さく首を振って否定した。
「でもだめだ。お前は俺に中を突かれなきゃイケないままでいいんだ。そういう体に俺がしたんだからな」
ヒカルが至極嬉しそうに呟くとゆっくりと下肢を突き上げ始めた。程なく紫上が熱に浮かされるように懇願した。
「ヒカルさ、キス、したいです」
イク時には必ずキスをしたがる紫上に、ヒカルが僅かに体を捩って口付けを与えた。紫上の両膝の裏をすくい上げる様にに手をあてがい、開脚させるヒカルに待ちきれないとばかりにヒカルの舌を追いかける紫上の絶頂を促すようにヒカルは下肢を突き上げ続けた。
「んふっ、ん、ふっ」
紫上の息がますます荒くなると、ヒカルもまた紫上を追いかけるように絶頂への階段を駆け上った。

「んんんんっ」
紫上が息を詰めると共に下肢をブルリと震わせる瞬間、ヒカルは紫上の腰に両腕を絡ませ強く抱きしめ肢体をきつく絡ませた。ヒカルもまた、紫上の中の収縮によって紫上の中で果てた。ゆっくりと弛緩する紫上の体を離すことなく、ヒカルは紫上の唇を愛撫し続けた。ヒカルのキスに応えることすら出来ないほどの快楽の渦に漂う紫上が、ヒカルに体を委ねたままでまどろんでいた。暫くの間、ヒカルは紫上の唇を舐め、上唇を噛んでは紫上の歯列を舌で辿る。
長い時間を掛けてヒカルは紫上の体に後戯を施し続けた。

ようやく意識が戻ってきた紫上がヒカルのキスに応え始めた。
「出せたか?」
ヒカルが紫上にキスの合間に問いかける。
「はい、たぶん。いつもあの瞬間出てるって、感じては、いるんです。実際には出てないんですけど」
紫上が恥ずかしそうに口ごもった。
「なら、いい。お前が気持ち良きゃ、いい」
ヒカルは紫上のクタリと力を失ったペニスを横に見て微笑んだ。
「今日はお前の体液全て空んなるまで離さねえから」
ヒカルは紫上の中からペニスをズルリと引き抜くと、先ほどの宣言どおりに紫上のペニスに舌を這わせた。
ヒカルの口淫に限界まで快楽を引き釣り出された紫上が「イキたい」と囀ると下腹部に篭った圧でヒカルの出した精液が溢れでた。それを目の当たりにしたヒカルはその兆候が現れる頃合いを見計らって挿入を繰り返した。紫上はその度にキスを強請り体を震わせた。

「もう出ない、ヒカルさん」
途中、紫上が叫ぶと、「なら中でイケ。中だけでイクのも好きだろ。俺がお前の奴隷となって奉仕した証は行為の最中でいかなる理由があったとしてもお前の中から溢すことは許さない」そう呟くと紫上と繋がったままヒカルは紫上の体を離さなかった。
「今日は手加減は無しだ」
ヒカルは自身との繋がりを植えつけるように紫上を揺さぶり続けた。

ようやく事を終えるとヒカルは繋がったままいつものようにバスルームへと紫上と共に移動した。
「抜くぞ」
半ば意識の無い紫上にヒカルがその長大なペニスを引き抜くとゴポゴポとヒカルの出したものが紫上の尻から溢れ出る。体に力の入らない紫上はヒカルに体を預けたままうつらうつらと船を漕ぎ始めた。ヒカルは自らの出したそれを簡単に掻き出し、シャワーで何度も紫上の尻を洗う。そして最後に紫上の頭の先からつま先までを甲斐甲斐しく洗い流すと、紫上の体を丁寧にバスタオルで拭いてやり、自身は大雑把に体を拭くと紫上の体を大事に抱えて寝室まで運びベッドの中央に寝かせた。
ヒカルがセックスの相手にここまでしたことは無論一度もなく、紫上に対してだけだった。それだけ、ヒカルにとっては紫上の存在は特別だった。初めて体を繋げた日から繰り返される日常に紫上は当たり前のようにヒカルに世話をされていた。


ピロートークで「お前に話さなきゃならねえことがある」とヒカルが意を決したように呟いた。
異動の話を聞いた紫上は「僕もついていく」と泣き始めたが、ヒカルは首を縦には振らなかった。
「大学はどうすんだ?頼むから俺を信じて待っていてくれ。寂しくなったら宮内の家に行けばいい」
紫上と離れることは、ヒカルにとってもまた苦渋の決断だった。ぐずる紫上の思考を止めるようにヒカルはその後も
紫上を抱いた。

その日から、今生の別れを惜しむように、しつこいくらいにヒカルは紫上を抱いた。紫上もヒカルに抱かれながら泣いた。離れたくないとヒカルにしがみ付きながら何度もその身を震わせた。


須磨への移動の日、マンションを出るぎりぎりまでヒカルによって抱き潰され、気を失うように眠った紫上の頬を撫でたヒカルは断腸の思いで駅へと向かった。
ヒカルがホームに着くと、左代 中将が夕霧を連れて見送りに来ていた。
夕霧は五歳になっていた。ヒカルを見た夕霧は、ほとんど会うことのないヒカルを怖がるように中将の後ろに隠れた。
「ちょっと見ないうちにでかくなるもんだな」
ヒカルが不思議な物を見るように独り言を漏らした。
「ヒカルがあまり来ないからそう思うんだよ。父親なんだからもう少し会いにおいでよ」
中将は隠れる夕霧を抱き上げた。
「俺も父親には年に一度しか会わずに育ったからな」
ヒカルが過去を振り返り、フッと笑みを漏らした。
「不器用な親子なんだね」
中将もまた、呆れたように笑みを漏らした。
「じゃあな」
ヒカルは感傷的になることなく新幹線に乗り込んだ。

「無事に戻ってくることを願っているよ」
ヒカルの乗った新幹線が見えなくなったホームで、中将がきびしい顔つきで独り言を呟いた。

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