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第0話 領主の仕事
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自分の家から追放? 家の奴らからは呆れられているかも知れないが、そこまではいかないかな? 家の親父も母さんも数年前に死んじまったし、祖父さん祖母さんもずっと前に逝っちまった。俺が今よりも子どもの頃にね? 家の一族(別の封土に住んでいる)や召使い達からも恨まれていないし、封土の領民からも特に歯向かわれる様子もない。
まったくもって平和。平和が、ルンルン気分で歩いている感じだ。だから、そいつらに復讐……最近では「ざまぁ」とか言うらしいが、そんな事をしなくてもいいし、そいつらに対して「参ったか?」と……これも最近では「もう遅い」とか言うらしいが、そう言う事をしなくてもいい。誰に対しても、嫌な事をしなくてもいいわけだ。俺の今の生活が、周りから「嫌だ」と言われたらそれまでだけど。俺は、俺の好きなように生きていきたい。自分の趣味に生きていきたい。「それが甘い」と言われたら何も言えないけどね? でもそれが、俺の生き方、辺境領主の生き方なのだ。
前置きが長くなってしまったが、ここからが物語の本題である。「物語の本題」と言っても、自分の人生を物語に置きかえているだけで、実際は俺の人生を書いているだけだが……それでも、本題には変わらないだろう。本題の主人公は俺、エルダ家のザウル・エルダなのだから。何も間違っていない。こうやって「ああだ、こうだ」と考えるのも、「主人公だから許される特権」と言うヤツだ。
俺はここまで考えて、服の襟元を正した。「自分の趣味に生きてきたい」と思ってはいるが、自分の仕事をやはりやらなければならない。「封土の中を見まわる」と言う仕事を、ここの領主なりにやらなければならないのだ。だから今日の朝飯も、さっさと食べおえる。世話係の愚痴を聴きたくないからね? 朝飯のハムエッグをさらりと平らげるのさ。
「ごちそうさん」
俺は椅子の上から立ち上がり、ここでも世話係の愚痴を聞きながしつつ、食堂の中から出て行った。食堂の外は静かだが、玄関の外は違う。玄関の外には、活気が溢れている。封土の中に溢れている活気が、領民達の声や、荷車の音なんかに混じって、そこら中に漂っているからだ。俺がいつも見まわっている道の両端も、封土の農作業に勤しむ農奴達や、行商人達の声で溢れていた。
俺は、そいつ等に「おはよう。今日も、朝からご苦労様」と話しかけた。その言葉が、そいつ等への挨拶だからである。
「あんまり無理するなよ? 労働なんてモノは、程々が丁度良いんだからな?」
農奴達は、その言葉に笑った。どう言う理由かは分からないが、その言葉にいつも笑われるのだ。腰の曲がっているジジイはおろか、家の農作業を手伝っている子どもにさえ、何故か毎回のように笑われてしまうのである。それだけが、どうも腑に落ちなかった。
「ザウル様。アンタはやっぱり、変わった人だね? 自分の道楽にも真面目だが、そのお仕事にも真面目なんだから。『変わり者』と言うほかありません。普通は、自分の道楽にだけ」
真面目になる。それが世間様の考えだったが、俺にはどうも馴染めない。自分の仕事が残っている状態では、自分の好きな事にも打ちこめないからだ。どんなに楽しい時間を過ごしていても、頭の何処かには仕事が、「そいつをやらなければ」と意識が残っている。まるで自分の背中を見はる教育係のように、こちらの動きにずっと目を光らせているのだ。そんな状態では、楽しい事も楽しめない。だから好きな事をする前には、自分の仕事をさっさと終わらせてしまう。その上で、自分の好きな事を思いきり楽しむのである。
「そんな事は、ないよ。俺は一応」
まだ、十七歳だが。
「ここの領主だからな。領主には、『領主の流儀』ってヤツがあるんだよ」
俺は馬の手綱を操って、その足を促した。馬は、封土の中を歩きつづけた。封土の中は決して広くはなかったが、そこを一回りするにはそれなりの時間が掛かるので、馬が俺の館に帰ってきた時にはもう、朝と昼の真ん中くらいになっていた。馬は俺の指示に従って、いつもの場所に停まった。
俺は、馬の上から降りた。その時に「見まわり終了」とは言ったが、俺の仕事はまだ終わってはいない。この後にもまだ、残っている。机の上にはまだ、封土の損益計算表が乗っているのだ。損益計算表には封土の利益や損失、その他財政状況を書かなければならない。見まわりの中で確かめた、封土の治安状況もまとめなければならない。俺には封土の治安を守る義務と、その領地裁判権があるからだ。領民達が何かの問題を起した時は、公正かつ公平な立場でその問題を裁かなければならない。俺には、その責任がある。
「はぁ」
俺は「やれやれ」と思いながらも、屋敷の仕事部屋に行って、今日の仕事に取りかかった。今日の仕事は、昼すぎに終わった。普段ならもう少し早いが、今月は領民達の納税が何故か遅れてしまって(そいつ等曰く、「仕事が繁忙期に入ったから」との事)、損益計算表の計算に手てまどってしまったのだ。羽パンに使われたインクも、いつもより多く減っている。
「はぁ」
また、溜め息。
「はぁ」
もう一発、溜め息。
「疲れたぁ」
俺は椅子の背もたれに寄りかかって、自分の身体を休ませた。一分、二分、三分と。そんな感じにぼうっとして、部屋の窓に時おり目をやっては、そこから見える外の景色を眺めたわけだ。俺は何も考えず、間抜けな顔で外の景色を眺めつづけた。外の景色は、穏やかだった。景色の中に溶けこんだ光、音、空気が上手い具合に混ざりあって、ある時には太陽の光を、またある時には馬の足音を響かせていた。それらの調和を妨げているのはただ、道の端辺りから聞こえてくる怒鳴り声だけだった。
「なぁに怒っているんだ?」
そう思ったが、それもすぐに消えてしまった。それを確かめるのが、俺の仕事である。俺は椅子の上から立ちあがると、窓の前まで行って、そこから外の通りを見おろした。外の通りには、二人の男が立っていった。そいつ等は館の敷地にこそ入っていなかったが、敷地のすぐ近くにある道で、何やら喧嘩紛いの騒ぎを起していたのである。
「ったく」
舌打ちは好きではないが、まぁ仕方ない。こう言うのに苛立ったり、呆れたりするのが人間である。俺は、聖人君子ではないからな。「イラッ」とする時は、本当に「イラッ」とする。館の中から出て、そいつ等の仲裁に入った時も、その顔を思いきり睨みつける。そうすれば、大抵の争いが収まるからな。今回の場合も、俺がそいつ等から喧嘩の理由を聞き、お互いが「分かりました」と頷ける裁きを下す事で、大きな問題にならずに済んだ。
「まったく。そんな下らない理由で、言いあらそいなんかするなよ?」
申し訳御座いません。俺にそう謝る二人の顔は、何だか淋しげに見えた。二人はそれぞれに互いの非を認めると、目の前の俺にもう一度謝っては、淋しげな顔で道の向こうに渋々と歩いて行った。それを見送ったのは、数秒くらい。二人の背中が見えなくなるまでだ。それ以後は自分の館に戻って、館の食堂に向かった。今日の昼飯を食べるためである。
俺は食堂の中に入って、今日の昼飯を食べはじめた。今日の昼飯は豪華、なわけがない。ここは、辺境の封土だからな。出てくる料理も、それなりである。コップの中に注がれる葡萄汁も決して、良い物ではなかった。
俺は今日の昼食を食べおえると、口元の汚れを拭きとって、椅子の上から立ちあがった。
「さて」
ここからは、楽しい時間。俺が自分の人生を楽しめる、自由の時間だ。この時間だけは、誰にも奪わせない。どうしてもやらなければならない仕事がある時は別だが、それ以外の時はこうして自由に過ごす……例えば、ベッドの上に寝ころんだり、部屋の中をぐるりと見わたしたりするのだ。それで、自分の心が解きはなたれる。今の公事が私事へと置きかわる。すべての不満が満足に変わっていくのである。
この感覚だけは、いつ味わっても最高だ。部屋の中をもう一度見わたしてみても、その満足感が蘇ってくる。部屋の中には様々な場所から集めてきた書物、王道の騎士道物からはじまって、少々難しい錬金術の書物なんかも置かれていた。それらの近くには、絵を描くための道具屋、音楽を奏でるための道具、動画や音楽などを聴くための魔法具なども置かれている。
正に「絶景」とも言える光景。机の上には「電子器」と呼ばれる魔法具も置かれており、これで情報網状(魔法の力を活かした物で、この世界では「連絡線」と呼ばれている)の動画や音楽、純粋な文章や絵なども見られる。俺も特にやりたい事がない時や、様々な理由で館の外に行けない時、逆に何かしらの作業がある時は、こいつを使っていた。こいつにはタイプ、「入力板」と呼ばれる物が付いていて、羽ペンよりも早く書けるからである。加えて、文章の修正も簡単。「消去」のボタンを押せば、間違った部分をすぐに取りけせてしまう。本当に便利な魔法道具だ。こいつには既製品もあるが、「自作」と呼ばれる物……つまりは自分で造れる型もあるので、折りがあれば、「そいつを造ってみよう」と思う。
だが今日は、「そうだな?」
とりあえずは、別の事をしよう。今日は、外の天気も晴れているしね? 部屋の中で過ごすには、もったいない。こう言う時は、外で出来る事しないと。
「うーん」
こうやって、悩む時間も贅沢だ。周りの人間に「こうしろ」と言われるのではなく、自分の頭で「これから何をしようか?」と考えられる所がね? 自分に自分の主導権があるような、そんな感覚を覚えてしまう。その感覚が、本当に最高だった。こいつを一度味わったら、もう二度と抜けだせない。ある種の中毒のような物である。自分が人間だからこそ許された……。
「よし」
今日のやる事が決まった。今日は、こいつをやろう。最近は、なかなかやれなかったし。心の疲れを癒すには、こいつがピッタリだ。
「うん」
俺は自分の右手にある道具を持って、部屋の中から出て行った。
まったくもって平和。平和が、ルンルン気分で歩いている感じだ。だから、そいつらに復讐……最近では「ざまぁ」とか言うらしいが、そんな事をしなくてもいいし、そいつらに対して「参ったか?」と……これも最近では「もう遅い」とか言うらしいが、そう言う事をしなくてもいい。誰に対しても、嫌な事をしなくてもいいわけだ。俺の今の生活が、周りから「嫌だ」と言われたらそれまでだけど。俺は、俺の好きなように生きていきたい。自分の趣味に生きていきたい。「それが甘い」と言われたら何も言えないけどね? でもそれが、俺の生き方、辺境領主の生き方なのだ。
前置きが長くなってしまったが、ここからが物語の本題である。「物語の本題」と言っても、自分の人生を物語に置きかえているだけで、実際は俺の人生を書いているだけだが……それでも、本題には変わらないだろう。本題の主人公は俺、エルダ家のザウル・エルダなのだから。何も間違っていない。こうやって「ああだ、こうだ」と考えるのも、「主人公だから許される特権」と言うヤツだ。
俺はここまで考えて、服の襟元を正した。「自分の趣味に生きてきたい」と思ってはいるが、自分の仕事をやはりやらなければならない。「封土の中を見まわる」と言う仕事を、ここの領主なりにやらなければならないのだ。だから今日の朝飯も、さっさと食べおえる。世話係の愚痴を聴きたくないからね? 朝飯のハムエッグをさらりと平らげるのさ。
「ごちそうさん」
俺は椅子の上から立ち上がり、ここでも世話係の愚痴を聞きながしつつ、食堂の中から出て行った。食堂の外は静かだが、玄関の外は違う。玄関の外には、活気が溢れている。封土の中に溢れている活気が、領民達の声や、荷車の音なんかに混じって、そこら中に漂っているからだ。俺がいつも見まわっている道の両端も、封土の農作業に勤しむ農奴達や、行商人達の声で溢れていた。
俺は、そいつ等に「おはよう。今日も、朝からご苦労様」と話しかけた。その言葉が、そいつ等への挨拶だからである。
「あんまり無理するなよ? 労働なんてモノは、程々が丁度良いんだからな?」
農奴達は、その言葉に笑った。どう言う理由かは分からないが、その言葉にいつも笑われるのだ。腰の曲がっているジジイはおろか、家の農作業を手伝っている子どもにさえ、何故か毎回のように笑われてしまうのである。それだけが、どうも腑に落ちなかった。
「ザウル様。アンタはやっぱり、変わった人だね? 自分の道楽にも真面目だが、そのお仕事にも真面目なんだから。『変わり者』と言うほかありません。普通は、自分の道楽にだけ」
真面目になる。それが世間様の考えだったが、俺にはどうも馴染めない。自分の仕事が残っている状態では、自分の好きな事にも打ちこめないからだ。どんなに楽しい時間を過ごしていても、頭の何処かには仕事が、「そいつをやらなければ」と意識が残っている。まるで自分の背中を見はる教育係のように、こちらの動きにずっと目を光らせているのだ。そんな状態では、楽しい事も楽しめない。だから好きな事をする前には、自分の仕事をさっさと終わらせてしまう。その上で、自分の好きな事を思いきり楽しむのである。
「そんな事は、ないよ。俺は一応」
まだ、十七歳だが。
「ここの領主だからな。領主には、『領主の流儀』ってヤツがあるんだよ」
俺は馬の手綱を操って、その足を促した。馬は、封土の中を歩きつづけた。封土の中は決して広くはなかったが、そこを一回りするにはそれなりの時間が掛かるので、馬が俺の館に帰ってきた時にはもう、朝と昼の真ん中くらいになっていた。馬は俺の指示に従って、いつもの場所に停まった。
俺は、馬の上から降りた。その時に「見まわり終了」とは言ったが、俺の仕事はまだ終わってはいない。この後にもまだ、残っている。机の上にはまだ、封土の損益計算表が乗っているのだ。損益計算表には封土の利益や損失、その他財政状況を書かなければならない。見まわりの中で確かめた、封土の治安状況もまとめなければならない。俺には封土の治安を守る義務と、その領地裁判権があるからだ。領民達が何かの問題を起した時は、公正かつ公平な立場でその問題を裁かなければならない。俺には、その責任がある。
「はぁ」
俺は「やれやれ」と思いながらも、屋敷の仕事部屋に行って、今日の仕事に取りかかった。今日の仕事は、昼すぎに終わった。普段ならもう少し早いが、今月は領民達の納税が何故か遅れてしまって(そいつ等曰く、「仕事が繁忙期に入ったから」との事)、損益計算表の計算に手てまどってしまったのだ。羽パンに使われたインクも、いつもより多く減っている。
「はぁ」
また、溜め息。
「はぁ」
もう一発、溜め息。
「疲れたぁ」
俺は椅子の背もたれに寄りかかって、自分の身体を休ませた。一分、二分、三分と。そんな感じにぼうっとして、部屋の窓に時おり目をやっては、そこから見える外の景色を眺めたわけだ。俺は何も考えず、間抜けな顔で外の景色を眺めつづけた。外の景色は、穏やかだった。景色の中に溶けこんだ光、音、空気が上手い具合に混ざりあって、ある時には太陽の光を、またある時には馬の足音を響かせていた。それらの調和を妨げているのはただ、道の端辺りから聞こえてくる怒鳴り声だけだった。
「なぁに怒っているんだ?」
そう思ったが、それもすぐに消えてしまった。それを確かめるのが、俺の仕事である。俺は椅子の上から立ちあがると、窓の前まで行って、そこから外の通りを見おろした。外の通りには、二人の男が立っていった。そいつ等は館の敷地にこそ入っていなかったが、敷地のすぐ近くにある道で、何やら喧嘩紛いの騒ぎを起していたのである。
「ったく」
舌打ちは好きではないが、まぁ仕方ない。こう言うのに苛立ったり、呆れたりするのが人間である。俺は、聖人君子ではないからな。「イラッ」とする時は、本当に「イラッ」とする。館の中から出て、そいつ等の仲裁に入った時も、その顔を思いきり睨みつける。そうすれば、大抵の争いが収まるからな。今回の場合も、俺がそいつ等から喧嘩の理由を聞き、お互いが「分かりました」と頷ける裁きを下す事で、大きな問題にならずに済んだ。
「まったく。そんな下らない理由で、言いあらそいなんかするなよ?」
申し訳御座いません。俺にそう謝る二人の顔は、何だか淋しげに見えた。二人はそれぞれに互いの非を認めると、目の前の俺にもう一度謝っては、淋しげな顔で道の向こうに渋々と歩いて行った。それを見送ったのは、数秒くらい。二人の背中が見えなくなるまでだ。それ以後は自分の館に戻って、館の食堂に向かった。今日の昼飯を食べるためである。
俺は食堂の中に入って、今日の昼飯を食べはじめた。今日の昼飯は豪華、なわけがない。ここは、辺境の封土だからな。出てくる料理も、それなりである。コップの中に注がれる葡萄汁も決して、良い物ではなかった。
俺は今日の昼食を食べおえると、口元の汚れを拭きとって、椅子の上から立ちあがった。
「さて」
ここからは、楽しい時間。俺が自分の人生を楽しめる、自由の時間だ。この時間だけは、誰にも奪わせない。どうしてもやらなければならない仕事がある時は別だが、それ以外の時はこうして自由に過ごす……例えば、ベッドの上に寝ころんだり、部屋の中をぐるりと見わたしたりするのだ。それで、自分の心が解きはなたれる。今の公事が私事へと置きかわる。すべての不満が満足に変わっていくのである。
この感覚だけは、いつ味わっても最高だ。部屋の中をもう一度見わたしてみても、その満足感が蘇ってくる。部屋の中には様々な場所から集めてきた書物、王道の騎士道物からはじまって、少々難しい錬金術の書物なんかも置かれていた。それらの近くには、絵を描くための道具屋、音楽を奏でるための道具、動画や音楽などを聴くための魔法具なども置かれている。
正に「絶景」とも言える光景。机の上には「電子器」と呼ばれる魔法具も置かれており、これで情報網状(魔法の力を活かした物で、この世界では「連絡線」と呼ばれている)の動画や音楽、純粋な文章や絵なども見られる。俺も特にやりたい事がない時や、様々な理由で館の外に行けない時、逆に何かしらの作業がある時は、こいつを使っていた。こいつにはタイプ、「入力板」と呼ばれる物が付いていて、羽ペンよりも早く書けるからである。加えて、文章の修正も簡単。「消去」のボタンを押せば、間違った部分をすぐに取りけせてしまう。本当に便利な魔法道具だ。こいつには既製品もあるが、「自作」と呼ばれる物……つまりは自分で造れる型もあるので、折りがあれば、「そいつを造ってみよう」と思う。
だが今日は、「そうだな?」
とりあえずは、別の事をしよう。今日は、外の天気も晴れているしね? 部屋の中で過ごすには、もったいない。こう言う時は、外で出来る事しないと。
「うーん」
こうやって、悩む時間も贅沢だ。周りの人間に「こうしろ」と言われるのではなく、自分の頭で「これから何をしようか?」と考えられる所がね? 自分に自分の主導権があるような、そんな感覚を覚えてしまう。その感覚が、本当に最高だった。こいつを一度味わったら、もう二度と抜けだせない。ある種の中毒のような物である。自分が人間だからこそ許された……。
「よし」
今日のやる事が決まった。今日は、こいつをやろう。最近は、なかなかやれなかったし。心の疲れを癒すには、こいつがピッタリだ。
「うん」
俺は自分の右手にある道具を持って、部屋の中から出て行った。
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