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「お願いだから、手は切るなよ」
隣に立つ健斗の震えている手元を見て、俺はそわそわしながら玉ねぎを炒める。
数えるほどしか包丁を持ったことがないと言っていた健斗は、皮がむかれたジャガイモを前に固まっている。
「お前、こっち炒めてろ」
見ていられず、健斗の手から包丁を取ると、狭いキッチンで場所を交換する。木べらを持って、重要な仕事を任されたような面持ちで玉ねぎを混ぜている健斗を横目で見ながら、ジャガイモを切り、水にさらす。人参と鶏肉も一口大に切った。いつもは玉ねぎだけとか、冷蔵庫にある具材で作るが、今日は健斗も食べるのでチキンカレーだ。
切った食材も炒め、水を加えて煮込む。じゃがいもと人参に火が通ったら、市販のカレールーを入れて味の調節をする。
健斗には鍋の底が焦げないように混ぜてもらい、その間俺は水菜とキャベツと人参をシーチキンで和えたサラダを作った。
完成したカレーを炊いたご飯にたっぷりとかけて、サラダも並べてテーブルに置く。
座った健斗は何やら感動しているようで、自分が作ったカレーライスを、スプーンを握り締めてじっと見ている。
「いただきます」
二人一緒に手を合わせ、健斗はスプーンにカレーライスを山盛りにすくい、大きく口を開けて食べる。途端に笑み崩れた。
「美味いだろ?」
健斗は何度も「ん」と繰り返して頷いている。
「簡単だろ? ただ炒めて煮込むだけなんだから」
それには首を横に振り、健斗はしんなりした玉ねぎをつついて呟いた。
「星矢くんが側にいたから作れたけど……一人じゃ……」
「できないと思ってやろうとしないからダメなんだよ。考える前に包丁握ってみろ」
健斗は「うーん」と気乗りしない返事で、サラダを頬張り口をもごもごと動かしていたが、ややあってもじもじしながら訊いてきた。
「星矢くんは……料理ができたほうが好き?」
「あ? できないより、できたほうがいいだろ?」
「うん、じゃあ……頑張る」
珍しくやる気を見せる健斗に発破をかけるように言った。
「ネットでも探せば腐るほどレシピが出てくるし、カレーの作り方なんてルーの箱に書いてある。覚えて損はない」
「星矢くんが好きな料理は?」
「あー……別に好き嫌いはない。辛いのも甘いのも好きだし……」
色々な料理を思い浮かべながら答える俺に、健斗は食べる手をとめて真面目に聞いている。もらった野菜を放置していた男が、一緒に作っただけでこうも料理に興味を持つとは思わなかった。
ゴミの分別もあれ以来間違わずにしているようだし、料理もきちんと日課になれば、健康にもいいだろうし、少しは痩せた体に肉がつくだろう。
隣に立つ健斗の震えている手元を見て、俺はそわそわしながら玉ねぎを炒める。
数えるほどしか包丁を持ったことがないと言っていた健斗は、皮がむかれたジャガイモを前に固まっている。
「お前、こっち炒めてろ」
見ていられず、健斗の手から包丁を取ると、狭いキッチンで場所を交換する。木べらを持って、重要な仕事を任されたような面持ちで玉ねぎを混ぜている健斗を横目で見ながら、ジャガイモを切り、水にさらす。人参と鶏肉も一口大に切った。いつもは玉ねぎだけとか、冷蔵庫にある具材で作るが、今日は健斗も食べるのでチキンカレーだ。
切った食材も炒め、水を加えて煮込む。じゃがいもと人参に火が通ったら、市販のカレールーを入れて味の調節をする。
健斗には鍋の底が焦げないように混ぜてもらい、その間俺は水菜とキャベツと人参をシーチキンで和えたサラダを作った。
完成したカレーを炊いたご飯にたっぷりとかけて、サラダも並べてテーブルに置く。
座った健斗は何やら感動しているようで、自分が作ったカレーライスを、スプーンを握り締めてじっと見ている。
「いただきます」
二人一緒に手を合わせ、健斗はスプーンにカレーライスを山盛りにすくい、大きく口を開けて食べる。途端に笑み崩れた。
「美味いだろ?」
健斗は何度も「ん」と繰り返して頷いている。
「簡単だろ? ただ炒めて煮込むだけなんだから」
それには首を横に振り、健斗はしんなりした玉ねぎをつついて呟いた。
「星矢くんが側にいたから作れたけど……一人じゃ……」
「できないと思ってやろうとしないからダメなんだよ。考える前に包丁握ってみろ」
健斗は「うーん」と気乗りしない返事で、サラダを頬張り口をもごもごと動かしていたが、ややあってもじもじしながら訊いてきた。
「星矢くんは……料理ができたほうが好き?」
「あ? できないより、できたほうがいいだろ?」
「うん、じゃあ……頑張る」
珍しくやる気を見せる健斗に発破をかけるように言った。
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