人気俳優と恋に落ちたら

山吹レイ

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愛を確かめ合うとき

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 キスは好きだ。
 体を繋げる方法はなにもセックスだけじゃない。キスも相手の体内を探り、互いに気分を高め合ったり、楽しんだりすることができる。
 粘膜を絡ませ、唾液で滑る舌で唇の輪郭をなぞると、上に乗っている為純が満足げな息をつく。
 二人でひっ付き合って眠るのが精いっぱいの狭いベッドの上で、俺たちは裸になってキスをしたり体に触れたりしている。
 首筋から鎖骨、胸にと唇を落としていった為純は、俺の体を見て「綺麗な体だ」と呟いた。勇吾やメンバーと一緒に立つとどうしても細身に映ってしまう自分を気にしていたが、好きな相手から褒められると悪い気はしない。
「もう少し筋肉が欲しいんだけど……」
「このままでいい。踊っている姿は本当に美しい。力強くて軽やかでしなやかで……この体に触れたら、どんな風に感じるのか、何度も想像した」
 そんな素振りは一度も見せたことがなかったのに、為純が俺とそういうことを想像していたとは驚きだった。
「想像したのかよ。いやらしい」
「行理は想像しなかったのか? 俺とこうなることを」
「しなかったわけじゃないけど……なんか、罪悪感っていうか……」
 為純は胸の突起を啄んだ。思わず「あっ」と声を出すと、舌で舐ったり転がしたり悪戯をしはじめた。
「こら……」
 俺も仕返しに何かしてやりたいが、為純が上に乗っている状態だと動けない。せめて、為純をベッドに転がせれば俺も触れることができるのに……と思いながら、片足を動かしてみる。
 右ひざを立てて、為純の上半身を抱きしめたまま、勢いよく体を回転させた……が、為純の体が壁にぶつかって止まる。
 やっぱりベッドが狭い。前に為純からベッドを買い換える予定を訊かれたが、今は部屋が狭くなろうがもっと大きなベッドが欲しいと心から思った。
「大きいベッド買わなきゃ……」
 思わず考えていたことが口から漏れる。
「このままでいいんだろ?」
「だって、こんなこと……身動きが取れないじゃん」
「大人しくしてれば済むことだ」
「大人しくできんのかよ?」
 為純はふっと笑った。余裕の笑顔が憎らしくなって、耳を掴んで引っ張る。すると、為純は俺の横に来た。ベッドから落ちそうな俺の体を引き寄せたので、必然的に為純の胸の上に上半身が載った。
 為純の鍛えた胸は触れると硬くて、引き締まった体にはどこにも無駄な贅肉がない。
「そっちこそ、ほんといい体してるよ。ジム?」
「気分転換に嗜む程度だ」
 謙遜も嫌味に感じるほど、嗜むという感じではない鍛えかただった。じっくりと為純の体を眺めて触れていくと、肩や腕、それと腹の辺りに小さな傷やあざがあることに気づいた。最近できた跡のようだった。
「ここ……赤くなっている……怪我でもした?」
「ああ、それは打ち身だ。殺陣のときに当たったんだ」
「痛くない?」
「ああ」
 傷を癒すように、指で優しくなぞり、キスをする。俺が上に乗ると、為純が腰から尻にかけて撫でてきた。後ろを探ってくるような指の動きに、力を抜いて体を預け、為純の勃っているものに手を添えて優しく動かしてみる。味わってみたい気もするが、探っていた指が遠慮がちに、でもあやすように突いてくる。ゆっくりと体内に指が侵入してきたので、軽く息を呑んで動きを止めた。
「痛いか?」
「ん……大丈夫、気持ちいいよ」
 しっかりと目を合わせて微笑み、もっとしてほしいとキスで煽る。為純はキスを受けながら、それでも決して強引に侵入しようとはしてこなかった。
 為純が触れやすいように少し足を開くと、指が奥まで入ってくる。じれったいほどの動きで体内を解す指の感触を感じながら、静かに息を吐いた。
「ん……」
 指を動かすたびに滑りを帯びたそこがくちゅくちゅといやらしい音を立てる。
 ころんとベッドに押し倒されて、再び為純に組み敷かれた。いつの間にか持っていたコンドームのパッケージを破り、被せると、俺の後ろに押し当てる。
 俺が欲しいと、一つになりたいと、為純の目が切ないほど訴えている。手を伸ばして首に絡め「来いよ」と囁くと、為純が少しずつ中に入ってきた。
 圧迫感に一瞬腰が引く。この瞬間だけは慣れない。引っ掛かる部分が入って馴染んでしまえば、あとはひたすら悦楽に浸れるのに、最初の拒否反応だけはどうにもできない。
 為純が体を引こうとしたので、足を腰に回して引き寄せた。
「大丈夫か?」
 頷くと、自分から腰を押しつける。先端が入ったので、あとは飲み込むように緩めた。
「熱くて溶けてしまいそうだ」
 根元まで埋めた為純が、唇を薄く開き、頬を上気させた艶っぽい表情で俺を見つめている。吐息が触れるほどに近づいた唇に舌を伸ばすと、為純も舌を出して絡ませてきた。唾液が唇の端から零れても気にせずねっとりと嬲るように互いに味わって、じっと体を重ねた。
「為純も熱いよ」
「ああ。行理の匂いが濃くなった」
 唇から垂れた唾液を舐めとり、仰け反った顎に噛みついた為純は、腰を揺らし、緩慢に動きはじめた。
 背中に腕を回して動きを合わせながら、目を閉じて快感を追う。
 腰を抱えた為純が激しく突いてきたので、息を漏らしながらしがみつく。
 最奥を突かれた瞬間、耐え切れずに迸る。ややして、為純が息を殺して体内でびくびくと震えた。コンドーム越しでも為純が中で吐精しているのがわかり、俺は力を入れて尻をねっとりと動かして余韻に浸る。
 為純の顎からぽたりと汗が落ちる。汗で貼りついた髪を優しくかき上げてキスを強請ると、為純は俺の望み通り唇を重ねてきた。顔を離し俺の腹に散った白濁に目を留めて、指でなぞる。ゆっくりと体内から抜くと、不意に屈んで舌を伸ばし、俺の先端を舐める。
 男ははじめてとか言っていたような気がしたが、こういうことも抵抗がないのだと驚く。
「美味しくないよ」
「確かに。でも嫌いじゃない。ここも行理の匂いが濃くて、味わい深い」
「為純は俺の匂いフェチか」
「行理が俺の髪にこだわるのと同じだ。ここも本当に綺麗だ」
 竿を根元まで舐められて、思わず声が出る。
 コンドームを外した為純のものは未だ硬さを保ったまま、上を向き、凶器さながらの大きさと形だった。
 膝でつんと触れると揺れる。またつんつんとつつくと形を変えたような気がした。
「まだおっきくなる?」
「行理が欲しい」
「いいよ。いくらでもやるよ」
 新しいコンドームをつけて、再び中に入ってくる。今度は簡単に馴染み、俺たちは本当にひとつになって溶けあったように体を揺すった。
 その日、一晩中抱き合って、愛を確かめ合ったのだ。
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