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とけた雪が、水に変わるまでに(後編)
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「すみません、嶋さん」
伊摘は傷口を嶋に消毒してもらい、清潔なガーゼと包帯で腕を巻かれた。
「傷は浅いですよ。かすり傷です」
嶋は眼鏡を押し上げ、余った包帯を手際よく巻いて救急箱にしまっていく。
嶋と伊摘の穏やかな会話をよそに、貴昭は不機嫌さを隠しはせずに苛々と老人を見つめている。
老人は貴昭の不機嫌さを全く気にせず、呑気に湯飲みに注がれた湯気の立つ熱い茶を啜った。
随分広い屋敷だった。
日本家屋の室内は、古いながらもよく手入れされていて歴史の趣を感じさせる。
「誰が説明してくれんだ? ああ?」
今まで我慢していた貴昭が、伊摘の手当てが終るなり、鋭い眼差しで老人と嶋を睨んだ。
だが老人は貴昭を軽く無視し、伊摘に目を向けた。
「儂は片山直次郎、組では若頭を務めている」
頭を下げた老人……直次郎に、伊摘も深々と頭を下げた。
「水江伊摘です」
「知っとる。今も十年前もな」
「え?」
「十年経っても何一つ変わっとらん。あんたも組長も」
一見普通の老人に見える直次郎の、闇の深淵を覗き込むような暗い瞳に、伊摘は息を呑んだ。
堅気の人間とは一目で違うとわかる、裏の世界の辛酸を嘗めた深い皺の刻まれた直次郎の表情に、体がびくりと震えた。
「昔話はいい」
短気な貴昭はそう言って直次郎と伊摘の間を断ち切る。
直次郎は貴昭に目を向けて、あからさまにため息をついた。
「落ち着きない男だ。仕事はちゃんとしてきたんでしょうな?」
「してきたから帰ってきたんだろ。直さん、俺を子ども扱いするのはやめろ」
貴昭は顔を顰めた。
直次郎は「やれやれ」と肩をすくめる。
「儂には、無理やり仕事を終らせてきたと報告が来ておる。伊摘さん、あんたのことになると組長はこの通りだ。色事に現を抜かすとは情けない。先代に顔向けできん」
「伊摘は……別に関係ねえだろ。俺はちゃんと仕事をしてきた」
直次郎は胡乱げに貴昭を見つめる。貴昭の言葉を信じてないようだ。
伊摘は貴昭と直次郎の様子を黙って見ていた。
貴昭がかなり苛々していることから、一見緊張感が張り詰めているようにも思えるが、それを直次郎がうまく貴昭の怒気を削いでいく。
貴昭が誰かに窘めされている場をはじめて見た。
二人はまるで上下関係が逆で、ともすれば親子のようにも見える。かなり古い付き合いなのだとわかった。
「もし伊摘さんの身に何かあれば、組長は仕事を放り出してでも帰ってきただろう、違うか?」
直次郎のその言葉は質問ではなく確信だった。
「そりゃあ……」
貴昭は一瞬言葉を濁した。違うと言いたい貴昭の思いが伊摘には手に取るようにわかった。
だが貴昭は首を横に振ると「その通りだ」と素直に認めてしまった。
そしてきっぱりと告げた。
「この際だから言っておく。俺のいない間に何があったか知らねえが、今度一切伊摘に手出しするな。いいか、絶対に手出しすんじゃねえぞ」
「貴昭……」
やはり貴昭は伊摘がヤクザにかかわってほしくないのだと知り悲しくなった。
直次郎はそんな貴昭を見て、瞳を険しくする。
「もし伊摘さんと組とどっちか取らなきゃならんことが起きたらどうする?」
直次郎の言葉に伊摘ははっとして顔を上げた。
貴昭の伊摘に対する執着心から直次郎がわざとそんなことを聞いたのだとわかる。
なんてことを訊くのだろう。
そんなものは比べられるわけがない。組と伊摘とでは重みも責任の度合いも全く違う。それに貴昭は組を優先するに決まっているというのに。
しかし貴昭は信じられないことを口にした。
「伊摘を取る」
「貴……!」
伊摘は迷いのない貴昭の言葉に戦慄する。
全てを捨ててまでして伊摘を選択する、そのありえないほどひたむきな貴昭の想いに胸を打たれると同時に、それではいけないという相対する感情が、伊摘を苦悩の表情へと変えていく。
一体貴昭の下にどれほど従事している人がいるのか……貴昭は知らないのだろうか。いや、知らないわけがない。知っていて、その人たちを全て見捨てて伊摘を選ぶというのだろうか。
昔は何一つ知らなかった組の規模も会社の経営も、今は大体のことは把握してある。だからそれがどれほど無慈悲なことか、薄情か、無責任か、わかりすぎるほど理解していた。
罪深いほどに愛される貴昭の想いを振り切るように、伊摘は貴昭の腕をきつく握りしめて、首を横に振った。
自分を見捨てて欲しいとばかりに。
貴昭の選択は間違っているとばかりに。
貴昭は穏やかな瞳で伊摘を見つめると、愛撫するかのように頬を優しく撫でる。
「俺は伊摘を取る。組なら誰でも継げる。けど伊摘は誰にも渡したくねえし、諦めることはできねえから。……もう二度とごめんだ、あんな思いは」
涙が滲み、伊摘は唇を噛み締める。
自分が十年前に残酷なことをした、その苦しみを未だ引き摺る貴昭に、伊摘は自分こそが元凶などだと痛感した。
貴昭にいらない重荷を背負わせている、その責任を作ったのは自分だった。
「だから、儂は伊摘さんを引きずりこもうと思った」
「直さん! あんた……」
憤怒で顔を赤く染めた貴昭は、ぐっと拳を握りしめて今にも直次郎に殴りかかろうとしていた。
直次郎を守るように、嶋が一歩前に出て言った。
「その話は俺からさせていただきます」
貴昭は拳を握りしめたまま、今にも誰かを殺しそうな眼差しで、嶋と直次郎を睨みつけている。
「これは俺が勝手に決めました。伊摘さんをこちらに引きずりこんだのは俺です。組長がいない間がいい機会だと思いました」
「てめえ……」
貴昭の肩が震え、声が殺気を孕む。伊摘は貴昭の腕を掴んで声を張り上げた。
「貴昭、無理やりじゃない! 俺は嶋さんに提案されて自分から入っていったんだ!」
貴昭は伊摘をも睨みつけた。
「そんなの嘘に決まってる! 伊摘、お前なんで……嶋を庇ってんのか!? この男はな」
伊摘は貴昭が言わんとしていることがわかり、話を遮った。
「貴昭! 嶋さんをこれ以上侮辱するな」
伊摘は言葉を一旦切ると、荒げていた声を優しさに、苦悩の表情を悲しみに変えて、貴昭に訴えた。
「俺を籠の鳥にしないでくれ。貴昭に守られて何も知らないまま安穏として生きていくのはもうたくさんだ。俺の人生を誰にも左右されたくない。俺が行きたい道を行かせてくれ」
貴昭は伊摘を信じられないものを見るように、見つめている。
ショックを受けているのがわかった。
貴昭を傷つけた残酷さに伊摘の表情が激しく歪んだ。
伊摘は唇を噛み締めたまま一筋の涙を流した。
「ごめん、貴昭。ごめん」
嶋は静かに口を開いた。
「伊摘さんは愛玩されるだけの人形じゃない。組長、伊摘さんも悩んでいたはずです。このままでいいのか。ただ組長に可愛がられるだけの存在でいいのか」
「伊摘……」
貴昭は唇を噛みしめ伊摘から顔をそらした。
直次郎は貴昭の様子を冷静に見つめている。
「伊摘さん、あんたの存在は組長を操るだけの大きな力になっとる。組とあんたと天秤にかけても、あんたを選ぶと迷わず言い切るとは……覚悟はしていたが、こうもあっさり言ってのけるとさすがに堪える。その言葉は組を潰す言葉だ。組長、誰でも組長が務まると本気で思っとるのか?」
貴昭は無言だった。
「思っとらんだろ。ならば伊摘さんに貴昭を頼むしかない。これは組のためであり、あんたたち二人のためにもなると思ってしたことだ」
伊摘は涙を流しながら直次郎を見つめた。
嶋の提案に腐った餌でも構わないと食いついたのは伊摘だった。だが、本当の真実は思わぬところに潜んでいたのだ。
騙しも企みもない、純粋に組を思う気持ちが、それと多分貴昭を思う気持ちからきたことだった。
「あと五年……五年がいい頃だろう。儂が若頭に留まるのは。耄碌してもいられる場所ではないからな。それまでに伊摘さんをこの座に押し上げようかと思っとる」
伊摘は信じられない言葉に声が出なかった。
自分が若頭につくなど……ありえないような気がした。
けれど、貴昭を支えるという役割で若頭という座は、この上なく魅力的で最高の場所のように思える。
ただ、それには死ぬほどの思いを味わらなければならないだろが。それは覚悟の上だった。
貴昭は俯いたまま、いきなり立ち上がると伊摘の腕を乱暴に引っ張った。
「痛っ、貴昭」
そして伊摘を強引に連れ、足音も荒く部屋から出て行った。
「貴昭、貴昭!」
伊摘は貴昭を止めようとするが、貴昭は揺るぎない強さで伊摘を引き摺るように早足で歩く。
すれ違う男たちが、驚いた様子で立ち止まり、慌てて頭を下げる。
「車持ってこい!!」
貴昭の叫ぶその怒気を孕んだ鞭のような声に、側にいた男たちが飛び上がった。
マンションに帰るなり、貴昭はいきなり玄関先で伊摘を床に押し倒した。
「貴昭!」
靴も脱がないままの伊摘に、貴昭は唇を噛み締め怒りを溜め込んだ表情で伊摘に圧し掛かってくる。
「……くしょう……ちくしょう!」
貴昭は床を殴りつけた。
伊摘が自分も殴られるのではないかとびくりと体を震わすと、貴昭は叩いていた拳を止めて、不意に床に置き、顔を伊摘の胸に埋めた。
伊摘は恐る恐る貴昭の肩に手をかけ、振り払われなかったことにほっとし、ぎゅっと抱きつく。
「許してくれ、貴昭」
伊摘はその言葉だけ囁いた。
無理やり気持ちをわからせようとするのではなく、ただ許しを請うのみ口にした。
貴昭がどう言おうと伊摘の気持ちは決まっているという、あらわれでもあった。
貴昭は何も言わない。
ただ、抱きついていた伊摘を離したくはないように、きつく抱き締めた。
伊摘は貴昭の髪を梳き、むせ返るほどに濃い雄の匂いを胸に吸いこむ。
凶暴なオーラを放っていながらも、それは伊摘を優しく包むかのように甘く蕩ける。伊摘を愛したい思いと、相対する憎みたい思いがない交ぜになっている複雑な貴昭の心境が伊摘に伝わってきた。
五分ほどそうしていただろうか。しばらくして、貴昭は少し体を起こして、伊摘の顔を見つめる。
「伊摘」
貴昭の目に迷いと混乱があった。
「お前は今のままで不満か?」
伊摘は切ない顔で微笑む。
「不満じゃない。でも……満足はしてない。俺は貴昭の側にいたいんだ。いつだって貴昭の側にいたい。そして共に歩いていきたい。一緒に辛いことも背負っていきたい。だから、貴昭の生きる世界に入らせてくれ」
貴昭は鈍く瞳を光らせた。
「死ぬつってんだろ……」
そしていきなり感情を爆発させた。
「死ぬぞ! んなことになったら! この世界はな、心底悪党じゃなきゃ生きていけねえ世界なんだよ! お前は……お前は……こんなに綺麗なんだから……」
貴昭の瞳から涙が零れ落ちる。その涙は雪解け水のように透き通って煌き、とても美しかった。
貴昭の流した涙はまるで伊摘へと純粋な愛を謳っているかのようも見えて、伊摘は堪らなくなった。
貴昭がどれほど伊摘を深く愛しているのかわかっている。そう、貴昭の愛は無垢で絶え間ない。枯れることなく常に胸に湛え、伊摘へ強く優しく甘く注がれる。そして伊摘はそれに甘え続けていた。
伊摘は貴昭の涙の跡にそっと口づけた。
「俺は綺麗じゃない。貴昭を守るためなら誰かを殺すことになっても躊躇わない。それが俺の行きたい道なんだ」
貴昭は伊摘の決意に一瞬鼻白んだ。
そして顔を皺くちゃにして苦しそうに告げる。
「お前は俺の側で笑っていればいんだ……それがどんなに俺を幸せにしてくれるか……わかってねえのか?」
「なら……貴昭は俺がベッドで一人残される辛さをわかってるか? 今の状態が、貴昭の人生から俺を締めだそうとしていることがわかってるのか? 俺はただの抱かれる人形か!?」
責めるように言った伊摘に、貴昭は激しく首を横に振った。
「そんなこと思ってねえ! 思うはずがねえだろ!」
伊摘は貴昭の太い首に腕を絡ませ、言った。
「行きたい、貴昭と行きたい。貴昭と一緒の世界を見たい。それは俺の我がままなんだろうか? 貴昭は俺の願いを叶えてくれないのか?」
それは、今まで望みの一つも口にしなかった伊摘が、はじめて望んだ願い。
貴昭は苦悩の表情のまま、伊摘の額に額を合わせ目を閉じた。
伊摘は堪らず間近にある貴昭の官能的な唇に、己の唇を合わせた。
それだけでは飽き足らず、唇を押しつけたまま、貴昭の唇の輪郭をゆっくりとなぞるように舌を這わせる。
すると、貴昭はゆっくりと唇を開き、舌を伊摘の舌へ絡めてきた。
「……無茶はするな。お前が傷つくのは耐えられねえ」
貴昭の我慢に満ちた掠れた声。納得はできないが伊摘に降伏した言葉だった。
「貴昭」
伊摘にほっと安堵の表情が表れる。
喜んだ伊摘を貴昭は面白くなさそうに見つめる。
「ほんとはやなんだよ。けど、伊摘の願いならしょうがねえ……ちくしょう、俺はメロメロなんだよ! どうしようもなく惚れてんのがわかって言ってんだろ、ああ?」
伊摘は返事のかわりに、涙の滲んだ目でにっこりと笑った。
貴昭は、わざと凶暴な顔で睨んだ。
「チッ、性悪め。俺を十年も待たせて、狂わせて、まだ俺を振り回す気か。お前みたいな男は俺がたっぷりと……」
言いかけた言葉をそのままに、突然貴昭はにやりと笑う。
先ほどまでのしおらしさはどこにいったのか、ふてぶてしい笑顔で貴昭は伊摘を抱き上げた。靴を乱暴に脱がせる。
「伊摘、お前、約束破っただろ」
そのまま貴昭は寝室へと伊摘を連れて行く。
「約……束?」
「この部屋に誰も入れるなって言ったよな」
伊摘は確かに嶋を部屋の中に入れたが、それは別にやましいことをしていたわけじゃなく、ただ話をしていただけだ。
責められることは何一つしてない。
「嶋さんは……というか、なんで嶋さんがここに来たこと知って……?」
貴昭は伊摘をベッドへ放ると、何も言わず悪人のように唇を歪めて笑う。
ベッドの側に立っていた貴昭は、おもむろにネクタイに指をかけ、左右に動かすと、結び目を解いた。
そしてスーツの上着を脱ぎ、見る見るうちに全裸になっていった。
隆々とした肉体は猛々しく、中心には息を呑むほどに完全に勃起した塊が、物欲しそうに揺れている。
その巨大さに伊摘は生唾を飲み込み、疼く後ろの穴を宥めるように唇を噛む。
「脱げ」
貴昭は短く命令した。
「脱いでケツをこっちに向けろ。俺は約束を守ったぞ? 一度も出さなかったからな。覚悟しとけ」
「貴……」
「さっさと脱げ」
貴昭はベッドに乗り上げると、伊摘の服を乱暴に引っ張る。
布が破れ、ボタンが飛んでいく。貴昭にかかると着ているものがただの布切れに変わっていく。
破いた布を放り、貴昭は伊摘の上半身を裸にするとベルトに手をかけた。
あっという間に下着も払われ、伊摘はベッドの上で生贄のように全裸になった。
伊摘の持ち上がるまで勃起してないそこを見て、貴昭は片方の眉をあげた。
「俺は我慢してたってのに、誰かと遊んだのか? ああ?」
「するわけないだろ」
「なら、なんで俺を見て勃ってねえんだよ」
いきなり貴昭は伊摘をうつ伏せにして尻を広げた。
「誰かを銜えこんだか?」
そこをまじまじと凝視され、伊摘は恥ずかしそうに尻を引こうとすると、貴昭は指を挿入してくる。
伊摘は体を強張らせて息を呑んだ。
「奥まで入んねえ」
濡れもしないそこは、貴昭の太い指を途中までしか許さず、貴昭は諦めて指を抜いた。そして伊摘の穴に舌を這わせた。
「貴昭っ……」
「誰も男を銜えこんでねえようだな」
「当たり前だ! なんでそんなこと言うんだよ」
「苛めるために決まってんだろ。俺は怒ってんだよ、伊摘。誰が愛した奴を組に入れる馬鹿がいる。お前は俺が譲ったと思って満足しているだろうが、俺は許しちゃいねえんだからな。こうなったらとことん苛めてやる」
貴昭は舌を引くと、伊摘を仰向けにさせて足を大きく開かせた。
伊摘の貴昭とは比べ物にならないほど淡い色をした性器が勃起しているのを見て、満足に口角をあげる。
貴昭が己の太い幹を軽く扱くと、ますます嵩を増したようにも見えて、伊摘の瞳がじんわりと潤む。
貴昭はサイドテーブルの引き出しからローションを取り出すと、それを己の先端に滴らせた。
「今なら確実に孕むぞ。ずっと出してねえから濃いのが大量に出るはずだ。この腹が膨れるくらいに全部伊摘ん中に注いでやる」
貴昭は矛先を伊摘の穴へと宛がう。
そして、ゆっくりと襞を広げるように進入してきた。
伊摘の全身の毛穴が開き、異物を押し出すような拒否反応を示した。
「きついな……緩めろ」
「ああっ……」
貴昭との性交は、穴の開いてない板に無理やり釘を捻じ込んでいくようなものだ。
周りから削り取られていくような圧迫感と痛みを引き出す。
だが馴染んでしまえば、その大きさはこの世のものとは思えないほどの悦楽を引き出すのだ。
体をしならせて逃げようとする伊摘を、貴昭は腰を強く掴み、辛抱強く奥を開拓していった。
「たった数日しなかっただけで俺を忘れたのか? 薄情な体だ」
貴昭は突き刺さったままのそこに、さらにローションを垂らした。すると滑りがよくなったそこは、貴昭の一突きで根元まで飲み込んだ。
短い悲鳴が伊摘の口から漏れる。
「やべえ、入れただけで出そうだ」
奥をかき回すように貴昭が腰を蠢かせると、ぬちゃぬちゃと淫らな音を響かせて穴の周りについたローションがシーツへ流れていく。
伊摘の体が潤い始め、苦痛から快楽へと裏返るなり、貴昭を心地よくも悩ましい締めつけで喜ばせ始めた。
「いいぞ、伊摘。やっと俺のことを思い出して歓迎してくれたんだな」
貴昭は緩慢な動きで伊摘の中を出たり入ったりしては、時折ぶるっと震え「くそっ……」と唇を噛んで耐える。
その姿に伊摘も興奮し、艶かしく腰を振る。
貴昭は腰を揺らしながら、伊摘のツンと立った胸の突起に噛みついた。
「ん……貴昭」
焦らすように吸ったり転がしたりする貴昭の肩を、伊摘はゆっくりと撫でる。貴昭は平らな胸を下から押し上げるようにして揉んでは、吸っていないほうの突起を引っ張った。
そのたびに伊摘が貴昭を誘うように腰を動かすので、貴昭はうめき声をあげて「もたねえ……限界」といきなり伊摘の太股を折り曲げるようにして穴を上向かせた。
そこに激しく貴昭は突いていく。
「はっ、はっ……」
荒い息を乱したまま、伊摘は薄く目を開けて貴昭の表情をつぶさに見つめる。
僅かに綻んだ鋭い瞳、熱い息を乱す形のいい唇、額には汗が浮かび、玉となって鼻先へと溜まり、伊摘の体に落ちていく。
この世で最もセクシーで獰猛な盛りついた雄の姿があった。
貴昭は伊摘の太股を掴んで大きく開かせると、最奥で抜き差ししはじめた。
筋の浮いた巨大な性器が今にも爆発しそうなほど膨れあがったのを感じ、伊摘は貴昭の射精が近いことを悟った。
「出すぞ、もっと奥まで飲みこめ」
根元までずっしりと埋まった性器をさらに押しつける貴昭に、伊摘は貴昭の肩に爪を立ててしがみついた。
「あっ、あっ」
「濃い種が奥まで届かないだろ」
どこまで侵入してくるのかと思うほど、貴昭は陰嚢を押しつけて、ぐいぐいと捻り入れる。
「無理、大きすぎ……ひっ」
「孕め」
貴昭がそう告げ動きと止めた瞬間、体内へと熱い奔流が迸った。
「ああ!」
伊摘は目を剥き、がくがくと痙攣しながら、時を同じくして達した。
激しすぎる快感に、背中を仰け反らせて悲鳴を上げた伊摘を、貴昭は体を少し引いて再び打ちつけては、濃い白濁を一滴残らず伊摘に注ぎ込む。
信じられないほど長い間放っていた貴昭を、伊摘は時折痙攣させては搾り取るかのように締めつけて、種を飲み込んだ。
もう吐精しつくしたと思い伊摘が体を動かすと、中にいた硬いままの巨根がまた精を散らした。
「貴昭、まだ出てっ……あっ」
身悶えて伊摘は甘い声をあげた。
「たまんねえ。このままいくぞ」
貴昭は伊摘の上半身を起こして抱える。
子供のように貴昭の膝にだっこされ、貫かれたまま、伊摘は貴昭の頭を引き寄せて、髪をくしゃくしゃに掻き乱した。
「愛してる、伊摘、愛してる」
貴昭の囁くような睦言にうっすらと頬を赤らめて、伊摘もまた言い返した。
「俺も貴昭を愛してる。だからずっといたい」
「わかった。しょうがねえ、これは惚れた弱みだ。……その代わり、若頭になった日には、四六時中俺に押し倒されることを覚悟しとけよ」
伊摘の体がぎくりと強張る。
貴昭ならやりかねない。
「これをやる」
いきなり貴昭は繋がったまま腰をずらすと、自分が脱いだ服から何やら小さな箱を取り出し、ふたを開けて伊摘の手に乗せた。
「これは……」
伊摘は驚きの声をあげた。
プラチナのシンプルな指輪が納まっている。
「前から買ってやると言っておきながら、まだだったからな」
貴昭は指輪を手に取り、伊摘の左手を掴むとゆっくりと薬指に嵌めていく。サイズはぴったりだった。
「貴昭……」
「いいな、やっぱ。伊摘が俺のものになったような気がする」
嬉しそうに言うと、貴昭は伊摘の頬や顎にキスの雨を降らせた。
伊摘はくすぐったそうにしながらも、貴昭の体に抱きつき「ありがとう」と掠れた声で呟いた。
「俺は俺でちゃんと伊摘とのことを考えてたんだぞ」
「うん……」
伊摘と貴昭は誓いのキスを幾度となく重ねた。
この先、何があろうと貴昭から決して離れない。そんな覚悟をもって、伊摘は貴昭の欲望に煙った顔を見上げる。
貴昭は眩しいものを見るように、目を細めて伊摘を見下ろした。
「おら、子作りに励むぞ。せっかく指輪をやったんだからな。めでてえことが重なるってのは最高だろ」
貴昭は一度出したことなど感じさせない硬さで、伊摘を下から突き始めた。
「貴っ……昭……子作りプレイはもういい」
伊摘はしがみつきながら、首を横に振った。
「ガキが欲しいって言ったのは伊摘だろ」
「欲しいだなんて一度も言ったことない。それに俺は男でいくら出されても孕まない」
「しらけること言うんじゃねえよ。俺はお前が孕めばいいと思っていつも種付けしてんだぞ。特にさっきの一発目は、活きのいい精子がうようよ泳いでるような特注の濃いザーメンだぜ? 俺は絶対できたとみたな」
「誰が孕むか……」
「出しまくってれば絶対妊娠する。最近やりすぎて薄くなってんのがいけねえんだよ。だから、今日のは確実だ」
「……馬鹿だ……」
伊摘はため息をついて片手で顔を覆った。
「孕むまで中に出しまくってやるから、安心しろ」
結局はセックスしたいだけの行為だとよくわかった。
止める術を伊摘は知らない。
伊摘はそれを感じ、頭が痛くなった。
もしかして、またもやセックスで体がだるくて仕事にいけない、などと悪しき行為が繰り返されるのだろうか。
いや……そんなことはもうさせない。
そうだ。濃い精液で孕むというのなら、一週間でも二週間でも禁欲させてやるのはどうだろう。
子作りプレイに便乗して、貴昭にセックスの回数を制限させればいいのだ。
貴昭からはじめたプレイだ。よもや、嫌だとは言わないだろう。
二人がベッドで子作りに励んでいる頃、直次郎と嶋は静謐な部屋の中で、向き合って茶を飲んでいた。
「若頭」
嶋の静かな声に、直次郎は視線をあげる。
「組長はどういう決断をなされたでしょうか」
「きっと怒りながらも渋々認めるだろう。なにせ、あの男にベタ惚れだからな。まったくガキの恋愛を見ているようだ」
直次郎は言葉では憤慨しているかのようにも見えるが、本心はきっと喜んでいると嶋は感じた。
心なしか表情が優しかったからだ。
「でも……羨ましいですね。あんなふうに純粋に愛し愛される人がいるというのは」
「だから嵌った。散々汚いことを見てきた目に、それは新鮮に映っただろう」
その気持ちが今の嶋には少しだけわかる。
伊摘と数日間仕事をしてきて、だいたいの人となりがわかった。
例えば、決して嫌と言わない、どんな仕事でも手を抜かず真摯に向き合う生真面目さや、兄の話にも痛ましげな表情を浮かべ、まるで自分のことのように感じてくれた純粋さ。
疑うことを知らない無垢な笑顔は、遥か昔に失ってしまったものを見ているような気分になった。
「彼は本当に、若頭の座まで上りつめることができるでしょうか?」
「さあな」
「これで……よかったんでしょうか」
「……どうした、嶋? もしやお前がなりたかったのか?」
からかいの口調に、嶋は少しだけ苦笑いを浮かべた。
「今のままで満足です。若頭なんて、なるもんじゃありません。あなたの側にいて嫌というほどわかってますので。ただ……」
嶋はそれ以上言えなかった。
この先、必ず伊摘は地獄を見る。足の先から髪の一本に至るまでどっぷりと汚水のような醜く臭い世界に浸らなければならないのだから。
そのとき、あの純粋な思いが、優しい笑顔がどう変わるのか……。
考えてもどうにもなるわけではない。
伊摘の側には常に愛する男が側にいる。きっと全力で伊摘を守ってくれるだろう。
嶋はただ見守るだけだ。
多分自分は五年後も若頭補佐という座にいるだろう。
そしてその時は、伊摘を守るもう一つの盾となる。
嶋は湯飲みに口をつけて熱い茶を飲んだ。
口元がうっすらと微笑んでいた。
伊摘は傷口を嶋に消毒してもらい、清潔なガーゼと包帯で腕を巻かれた。
「傷は浅いですよ。かすり傷です」
嶋は眼鏡を押し上げ、余った包帯を手際よく巻いて救急箱にしまっていく。
嶋と伊摘の穏やかな会話をよそに、貴昭は不機嫌さを隠しはせずに苛々と老人を見つめている。
老人は貴昭の不機嫌さを全く気にせず、呑気に湯飲みに注がれた湯気の立つ熱い茶を啜った。
随分広い屋敷だった。
日本家屋の室内は、古いながらもよく手入れされていて歴史の趣を感じさせる。
「誰が説明してくれんだ? ああ?」
今まで我慢していた貴昭が、伊摘の手当てが終るなり、鋭い眼差しで老人と嶋を睨んだ。
だが老人は貴昭を軽く無視し、伊摘に目を向けた。
「儂は片山直次郎、組では若頭を務めている」
頭を下げた老人……直次郎に、伊摘も深々と頭を下げた。
「水江伊摘です」
「知っとる。今も十年前もな」
「え?」
「十年経っても何一つ変わっとらん。あんたも組長も」
一見普通の老人に見える直次郎の、闇の深淵を覗き込むような暗い瞳に、伊摘は息を呑んだ。
堅気の人間とは一目で違うとわかる、裏の世界の辛酸を嘗めた深い皺の刻まれた直次郎の表情に、体がびくりと震えた。
「昔話はいい」
短気な貴昭はそう言って直次郎と伊摘の間を断ち切る。
直次郎は貴昭に目を向けて、あからさまにため息をついた。
「落ち着きない男だ。仕事はちゃんとしてきたんでしょうな?」
「してきたから帰ってきたんだろ。直さん、俺を子ども扱いするのはやめろ」
貴昭は顔を顰めた。
直次郎は「やれやれ」と肩をすくめる。
「儂には、無理やり仕事を終らせてきたと報告が来ておる。伊摘さん、あんたのことになると組長はこの通りだ。色事に現を抜かすとは情けない。先代に顔向けできん」
「伊摘は……別に関係ねえだろ。俺はちゃんと仕事をしてきた」
直次郎は胡乱げに貴昭を見つめる。貴昭の言葉を信じてないようだ。
伊摘は貴昭と直次郎の様子を黙って見ていた。
貴昭がかなり苛々していることから、一見緊張感が張り詰めているようにも思えるが、それを直次郎がうまく貴昭の怒気を削いでいく。
貴昭が誰かに窘めされている場をはじめて見た。
二人はまるで上下関係が逆で、ともすれば親子のようにも見える。かなり古い付き合いなのだとわかった。
「もし伊摘さんの身に何かあれば、組長は仕事を放り出してでも帰ってきただろう、違うか?」
直次郎のその言葉は質問ではなく確信だった。
「そりゃあ……」
貴昭は一瞬言葉を濁した。違うと言いたい貴昭の思いが伊摘には手に取るようにわかった。
だが貴昭は首を横に振ると「その通りだ」と素直に認めてしまった。
そしてきっぱりと告げた。
「この際だから言っておく。俺のいない間に何があったか知らねえが、今度一切伊摘に手出しするな。いいか、絶対に手出しすんじゃねえぞ」
「貴昭……」
やはり貴昭は伊摘がヤクザにかかわってほしくないのだと知り悲しくなった。
直次郎はそんな貴昭を見て、瞳を険しくする。
「もし伊摘さんと組とどっちか取らなきゃならんことが起きたらどうする?」
直次郎の言葉に伊摘ははっとして顔を上げた。
貴昭の伊摘に対する執着心から直次郎がわざとそんなことを聞いたのだとわかる。
なんてことを訊くのだろう。
そんなものは比べられるわけがない。組と伊摘とでは重みも責任の度合いも全く違う。それに貴昭は組を優先するに決まっているというのに。
しかし貴昭は信じられないことを口にした。
「伊摘を取る」
「貴……!」
伊摘は迷いのない貴昭の言葉に戦慄する。
全てを捨ててまでして伊摘を選択する、そのありえないほどひたむきな貴昭の想いに胸を打たれると同時に、それではいけないという相対する感情が、伊摘を苦悩の表情へと変えていく。
一体貴昭の下にどれほど従事している人がいるのか……貴昭は知らないのだろうか。いや、知らないわけがない。知っていて、その人たちを全て見捨てて伊摘を選ぶというのだろうか。
昔は何一つ知らなかった組の規模も会社の経営も、今は大体のことは把握してある。だからそれがどれほど無慈悲なことか、薄情か、無責任か、わかりすぎるほど理解していた。
罪深いほどに愛される貴昭の想いを振り切るように、伊摘は貴昭の腕をきつく握りしめて、首を横に振った。
自分を見捨てて欲しいとばかりに。
貴昭の選択は間違っているとばかりに。
貴昭は穏やかな瞳で伊摘を見つめると、愛撫するかのように頬を優しく撫でる。
「俺は伊摘を取る。組なら誰でも継げる。けど伊摘は誰にも渡したくねえし、諦めることはできねえから。……もう二度とごめんだ、あんな思いは」
涙が滲み、伊摘は唇を噛み締める。
自分が十年前に残酷なことをした、その苦しみを未だ引き摺る貴昭に、伊摘は自分こそが元凶などだと痛感した。
貴昭にいらない重荷を背負わせている、その責任を作ったのは自分だった。
「だから、儂は伊摘さんを引きずりこもうと思った」
「直さん! あんた……」
憤怒で顔を赤く染めた貴昭は、ぐっと拳を握りしめて今にも直次郎に殴りかかろうとしていた。
直次郎を守るように、嶋が一歩前に出て言った。
「その話は俺からさせていただきます」
貴昭は拳を握りしめたまま、今にも誰かを殺しそうな眼差しで、嶋と直次郎を睨みつけている。
「これは俺が勝手に決めました。伊摘さんをこちらに引きずりこんだのは俺です。組長がいない間がいい機会だと思いました」
「てめえ……」
貴昭の肩が震え、声が殺気を孕む。伊摘は貴昭の腕を掴んで声を張り上げた。
「貴昭、無理やりじゃない! 俺は嶋さんに提案されて自分から入っていったんだ!」
貴昭は伊摘をも睨みつけた。
「そんなの嘘に決まってる! 伊摘、お前なんで……嶋を庇ってんのか!? この男はな」
伊摘は貴昭が言わんとしていることがわかり、話を遮った。
「貴昭! 嶋さんをこれ以上侮辱するな」
伊摘は言葉を一旦切ると、荒げていた声を優しさに、苦悩の表情を悲しみに変えて、貴昭に訴えた。
「俺を籠の鳥にしないでくれ。貴昭に守られて何も知らないまま安穏として生きていくのはもうたくさんだ。俺の人生を誰にも左右されたくない。俺が行きたい道を行かせてくれ」
貴昭は伊摘を信じられないものを見るように、見つめている。
ショックを受けているのがわかった。
貴昭を傷つけた残酷さに伊摘の表情が激しく歪んだ。
伊摘は唇を噛み締めたまま一筋の涙を流した。
「ごめん、貴昭。ごめん」
嶋は静かに口を開いた。
「伊摘さんは愛玩されるだけの人形じゃない。組長、伊摘さんも悩んでいたはずです。このままでいいのか。ただ組長に可愛がられるだけの存在でいいのか」
「伊摘……」
貴昭は唇を噛みしめ伊摘から顔をそらした。
直次郎は貴昭の様子を冷静に見つめている。
「伊摘さん、あんたの存在は組長を操るだけの大きな力になっとる。組とあんたと天秤にかけても、あんたを選ぶと迷わず言い切るとは……覚悟はしていたが、こうもあっさり言ってのけるとさすがに堪える。その言葉は組を潰す言葉だ。組長、誰でも組長が務まると本気で思っとるのか?」
貴昭は無言だった。
「思っとらんだろ。ならば伊摘さんに貴昭を頼むしかない。これは組のためであり、あんたたち二人のためにもなると思ってしたことだ」
伊摘は涙を流しながら直次郎を見つめた。
嶋の提案に腐った餌でも構わないと食いついたのは伊摘だった。だが、本当の真実は思わぬところに潜んでいたのだ。
騙しも企みもない、純粋に組を思う気持ちが、それと多分貴昭を思う気持ちからきたことだった。
「あと五年……五年がいい頃だろう。儂が若頭に留まるのは。耄碌してもいられる場所ではないからな。それまでに伊摘さんをこの座に押し上げようかと思っとる」
伊摘は信じられない言葉に声が出なかった。
自分が若頭につくなど……ありえないような気がした。
けれど、貴昭を支えるという役割で若頭という座は、この上なく魅力的で最高の場所のように思える。
ただ、それには死ぬほどの思いを味わらなければならないだろが。それは覚悟の上だった。
貴昭は俯いたまま、いきなり立ち上がると伊摘の腕を乱暴に引っ張った。
「痛っ、貴昭」
そして伊摘を強引に連れ、足音も荒く部屋から出て行った。
「貴昭、貴昭!」
伊摘は貴昭を止めようとするが、貴昭は揺るぎない強さで伊摘を引き摺るように早足で歩く。
すれ違う男たちが、驚いた様子で立ち止まり、慌てて頭を下げる。
「車持ってこい!!」
貴昭の叫ぶその怒気を孕んだ鞭のような声に、側にいた男たちが飛び上がった。
マンションに帰るなり、貴昭はいきなり玄関先で伊摘を床に押し倒した。
「貴昭!」
靴も脱がないままの伊摘に、貴昭は唇を噛み締め怒りを溜め込んだ表情で伊摘に圧し掛かってくる。
「……くしょう……ちくしょう!」
貴昭は床を殴りつけた。
伊摘が自分も殴られるのではないかとびくりと体を震わすと、貴昭は叩いていた拳を止めて、不意に床に置き、顔を伊摘の胸に埋めた。
伊摘は恐る恐る貴昭の肩に手をかけ、振り払われなかったことにほっとし、ぎゅっと抱きつく。
「許してくれ、貴昭」
伊摘はその言葉だけ囁いた。
無理やり気持ちをわからせようとするのではなく、ただ許しを請うのみ口にした。
貴昭がどう言おうと伊摘の気持ちは決まっているという、あらわれでもあった。
貴昭は何も言わない。
ただ、抱きついていた伊摘を離したくはないように、きつく抱き締めた。
伊摘は貴昭の髪を梳き、むせ返るほどに濃い雄の匂いを胸に吸いこむ。
凶暴なオーラを放っていながらも、それは伊摘を優しく包むかのように甘く蕩ける。伊摘を愛したい思いと、相対する憎みたい思いがない交ぜになっている複雑な貴昭の心境が伊摘に伝わってきた。
五分ほどそうしていただろうか。しばらくして、貴昭は少し体を起こして、伊摘の顔を見つめる。
「伊摘」
貴昭の目に迷いと混乱があった。
「お前は今のままで不満か?」
伊摘は切ない顔で微笑む。
「不満じゃない。でも……満足はしてない。俺は貴昭の側にいたいんだ。いつだって貴昭の側にいたい。そして共に歩いていきたい。一緒に辛いことも背負っていきたい。だから、貴昭の生きる世界に入らせてくれ」
貴昭は鈍く瞳を光らせた。
「死ぬつってんだろ……」
そしていきなり感情を爆発させた。
「死ぬぞ! んなことになったら! この世界はな、心底悪党じゃなきゃ生きていけねえ世界なんだよ! お前は……お前は……こんなに綺麗なんだから……」
貴昭の瞳から涙が零れ落ちる。その涙は雪解け水のように透き通って煌き、とても美しかった。
貴昭の流した涙はまるで伊摘へと純粋な愛を謳っているかのようも見えて、伊摘は堪らなくなった。
貴昭がどれほど伊摘を深く愛しているのかわかっている。そう、貴昭の愛は無垢で絶え間ない。枯れることなく常に胸に湛え、伊摘へ強く優しく甘く注がれる。そして伊摘はそれに甘え続けていた。
伊摘は貴昭の涙の跡にそっと口づけた。
「俺は綺麗じゃない。貴昭を守るためなら誰かを殺すことになっても躊躇わない。それが俺の行きたい道なんだ」
貴昭は伊摘の決意に一瞬鼻白んだ。
そして顔を皺くちゃにして苦しそうに告げる。
「お前は俺の側で笑っていればいんだ……それがどんなに俺を幸せにしてくれるか……わかってねえのか?」
「なら……貴昭は俺がベッドで一人残される辛さをわかってるか? 今の状態が、貴昭の人生から俺を締めだそうとしていることがわかってるのか? 俺はただの抱かれる人形か!?」
責めるように言った伊摘に、貴昭は激しく首を横に振った。
「そんなこと思ってねえ! 思うはずがねえだろ!」
伊摘は貴昭の太い首に腕を絡ませ、言った。
「行きたい、貴昭と行きたい。貴昭と一緒の世界を見たい。それは俺の我がままなんだろうか? 貴昭は俺の願いを叶えてくれないのか?」
それは、今まで望みの一つも口にしなかった伊摘が、はじめて望んだ願い。
貴昭は苦悩の表情のまま、伊摘の額に額を合わせ目を閉じた。
伊摘は堪らず間近にある貴昭の官能的な唇に、己の唇を合わせた。
それだけでは飽き足らず、唇を押しつけたまま、貴昭の唇の輪郭をゆっくりとなぞるように舌を這わせる。
すると、貴昭はゆっくりと唇を開き、舌を伊摘の舌へ絡めてきた。
「……無茶はするな。お前が傷つくのは耐えられねえ」
貴昭の我慢に満ちた掠れた声。納得はできないが伊摘に降伏した言葉だった。
「貴昭」
伊摘にほっと安堵の表情が表れる。
喜んだ伊摘を貴昭は面白くなさそうに見つめる。
「ほんとはやなんだよ。けど、伊摘の願いならしょうがねえ……ちくしょう、俺はメロメロなんだよ! どうしようもなく惚れてんのがわかって言ってんだろ、ああ?」
伊摘は返事のかわりに、涙の滲んだ目でにっこりと笑った。
貴昭は、わざと凶暴な顔で睨んだ。
「チッ、性悪め。俺を十年も待たせて、狂わせて、まだ俺を振り回す気か。お前みたいな男は俺がたっぷりと……」
言いかけた言葉をそのままに、突然貴昭はにやりと笑う。
先ほどまでのしおらしさはどこにいったのか、ふてぶてしい笑顔で貴昭は伊摘を抱き上げた。靴を乱暴に脱がせる。
「伊摘、お前、約束破っただろ」
そのまま貴昭は寝室へと伊摘を連れて行く。
「約……束?」
「この部屋に誰も入れるなって言ったよな」
伊摘は確かに嶋を部屋の中に入れたが、それは別にやましいことをしていたわけじゃなく、ただ話をしていただけだ。
責められることは何一つしてない。
「嶋さんは……というか、なんで嶋さんがここに来たこと知って……?」
貴昭は伊摘をベッドへ放ると、何も言わず悪人のように唇を歪めて笑う。
ベッドの側に立っていた貴昭は、おもむろにネクタイに指をかけ、左右に動かすと、結び目を解いた。
そしてスーツの上着を脱ぎ、見る見るうちに全裸になっていった。
隆々とした肉体は猛々しく、中心には息を呑むほどに完全に勃起した塊が、物欲しそうに揺れている。
その巨大さに伊摘は生唾を飲み込み、疼く後ろの穴を宥めるように唇を噛む。
「脱げ」
貴昭は短く命令した。
「脱いでケツをこっちに向けろ。俺は約束を守ったぞ? 一度も出さなかったからな。覚悟しとけ」
「貴……」
「さっさと脱げ」
貴昭はベッドに乗り上げると、伊摘の服を乱暴に引っ張る。
布が破れ、ボタンが飛んでいく。貴昭にかかると着ているものがただの布切れに変わっていく。
破いた布を放り、貴昭は伊摘の上半身を裸にするとベルトに手をかけた。
あっという間に下着も払われ、伊摘はベッドの上で生贄のように全裸になった。
伊摘の持ち上がるまで勃起してないそこを見て、貴昭は片方の眉をあげた。
「俺は我慢してたってのに、誰かと遊んだのか? ああ?」
「するわけないだろ」
「なら、なんで俺を見て勃ってねえんだよ」
いきなり貴昭は伊摘をうつ伏せにして尻を広げた。
「誰かを銜えこんだか?」
そこをまじまじと凝視され、伊摘は恥ずかしそうに尻を引こうとすると、貴昭は指を挿入してくる。
伊摘は体を強張らせて息を呑んだ。
「奥まで入んねえ」
濡れもしないそこは、貴昭の太い指を途中までしか許さず、貴昭は諦めて指を抜いた。そして伊摘の穴に舌を這わせた。
「貴昭っ……」
「誰も男を銜えこんでねえようだな」
「当たり前だ! なんでそんなこと言うんだよ」
「苛めるために決まってんだろ。俺は怒ってんだよ、伊摘。誰が愛した奴を組に入れる馬鹿がいる。お前は俺が譲ったと思って満足しているだろうが、俺は許しちゃいねえんだからな。こうなったらとことん苛めてやる」
貴昭は舌を引くと、伊摘を仰向けにさせて足を大きく開かせた。
伊摘の貴昭とは比べ物にならないほど淡い色をした性器が勃起しているのを見て、満足に口角をあげる。
貴昭が己の太い幹を軽く扱くと、ますます嵩を増したようにも見えて、伊摘の瞳がじんわりと潤む。
貴昭はサイドテーブルの引き出しからローションを取り出すと、それを己の先端に滴らせた。
「今なら確実に孕むぞ。ずっと出してねえから濃いのが大量に出るはずだ。この腹が膨れるくらいに全部伊摘ん中に注いでやる」
貴昭は矛先を伊摘の穴へと宛がう。
そして、ゆっくりと襞を広げるように進入してきた。
伊摘の全身の毛穴が開き、異物を押し出すような拒否反応を示した。
「きついな……緩めろ」
「ああっ……」
貴昭との性交は、穴の開いてない板に無理やり釘を捻じ込んでいくようなものだ。
周りから削り取られていくような圧迫感と痛みを引き出す。
だが馴染んでしまえば、その大きさはこの世のものとは思えないほどの悦楽を引き出すのだ。
体をしならせて逃げようとする伊摘を、貴昭は腰を強く掴み、辛抱強く奥を開拓していった。
「たった数日しなかっただけで俺を忘れたのか? 薄情な体だ」
貴昭は突き刺さったままのそこに、さらにローションを垂らした。すると滑りがよくなったそこは、貴昭の一突きで根元まで飲み込んだ。
短い悲鳴が伊摘の口から漏れる。
「やべえ、入れただけで出そうだ」
奥をかき回すように貴昭が腰を蠢かせると、ぬちゃぬちゃと淫らな音を響かせて穴の周りについたローションがシーツへ流れていく。
伊摘の体が潤い始め、苦痛から快楽へと裏返るなり、貴昭を心地よくも悩ましい締めつけで喜ばせ始めた。
「いいぞ、伊摘。やっと俺のことを思い出して歓迎してくれたんだな」
貴昭は緩慢な動きで伊摘の中を出たり入ったりしては、時折ぶるっと震え「くそっ……」と唇を噛んで耐える。
その姿に伊摘も興奮し、艶かしく腰を振る。
貴昭は腰を揺らしながら、伊摘のツンと立った胸の突起に噛みついた。
「ん……貴昭」
焦らすように吸ったり転がしたりする貴昭の肩を、伊摘はゆっくりと撫でる。貴昭は平らな胸を下から押し上げるようにして揉んでは、吸っていないほうの突起を引っ張った。
そのたびに伊摘が貴昭を誘うように腰を動かすので、貴昭はうめき声をあげて「もたねえ……限界」といきなり伊摘の太股を折り曲げるようにして穴を上向かせた。
そこに激しく貴昭は突いていく。
「はっ、はっ……」
荒い息を乱したまま、伊摘は薄く目を開けて貴昭の表情をつぶさに見つめる。
僅かに綻んだ鋭い瞳、熱い息を乱す形のいい唇、額には汗が浮かび、玉となって鼻先へと溜まり、伊摘の体に落ちていく。
この世で最もセクシーで獰猛な盛りついた雄の姿があった。
貴昭は伊摘の太股を掴んで大きく開かせると、最奥で抜き差ししはじめた。
筋の浮いた巨大な性器が今にも爆発しそうなほど膨れあがったのを感じ、伊摘は貴昭の射精が近いことを悟った。
「出すぞ、もっと奥まで飲みこめ」
根元までずっしりと埋まった性器をさらに押しつける貴昭に、伊摘は貴昭の肩に爪を立ててしがみついた。
「あっ、あっ」
「濃い種が奥まで届かないだろ」
どこまで侵入してくるのかと思うほど、貴昭は陰嚢を押しつけて、ぐいぐいと捻り入れる。
「無理、大きすぎ……ひっ」
「孕め」
貴昭がそう告げ動きと止めた瞬間、体内へと熱い奔流が迸った。
「ああ!」
伊摘は目を剥き、がくがくと痙攣しながら、時を同じくして達した。
激しすぎる快感に、背中を仰け反らせて悲鳴を上げた伊摘を、貴昭は体を少し引いて再び打ちつけては、濃い白濁を一滴残らず伊摘に注ぎ込む。
信じられないほど長い間放っていた貴昭を、伊摘は時折痙攣させては搾り取るかのように締めつけて、種を飲み込んだ。
もう吐精しつくしたと思い伊摘が体を動かすと、中にいた硬いままの巨根がまた精を散らした。
「貴昭、まだ出てっ……あっ」
身悶えて伊摘は甘い声をあげた。
「たまんねえ。このままいくぞ」
貴昭は伊摘の上半身を起こして抱える。
子供のように貴昭の膝にだっこされ、貫かれたまま、伊摘は貴昭の頭を引き寄せて、髪をくしゃくしゃに掻き乱した。
「愛してる、伊摘、愛してる」
貴昭の囁くような睦言にうっすらと頬を赤らめて、伊摘もまた言い返した。
「俺も貴昭を愛してる。だからずっといたい」
「わかった。しょうがねえ、これは惚れた弱みだ。……その代わり、若頭になった日には、四六時中俺に押し倒されることを覚悟しとけよ」
伊摘の体がぎくりと強張る。
貴昭ならやりかねない。
「これをやる」
いきなり貴昭は繋がったまま腰をずらすと、自分が脱いだ服から何やら小さな箱を取り出し、ふたを開けて伊摘の手に乗せた。
「これは……」
伊摘は驚きの声をあげた。
プラチナのシンプルな指輪が納まっている。
「前から買ってやると言っておきながら、まだだったからな」
貴昭は指輪を手に取り、伊摘の左手を掴むとゆっくりと薬指に嵌めていく。サイズはぴったりだった。
「貴昭……」
「いいな、やっぱ。伊摘が俺のものになったような気がする」
嬉しそうに言うと、貴昭は伊摘の頬や顎にキスの雨を降らせた。
伊摘はくすぐったそうにしながらも、貴昭の体に抱きつき「ありがとう」と掠れた声で呟いた。
「俺は俺でちゃんと伊摘とのことを考えてたんだぞ」
「うん……」
伊摘と貴昭は誓いのキスを幾度となく重ねた。
この先、何があろうと貴昭から決して離れない。そんな覚悟をもって、伊摘は貴昭の欲望に煙った顔を見上げる。
貴昭は眩しいものを見るように、目を細めて伊摘を見下ろした。
「おら、子作りに励むぞ。せっかく指輪をやったんだからな。めでてえことが重なるってのは最高だろ」
貴昭は一度出したことなど感じさせない硬さで、伊摘を下から突き始めた。
「貴っ……昭……子作りプレイはもういい」
伊摘はしがみつきながら、首を横に振った。
「ガキが欲しいって言ったのは伊摘だろ」
「欲しいだなんて一度も言ったことない。それに俺は男でいくら出されても孕まない」
「しらけること言うんじゃねえよ。俺はお前が孕めばいいと思っていつも種付けしてんだぞ。特にさっきの一発目は、活きのいい精子がうようよ泳いでるような特注の濃いザーメンだぜ? 俺は絶対できたとみたな」
「誰が孕むか……」
「出しまくってれば絶対妊娠する。最近やりすぎて薄くなってんのがいけねえんだよ。だから、今日のは確実だ」
「……馬鹿だ……」
伊摘はため息をついて片手で顔を覆った。
「孕むまで中に出しまくってやるから、安心しろ」
結局はセックスしたいだけの行為だとよくわかった。
止める術を伊摘は知らない。
伊摘はそれを感じ、頭が痛くなった。
もしかして、またもやセックスで体がだるくて仕事にいけない、などと悪しき行為が繰り返されるのだろうか。
いや……そんなことはもうさせない。
そうだ。濃い精液で孕むというのなら、一週間でも二週間でも禁欲させてやるのはどうだろう。
子作りプレイに便乗して、貴昭にセックスの回数を制限させればいいのだ。
貴昭からはじめたプレイだ。よもや、嫌だとは言わないだろう。
二人がベッドで子作りに励んでいる頃、直次郎と嶋は静謐な部屋の中で、向き合って茶を飲んでいた。
「若頭」
嶋の静かな声に、直次郎は視線をあげる。
「組長はどういう決断をなされたでしょうか」
「きっと怒りながらも渋々認めるだろう。なにせ、あの男にベタ惚れだからな。まったくガキの恋愛を見ているようだ」
直次郎は言葉では憤慨しているかのようにも見えるが、本心はきっと喜んでいると嶋は感じた。
心なしか表情が優しかったからだ。
「でも……羨ましいですね。あんなふうに純粋に愛し愛される人がいるというのは」
「だから嵌った。散々汚いことを見てきた目に、それは新鮮に映っただろう」
その気持ちが今の嶋には少しだけわかる。
伊摘と数日間仕事をしてきて、だいたいの人となりがわかった。
例えば、決して嫌と言わない、どんな仕事でも手を抜かず真摯に向き合う生真面目さや、兄の話にも痛ましげな表情を浮かべ、まるで自分のことのように感じてくれた純粋さ。
疑うことを知らない無垢な笑顔は、遥か昔に失ってしまったものを見ているような気分になった。
「彼は本当に、若頭の座まで上りつめることができるでしょうか?」
「さあな」
「これで……よかったんでしょうか」
「……どうした、嶋? もしやお前がなりたかったのか?」
からかいの口調に、嶋は少しだけ苦笑いを浮かべた。
「今のままで満足です。若頭なんて、なるもんじゃありません。あなたの側にいて嫌というほどわかってますので。ただ……」
嶋はそれ以上言えなかった。
この先、必ず伊摘は地獄を見る。足の先から髪の一本に至るまでどっぷりと汚水のような醜く臭い世界に浸らなければならないのだから。
そのとき、あの純粋な思いが、優しい笑顔がどう変わるのか……。
考えてもどうにもなるわけではない。
伊摘の側には常に愛する男が側にいる。きっと全力で伊摘を守ってくれるだろう。
嶋はただ見守るだけだ。
多分自分は五年後も若頭補佐という座にいるだろう。
そしてその時は、伊摘を守るもう一つの盾となる。
嶋は湯飲みに口をつけて熱い茶を飲んだ。
口元がうっすらと微笑んでいた。
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