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プロローグ
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重く力強い鎧の足音が石の廊下を歩いて来る。その一歩一歩は不満げでその感情を持て余していた。月明かりの窓辺に浮き上がる面持ちは怒りに眉を吊り上げ、唇はきつく結ばれていた。薄衣のカーテンが下ろされた寝所では壺に生けられたアメリアの花の芳しい香りにむせかえった。
「帰ったぞ!」
荒々しく鎧を脱いだ男は直剣をチェストの上に置くとマントを翻えして女に向き直った。厚い胸板には騎士団勲章が鈍い光を放っていた。
「あの手紙はどういう意味だ」
「・・・・・・」
低く唸るような声色に女がベッドから身を起こすと男はその身体を押し戻した。
「婚約解消なんて聞いていないぞ!」
覆い被さる幅広の背中は華奢な身体を組み伏せ激しく唇を重ねた。
「や、やめて下さい!」
「8年も会わないうちにえらく可愛らしい声で啼くようになったんだな!」
「やめて!」
次の瞬間、男は後頭部に鈍痛を感じ振り返った。
「あんたなにやってるのよ!」
「??????」
ベッドに組み敷いた女と今まさに壺を振り上げた女は瓜二つだった。
「帰ったぞ!」
荒々しく鎧を脱いだ男は直剣をチェストの上に置くとマントを翻えして女に向き直った。厚い胸板には騎士団勲章が鈍い光を放っていた。
「あの手紙はどういう意味だ」
「・・・・・・」
低く唸るような声色に女がベッドから身を起こすと男はその身体を押し戻した。
「婚約解消なんて聞いていないぞ!」
覆い被さる幅広の背中は華奢な身体を組み伏せ激しく唇を重ねた。
「や、やめて下さい!」
「8年も会わないうちにえらく可愛らしい声で啼くようになったんだな!」
「やめて!」
次の瞬間、男は後頭部に鈍痛を感じ振り返った。
「あんたなにやってるのよ!」
「??????」
ベッドに組み敷いた女と今まさに壺を振り上げた女は瓜二つだった。
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