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立ち回り遊び
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当然のこと1回目の試合は1分で片がついた。
「アル、私アルのお嫁さんにはなれないわ」
「え、いや!その!もう1回!」
アルベルトは芝生の上に倒れ込み、ヘルガはその喉元に木刀を突き付けた。
「アル、これが本物の直剣だったら天使さまが迎えに来ているわよ」
「そ、そうだけど!もう1回!」
然し乍らハンネス・エロラに鍛え上げられたヘルガは負け知らずだった。
「も、もう1回!」
「これでおしまいよ!」
「い、痛いっ!」
「はい、ストップストーーーップ」
鼻息を荒くしたヘルガは息も絶え絶えのアルベルトにとどめを刺そうと木刀を振り上げた。
「おいおいおい!落ち着け、落ち着け!どうどう」
慌てたハンネス・エロラがその間に割って入りその場を仕切り直した。
「ヘルガ!もうちょっと手加減してよ!」
「・・・・・!」
「なに」
「アル、そんなことじゃ私を守れないわよ!」
「そうだけど」
「やる気がないのならもう帰るわ!」
「分かった!ごめん!待って!もう1回!」
アルベルトはヘルガにしがみついた。その様子をハロネン伯爵は溜め息混じりに見た。
「どうしてアルベルトはキエロを選ばなかったんだ」
「強い女性が好きなのでしょう?」
「そうかもしれんがあのような猿が我が家の嫁になるのか」
「猿だなんて失礼ですよ」
窓の外には未来の花嫁に打ち負かされる息子の嘆かわしい姿。
「でもあなた、アルベルトにはもう少ししっかりして貰わないといけませんわ」
「そうだな」
「虫や花を愛でるだけの領主に民はついて来ませんよ?」
「そうだな」
「12歳には入団するのですから」
「そうだな」
「ヘルガさんは良い遊び相手になると思いますよ」
オウル国では成人を迎える慣例として12歳の誕生日に親元を離れバルカウス騎士団に入団する。そして訓練を受け国を守護する役目を担わされた。現在のアルベルトの力量では厳しい試練に耐えられない。そう考えれば年齢の近いヘルガとの立ち回り遊びは良い機会だと思われた。
「あらあら、また負けたわね」
伯爵夫人は2人の姿を微笑ましく見た。
「アル、私アルのお嫁さんにはなれないわ」
「え、いや!その!もう1回!」
アルベルトは芝生の上に倒れ込み、ヘルガはその喉元に木刀を突き付けた。
「アル、これが本物の直剣だったら天使さまが迎えに来ているわよ」
「そ、そうだけど!もう1回!」
然し乍らハンネス・エロラに鍛え上げられたヘルガは負け知らずだった。
「も、もう1回!」
「これでおしまいよ!」
「い、痛いっ!」
「はい、ストップストーーーップ」
鼻息を荒くしたヘルガは息も絶え絶えのアルベルトにとどめを刺そうと木刀を振り上げた。
「おいおいおい!落ち着け、落ち着け!どうどう」
慌てたハンネス・エロラがその間に割って入りその場を仕切り直した。
「ヘルガ!もうちょっと手加減してよ!」
「・・・・・!」
「なに」
「アル、そんなことじゃ私を守れないわよ!」
「そうだけど」
「やる気がないのならもう帰るわ!」
「分かった!ごめん!待って!もう1回!」
アルベルトはヘルガにしがみついた。その様子をハロネン伯爵は溜め息混じりに見た。
「どうしてアルベルトはキエロを選ばなかったんだ」
「強い女性が好きなのでしょう?」
「そうかもしれんがあのような猿が我が家の嫁になるのか」
「猿だなんて失礼ですよ」
窓の外には未来の花嫁に打ち負かされる息子の嘆かわしい姿。
「でもあなた、アルベルトにはもう少ししっかりして貰わないといけませんわ」
「そうだな」
「虫や花を愛でるだけの領主に民はついて来ませんよ?」
「そうだな」
「12歳には入団するのですから」
「そうだな」
「ヘルガさんは良い遊び相手になると思いますよ」
オウル国では成人を迎える慣例として12歳の誕生日に親元を離れバルカウス騎士団に入団する。そして訓練を受け国を守護する役目を担わされた。現在のアルベルトの力量では厳しい試練に耐えられない。そう考えれば年齢の近いヘルガとの立ち回り遊びは良い機会だと思われた。
「あらあら、また負けたわね」
伯爵夫人は2人の姿を微笑ましく見た。
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