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第1章
第8話 「ハッハッハ、レベルアップ音がまるで真夏の羽虫のように響きますな!」
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澄み渡る青い空。風に揺れる緑の草。ゆっくりと流れる白い雲。
そしてそんな草原の中を爆走する痛車。
「ハッハッハ、レベルアップ音がまるで真夏の羽虫のように響きますぞ!」
「そうですな、佐武郎殿! もう既にレベルが100を超えましたぞッ!」
「うぐっ、な、なんかクルクルする、、、」
現在その辺に湧いて出る魔物を痛車で轢き殺してレベル上げ作業中。既に歴戦の戦いを経てバンパーがボロボロであるが気にしてはなならない。折角北海道の大地でも生き残れるように魔改造したプロテクターを正面に付けてあったと言うのにそいつももう意味を成してない。これ後でどうしたもんかな。
「ああ、スライムが、イノシシャが、みんなみんな一瞬でお肉と粘液の塊にっ!」
ミラーゼが後部座席で何かを言っているが、リズムゲーのように響き渡る衝突音と赤い物から青い物まで様々な液体が付着するフロントガラスを現在進行中で掃除しているワイパーの音でよくわからない。人に何かを伝えるなら普通叫ぶだろ、そこはさ。太陽の化身もそう言ってる。
「いやぁ、にしても異世界余裕だな! この調子なら一瞬でカンストできそうだぜ」
「レベル9999も夢じゃねえな!」
「ぼ、ボクは君たちが怖くなってきたよ、、、」
△▼△▼△
「迷った」
「迷ったな」
あの後ひたすら草原の魔物をハンバーグに変える作業をしていたのだが、小一時間ほどで魔物資源が枯渇したので森の中までやってきた。というところまではいいのだが、その後よくわからん虹色に光る鹿を引いたあたりで自分達が遭難したことに気づいた。
「なんかゼ⚪︎伝の山のヌシとシ⚪︎ガミサマを足して二で割ってからゲーミング加工したみたいな奴轢いちまったな。バチ当たらなきゃいいけど」
「ついでに言うとレベルが一気に150上がったぞ」
「ああ、お前も[検閲済み]製のスターじゃなくて日本製のスターをとっていれば死ななかったものを」
「その場合は俺たちが一瞬で蒸発してたけどな」
「前言撤回おっしゃオラーーーーーー!!! 俺たち今最高に生を実感してるぜぇ↓ええええええええええええええ↑」
「君たち本当に今の状況を理解してるのかい?」
フラフラになりつつ車の中から出てきたミラーゼがそう言う。
「「いや別に」」
北海道の極寒の冬の中、飲酒運転で何度も遭難しかけた俺たちに今更敵などいない。思考は至って普通、と言うか逆に楽しんでいる節まであるかもしれない。何故ならここは異世界の地。きっと知らないことやものがたくさんあるに違いない。
「あーもう! いいかい君たち。森の中は夜になったら強い魔物や盗賊が出るんだ! そんなに気楽じゃいられないよっ!」
「フッ、まあ落ち着きなさいなミラーゼ先輩。慎吾、例のブツを!」
「へへ、そう言うと思ってましたぜ旦那。そうッ! 異世界はスマートフォンとともに、だ!」
慎吾がポケットから勢いよく取り出したのはまさしく外国のりんご様が生産した⚪︎Phoneである。現代人の武器。バッテリーとス⚪︎ーリンクがあれば全て解決するッ! まさに最強ッ!!
[ティーーー、、、圏外です]
「そういやこの世界に衛星なかったな」
「イー⚪︎ンマ⚪︎クもいないぞ」
「「終わったああああああああああッ!!!」」
これではア⚪︎ゾンもネ⚪︎フリもYo⚪︎T⚪︎beもXもG⚪︎o⚪︎le何もかもが使えないではないかッ! 現代の大半が使っている神器が全て失われてしまったッ!!! 天文学的損失、536年以来の大事件に違いないッ!!!!
「豹変具合がすごいな君たち、、、」
と、その時拍子抜けにもどこからか腹の虫が鳴る音が聞こえた。
「誰だ今のは! こんな時に空気読めないやつは嫌われるぞッ!」
「いや、ボクじゃないよ? いくら今日の昼を抜いてきたからといって今腹がなるような人じゃないよ?」
「そうかそうか、君はそういうやつなんだな」
「わ、悪かったね。空気が読めなくてさッ!」
「デュフフ、お嬢さんお腹が空いているのかいィ? ならば僕の肉をお食べよォ?」
慎吾が懐から取り出したのは未だにスライムのテカテカした青い粘液が付着したデフォルメ肉だった。人間が本能的に食欲を失う青色に染まった肉。ア⚪︎パン⚪︎ンキッズ泣いちゃうって。
「いやぁああああああああ!!? なんてものを持ってきてるのさ!」
「あのな、命は粗末にしちゃいけないんだぜ?」
「そうだな、農家としてもそれは同じ意見だな」
「あんなに楽しそうに魔物を挽肉にしてた君たちが言うかな!?」
「それはそれ、これはこれ。害獣は駆逐、家畜は収穫、人間に有害なのが腐敗、人間に有益なのが発酵。まあ、つまり人間というものは気まぐれな生き物なのだ!」
「いや、どういうことなのさ?」
△▼△▼△
なんか色々この遭難状況から脱する方法を考えてたら夜になった。
今の所一つも収穫なしである。いや、唯一体温を保つために焚き火を作ったのは一つの成果というべきだろうか。それにしても枝が湿ってるせいで煙が狼煙レベルなんだが。目に煙が入って痛い痛い。玉ねぎよりも痛い。
「すごいね君たち! 魔法もなしにあんな簡単に火をつけちゃうなんて! それって魔道具かなんかなの? それにしては小さいけど?」
「ライターだ。俺たちの国だとそこら辺で普通に売られてる」
「本当に!? 君たちの国ってすごいんだね! ボクも一度行ってみたいな!」
残念なことにこの剣士、魔法が一切使えないということで普通にライターとBBQの経験を駆使して焚き火を作った。なんというか、一日付き合って先輩から何も教わってないんだけどこれ大丈夫なん?
「ところでさ、君たちのその毛布を貸してくれないかな? 普通に寒いのだけれど?」
「何を言うッ! これは2人用なんだよッ!!!」
「じゃあどっちか譲ってよっ! 大の男の子がそんな芋虫みたいに毛布に包まっちゃってさ!」
「ハハハ、お嬢さん、僕と一緒にこの毛布に包まらないかぁい? あったかいぞぉ? ほらほら?」
「クッ、なんて卑怯な奴らなんだ! 君たちにはレディファーストのレの字もないのかい?」
「「それはレディーになってから言うんだな」」
「いやいやいや、少なくとも君たちよりは気品がある振る舞いをしてると思うんだけどね? ボクは」
プイッと少し不機嫌になったミラーゼはそっぽをむく。はあ、全くこれだから三次元の女は。いや、こいつは三次元なのか? それとも二次元なのか? アニメの世界に転生してしまった場合、俺たちも二次元の存在と言えるのだろうか?
まあ、そんな哲学的な話をしても時間の無駄である。哲学とは基本答えのないことを探究する学問であり、故に時間が虚空の彼方に消えていく学問なのだ。例えるなら某青いたぬきが宇宙に廃棄した文字通り指数関数的に増えていく栗饅頭を手作業で集めることくらい無駄である。
ともかく俺としても女の子が不機嫌な状態でいるのは見てて気分が良くないので一枚毛布をミラーゼの方に投げてやる。毛布は空中で折り畳み傘が広がるみたいにバサッと展開されてミラーゼの頭に被さった。
「うわッ、何これ真っ暗!? って、毛布じゃないか! な、なんだ君たち。案外優しいところもあるじゃ、、、いや、おかしいな。ボクの目には未だに芋虫な二人の姿が見えるんだけど?」
「初めから毛布が二枚だけとは言ってないだろう。仕方ないからお前に六枚のうちの一枚を分けたんだよ」
「なんだとぉ! 君たち一人三枚も使ってたって言うのかい!? だったらそっちの慎吾くんからも一枚もらおうじゃないかっ! これでみんな仲良く平等だぞ!」
「や、やめろぉーーー! 俺は女の子と仲良く包まりたいだけなんだぁ!!!」
「じゃあそれを渡すんだ慎吾くんっ! まずは好感度上げが大事ってものだろ!」
「ぐわッ、俺のシールドが剥がされていくッ!!!」
みるみるうちにミラーゼに毛布を剥がされていく慎吾の姿はまるでケバブ屋で削られている肉塊のようであった。そして最終的に慎吾は身包みを全て剥がされた。なんか童話チックやな。
「俺のライフはもうゼロよ、、、」
「ほう? そんなお前にとっておきの話がある」
「お、なんだ佐武郎?」
「今俺た手元にはさっき解体したゲーミング鹿の七色に輝くデフォルメ肉と、粘液まみれの青に染まったイノシシャのデフォルメ肉がある。どっちを食べたい?」
「生命の危機ッ!!!」
「まあ、とりあえず炎で炙ってから考えてもいいんじゃない?」
「「それもそうだな」」
こうして俺たちの長い長い夜が始まった。
今日の一言:
この小説は日本の産業を支えてくださっている生産者の方々の活動を応援しております!
そしてそんな草原の中を爆走する痛車。
「ハッハッハ、レベルアップ音がまるで真夏の羽虫のように響きますぞ!」
「そうですな、佐武郎殿! もう既にレベルが100を超えましたぞッ!」
「うぐっ、な、なんかクルクルする、、、」
現在その辺に湧いて出る魔物を痛車で轢き殺してレベル上げ作業中。既に歴戦の戦いを経てバンパーがボロボロであるが気にしてはなならない。折角北海道の大地でも生き残れるように魔改造したプロテクターを正面に付けてあったと言うのにそいつももう意味を成してない。これ後でどうしたもんかな。
「ああ、スライムが、イノシシャが、みんなみんな一瞬でお肉と粘液の塊にっ!」
ミラーゼが後部座席で何かを言っているが、リズムゲーのように響き渡る衝突音と赤い物から青い物まで様々な液体が付着するフロントガラスを現在進行中で掃除しているワイパーの音でよくわからない。人に何かを伝えるなら普通叫ぶだろ、そこはさ。太陽の化身もそう言ってる。
「いやぁ、にしても異世界余裕だな! この調子なら一瞬でカンストできそうだぜ」
「レベル9999も夢じゃねえな!」
「ぼ、ボクは君たちが怖くなってきたよ、、、」
△▼△▼△
「迷った」
「迷ったな」
あの後ひたすら草原の魔物をハンバーグに変える作業をしていたのだが、小一時間ほどで魔物資源が枯渇したので森の中までやってきた。というところまではいいのだが、その後よくわからん虹色に光る鹿を引いたあたりで自分達が遭難したことに気づいた。
「なんかゼ⚪︎伝の山のヌシとシ⚪︎ガミサマを足して二で割ってからゲーミング加工したみたいな奴轢いちまったな。バチ当たらなきゃいいけど」
「ついでに言うとレベルが一気に150上がったぞ」
「ああ、お前も[検閲済み]製のスターじゃなくて日本製のスターをとっていれば死ななかったものを」
「その場合は俺たちが一瞬で蒸発してたけどな」
「前言撤回おっしゃオラーーーーーー!!! 俺たち今最高に生を実感してるぜぇ↓ええええええええええええええ↑」
「君たち本当に今の状況を理解してるのかい?」
フラフラになりつつ車の中から出てきたミラーゼがそう言う。
「「いや別に」」
北海道の極寒の冬の中、飲酒運転で何度も遭難しかけた俺たちに今更敵などいない。思考は至って普通、と言うか逆に楽しんでいる節まであるかもしれない。何故ならここは異世界の地。きっと知らないことやものがたくさんあるに違いない。
「あーもう! いいかい君たち。森の中は夜になったら強い魔物や盗賊が出るんだ! そんなに気楽じゃいられないよっ!」
「フッ、まあ落ち着きなさいなミラーゼ先輩。慎吾、例のブツを!」
「へへ、そう言うと思ってましたぜ旦那。そうッ! 異世界はスマートフォンとともに、だ!」
慎吾がポケットから勢いよく取り出したのはまさしく外国のりんご様が生産した⚪︎Phoneである。現代人の武器。バッテリーとス⚪︎ーリンクがあれば全て解決するッ! まさに最強ッ!!
[ティーーー、、、圏外です]
「そういやこの世界に衛星なかったな」
「イー⚪︎ンマ⚪︎クもいないぞ」
「「終わったああああああああああッ!!!」」
これではア⚪︎ゾンもネ⚪︎フリもYo⚪︎T⚪︎beもXもG⚪︎o⚪︎le何もかもが使えないではないかッ! 現代の大半が使っている神器が全て失われてしまったッ!!! 天文学的損失、536年以来の大事件に違いないッ!!!!
「豹変具合がすごいな君たち、、、」
と、その時拍子抜けにもどこからか腹の虫が鳴る音が聞こえた。
「誰だ今のは! こんな時に空気読めないやつは嫌われるぞッ!」
「いや、ボクじゃないよ? いくら今日の昼を抜いてきたからといって今腹がなるような人じゃないよ?」
「そうかそうか、君はそういうやつなんだな」
「わ、悪かったね。空気が読めなくてさッ!」
「デュフフ、お嬢さんお腹が空いているのかいィ? ならば僕の肉をお食べよォ?」
慎吾が懐から取り出したのは未だにスライムのテカテカした青い粘液が付着したデフォルメ肉だった。人間が本能的に食欲を失う青色に染まった肉。ア⚪︎パン⚪︎ンキッズ泣いちゃうって。
「いやぁああああああああ!!? なんてものを持ってきてるのさ!」
「あのな、命は粗末にしちゃいけないんだぜ?」
「そうだな、農家としてもそれは同じ意見だな」
「あんなに楽しそうに魔物を挽肉にしてた君たちが言うかな!?」
「それはそれ、これはこれ。害獣は駆逐、家畜は収穫、人間に有害なのが腐敗、人間に有益なのが発酵。まあ、つまり人間というものは気まぐれな生き物なのだ!」
「いや、どういうことなのさ?」
△▼△▼△
なんか色々この遭難状況から脱する方法を考えてたら夜になった。
今の所一つも収穫なしである。いや、唯一体温を保つために焚き火を作ったのは一つの成果というべきだろうか。それにしても枝が湿ってるせいで煙が狼煙レベルなんだが。目に煙が入って痛い痛い。玉ねぎよりも痛い。
「すごいね君たち! 魔法もなしにあんな簡単に火をつけちゃうなんて! それって魔道具かなんかなの? それにしては小さいけど?」
「ライターだ。俺たちの国だとそこら辺で普通に売られてる」
「本当に!? 君たちの国ってすごいんだね! ボクも一度行ってみたいな!」
残念なことにこの剣士、魔法が一切使えないということで普通にライターとBBQの経験を駆使して焚き火を作った。なんというか、一日付き合って先輩から何も教わってないんだけどこれ大丈夫なん?
「ところでさ、君たちのその毛布を貸してくれないかな? 普通に寒いのだけれど?」
「何を言うッ! これは2人用なんだよッ!!!」
「じゃあどっちか譲ってよっ! 大の男の子がそんな芋虫みたいに毛布に包まっちゃってさ!」
「ハハハ、お嬢さん、僕と一緒にこの毛布に包まらないかぁい? あったかいぞぉ? ほらほら?」
「クッ、なんて卑怯な奴らなんだ! 君たちにはレディファーストのレの字もないのかい?」
「「それはレディーになってから言うんだな」」
「いやいやいや、少なくとも君たちよりは気品がある振る舞いをしてると思うんだけどね? ボクは」
プイッと少し不機嫌になったミラーゼはそっぽをむく。はあ、全くこれだから三次元の女は。いや、こいつは三次元なのか? それとも二次元なのか? アニメの世界に転生してしまった場合、俺たちも二次元の存在と言えるのだろうか?
まあ、そんな哲学的な話をしても時間の無駄である。哲学とは基本答えのないことを探究する学問であり、故に時間が虚空の彼方に消えていく学問なのだ。例えるなら某青いたぬきが宇宙に廃棄した文字通り指数関数的に増えていく栗饅頭を手作業で集めることくらい無駄である。
ともかく俺としても女の子が不機嫌な状態でいるのは見てて気分が良くないので一枚毛布をミラーゼの方に投げてやる。毛布は空中で折り畳み傘が広がるみたいにバサッと展開されてミラーゼの頭に被さった。
「うわッ、何これ真っ暗!? って、毛布じゃないか! な、なんだ君たち。案外優しいところもあるじゃ、、、いや、おかしいな。ボクの目には未だに芋虫な二人の姿が見えるんだけど?」
「初めから毛布が二枚だけとは言ってないだろう。仕方ないからお前に六枚のうちの一枚を分けたんだよ」
「なんだとぉ! 君たち一人三枚も使ってたって言うのかい!? だったらそっちの慎吾くんからも一枚もらおうじゃないかっ! これでみんな仲良く平等だぞ!」
「や、やめろぉーーー! 俺は女の子と仲良く包まりたいだけなんだぁ!!!」
「じゃあそれを渡すんだ慎吾くんっ! まずは好感度上げが大事ってものだろ!」
「ぐわッ、俺のシールドが剥がされていくッ!!!」
みるみるうちにミラーゼに毛布を剥がされていく慎吾の姿はまるでケバブ屋で削られている肉塊のようであった。そして最終的に慎吾は身包みを全て剥がされた。なんか童話チックやな。
「俺のライフはもうゼロよ、、、」
「ほう? そんなお前にとっておきの話がある」
「お、なんだ佐武郎?」
「今俺た手元にはさっき解体したゲーミング鹿の七色に輝くデフォルメ肉と、粘液まみれの青に染まったイノシシャのデフォルメ肉がある。どっちを食べたい?」
「生命の危機ッ!!!」
「まあ、とりあえず炎で炙ってから考えてもいいんじゃない?」
「「それもそうだな」」
こうして俺たちの長い長い夜が始まった。
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この小説は日本の産業を支えてくださっている生産者の方々の活動を応援しております!
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