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第1章
第6話 「世界の真実知っちゃったんで自殺してきます」
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「お会計は『王』でお願いします」
「え、犬、ですか?」
「ただの犬じゃないです。『王』です」
「ワンッ!」
「金銭的価値は十分あると思いますがね」
まあ実際その通りだ。『王』は見た目サモエドなデカくて白い犬である。少なくとも相場じゃ数十万はくだらないし、異世界だったらもっと高値で取引されてる可能性だってある。どの道、王家の犬が安いはずがない。
「え、えぇ?」
明らかにギルドの受付嬢は動揺している。まだ新人で経験が足りていないのだろう。こんなモンスター客に絡まれて君も大変だろうな、うんうん。
「キリルちゃん、私がここの対応するからあっちの受付やってくれる?」
「せ、先輩ぃいいい! ありがとうございますッ!」
ということで、先輩と呼ばれた手だれらしき受付嬢が現れた。
「それでお客様。ギルドの登録料1000ラムがないので犬で支払いたいということでよろしいでしょうか?」
「その通りだ。異国から来たもんでこの国の通貨を持ってなくてな」
「なるほど。ご事情は理解しました。それではその『王』? ですか。そのわんちゃんを1000ラムの担保としてこのギルドで預からせていただきますね。お金が貯まり次第このわんちゃんもご返却させていただきます。それでいいでしょうか?」
「おお、それはありがたい」
「ワンッ!」
了承を得た受付嬢は契約書を取り出し、手慣れた手つきで必要事項のデータを記入していく。
「それではまず初めにお名前をお伺いしても?」
「森慎吾です」
「家はありますか?」
「前世に忘れてきました」
「親族の方はいますか?」
「前世に置いてきました」
「推定資産は、、、ゼロですね」
「いえ、俺の心はお金持ちですッ!」
「前職、または本職は?」
「酪農の神ッ!!!」
「なぜギルドに登録を?」
「ここに、あなたのような綺麗な女の子がいたからだッ!」
目の前で地獄が繰り広げられているにも関わらず、受付嬢は淡々と事務をこなす。流石はモンスターカスタマーズを常日頃から相手にする接客業の住人。恐ろしいぜ。
「回答ありがとうございます。それではそちらの方も」
「岩谷佐武郎。家なし親族なし、資産なし。前職農家、金がないから。あとこいつと違って俺はまともだ」
「了解しました。これで必要事項は終了です。何かご質問はありますか?」
「君の、好きな男性のタイプを教えてください」
「少なくともあなたじゃないです」
「グフォッ!!」
慎吾が鼻血をスプラッシュしながら弧を描いて地面にぶっ倒れる。にしても何げにこの受付嬢、Sっ気あるな? この問答なかなかに楽しんでる節が絶対にある。
「それでは最後にそこにある水晶玉に触っていただいても?」
「もちろんです。プロですから」
「佐武郎、お前もお前だよな、グフッ!」
おっと足が滑って何かを踏んでしまったようだが気にしないでおこう。きっと床に落ちていたボロ雑巾に違いない。
ところでギルドの水晶玉といえば異世界系定番のステータスを確認できる道具だ。確か某アニメでは職業とスキル、後レベルが表示されていたはず。ここは一発SSRくらいのレア職業を引かなきゃカッコがつかん。
「SSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来い、はッ!!!」
†ステータス測定描写†
水晶玉に乗せた手の付近から血のような赤黒いものが流れ落ち、全てを飲み込むような渦を形成する。まるで瘴気の塊のようなそれは幾重にも分裂を繰り返し、黒き腕のような突起を生やしていく。腕はそれ一つひとつが意識を持つかのように蠢き始め、己の形を定義しようと体を引きちぎってはくっ付け再生と破壊を繰り返す。やがてそれは目を持ち、口を持ち、指を持ち、佐武郎を眺めては聞こえもしない声を発するために口を開閉させる。
「ここでSANチェックだ。50/1D10×10」
「確定で不定の狂気じゃねえか!?」
それはそうと結局職業は何が出たんだ? 受付嬢の方を見てみると、彼女は驚きの表情を浮かべて俺のステータス表を眺めていた。
「わぁ! 凄い、見たことない職業です! というか文字ですね、、、読めません」
「ん、ちょっと見せてくれ」
▶︎岩谷佐武郎
職業:《痛車マスター》
レベル:1
スキル:
《痛車召喚Ⅰ》
半径10km以内に存在する特定の痛車を呼び寄せる。最新の自動運転技術を適用することにより、事故率を最大30%まで抑えることに成功した(当社比)なお、走行距離が増加するごとに事故確率が上昇する。
禍々しき水晶玉によって出力されたステータス表にしては随分と簡素だな。というか職業《痛車マスター》って何やねん!? 煽ってんのか? 世界が俺を煽ってんのか!? しかもスキルで痛車召喚とか言ってるくせに確率成功って舐めてる? 世界が俺を舐めてるのか!? アイスクリームみたいに!?
「あのハ⚪︎レンで腐るほど見たような目玉の野郎絶対に許さねえわ」
「ハッ、負け組は黙ってな。今度は俺が行くッ!!!」
†ステータス測定描写†
水晶玉に乗せた手の付近から血のような赤黒いものが流れ落ち、全てを飲み込むような渦を形成する。まるで瘴気の塊のようなそれは幾重にも分裂を繰り返し、黒き腕のような突起を生やしていく。腕はそれ一つひとつが意識を持つかのように蠢き始め、己の形を定義しようと体を引きちぎってはくっ付け再生と破壊を繰り返す。やがてそれは目を持ち、口を持ち、指を持ち、慎吾を眺めては聞こえもしない声を発するために口を開閉させる。
「こちらも見たことない職業ですね。私には読めません」
「フッ、俺の時代の到来を感じるぜッ!」
▶︎森慎吾
職業:《NEET》
レベル:1
スキル:
《無限の可能性》
無職とは無限の可能性を秘めている職業である。君に素質があるならば神にでも勇者にでもなれるドリーマー。スキル獲得確率1.3倍。
《ダメ男の魅力》
女性は何故かダメ男にダ⚪︎ソンのような変わらない吸引力によって惹かれてしまう。きっと君が気になるあの子を口説けばイチコロさ。魅力度補正2.5倍、発動確率5%。
「世界の真実知っちゃったんで自殺してきます」
「おい待て早まるなッ!」
ギルドから立ち去ろうとする慎吾の肩を掴む。振り返ったやつの顔面はこのたった数秒間のうちに随分とげっそりし、生きる渇望を失ってしまったように見えた。
「俺を止めるなッ、佐武郎ッ! もう俺はこの世界に絶望したッ! もう一度転生するんだッ! 転生して転生して、俺がチヤホヤされる世界に行けるまで転生するんだッ!」
「馬鹿野郎ッ!」
怒鳴ると同時に慎吾の頬をビンタする。
「ハッ!」
「慎吾、ニートはな、、、ニートはなッ! 転生しようが何しようが、就職しなきゃニートなんだよッ!!!」
「ガハッ、き、貴様、この後に及んで俺のHPを削ろうと言うのか!?」
「いや、違うッ! 俺はここでこの言葉を言うためにお前を引き留めたッ!! いいか、ニートは時代の最先端をいくステータスなんだよッ!!!!」
「何ッ!?」
「未来、人間が人工知能に全ての仕事を押し付けた時、そこにはどんな職業が残る?」
「何も、残るわけがない、か?」
「そうだッ! そこは働かなくても生きていける理想郷ッ!! そこにニートもサラリーマンもないッ! だからお前は時代の最先端を生きる未来の人間なんだッ!!!」
「ハッ、俺は、俺はニートでもいいと言うのかッ!?」
「そうだ、ニートでもいいッ、働かなくてもいいッ、お前は生きているだけで存在価値があるのだッ!!」
「クッ、俺、お前が友達でよかったよッ!」
「フッ、俺もだぜブラザー」
慎吾と俺は肩を組む。これこそ俺たち、北海道に生まれた男児の絆である。決して壊れることのない、最強の絆ッ!!
「ところで、そろそろ説明始めてもいいでしょうか?」
「「ええ、勿論、プロですから」」
「ああ、はい。それは変わらないんですね」
今日の一言:
やばい、3000字使って物語がほとんど何も進んでない。
「え、犬、ですか?」
「ただの犬じゃないです。『王』です」
「ワンッ!」
「金銭的価値は十分あると思いますがね」
まあ実際その通りだ。『王』は見た目サモエドなデカくて白い犬である。少なくとも相場じゃ数十万はくだらないし、異世界だったらもっと高値で取引されてる可能性だってある。どの道、王家の犬が安いはずがない。
「え、えぇ?」
明らかにギルドの受付嬢は動揺している。まだ新人で経験が足りていないのだろう。こんなモンスター客に絡まれて君も大変だろうな、うんうん。
「キリルちゃん、私がここの対応するからあっちの受付やってくれる?」
「せ、先輩ぃいいい! ありがとうございますッ!」
ということで、先輩と呼ばれた手だれらしき受付嬢が現れた。
「それでお客様。ギルドの登録料1000ラムがないので犬で支払いたいということでよろしいでしょうか?」
「その通りだ。異国から来たもんでこの国の通貨を持ってなくてな」
「なるほど。ご事情は理解しました。それではその『王』? ですか。そのわんちゃんを1000ラムの担保としてこのギルドで預からせていただきますね。お金が貯まり次第このわんちゃんもご返却させていただきます。それでいいでしょうか?」
「おお、それはありがたい」
「ワンッ!」
了承を得た受付嬢は契約書を取り出し、手慣れた手つきで必要事項のデータを記入していく。
「それではまず初めにお名前をお伺いしても?」
「森慎吾です」
「家はありますか?」
「前世に忘れてきました」
「親族の方はいますか?」
「前世に置いてきました」
「推定資産は、、、ゼロですね」
「いえ、俺の心はお金持ちですッ!」
「前職、または本職は?」
「酪農の神ッ!!!」
「なぜギルドに登録を?」
「ここに、あなたのような綺麗な女の子がいたからだッ!」
目の前で地獄が繰り広げられているにも関わらず、受付嬢は淡々と事務をこなす。流石はモンスターカスタマーズを常日頃から相手にする接客業の住人。恐ろしいぜ。
「回答ありがとうございます。それではそちらの方も」
「岩谷佐武郎。家なし親族なし、資産なし。前職農家、金がないから。あとこいつと違って俺はまともだ」
「了解しました。これで必要事項は終了です。何かご質問はありますか?」
「君の、好きな男性のタイプを教えてください」
「少なくともあなたじゃないです」
「グフォッ!!」
慎吾が鼻血をスプラッシュしながら弧を描いて地面にぶっ倒れる。にしても何げにこの受付嬢、Sっ気あるな? この問答なかなかに楽しんでる節が絶対にある。
「それでは最後にそこにある水晶玉に触っていただいても?」
「もちろんです。プロですから」
「佐武郎、お前もお前だよな、グフッ!」
おっと足が滑って何かを踏んでしまったようだが気にしないでおこう。きっと床に落ちていたボロ雑巾に違いない。
ところでギルドの水晶玉といえば異世界系定番のステータスを確認できる道具だ。確か某アニメでは職業とスキル、後レベルが表示されていたはず。ここは一発SSRくらいのレア職業を引かなきゃカッコがつかん。
「SSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来いSSR来い、はッ!!!」
†ステータス測定描写†
水晶玉に乗せた手の付近から血のような赤黒いものが流れ落ち、全てを飲み込むような渦を形成する。まるで瘴気の塊のようなそれは幾重にも分裂を繰り返し、黒き腕のような突起を生やしていく。腕はそれ一つひとつが意識を持つかのように蠢き始め、己の形を定義しようと体を引きちぎってはくっ付け再生と破壊を繰り返す。やがてそれは目を持ち、口を持ち、指を持ち、佐武郎を眺めては聞こえもしない声を発するために口を開閉させる。
「ここでSANチェックだ。50/1D10×10」
「確定で不定の狂気じゃねえか!?」
それはそうと結局職業は何が出たんだ? 受付嬢の方を見てみると、彼女は驚きの表情を浮かべて俺のステータス表を眺めていた。
「わぁ! 凄い、見たことない職業です! というか文字ですね、、、読めません」
「ん、ちょっと見せてくれ」
▶︎岩谷佐武郎
職業:《痛車マスター》
レベル:1
スキル:
《痛車召喚Ⅰ》
半径10km以内に存在する特定の痛車を呼び寄せる。最新の自動運転技術を適用することにより、事故率を最大30%まで抑えることに成功した(当社比)なお、走行距離が増加するごとに事故確率が上昇する。
禍々しき水晶玉によって出力されたステータス表にしては随分と簡素だな。というか職業《痛車マスター》って何やねん!? 煽ってんのか? 世界が俺を煽ってんのか!? しかもスキルで痛車召喚とか言ってるくせに確率成功って舐めてる? 世界が俺を舐めてるのか!? アイスクリームみたいに!?
「あのハ⚪︎レンで腐るほど見たような目玉の野郎絶対に許さねえわ」
「ハッ、負け組は黙ってな。今度は俺が行くッ!!!」
†ステータス測定描写†
水晶玉に乗せた手の付近から血のような赤黒いものが流れ落ち、全てを飲み込むような渦を形成する。まるで瘴気の塊のようなそれは幾重にも分裂を繰り返し、黒き腕のような突起を生やしていく。腕はそれ一つひとつが意識を持つかのように蠢き始め、己の形を定義しようと体を引きちぎってはくっ付け再生と破壊を繰り返す。やがてそれは目を持ち、口を持ち、指を持ち、慎吾を眺めては聞こえもしない声を発するために口を開閉させる。
「こちらも見たことない職業ですね。私には読めません」
「フッ、俺の時代の到来を感じるぜッ!」
▶︎森慎吾
職業:《NEET》
レベル:1
スキル:
《無限の可能性》
無職とは無限の可能性を秘めている職業である。君に素質があるならば神にでも勇者にでもなれるドリーマー。スキル獲得確率1.3倍。
《ダメ男の魅力》
女性は何故かダメ男にダ⚪︎ソンのような変わらない吸引力によって惹かれてしまう。きっと君が気になるあの子を口説けばイチコロさ。魅力度補正2.5倍、発動確率5%。
「世界の真実知っちゃったんで自殺してきます」
「おい待て早まるなッ!」
ギルドから立ち去ろうとする慎吾の肩を掴む。振り返ったやつの顔面はこのたった数秒間のうちに随分とげっそりし、生きる渇望を失ってしまったように見えた。
「俺を止めるなッ、佐武郎ッ! もう俺はこの世界に絶望したッ! もう一度転生するんだッ! 転生して転生して、俺がチヤホヤされる世界に行けるまで転生するんだッ!」
「馬鹿野郎ッ!」
怒鳴ると同時に慎吾の頬をビンタする。
「ハッ!」
「慎吾、ニートはな、、、ニートはなッ! 転生しようが何しようが、就職しなきゃニートなんだよッ!!!」
「ガハッ、き、貴様、この後に及んで俺のHPを削ろうと言うのか!?」
「いや、違うッ! 俺はここでこの言葉を言うためにお前を引き留めたッ!! いいか、ニートは時代の最先端をいくステータスなんだよッ!!!!」
「何ッ!?」
「未来、人間が人工知能に全ての仕事を押し付けた時、そこにはどんな職業が残る?」
「何も、残るわけがない、か?」
「そうだッ! そこは働かなくても生きていける理想郷ッ!! そこにニートもサラリーマンもないッ! だからお前は時代の最先端を生きる未来の人間なんだッ!!!」
「ハッ、俺は、俺はニートでもいいと言うのかッ!?」
「そうだ、ニートでもいいッ、働かなくてもいいッ、お前は生きているだけで存在価値があるのだッ!!」
「クッ、俺、お前が友達でよかったよッ!」
「フッ、俺もだぜブラザー」
慎吾と俺は肩を組む。これこそ俺たち、北海道に生まれた男児の絆である。決して壊れることのない、最強の絆ッ!!
「ところで、そろそろ説明始めてもいいでしょうか?」
「「ええ、勿論、プロですから」」
「ああ、はい。それは変わらないんですね」
今日の一言:
やばい、3000字使って物語がほとんど何も進んでない。
応援ありがとうございます!
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