192 / 192
第5章 想い出と君の涙を
5章 第16話
しおりを挟む
「あーっ、疲れたぁ! やっぱり今の私はここが好きだなぁ⋯⋯」
新雪を踏んで、凛が崖の近くまで歩み寄る。
「あんまり先の方行くなよ。滑って落ちたら怪我じゃすまないから」
「わかってるよ」
凛はこちらを振り向いて、悪戯げな笑みを向けていた。
生放送が終わってそのまま長野に直帰した俺達は、家には帰らず、音慶寺の裏手にある高台に来ていた。
俺達が出会って、全てが始まった場所。今は夜の雪景色を月明りがほんのり照らしていた。
「結局、こんなクリスマスっ気もイルミネーションっ気も全くないところしかないとはなぁ」
「そんな事言わないの。ここでいいよ。ううん⋯⋯ここがいい、かな」
「くっそ寒くて雪以外何もないのに?」
言ってやると、凛は「じゃあ」と嬉しそうに両手を広げた。
「⋯⋯?」
「ほーら」
「なに⋯⋯?」
「ハグハグ。寒いから、ぎゅーって⋯⋯してほしいな?」
広げた両手で自分自身をぎゅーっと抱き締める仕草をして、愛おしいげに俺を見つめてくる。顔が赤いのは、きっと寒さだけではないはずだ。どうやら、俺に抱き締めろという事らしい。
溜め息を吐くと、白くなって消えた。もはや互いの吐息が白くなっていて、あまり長居はできない。
このまま凛を無視するととんでもない目に遭いそうなので、俺は彼女の要望通り、彼女に歩み寄って、力強く抱き締めてやる。
雪の中で凍えそうだけど、凛とこうしているなら、一晩くらいなら生き残れそうな気がするから不思議だ。
「はぁぁ⋯⋯幸せ」
凛はうっとりするように、そう呟いた。
せっかくのクリスマスシーズンの土日。それなのに、イルミネーションどころか明かりすらない場所に来ているのには理由がある。
あの公開生放送の後、青山あたりでイルミネーションを見てからご飯でも食べて長野に帰ろうか、という話を元々はしていた。
しかし、あの凛の大演説で、全ての予定が変わってしまった。
そう⋯⋯めちゃくちゃ反響があったのだ。
あのアメバTVの番宣はREIKAと山梨陽介が出るという事で視聴者が元々多かった。それに加えて、生放送なのが災いして、それがすぐに共有されてしまい、瞬間的に拡散された。視聴者の中には動画を録画していた奴もいて、本来なら有料会員しか見れないはずの動画が、SNSに出回って瞬時に拡散されてしまったのだ。違法アップロードに当たるはずだが、出回ってしまったものは仕方がない。
凛のあのスピーチは、まあ、一言で言ってしまうと⋯⋯大好評だったのだ。一瞬の間に多くの女性の心を掴んで、共感を得てしまった。その結果、女子中高生や女子大生を中心に、若い子にどんどん共有された。元々RINは女性からの人気が高かったので、それで拍車がかかってしまったのだろう。
芸能人で、本来なら恋人の存在を隠して売り出さなければならない立場だというのに、映画の番宣で、好きな人──おそらく彼氏だと推測できるし何なら一度雑誌に撮られている──の存在を明らかにして、更にその人に支えられて這い上がってきた、というのが多くの女性の心を鷲掴みにしてしまったのである。女子はこういうのに憧れを抱いているのだろうな、というのが何となくわかった。
そしてそのスピーチは瞬く間にネットを通じて広がり、SNSだけでなく、個人の芸能ニュースサイトから各種WEBニュースサイトに派生した。そして、WAHOOニュースでも注目ニュースとして取り上げられてしまったのがトドメだ。ほんの数時間のうちに、凛の知名度が一気に爆上がりしてしまった。映画の番宣としてはこれ以上ないほどの効果を発揮しているのだが、こっちとしては予想以上に迷惑を被る事になった。
収録が終わって、さあ帰ろうかと思った時に⋯⋯アメバTVのスタッフさんから、外が大変な事になっているから出ない方が良いという報告を受けた。
凛が挨拶したり着替えたりしている間にSNSでバズってしまい、時の人となっている凛を一目見ようと渋谷にいる連中がアメバタワーに群がってきていたのだ。
行きしなは堂々と渋谷の道路を歩いていても全くRINだと誰も気付かれなかったのに、帰りはRINを探し求めて人々がアメバタワーに集まってきているという不可思議現象。行きはよいよい帰りは恐い、とはよく言ったものだ。
結果的に、外を歩いて電車で帰るのは困難という事になり、玲華から変装グッズの帽子やマスクを借りて、陽介さんのマネージャー・山本さんの車で東京駅まで送ってもらう事になった。
東京駅でも、新幹線のホームに着くまでにRINだと気付かれてしまい、結局もみくちゃにされた。誰だかわかっていない連中まで集まってきているので始末が悪い。
もはや俺は完全にSPと化していた。名目上のマネージャーだったのに本当にマネージャーみたいになっていて、呆れる他ない。隙を見て手を引いて駆けだして逃げたのだが、集団で追ってくるし。怖かった。
中には「その人が例の彼氏ですか?」なんて訊いてくる人もいたりとかで、凛も黙ってればいいのに「はい、そうです!」だなんて返すもんだから、余計に野次馬も白熱してしまって、こっちは気が気でなかった。ただ、凛はそんな中でも終始楽しそうだった。きっと、本当に楽しかったのだと思う。
結局、何事だと駆け付けた駅員さん方に匿ってもらって、何とか難を逃れた。
この様子だと普通の新幹線車両に乗るのは難しいと駅員さんに言われ、18人しか乗れない高級プライベート車両──グランクラスというらしい──で長野まで帰る羽目になった。割高だが、そうまでしないと落ち着ける状態ではなかったのだ。交通費は一応映画会社の方が出してくれるという事だったで、後日凛に請求してもらうとしよう。
長野に着いてからは落ち着いていた。ただ、それでも万が一また騒ぎになっては面倒なので、そのまま寄り道せずに鳴那町まで帰ってきて、今に至るという事だ。
アメバタワーから出る際に、玲華が俺のところに来て『ほらね? 私よりもリンの方が断然やる事エグイでしょ?』と言ってきたのだが、その言葉の重みをつくづく実感するのだった。
予想外と言えば、玲華の反応も予想外だった。
玲華からすれば完全に凛に喰われたような形になるので、もっと不快そうにしているのかと思っていたのだが、『やっぱリンさいこー!』と言って、凛に抱き着いてめちゃくちゃ喜んでいた。
やっぱりREIKAちゃんの尺度は謎だなぁ、と陽介さんが話していたが、おそらく玲華は⋯⋯面白い事や予見できない事が大好きなので、凛のこうしたところが読めなくて好きなんだろうなぁ、等と思うのだ。それを見ると、やっぱりこの2人には仲良くしていて欲しいなとも思うのだ。俺が言えた義理ではないのだけれど。
結局、帰りは終始どたばたしていて、家に帰ろうとしたら⋯⋯凛が最後に音慶寺に行きたいと言ったのだ。
音慶寺に来るのは、凛の誕生日のあの日以来だ。あの日以降、鳴那町では雪が降る日が多く、常に雪が積もっている状態。そんな状態の時にこんな自然のまま放置されてる場所に来るのは正気の沙汰ではない。
「なんでここに来たいって思ったんだ?」
「さっき放送で話してるときにね、ここで会った時の事想い出しちゃって。それで行きたいなぁって」
凛が少し恥ずかしそうにこちらを見上げてはにかんだ。
それなら、俺も思い出していた。
凛と出会った日の事を。ここで、麦わら帽子が頭にかぶさってきたときの事を。
あの時こそ⋯⋯玲華から別れを切り出されて以降、停まっていた時間が動き出した瞬間だった。
凛が俺の時間をもう一度動かしてくれた。
きっと俺は、あの光景をずっと忘れないだろう。
「それにしても、ここまで騒ぎになったら、クリスマスも年末年始も、どこにも行けそうにないな」
ネットでは相変わらず凛のニュースで盛り上がっている。きっと、月曜日学校に行ったら大変な事になるのは想像に容易い。
先週映画の情報が公開された時も、凛が転校してきた初日みたいになっていたのだ。きっと、もう暫く落ち着くまではどこにも出かけられない。またマスコミの対策とかもしなきゃだろうし、俺も凛にずっとついていてやらないといけない。
その過程できっと俺の事も晒されるんだろうな、なんて思いつつも⋯⋯まあ、それはそれで良いのか、なんて楽観的でいたり。そんな事でくよくよしているようでは、凛の彼氏は務まらない。
「いいんじゃない? 家でゆっくりするクリスマスと年末年始があっても」
「俺はいいけど、凛は退屈じゃないか?」
「私は、翔くんと一緒にいるだけで幸せだから」
全く⋯⋯嬉しい事を言ってくれる。
「そんな事言ったら⋯⋯俺もそうなんだけど」
「じゃあ、問題なしってことで♪ それかさ、愛梨とか純哉くん呼んでみんなでパーティーしてもいいし」
「みんなでパーティーか⋯⋯」
それはそれで、悪くはないのだけれど。でもなぁ⋯⋯せっかくの2人きりになれる時間なのにな。
きっと今日の一件で、映画の広報の仕方はずいぶん変わる。これまではREIKAと山梨陽介の2人がメインで番宣する予定だったが、RINがこれだけ知名度を上げてしまったのなら、話は別だ。彼女が東京に呼ばれる事も多くなるだろう。それを考えると、今みたいに2人で過ごせる時間は、とても貴重なのだとも思える。
「あ、今『2人で過ごしたいからそれは嫌だな』って思ったでしょ?」
悪戯な笑みを浮かべてこちらを覗き込む。
相変わらず、彼女は鋭い。
「正解?」
「⋯⋯正解」
「素直でよろしい♪」
言いながら、凛は俺のほっぺたを撫でた。
凛の手が冷たくなってしまっていたので、その手を両手で包んで温めてやる。
「翔くんの手、あったかい」
「ホッカイロを余分に持ってるからな」
「え、ずるい」
「東京の人間が雪国の寒さに耐えるにはこういう装備が必要不可欠なんだよ⋯⋯」
俺のコートには未開封のホッカイロが常備されている。これは昨年、初めて過ごす北陸の冬の寒さで何度も死にかけた事からくる経験則だ。一個分けてやろうかと訊くと、「こっちがいい」と凛は俺の手を自分のほっぺたに当てた。
「まあ、私はしばらく大人しくしてるからさ」
俺の手をほっぺたにくっつけて暖を取りながら、彼女は幸せそうに微笑んだ。
「たくさん、一緒に過ごそうね」
俺は頷きながらも、雪空から覗かせる月を見上げた。
凛と一緒に過ごせるのはどれくらいなのだろう。どれだけこの時間を共有できるのだろう。そんな一抹の不安を覚えなくもない。
「翔くんはさ、高校卒業した後、どうするの?」
凛が不意に訊いてきた。もしかすると、彼女も同じような不安を抱えていたのかもしれない。
それにしても、先日陽介さんからも全く同じ事を訊かれたので、少し可笑しい。みんな、俺なんかの進路がそんなに気になるのかな。
でも、今日の経験を通して、俺の中で自分の目指すべき道が明確になったように気がする。陽介さんに答えた時にはぼんやりとしていたものが、ハッキリ見えるようになった。
「東京に戻るよ。とりあえず⋯⋯古巣の大学でも目指すかな」
元々俺は早稲大学の付属高校・通称ワセ高に通っていた。それなら、まずは早稲大学に戻ってやろう。大分勉強は腑抜けでしまっていたが、まだ受験まで一年以上あるし、何とかなる。親には呆れられそうだが、目的を上げる分にはきっと文句は言わないだろう。
これも、何もない地方高校生が撮影現場に行ってわかった事の一つだ。学歴なんて意味はないとわかっていつつ、時として武器になる。あるかないかだったら、あった方がいい。その方が"良く"見られるのだ。不本意だけども、そういう錯覚資産は大事だ。特に、これからも凛の隣にいたいなら、尚更だった。
「どうして東京に戻ろうって思ったの?」
「もう逃げ回る必要がなくなったからな。それに、ちょっとやりたい事もあるんだ」
「やりたい事?」
それは⋯⋯凛とずっと一緒にいる為に、俺ができる事。俺が身に付けなければならない事。
「陽介さんがさ、東京に進学したらうちの事務所でバイトしないかって、誘ってくれてて。マネージャーさんが気に入ってくれたみたいで、俺の事欲しいんだって。だから、これを機に、芸能界の常識とか、裏方の仕事とか、そこの事務所通していっぱい学んでやろうって思ってる。それで⋯⋯」
「それで⋯⋯?」
凛は、信じられない、とでもいうように驚いて俺を見ている。大きく見開かれた瞳は、うっすらと膜で覆われていた。
「凛のマネージャーになって、ずっと傍にいる。どんな事があっても、お前を守る。ずっと一緒にいたいから」
それが、俺が凛の為にできる事。
俺は陽介さんのようにはなれない。あんな風にイケメンでもなければカリスマ性もない。俺はただの一般人だ。表舞台には立てない。でも、そんな俺だからこそ、陽介さんにはできない事ができる。
もう凛が夏場に経験したような失敗をしなくて済むように、そして、業界の闇に傷づかなくていいように、俺が知識をつけて、守れるようになればいい。これは、陽介さんではできない事だ。
「私⋯⋯芸能界に戻りたいなんて、言ってないのに。勝手に、決めないでよ」
凛が声を震わせながら俺の袖をつかんで、おでこを胸に押し当ててきた。
そんな彼女の頭を優しく撫でてやる。
「言ってなくてもわかるさ。あの演技を見ていたら、誰でもわかる。お前は⋯⋯本心では戻りたがってるんだ」
俺が逃げる必要がなくなった様に、凛ももう逃げる必要がなくなった。だから⋯⋯戻りたいという気持ちにも嘘を吐かなくてもいい。
それに、凛だけじゃない。多くの人が、彼女を求めるようになる。それは映画『記憶の片隅に』が公開されれば、訪れる未来だ。
「違う、違うの」
「何が?」
「撮影は大変だったけど、凄く生きてるって感じがして⋯⋯確かに、戻りたいって思う気持ちも、すごくあるよ? でも、それと同時に、前に話した事も間違いなく私の本音だから」
「ここでの生活も大切ってやつ?」
「うん⋯⋯」
以前彼女は、『鳴那町のみんなとの生活も大切にしたい』と言っていた。『翔くんがいるこの町での生活を大切にしたい』とも言ってくれた。その気持ちにも嘘はないというのだ。
「だから⋯⋯少なくとも、高校生でいる間は、もう仕事はしない」
それは、高校を卒業すればまた違う、と言ってる事と同義なわけで。
「凛も高校出たら東京に戻るつもりなんだろ?」
凛は迷いながらも、こくりと頷いた。
きっとそれは彼女が最初から決めていた事で。彼女はもともとずっと長野にいるつもりはなかったのだろう。彼女から聞いたわけではないけれど、何となく察していた。
「じゃあ、高校卒業したらさ、一緒に戻らないか?」
そう訊くと、彼女は質問に答えず、いきなり首根っこに飛びついてきた。ぐっと凛の方に体を引き寄せられて、良い匂いで鼻腔が満たされる。
「ずるいなぁ⋯⋯翔くんは。反則だよ、それ」
涙を堪えながら言って、くすっと笑う。
そう、俺達はもうここに逃げ込む必要がないのだから。正面に出て、正々堂々と戦えばいい。自分達の武器を持って、立ち向かえばいいのだ。
「東京に戻ったら、忙しくなるんだろうなぁ⋯⋯」
まだもうちょっと先の話だけどね、と凛は少し付け足した。
彼女が進学するつもりなのか、そのまま芸能の道一本でやるつもりなのかはわからない。ただ、いずれにしても、忙しくなる事は確定で。それはもちろん俺も同じだった。
でも、そんな忙しい生活でさえ、俺達は楽しんでいける。彼女の笑顔と潤んだ瞳を見ていると、そう確信した。
「きっと、私も翔くんも、まだまだ大変な事があって、色々傷つく事もあって。それと同時に、楽しい事や嬉しい事、幸せな事もあって⋯⋯」
彼女が俺の首に回した腕にぎゅっと力を込めるので、俺もそれに応えるように、彼女を抱き締める。
「それで、最後はめでたしめでたしってなるような⋯⋯そんな未来を迎えたい」
「多分それはきっと簡単な事じゃないし色んな壁が立ちはだかるんだろうだけど⋯⋯まあ、きっと俺達なら大丈夫だよ」
「うん。翔くんとなら、どんな壁でも乗り越えていける。そう、信じてる」
そう。俺達なら、どんな壁でも一緒に乗り越えていける。
互いが互いを信じてさえいれば、きっと乗り越えていける。今回のように、1人じゃ乗り越えられなかった壁でも、2人なら乗り越えられる。
俺達は、そうして今に至ったのだから。
「なあ、凛⋯⋯」
「なあに?」
幸せそうな笑みを浮かべたまま、彼女は少し見上げて、俺の瞳を覗き込んだ。
その瞳を見て、改めて思う。何度伝えても足りない、と。
俺達はこれからも困難を乗り越える。それに当たって一番大切なものがあって、これまで何度も何度も伝えてきたけれど、まだ足りなくて、また伝えたい。何度でも伝えたい。
「好きだよ、凛。ずっと⋯⋯一緒にいるから」
凛をじっとみて、そう伝える。
今日みたいに、これからもきっと、何度も伝え続けるだろう。
その言葉を聞いた凛が、あまりにも嬉しそうに微笑むから。その笑顔が見たくて、何度でも伝えたくなる。
目尻から溢れそうな涙を拭ってやって、唇をそっと重ねた。
寒さの中にある、ほんの少しの温もり。だけど、決して冷える事のない想いがこもっている温もり。そこには、確かに命の繋がりが感じられて⋯⋯互いを幸福感で満たしてくれる。
唇を離すと、凛ははにかみながら、俺を見つめていた。
「私も好き」
そして、誰よりも幸せそうな笑みを浮かべたまま⋯⋯言葉を紡いだ。
「愛してる、翔くん。ずっと⋯⋯ずっと一緒だからね」
(第一部・完)
────────────────────
お疲れ様です。ここまで『想い出と君の狭間で』を読んで下さりありがとうございます。
一応、ここまででこのお話の本編はおしまい。ただ、『第12回ドリーム小説大賞』で受賞してその後も、という話になれば話は別です。一応、この後のお話も考えています。
もしこのお話の続きが読みたい、と思って頂けましたら、『第12回ドリーム小説大賞』にご投票頂けると幸いです。勝たせて下さい!宜しくお願い致します。
新雪を踏んで、凛が崖の近くまで歩み寄る。
「あんまり先の方行くなよ。滑って落ちたら怪我じゃすまないから」
「わかってるよ」
凛はこちらを振り向いて、悪戯げな笑みを向けていた。
生放送が終わってそのまま長野に直帰した俺達は、家には帰らず、音慶寺の裏手にある高台に来ていた。
俺達が出会って、全てが始まった場所。今は夜の雪景色を月明りがほんのり照らしていた。
「結局、こんなクリスマスっ気もイルミネーションっ気も全くないところしかないとはなぁ」
「そんな事言わないの。ここでいいよ。ううん⋯⋯ここがいい、かな」
「くっそ寒くて雪以外何もないのに?」
言ってやると、凛は「じゃあ」と嬉しそうに両手を広げた。
「⋯⋯?」
「ほーら」
「なに⋯⋯?」
「ハグハグ。寒いから、ぎゅーって⋯⋯してほしいな?」
広げた両手で自分自身をぎゅーっと抱き締める仕草をして、愛おしいげに俺を見つめてくる。顔が赤いのは、きっと寒さだけではないはずだ。どうやら、俺に抱き締めろという事らしい。
溜め息を吐くと、白くなって消えた。もはや互いの吐息が白くなっていて、あまり長居はできない。
このまま凛を無視するととんでもない目に遭いそうなので、俺は彼女の要望通り、彼女に歩み寄って、力強く抱き締めてやる。
雪の中で凍えそうだけど、凛とこうしているなら、一晩くらいなら生き残れそうな気がするから不思議だ。
「はぁぁ⋯⋯幸せ」
凛はうっとりするように、そう呟いた。
せっかくのクリスマスシーズンの土日。それなのに、イルミネーションどころか明かりすらない場所に来ているのには理由がある。
あの公開生放送の後、青山あたりでイルミネーションを見てからご飯でも食べて長野に帰ろうか、という話を元々はしていた。
しかし、あの凛の大演説で、全ての予定が変わってしまった。
そう⋯⋯めちゃくちゃ反響があったのだ。
あのアメバTVの番宣はREIKAと山梨陽介が出るという事で視聴者が元々多かった。それに加えて、生放送なのが災いして、それがすぐに共有されてしまい、瞬間的に拡散された。視聴者の中には動画を録画していた奴もいて、本来なら有料会員しか見れないはずの動画が、SNSに出回って瞬時に拡散されてしまったのだ。違法アップロードに当たるはずだが、出回ってしまったものは仕方がない。
凛のあのスピーチは、まあ、一言で言ってしまうと⋯⋯大好評だったのだ。一瞬の間に多くの女性の心を掴んで、共感を得てしまった。その結果、女子中高生や女子大生を中心に、若い子にどんどん共有された。元々RINは女性からの人気が高かったので、それで拍車がかかってしまったのだろう。
芸能人で、本来なら恋人の存在を隠して売り出さなければならない立場だというのに、映画の番宣で、好きな人──おそらく彼氏だと推測できるし何なら一度雑誌に撮られている──の存在を明らかにして、更にその人に支えられて這い上がってきた、というのが多くの女性の心を鷲掴みにしてしまったのである。女子はこういうのに憧れを抱いているのだろうな、というのが何となくわかった。
そしてそのスピーチは瞬く間にネットを通じて広がり、SNSだけでなく、個人の芸能ニュースサイトから各種WEBニュースサイトに派生した。そして、WAHOOニュースでも注目ニュースとして取り上げられてしまったのがトドメだ。ほんの数時間のうちに、凛の知名度が一気に爆上がりしてしまった。映画の番宣としてはこれ以上ないほどの効果を発揮しているのだが、こっちとしては予想以上に迷惑を被る事になった。
収録が終わって、さあ帰ろうかと思った時に⋯⋯アメバTVのスタッフさんから、外が大変な事になっているから出ない方が良いという報告を受けた。
凛が挨拶したり着替えたりしている間にSNSでバズってしまい、時の人となっている凛を一目見ようと渋谷にいる連中がアメバタワーに群がってきていたのだ。
行きしなは堂々と渋谷の道路を歩いていても全くRINだと誰も気付かれなかったのに、帰りはRINを探し求めて人々がアメバタワーに集まってきているという不可思議現象。行きはよいよい帰りは恐い、とはよく言ったものだ。
結果的に、外を歩いて電車で帰るのは困難という事になり、玲華から変装グッズの帽子やマスクを借りて、陽介さんのマネージャー・山本さんの車で東京駅まで送ってもらう事になった。
東京駅でも、新幹線のホームに着くまでにRINだと気付かれてしまい、結局もみくちゃにされた。誰だかわかっていない連中まで集まってきているので始末が悪い。
もはや俺は完全にSPと化していた。名目上のマネージャーだったのに本当にマネージャーみたいになっていて、呆れる他ない。隙を見て手を引いて駆けだして逃げたのだが、集団で追ってくるし。怖かった。
中には「その人が例の彼氏ですか?」なんて訊いてくる人もいたりとかで、凛も黙ってればいいのに「はい、そうです!」だなんて返すもんだから、余計に野次馬も白熱してしまって、こっちは気が気でなかった。ただ、凛はそんな中でも終始楽しそうだった。きっと、本当に楽しかったのだと思う。
結局、何事だと駆け付けた駅員さん方に匿ってもらって、何とか難を逃れた。
この様子だと普通の新幹線車両に乗るのは難しいと駅員さんに言われ、18人しか乗れない高級プライベート車両──グランクラスというらしい──で長野まで帰る羽目になった。割高だが、そうまでしないと落ち着ける状態ではなかったのだ。交通費は一応映画会社の方が出してくれるという事だったで、後日凛に請求してもらうとしよう。
長野に着いてからは落ち着いていた。ただ、それでも万が一また騒ぎになっては面倒なので、そのまま寄り道せずに鳴那町まで帰ってきて、今に至るという事だ。
アメバタワーから出る際に、玲華が俺のところに来て『ほらね? 私よりもリンの方が断然やる事エグイでしょ?』と言ってきたのだが、その言葉の重みをつくづく実感するのだった。
予想外と言えば、玲華の反応も予想外だった。
玲華からすれば完全に凛に喰われたような形になるので、もっと不快そうにしているのかと思っていたのだが、『やっぱリンさいこー!』と言って、凛に抱き着いてめちゃくちゃ喜んでいた。
やっぱりREIKAちゃんの尺度は謎だなぁ、と陽介さんが話していたが、おそらく玲華は⋯⋯面白い事や予見できない事が大好きなので、凛のこうしたところが読めなくて好きなんだろうなぁ、等と思うのだ。それを見ると、やっぱりこの2人には仲良くしていて欲しいなとも思うのだ。俺が言えた義理ではないのだけれど。
結局、帰りは終始どたばたしていて、家に帰ろうとしたら⋯⋯凛が最後に音慶寺に行きたいと言ったのだ。
音慶寺に来るのは、凛の誕生日のあの日以来だ。あの日以降、鳴那町では雪が降る日が多く、常に雪が積もっている状態。そんな状態の時にこんな自然のまま放置されてる場所に来るのは正気の沙汰ではない。
「なんでここに来たいって思ったんだ?」
「さっき放送で話してるときにね、ここで会った時の事想い出しちゃって。それで行きたいなぁって」
凛が少し恥ずかしそうにこちらを見上げてはにかんだ。
それなら、俺も思い出していた。
凛と出会った日の事を。ここで、麦わら帽子が頭にかぶさってきたときの事を。
あの時こそ⋯⋯玲華から別れを切り出されて以降、停まっていた時間が動き出した瞬間だった。
凛が俺の時間をもう一度動かしてくれた。
きっと俺は、あの光景をずっと忘れないだろう。
「それにしても、ここまで騒ぎになったら、クリスマスも年末年始も、どこにも行けそうにないな」
ネットでは相変わらず凛のニュースで盛り上がっている。きっと、月曜日学校に行ったら大変な事になるのは想像に容易い。
先週映画の情報が公開された時も、凛が転校してきた初日みたいになっていたのだ。きっと、もう暫く落ち着くまではどこにも出かけられない。またマスコミの対策とかもしなきゃだろうし、俺も凛にずっとついていてやらないといけない。
その過程できっと俺の事も晒されるんだろうな、なんて思いつつも⋯⋯まあ、それはそれで良いのか、なんて楽観的でいたり。そんな事でくよくよしているようでは、凛の彼氏は務まらない。
「いいんじゃない? 家でゆっくりするクリスマスと年末年始があっても」
「俺はいいけど、凛は退屈じゃないか?」
「私は、翔くんと一緒にいるだけで幸せだから」
全く⋯⋯嬉しい事を言ってくれる。
「そんな事言ったら⋯⋯俺もそうなんだけど」
「じゃあ、問題なしってことで♪ それかさ、愛梨とか純哉くん呼んでみんなでパーティーしてもいいし」
「みんなでパーティーか⋯⋯」
それはそれで、悪くはないのだけれど。でもなぁ⋯⋯せっかくの2人きりになれる時間なのにな。
きっと今日の一件で、映画の広報の仕方はずいぶん変わる。これまではREIKAと山梨陽介の2人がメインで番宣する予定だったが、RINがこれだけ知名度を上げてしまったのなら、話は別だ。彼女が東京に呼ばれる事も多くなるだろう。それを考えると、今みたいに2人で過ごせる時間は、とても貴重なのだとも思える。
「あ、今『2人で過ごしたいからそれは嫌だな』って思ったでしょ?」
悪戯な笑みを浮かべてこちらを覗き込む。
相変わらず、彼女は鋭い。
「正解?」
「⋯⋯正解」
「素直でよろしい♪」
言いながら、凛は俺のほっぺたを撫でた。
凛の手が冷たくなってしまっていたので、その手を両手で包んで温めてやる。
「翔くんの手、あったかい」
「ホッカイロを余分に持ってるからな」
「え、ずるい」
「東京の人間が雪国の寒さに耐えるにはこういう装備が必要不可欠なんだよ⋯⋯」
俺のコートには未開封のホッカイロが常備されている。これは昨年、初めて過ごす北陸の冬の寒さで何度も死にかけた事からくる経験則だ。一個分けてやろうかと訊くと、「こっちがいい」と凛は俺の手を自分のほっぺたに当てた。
「まあ、私はしばらく大人しくしてるからさ」
俺の手をほっぺたにくっつけて暖を取りながら、彼女は幸せそうに微笑んだ。
「たくさん、一緒に過ごそうね」
俺は頷きながらも、雪空から覗かせる月を見上げた。
凛と一緒に過ごせるのはどれくらいなのだろう。どれだけこの時間を共有できるのだろう。そんな一抹の不安を覚えなくもない。
「翔くんはさ、高校卒業した後、どうするの?」
凛が不意に訊いてきた。もしかすると、彼女も同じような不安を抱えていたのかもしれない。
それにしても、先日陽介さんからも全く同じ事を訊かれたので、少し可笑しい。みんな、俺なんかの進路がそんなに気になるのかな。
でも、今日の経験を通して、俺の中で自分の目指すべき道が明確になったように気がする。陽介さんに答えた時にはぼんやりとしていたものが、ハッキリ見えるようになった。
「東京に戻るよ。とりあえず⋯⋯古巣の大学でも目指すかな」
元々俺は早稲大学の付属高校・通称ワセ高に通っていた。それなら、まずは早稲大学に戻ってやろう。大分勉強は腑抜けでしまっていたが、まだ受験まで一年以上あるし、何とかなる。親には呆れられそうだが、目的を上げる分にはきっと文句は言わないだろう。
これも、何もない地方高校生が撮影現場に行ってわかった事の一つだ。学歴なんて意味はないとわかっていつつ、時として武器になる。あるかないかだったら、あった方がいい。その方が"良く"見られるのだ。不本意だけども、そういう錯覚資産は大事だ。特に、これからも凛の隣にいたいなら、尚更だった。
「どうして東京に戻ろうって思ったの?」
「もう逃げ回る必要がなくなったからな。それに、ちょっとやりたい事もあるんだ」
「やりたい事?」
それは⋯⋯凛とずっと一緒にいる為に、俺ができる事。俺が身に付けなければならない事。
「陽介さんがさ、東京に進学したらうちの事務所でバイトしないかって、誘ってくれてて。マネージャーさんが気に入ってくれたみたいで、俺の事欲しいんだって。だから、これを機に、芸能界の常識とか、裏方の仕事とか、そこの事務所通していっぱい学んでやろうって思ってる。それで⋯⋯」
「それで⋯⋯?」
凛は、信じられない、とでもいうように驚いて俺を見ている。大きく見開かれた瞳は、うっすらと膜で覆われていた。
「凛のマネージャーになって、ずっと傍にいる。どんな事があっても、お前を守る。ずっと一緒にいたいから」
それが、俺が凛の為にできる事。
俺は陽介さんのようにはなれない。あんな風にイケメンでもなければカリスマ性もない。俺はただの一般人だ。表舞台には立てない。でも、そんな俺だからこそ、陽介さんにはできない事ができる。
もう凛が夏場に経験したような失敗をしなくて済むように、そして、業界の闇に傷づかなくていいように、俺が知識をつけて、守れるようになればいい。これは、陽介さんではできない事だ。
「私⋯⋯芸能界に戻りたいなんて、言ってないのに。勝手に、決めないでよ」
凛が声を震わせながら俺の袖をつかんで、おでこを胸に押し当ててきた。
そんな彼女の頭を優しく撫でてやる。
「言ってなくてもわかるさ。あの演技を見ていたら、誰でもわかる。お前は⋯⋯本心では戻りたがってるんだ」
俺が逃げる必要がなくなった様に、凛ももう逃げる必要がなくなった。だから⋯⋯戻りたいという気持ちにも嘘を吐かなくてもいい。
それに、凛だけじゃない。多くの人が、彼女を求めるようになる。それは映画『記憶の片隅に』が公開されれば、訪れる未来だ。
「違う、違うの」
「何が?」
「撮影は大変だったけど、凄く生きてるって感じがして⋯⋯確かに、戻りたいって思う気持ちも、すごくあるよ? でも、それと同時に、前に話した事も間違いなく私の本音だから」
「ここでの生活も大切ってやつ?」
「うん⋯⋯」
以前彼女は、『鳴那町のみんなとの生活も大切にしたい』と言っていた。『翔くんがいるこの町での生活を大切にしたい』とも言ってくれた。その気持ちにも嘘はないというのだ。
「だから⋯⋯少なくとも、高校生でいる間は、もう仕事はしない」
それは、高校を卒業すればまた違う、と言ってる事と同義なわけで。
「凛も高校出たら東京に戻るつもりなんだろ?」
凛は迷いながらも、こくりと頷いた。
きっとそれは彼女が最初から決めていた事で。彼女はもともとずっと長野にいるつもりはなかったのだろう。彼女から聞いたわけではないけれど、何となく察していた。
「じゃあ、高校卒業したらさ、一緒に戻らないか?」
そう訊くと、彼女は質問に答えず、いきなり首根っこに飛びついてきた。ぐっと凛の方に体を引き寄せられて、良い匂いで鼻腔が満たされる。
「ずるいなぁ⋯⋯翔くんは。反則だよ、それ」
涙を堪えながら言って、くすっと笑う。
そう、俺達はもうここに逃げ込む必要がないのだから。正面に出て、正々堂々と戦えばいい。自分達の武器を持って、立ち向かえばいいのだ。
「東京に戻ったら、忙しくなるんだろうなぁ⋯⋯」
まだもうちょっと先の話だけどね、と凛は少し付け足した。
彼女が進学するつもりなのか、そのまま芸能の道一本でやるつもりなのかはわからない。ただ、いずれにしても、忙しくなる事は確定で。それはもちろん俺も同じだった。
でも、そんな忙しい生活でさえ、俺達は楽しんでいける。彼女の笑顔と潤んだ瞳を見ていると、そう確信した。
「きっと、私も翔くんも、まだまだ大変な事があって、色々傷つく事もあって。それと同時に、楽しい事や嬉しい事、幸せな事もあって⋯⋯」
彼女が俺の首に回した腕にぎゅっと力を込めるので、俺もそれに応えるように、彼女を抱き締める。
「それで、最後はめでたしめでたしってなるような⋯⋯そんな未来を迎えたい」
「多分それはきっと簡単な事じゃないし色んな壁が立ちはだかるんだろうだけど⋯⋯まあ、きっと俺達なら大丈夫だよ」
「うん。翔くんとなら、どんな壁でも乗り越えていける。そう、信じてる」
そう。俺達なら、どんな壁でも一緒に乗り越えていける。
互いが互いを信じてさえいれば、きっと乗り越えていける。今回のように、1人じゃ乗り越えられなかった壁でも、2人なら乗り越えられる。
俺達は、そうして今に至ったのだから。
「なあ、凛⋯⋯」
「なあに?」
幸せそうな笑みを浮かべたまま、彼女は少し見上げて、俺の瞳を覗き込んだ。
その瞳を見て、改めて思う。何度伝えても足りない、と。
俺達はこれからも困難を乗り越える。それに当たって一番大切なものがあって、これまで何度も何度も伝えてきたけれど、まだ足りなくて、また伝えたい。何度でも伝えたい。
「好きだよ、凛。ずっと⋯⋯一緒にいるから」
凛をじっとみて、そう伝える。
今日みたいに、これからもきっと、何度も伝え続けるだろう。
その言葉を聞いた凛が、あまりにも嬉しそうに微笑むから。その笑顔が見たくて、何度でも伝えたくなる。
目尻から溢れそうな涙を拭ってやって、唇をそっと重ねた。
寒さの中にある、ほんの少しの温もり。だけど、決して冷える事のない想いがこもっている温もり。そこには、確かに命の繋がりが感じられて⋯⋯互いを幸福感で満たしてくれる。
唇を離すと、凛ははにかみながら、俺を見つめていた。
「私も好き」
そして、誰よりも幸せそうな笑みを浮かべたまま⋯⋯言葉を紡いだ。
「愛してる、翔くん。ずっと⋯⋯ずっと一緒だからね」
(第一部・完)
────────────────────
お疲れ様です。ここまで『想い出と君の狭間で』を読んで下さりありがとうございます。
一応、ここまででこのお話の本編はおしまい。ただ、『第12回ドリーム小説大賞』で受賞してその後も、という話になれば話は別です。一応、この後のお話も考えています。
もしこのお話の続きが読みたい、と思って頂けましたら、『第12回ドリーム小説大賞』にご投票頂けると幸いです。勝たせて下さい!宜しくお願い致します。
0
お気に入りに追加
260
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(8件)
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
【たいむりーぷ?】『私。未来であなたの奥様やらせてもらってます!』~隣の席の美少女はオレの奥様らしい。きっと新手の詐欺だと思う……たぶん。~
夕姫
青春
第6回ライト文芸大賞 奨励賞作品(。・_・。)ノ
応援と感想ありがとうございました(>_<)
主人公の神坂優斗は普通のどこにでもいるような平凡な奴で友達もほとんどいない、通称ぼっち。
でも高校からは変わる!そう決めていた。そして1つ大きな目標として高校では絶対に『彼女を作る』と決めていた。
入学式の帰り道、隣の席の美少女こと高宮聖菜に話しかけられ、ついに春が来たかと思えば、優斗は驚愕の言葉を言われる。
「実は私ね……『タイムリープ』してるの。将来は君の奥様やらしてもらってます!」
「……美人局?オレ金ないけど?」
そんな聖菜は優斗に色々話すが話がぶっ飛んでいて理解できない。
なんだこれ……新手の詐欺?ただのヤバい電波女か?それとも本当に……?
この物語は、どこにでもいる平凡な主人公優斗と自称『タイムリープ』をしているヒロインの聖菜が不思議な関係を築いていく、時には真面目に、時に切なく、そして甘酸っぱく、たまにエッチなドタバタ青春ストーリーです。
女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話
エクシモ爺
青春
高校3年生になった舞華は、念願の免許を取って車通学の許可も取得するが、母から一言「車は、お兄ちゃんが置いていったやつ使いなさい」と言われて愕然とする。
納屋の奥で埃を被っていた、レッドパールのR32型スカイラインGTS-tタイプMと、クルマ知識まったくゼロの舞華が織りなすハートフル(?)なカーライフストーリー。
・エアフロってどんなお風呂?
・本に書いてある方法じゃ、プラグ交換できないんですけどー。
・このHICASってランプなに~? マジクソハンドル重いんですけどー。
など、R32あるあるによって、ずぶの素人が、悪い道へと染められるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最終話まで読ませて頂きました。
それぞれのキャラの葛藤や成長が丁寧に描かれていて、本当に面白かったです。
受賞したら続編を、という事ですので、それを期待して待っております。素敵な物語ありがとうございました。
5章入ってから涙無しでは読めないな…
面白い