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第2章 久瀬玲華
秋の小川③
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「……寒い」
落ち着いた頃、上着もろとも水につかった俺は寒くて死にそうだった。
スマホを鞄の中に入れていたのが唯一の救いだ。
「もう、翔くんのせいで下着までぐっしょりになっちゃったよ。べたべた貼り付いて気持ちわるーい」
凛が歩きながらぼやく。
ちょっとその下着までぐっしょりというのでドキっとしてしまう。
「あ、今翔くんエッチな事考えたでしょ?」
悪戯に顔を覗き込んでくる。
「ば、ばかじゃねーの」
今が夜なのが悔やまれる。昼間ならブラウスも透けて見えるのに、と思ってたことは内緒だ。
「あ、今『昼間なら良かったのに』って思った!」
だからお前は超能力者かよ。いちいちこっちの思考を読まないで欲しい。
「……見せてあげよっか?」
「え?」
「うーそっ」
笑いながら、凛が濡れた腕を絡ませてくる。
お互いに濡れているので、正直言うと気持ち悪い。でも、濡れてるからか体温が伝わりやすくていつもより凛を近くに感じる……。
「次は夏にやろうよ! 純哉君とかみんなで」
「やらねーよ!」
「えー。絶対楽しいのに」
凛は楽しそうにころころ笑う。
確かに、童心に返って水遊びをしていた凛は、楽しそうだった。
「あ、ねえねえ、川遊びもいいけど、私ボートも乗ってみたい! この近くにあるかな?」
「ボートかぁ……緑中央公園にいけばあるんじゃないかな」
緑中央公園とは、隣町にある大き目の自然公園だ。確かボートもあったように思う。
「じゃあ、今度いこ?」
「やだ」
即答した。
「えー、なんで?」
「絶対今日の調子で池に俺の事落とすだろ……」
「さすがにそれはしないってー」
悪戯そうに笑っているところが怖い。
「ちょっと揺らすけど」
「やめろ」
そんなやり取りを続けて凛と楽しく話しながらも、頭の片隅では別のことを考えていた。
(ボート、か……)
デートでボートに乗るのは、実は初めてじゃない。
前に凛と行った吉祥寺の井の頭公園の池にあるボートで遊んだ記憶がある。
思い出さなくてもいいのに、勝手に記憶というのは溢れてくる。
落ち着いた頃、上着もろとも水につかった俺は寒くて死にそうだった。
スマホを鞄の中に入れていたのが唯一の救いだ。
「もう、翔くんのせいで下着までぐっしょりになっちゃったよ。べたべた貼り付いて気持ちわるーい」
凛が歩きながらぼやく。
ちょっとその下着までぐっしょりというのでドキっとしてしまう。
「あ、今翔くんエッチな事考えたでしょ?」
悪戯に顔を覗き込んでくる。
「ば、ばかじゃねーの」
今が夜なのが悔やまれる。昼間ならブラウスも透けて見えるのに、と思ってたことは内緒だ。
「あ、今『昼間なら良かったのに』って思った!」
だからお前は超能力者かよ。いちいちこっちの思考を読まないで欲しい。
「……見せてあげよっか?」
「え?」
「うーそっ」
笑いながら、凛が濡れた腕を絡ませてくる。
お互いに濡れているので、正直言うと気持ち悪い。でも、濡れてるからか体温が伝わりやすくていつもより凛を近くに感じる……。
「次は夏にやろうよ! 純哉君とかみんなで」
「やらねーよ!」
「えー。絶対楽しいのに」
凛は楽しそうにころころ笑う。
確かに、童心に返って水遊びをしていた凛は、楽しそうだった。
「あ、ねえねえ、川遊びもいいけど、私ボートも乗ってみたい! この近くにあるかな?」
「ボートかぁ……緑中央公園にいけばあるんじゃないかな」
緑中央公園とは、隣町にある大き目の自然公園だ。確かボートもあったように思う。
「じゃあ、今度いこ?」
「やだ」
即答した。
「えー、なんで?」
「絶対今日の調子で池に俺の事落とすだろ……」
「さすがにそれはしないってー」
悪戯そうに笑っているところが怖い。
「ちょっと揺らすけど」
「やめろ」
そんなやり取りを続けて凛と楽しく話しながらも、頭の片隅では別のことを考えていた。
(ボート、か……)
デートでボートに乗るのは、実は初めてじゃない。
前に凛と行った吉祥寺の井の頭公園の池にあるボートで遊んだ記憶がある。
思い出さなくてもいいのに、勝手に記憶というのは溢れてくる。
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