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26.湯けむりオブザデッド⑤
しおりを挟む『ーーーーなっ、、、』
太ももを直径10センチ程抉られたオノノフ…しかし彼は無言だった。
苦しそうな声を出したのは
その太腿を抉った方だ。
『んんんんなぁぁぁぁぁ』
驚き、それは涎が垂れるほど口を大きく開けて体制を崩したエントツから漏れ出した阿鼻叫喚だった。
オノノフは眉間にシワを寄せることなく真顔で元来た道を振り返る。
そこには地へ這い蹲り嗚咽を漏らすエントツの姿があった。
その姿を見たオノノフは当然のように何もその現場を追求することなく平然と元来た道を戻った
トドメを刺すために。
『やっぱりきもいじゃないかエントツくん』
肩から抜き出したその歪な刀身はオノノフの復讐のためうめき声を漏らした
『ィイイイイイイイイェェェエェエエエエエエエエエエァァァァァギィィエェェェエふふふフフフフフフフフ不不不不不不不負負負負怖?怖?怖怖怖怖腐腐腐腐ッッッ』
変形していくその刀は憎恋刀身の一つ『アンダープレスヘイズちゃん』である。
『ちゃん』までが正式名称とされる古よりある生きた刀である。
『一体どこでそれを』
眉間にしわ寄せて問うエントツの姿は先程の余裕な彼の姿から想像出来ないほど衰弱しきっており既に決着はついたように見えた。
しかしながらそれでもなお、もう一撃を繰り出そうとするオノフフ。
その理由は山神の並外れたパワーだった。
エントツを昔から知るオノフフからして
彼も山神という才を生かしておくほどお人好しではないのはわかっていたし、自分が見つけた"最高の材料"の摂取を邪魔しそうな害虫は一匹でも早めに処分にしたかった。
『夏休みに昆虫採集に行ったといえばいいかな?そんなかんじだ。』
余りにも例えにすらならない理由を述べたオノノフに怒りを通り越して滑稽さすら覚えてしまうエントツ。
それ程までにオノノフが今さっき放った一線は強靭なものだった。
白線が湯気を引き裂き気づけば太腿を抉る代償にエントツは両腕を
引き裂かれていた。
それも無数の刀傷が
いくつも腕に刻まれたのだ。
たった一瞬。
瞬く間に、エントツは齧るという動作以外の自由を奪われたのだ。
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