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1話 刀片帰還編
8.油断大敵的
しおりを挟む土煙が大量に立ち込めていた廊下はそこにはもう無く、赤いカーペットが敷かれているのが目視できるくらい視界は良好化されていた。
その赤いカーペットが友人や恩師の血から出来上がっているものだと知りながら俺はその上を今踏み躙っては靴の裏で密かに味わっている。
この高揚感は誰にもわからない
知っているとも
おれが異常で非常な人間だということも。
けれど少し意見できるくらいの余裕があるならおれはまた真っ先にこう告げたい。
道を逸れる人間を間違いというのは自由だ。 だが、その道は本当に正しいものなのか確認しているのか?
と。
ガラスが粉末状になって、竜巻を形成していく。
まるで生きているかのような躍動感がそこにはあった。
綺麗だ。
これこそが芸術というやつだろうか。
初めて雪を見たときの記憶はもう掠れてしまって憶えちゃあいないけれど、きっとこんな感覚だった。
信じられないくらいの感動。
しかし、それは決して雪のように優しく降り積もるものではなかった。
例えるなら
大吹雪だろう。
障壁は展開されたままだ。
闘争を続けるおれにそのガラスの群れは特攻を開始した。
耳をつんざく女の甲高い声。
もしや、このガラス…がその声を発しているのか?
どういうわけか、そのガラスが障壁へ衝突している期間、
女の悲鳴が耳をつんざいては心を乱していく。
障壁は決心て有能ではない
おれの意識と障壁、またはもう一人の何かの意識から離れているもの、認知できないものには
完璧なまでに無力だ。
ドン。
あまりにも突然のことだった。
赤いカーペットが足をすくった。
体が叩きつけられ一瞬意識が飛ぶ。
次の瞬間、おれは海堂という男の突進をもろに受けた。
ロケットが腹にぶち込まれたかのような感覚が急に襲ってきて
呼吸ができなくなった。
障壁は、たったいま破られた。
そして俺のプライドも敗られた。
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