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2話 憎恋刀身編
4.ラブ・サンダーボルト
しおりを挟む怪力…という表現が正しいのだろうか
異形なる力という方がしっくり来る気もするが紫香楽宵音のこの力は、"あの日"の産物なのだろうかと疑問に思った。
それもそのはず紫香楽は生まれ持っての怪力の持ち主なのだから…
廊下に上履きの靴底痕がこびり付いた。
茶色く焦げた痕だ。
『ぅぁあああどんなスピード出してんだ紫香楽さんッ』
東は両腕を振りましながら駆け抜けて行くがその後ろを全力疾走、というよりかは全力爆走する紫香楽…もはやそれは獲物を追うチーターの如く…
『さん付けすんじゃねえええよキモいんだよッッッ』
東の言動は思春期の乙女に対しては余計な一言だったようでより一層追い詰められて行った。
そんな様子を屋上から見る二人組がいた。
君島と雷だ。
鬼ノ聖堕中学校名物アップルパイホットドックフライを齧りながら
君島は楽しそうに笑った。
そんな君島を見て不服そうにする雷。
もぎゃぐぎゃのくしゃべくろほいや…と軽快な咀嚼音を奏でる君島をガン無視し雷は見ていた廊下を爆走する二人を。
『仲良いよねあの二人』
少し寂しそうなその言葉を雷が吐くとは思っていなかったのか君島はかなり五月蝿い咀嚼音を止めて
ゴキュキュキュリィイイイウィィイイイイイイイインと喉から機械音のようなものを出しながら飲み混んだ。
『飲み込んだとアナコンダって似てるよな。わかるよその気持ち』
君島は笑顔を崩さず雷の方へ顔を向けた。
ドス。
鈍い音がした。
その音の正体は紛れもない
空気の読めなさから生じた怒りだ。
雷電火の拳が君島の頬骨に挨拶したのだ。
それも、強烈な挨拶だ。
『ぼもっっ』
予想外の攻撃に変な挨拶を返す少年。君島兎威千(キミジマ・トイチ)は雷のその愁いを含んだような瞳を見て少しの間食べるのをやめた。
風が強く吹き荒れ木々を揺らして葉を巻き込んだ風が踊る。
その風の音に混じって女の笑い声が聞こえた
しかしその笑い声の正体など誰も認知できやしなかった。
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