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29話 捨て猫?を拾って説教されるアビス
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王子に矢を射られ意識を飛ばして3日。
ようやく目覚めた俺が見たのは、ガラリと変わった家の内装だった。
俺は父さんと母さんの寝室に寝かされていて、部屋には3台のベッドが、それぞれ壁にくっつく形で備え付けられていた。
今までは子供部屋に掛布を持ち込んで3人で包まって寝ていたのに、寝具も温かな、こんなベッドをシャリオとシウムが木を切るところから手作りしてくれたらしい。
布団はファガルが贈ってくれた柔らかなものだった。
俺達が寝ていた子供部屋は半分が風呂場と脱衣場に、半分が小さな部屋に変わっていて、動けない俺をシャリオが運んで洗ってくれた。
平民が魔力で傷つけられたケガは膿んだり爛れたりするから、俺が寝てる間も、毎日丁寧に洗って、魔力用の傷薬を塗ってくれていたらしい。
小型の魔物に噛まれたり引っ掻かれたりしても結構大事になるのに、俺らみたいな貧乏人がこんなにガッツリとやられて生きていられたのは奇跡と言える。
傷跡は残ってしまったが、こんなに早く治ることなんかないんだ。
シウムも俺は死ぬもんだと思っていたと、聞いた。
高い薬なのにたくさん用意してくれたんだろう。まだまだ棚に薬がいっぱい残っている。
ご飯を食べる部屋にはベッドとしても使える長椅子が置かれていて、俺が目覚めるまでそこでシャリオが寝泊りしてくれていた。
俺が目を覚ました時みんなが揃って喜んでくれていて、俺、シャリオにあんなことして迷惑かけたのに、こんなに幸せでいいのかなって、思ったんだ。
母さんが拐われた時、家の中の物も壊され持ち出され、ガラリと変わった部屋の様子に呆然としたものだ。
母さんを追いかけて行った父さんは未だに戻らず、4歳と5歳の弟妹を抱えて、まだ8歳だった俺は途方に暮れた。
僅かに残された食料と拾ったりした木の実とかで、主にたくさんの水で空腹を紛らわす生活が始まった。
そして泣く弟妹をあやしながら、荒れ果てた部屋を片付けつつ両親の帰りを待つことに決めたんだ。
それ以外にどうしたらいいのか、方法がわからなかった。
周りに助けてくれるような人も、いなかったんだよな。
いや、最初はいた気がする。
作りすぎたからと、ご飯を貰ったのはいつだったっけ?
父さんと母さんがいた時だったっけ?
そうだ、いたはずだよな。
そういえば、子供の頃周りにいた人達はどこに行ったんだろう。
少し離れてはいたけど、何軒か、家も、あったような?
「兄ちゃん、気に入らなかったか?」
「そんなことあるわけないだろ?嬉しくて、言葉が見つからなかったんだ」
突然の疑問に気持ちの持っていく場所がわからなくなって黙っていたら、勘違いさせたらしい。
「ならよかった!俺はあんまり父ちゃんのことも母ちゃんのことも覚えてないからさ。兄ちゃんみたいにこの家に思い入れがあるわけじゃなくて……だから兄ちゃんが悲しんだらどうしようって、ちょっと思ってた」
そうか……そうだよな。
2人共、小さかったもんな。
そっか。
この家に、父や母の思い出に縛られているのは、俺だけなのかもしれないな。
☆
目が覚めて10日目。
シャリオからやっと狩りに行く許可が出た。
毎日来てくれているシャリオも、時々は来られない日があって、そういう時は連絡鳥がやってくる。
生きているわけではない鳥なのに、こっちの言ってることとかわかるみたいな連絡鳥ってどんな仕組みになってるんだろうな。
だから今日は俺とシウムだけで狩り練習だ。
シャリオがいないとなかなか獣に出会わないんだよ。
シャリオって不思議な存在だよなあ。
「兄ちゃん、あそこに誰か倒れてるよ」
シウムと獣を探してウロウロしていると、川の近くでうつ伏せに倒れている子供がいた。
服が汚れてて、ケガもしてるみたいだ。
「げ、こいつクソ王子じゃん。兄ちゃん帰ろうぜ」
走り寄ってひっくり返すと、それは見るも無惨に変わったあの時の王子だった。
「うん」
俺がみんなに手厚く手当てしてもらってる間に、彼に一体何があったんだろう。
「って、兄ちゃん何してんだよ」
「だってこのままにしておけないだろ。俺よりも小さい子が傷だらけなのに、ケガの手当てだけでもしてあげないと」
まあ、身体は俺より大きそうだけど。
「はあ?!こいつが兄ちゃんに何したか覚えてないのかよ。殺されかけたんだぞ!」
「んー、まあ、あんまり覚えてないんだよな」
すぐ気い失っちゃったし。
「俺は反対!こんなやつ、のたれ死んでも自業自得だろ!」
まあ、そうなんだけど。
「でもさ、俺ももしかしたらこんな風になってたかもしれないじゃん」
俺だって、シャリオに酷いことしたのに。
「俺はシャリオに許してもらったのに、俺は王子のこと許さないとか、いいのかな」
「兄ちゃん……でも、目ぇ覚ましたらまた攻撃されるかもしれないんだぞ」
「んー、まあ、その時は俺の考えが甘かったって事で、仕方ないのかなあ」
「はあ、兄ちゃんはバカだなあ」
そう言いながらも俺の荷物をまとめて持ってくれる。
つまり俺が王子を運べるならいいよってことだよな?
「うぐぐ、重い」
「じゃあ置いていこうぜ」
ぐぬぬ、さっきの今で言ってることひっくり返すとか、かっこ悪いだろ!
しかしコイツ太ってるから、やっぱり重い。
くそ~、いいもん食ってんだろうなあ。
「ふぅふぅ」
「はあ、こいつデブだもんな」
「シウム……」
王子の足を地面にズリながら、歩みものろのろと進むのを見かねたのか、シウムが下から押してくれた。
なんだかんだ言って、シウムは優しいんだ。
そんな風にして家に連れて帰ると、マリカから同じように怒られて、ちょっと凹んだ。
☆
夕食の匂いにつられたか、シャリオの長椅子ベッドに寝ていた王子が、盛大な腹の音と共に目を覚ました。
シャリオの置いていった薬を塗って、布でぐるぐる巻きの王子様だ。
「あ、お兄ちゃん、王子様起きたよ!」
「……いい匂いがする」
「夕食食べれそうなら来いよ」
王子は部屋を見渡して、俺らの顔を見て、ゆっくり歩いてきた。
俺らのこと、気づいてないのかもな。
「なんだ、このクソみたいな食い物は。本当に食えるのか?」
「嫌だったら食うな」
開口一番、礼も言えなければ出てきたのが悪態とか……やっぱり連れてきたの間違いだったか?
いや、俺もあの時そうだったな。
シャリオに謝れなかった。あの時の俺は警戒心でいっぱいだったから。
王子もそうなのかもしれない、と思いたい。
それに確かに王子にとっては、飯に見えないモノなんだろう。
そう考えると、これを美味そうに食えるファガルってすげえ貴族だよなあ。
「こんなものでも、俺らにはご馳走なんだよ」
一応、大見栄切って連れてきたのは俺だ。
ひとまず歩み寄ろう。
「何日も食べられないこともあるし、それに比べたら文句なんかないよー」
同じくマリカも王子と交流をはかろうとしてくれているとわかる。
心配そうな視線が俺達の間でキョロキョロと動いている。
けど、俺やマリカとは違って、シウムは王子の分の食器を彼から遠ざけた。
見事な塩対応だ。
王子が絶句した。
「……何日も食えないことなんか、あるのか?」
シウムの行動に驚いた王子の視線は食器を追っていて、彼の腹はクルクルと鳴ったままだ。
「去年は10日くらい食べられないのが普通だったんだよ。とってきた実とかに当たってお腹壊したりもしたし」
マリカ……。
不甲斐ない兄で、ゴメンな。
食べられないモノがあるとか、シャリオに教えられて初めて知ったんだ。
「今も獲物がとれなきゃ、何日も草ばっかり食べてるしな」
顔を背けたままのシウムの言葉を聞いた王子の目が「今も?何日も?」とまん丸になった。
「まあ、今年はシャリオのおかげで肉が食えるようになったし、この中にも一応入ってるんだぞ」
って、なんで俺が気を使わないといけないんだ。
なんかギスギスしてるの、嫌だなあ。
王子に期待はできないし、シウムが今だけ折れてくれないかなあ。
王子はここが気に入らなかったら、明日出ていくだろうし、ちょっとの我慢だからな……って、考えの甘かった俺のせいだ。
ごめん2人とも。
「……僕、たった3日食べてないだけで死ぬかと思ったのに、10日も……」
静まり返っていた食卓に彼の小さな呟きが響いて、胸がギュッとなった。
空腹の辛さは俺達の方がよく知っている。
でも贅沢に暮らしていた彼の方が、その辛さは大きいのかもしれない。
たくさん水を飲むとか、ちょっとだけ甘い味のする花を噛むとか、空腹の凌ぎ方も知らないに違いない。
シャリオが『自分で賄えるようになるまで、贅沢には慣れるな』っていう理由が、ようやくわかった気がした。
それでもシャリオは、調味料とかたくさん揃えてくれたんだよな。
だからただの草でも、結構美味く食べられるようになった。
「で?食うのかよ?食わないのかよ?」
シウムの方が折れて王子に声をかけてくれた。
なんだかんだで、シウムも王子を不憫に思ったに違いない。
だって王子だぞ?
あんなところで、周りには他に騎士みたいな味方に見えるヤツもいなかった。
たった1人で、あんなケガまでして、誰も助けにも来てなくて……。
何があったんだ?
「……食う」
皿の中の汁物を見て、恐る恐る口をつけた王子。
あー食べる姿は品があるなあ。やっぱり王子様なんだなあ。
「……うまい」
「そう?それはよかった」
舌打ちしたシウムと、ホッとして小さく笑ったマリカ。
食べ終わって涙ぐんでいた王子に、暫く誰も声はかけられなかった。
ようやく目覚めた俺が見たのは、ガラリと変わった家の内装だった。
俺は父さんと母さんの寝室に寝かされていて、部屋には3台のベッドが、それぞれ壁にくっつく形で備え付けられていた。
今までは子供部屋に掛布を持ち込んで3人で包まって寝ていたのに、寝具も温かな、こんなベッドをシャリオとシウムが木を切るところから手作りしてくれたらしい。
布団はファガルが贈ってくれた柔らかなものだった。
俺達が寝ていた子供部屋は半分が風呂場と脱衣場に、半分が小さな部屋に変わっていて、動けない俺をシャリオが運んで洗ってくれた。
平民が魔力で傷つけられたケガは膿んだり爛れたりするから、俺が寝てる間も、毎日丁寧に洗って、魔力用の傷薬を塗ってくれていたらしい。
小型の魔物に噛まれたり引っ掻かれたりしても結構大事になるのに、俺らみたいな貧乏人がこんなにガッツリとやられて生きていられたのは奇跡と言える。
傷跡は残ってしまったが、こんなに早く治ることなんかないんだ。
シウムも俺は死ぬもんだと思っていたと、聞いた。
高い薬なのにたくさん用意してくれたんだろう。まだまだ棚に薬がいっぱい残っている。
ご飯を食べる部屋にはベッドとしても使える長椅子が置かれていて、俺が目覚めるまでそこでシャリオが寝泊りしてくれていた。
俺が目を覚ました時みんなが揃って喜んでくれていて、俺、シャリオにあんなことして迷惑かけたのに、こんなに幸せでいいのかなって、思ったんだ。
母さんが拐われた時、家の中の物も壊され持ち出され、ガラリと変わった部屋の様子に呆然としたものだ。
母さんを追いかけて行った父さんは未だに戻らず、4歳と5歳の弟妹を抱えて、まだ8歳だった俺は途方に暮れた。
僅かに残された食料と拾ったりした木の実とかで、主にたくさんの水で空腹を紛らわす生活が始まった。
そして泣く弟妹をあやしながら、荒れ果てた部屋を片付けつつ両親の帰りを待つことに決めたんだ。
それ以外にどうしたらいいのか、方法がわからなかった。
周りに助けてくれるような人も、いなかったんだよな。
いや、最初はいた気がする。
作りすぎたからと、ご飯を貰ったのはいつだったっけ?
父さんと母さんがいた時だったっけ?
そうだ、いたはずだよな。
そういえば、子供の頃周りにいた人達はどこに行ったんだろう。
少し離れてはいたけど、何軒か、家も、あったような?
「兄ちゃん、気に入らなかったか?」
「そんなことあるわけないだろ?嬉しくて、言葉が見つからなかったんだ」
突然の疑問に気持ちの持っていく場所がわからなくなって黙っていたら、勘違いさせたらしい。
「ならよかった!俺はあんまり父ちゃんのことも母ちゃんのことも覚えてないからさ。兄ちゃんみたいにこの家に思い入れがあるわけじゃなくて……だから兄ちゃんが悲しんだらどうしようって、ちょっと思ってた」
そうか……そうだよな。
2人共、小さかったもんな。
そっか。
この家に、父や母の思い出に縛られているのは、俺だけなのかもしれないな。
☆
目が覚めて10日目。
シャリオからやっと狩りに行く許可が出た。
毎日来てくれているシャリオも、時々は来られない日があって、そういう時は連絡鳥がやってくる。
生きているわけではない鳥なのに、こっちの言ってることとかわかるみたいな連絡鳥ってどんな仕組みになってるんだろうな。
だから今日は俺とシウムだけで狩り練習だ。
シャリオがいないとなかなか獣に出会わないんだよ。
シャリオって不思議な存在だよなあ。
「兄ちゃん、あそこに誰か倒れてるよ」
シウムと獣を探してウロウロしていると、川の近くでうつ伏せに倒れている子供がいた。
服が汚れてて、ケガもしてるみたいだ。
「げ、こいつクソ王子じゃん。兄ちゃん帰ろうぜ」
走り寄ってひっくり返すと、それは見るも無惨に変わったあの時の王子だった。
「うん」
俺がみんなに手厚く手当てしてもらってる間に、彼に一体何があったんだろう。
「って、兄ちゃん何してんだよ」
「だってこのままにしておけないだろ。俺よりも小さい子が傷だらけなのに、ケガの手当てだけでもしてあげないと」
まあ、身体は俺より大きそうだけど。
「はあ?!こいつが兄ちゃんに何したか覚えてないのかよ。殺されかけたんだぞ!」
「んー、まあ、あんまり覚えてないんだよな」
すぐ気い失っちゃったし。
「俺は反対!こんなやつ、のたれ死んでも自業自得だろ!」
まあ、そうなんだけど。
「でもさ、俺ももしかしたらこんな風になってたかもしれないじゃん」
俺だって、シャリオに酷いことしたのに。
「俺はシャリオに許してもらったのに、俺は王子のこと許さないとか、いいのかな」
「兄ちゃん……でも、目ぇ覚ましたらまた攻撃されるかもしれないんだぞ」
「んー、まあ、その時は俺の考えが甘かったって事で、仕方ないのかなあ」
「はあ、兄ちゃんはバカだなあ」
そう言いながらも俺の荷物をまとめて持ってくれる。
つまり俺が王子を運べるならいいよってことだよな?
「うぐぐ、重い」
「じゃあ置いていこうぜ」
ぐぬぬ、さっきの今で言ってることひっくり返すとか、かっこ悪いだろ!
しかしコイツ太ってるから、やっぱり重い。
くそ~、いいもん食ってんだろうなあ。
「ふぅふぅ」
「はあ、こいつデブだもんな」
「シウム……」
王子の足を地面にズリながら、歩みものろのろと進むのを見かねたのか、シウムが下から押してくれた。
なんだかんだ言って、シウムは優しいんだ。
そんな風にして家に連れて帰ると、マリカから同じように怒られて、ちょっと凹んだ。
☆
夕食の匂いにつられたか、シャリオの長椅子ベッドに寝ていた王子が、盛大な腹の音と共に目を覚ました。
シャリオの置いていった薬を塗って、布でぐるぐる巻きの王子様だ。
「あ、お兄ちゃん、王子様起きたよ!」
「……いい匂いがする」
「夕食食べれそうなら来いよ」
王子は部屋を見渡して、俺らの顔を見て、ゆっくり歩いてきた。
俺らのこと、気づいてないのかもな。
「なんだ、このクソみたいな食い物は。本当に食えるのか?」
「嫌だったら食うな」
開口一番、礼も言えなければ出てきたのが悪態とか……やっぱり連れてきたの間違いだったか?
いや、俺もあの時そうだったな。
シャリオに謝れなかった。あの時の俺は警戒心でいっぱいだったから。
王子もそうなのかもしれない、と思いたい。
それに確かに王子にとっては、飯に見えないモノなんだろう。
そう考えると、これを美味そうに食えるファガルってすげえ貴族だよなあ。
「こんなものでも、俺らにはご馳走なんだよ」
一応、大見栄切って連れてきたのは俺だ。
ひとまず歩み寄ろう。
「何日も食べられないこともあるし、それに比べたら文句なんかないよー」
同じくマリカも王子と交流をはかろうとしてくれているとわかる。
心配そうな視線が俺達の間でキョロキョロと動いている。
けど、俺やマリカとは違って、シウムは王子の分の食器を彼から遠ざけた。
見事な塩対応だ。
王子が絶句した。
「……何日も食えないことなんか、あるのか?」
シウムの行動に驚いた王子の視線は食器を追っていて、彼の腹はクルクルと鳴ったままだ。
「去年は10日くらい食べられないのが普通だったんだよ。とってきた実とかに当たってお腹壊したりもしたし」
マリカ……。
不甲斐ない兄で、ゴメンな。
食べられないモノがあるとか、シャリオに教えられて初めて知ったんだ。
「今も獲物がとれなきゃ、何日も草ばっかり食べてるしな」
顔を背けたままのシウムの言葉を聞いた王子の目が「今も?何日も?」とまん丸になった。
「まあ、今年はシャリオのおかげで肉が食えるようになったし、この中にも一応入ってるんだぞ」
って、なんで俺が気を使わないといけないんだ。
なんかギスギスしてるの、嫌だなあ。
王子に期待はできないし、シウムが今だけ折れてくれないかなあ。
王子はここが気に入らなかったら、明日出ていくだろうし、ちょっとの我慢だからな……って、考えの甘かった俺のせいだ。
ごめん2人とも。
「……僕、たった3日食べてないだけで死ぬかと思ったのに、10日も……」
静まり返っていた食卓に彼の小さな呟きが響いて、胸がギュッとなった。
空腹の辛さは俺達の方がよく知っている。
でも贅沢に暮らしていた彼の方が、その辛さは大きいのかもしれない。
たくさん水を飲むとか、ちょっとだけ甘い味のする花を噛むとか、空腹の凌ぎ方も知らないに違いない。
シャリオが『自分で賄えるようになるまで、贅沢には慣れるな』っていう理由が、ようやくわかった気がした。
それでもシャリオは、調味料とかたくさん揃えてくれたんだよな。
だからただの草でも、結構美味く食べられるようになった。
「で?食うのかよ?食わないのかよ?」
シウムの方が折れて王子に声をかけてくれた。
なんだかんだで、シウムも王子を不憫に思ったに違いない。
だって王子だぞ?
あんなところで、周りには他に騎士みたいな味方に見えるヤツもいなかった。
たった1人で、あんなケガまでして、誰も助けにも来てなくて……。
何があったんだ?
「……食う」
皿の中の汁物を見て、恐る恐る口をつけた王子。
あー食べる姿は品があるなあ。やっぱり王子様なんだなあ。
「……うまい」
「そう?それはよかった」
舌打ちしたシウムと、ホッとして小さく笑ったマリカ。
食べ終わって涙ぐんでいた王子に、暫く誰も声はかけられなかった。
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