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15話 14歳のおねだり
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国からの依頼で、西方の獣の討伐に出向いたのはひと月も前だ。
獣がただの獣であれば王都の騎士団で充分戦えるのだろうが、獣が魔力を纏うと途端それは難しくなるらしい。
騎士団の中には魔力持ちも幾人か存在するが、獣の数によっては騎士団が壊滅的な被害を受ける。
そして、騎士団が機能しなくなれば、他国の侵略を受ける。
他国の侵略を受け国名が変わるようなことになれば、新たな権力者が、魔力持ちを定期的に排出できるシシダリス村に目をつけることは容易く考えられることだ。
シシダリスは千数百年前の悲劇を繰り返すわけにはいかない。
それに、討伐に貢献したとなれば、報酬に色がつく。
俺はとにかく手っ取り早くのし上がりたかった。
どこまで強くなれば、どこまで稼ぐようになれば、リースと対等になれるのだろう。
村の連中の中にはリースを侮るヤツも多くいるけれど、何故か長老組はリースの評価を下げることはない。
口を酸っぱくするほどに魔力量の多さには意味があると言う。
実際、生活を共にしている俺にはリースに追いついている自信は無いわけで。
それでも、何もしないで悲嘆に暮れるような性格でも無い。
どんなに時間はかかっても、努力することには意味があると教えてくれたのはリースだ。
だからいつかリースとの間を埋めてみせる。
けど、その前にリースに褒められたい、まずはたくさん稼いで貢ぎたい、その想いでものすごく頑張った。
結果、若年組の最も働いた功労者として名を上げて帰って来たのだ。
さすがに、父親世代の経験からくる戦略戦にはならなかったが。
リースにいっぱい褒めてもらおうと、祝杯を上げる場を早めに切り上げて家に帰ってみれば、そこにリースの姿は無かった。
畑にも、川にもいない。
山にリースの気配がしない。
まさか、また、逃げられた?
どうにも消化できない不安と焦りを抱えて山を降りれば、小売店の店主が「リース君なら村まで買い出しに出てるぞ」と教えてくれた。
隣村まで、俺の足で1日。
道は1本道だ。
とにかく会いたい。
リースに会いたい。
ひと月もリースを我慢したのだ。
村の出口まで速足で駆けると、遠くに獣に車を引かせてこっちにくるリースが見えた。
俺はダッシュで駆け寄ると体当たりするようにリースを抱きしめた。
リースが苦しそうにもがいたが、家に帰ってリースがいなかった俺の気持ちを思えば、そのくらい我慢するべきだと思う。
帰宅して風呂から出ると、一緒に帰ってきた獣はいなかった。
冷静になって思い返してみると、あれは話に聞く神獣の類では無いかと思い当たった。
さすがリースという気持ちと、なんでそんなモノまで惹き寄せてるんだという嫉妬が湧いてくる。
まだまだリースに追いつけないというジレンマで、どうにかなりそうだ。
それにしても、近年ここらで姿を見せるのは黒い神獣だと聞いていたが、白い神獣もいるのだな。
白い神獣の話は聞いたことがなかったが。
それもやっぱりリースの特別感を感じる。
少しばかり鬱屈としたが、リースのご飯が並んだ食卓でその気持ちは飛んだ。
そういえば、そうだっ。
「リース、今日は酒をもらってきたんだよ。一緒に飲もう」
「え、酒、飲んでもいいのか?」
何故だかものすごく驚いた顔をして、リースが顔を上げた。
「いいよー。一緒に飲もうよ」
リースと晩酌とか、ずっとしたかったんだ。
酔ったリースってどんな風になるんだろ。
「いや、年齢的に飲酒とか許されるの?っていう意味で」
…………。
リースはこういうところがある。
なんか、独特な倫理観っていうか。
「酒なんか13も過ぎればみんな飲むでしょ。魔道具の豊富にある町とかならまだしも、田舎だと水じゃあ腹を下すこともあるし」
「へえ」
他の村じゃ水で腹を下すこともあるとか、知らなかったのかな。
「まあ、シシダリスはだいたい自分で綺麗な飲み水くらい出せるし、リースは知らなかった?」
「うん」
リースでも知らないことがある。
それが、なんとなく嬉しかった。
俺の方が知ってることも、あるんだ。
いざ食事を始めると、酒を飲むことを知らないはずなのに、リースの飲み方は堂に入っていた。
気分がよくなって、知らず知らずバカ飲みするってことはなかった。
品のあるリースの様子に、やっぱりリースはリースだなと思う気持ちと、なんだかわからない不安な気持ちが湧き上がってくる。
だから、なんとかリースにたくさん飲ませようと、躍起になってしまった。
互いに次第に酔いがまわり、赤くなった頬ととろりとした瞳に見つめられるようになると、その口から俺への労いとか称賛が飛び出る度に俺の下半身がビクビクと反応した。
その称賛を身体で表してくれたら、なんて。
酔い潰れて目を閉じたリースをベッドに運び、その上に跨る。
前を寛げ、昂った己れをリースの手の中に収めると、何度も動かした。
「っっっは!」
いけないことをしている興奮で、思いもかけず直ぐに出てしまった。
リースの服にも、首にも、飛んでいた。
その光景に、リースの手の中にある己がまた主張をはじめた。
もう1回、もう1回だけ。
気がついたら、リースが汚れまくっていた。
汚れた服をそのままにしたらダメだよな?
リースの服を脱がせて、ついでに俺も脱ぎ捨てて風呂に投げておく。
ああ、食べ終わった食器を片付けでおいたら、さらに褒められるかもしれない。
残飯を全て腹におさめ、魔力で水を出すとサラッと汚れを落とし、重ねて置いた。
これだけやったのだから、ご褒美に裸のリースを抱きしめて寝てもいいはずだ。
翌日起きたリースに
「もう2度と一緒には飲まない」
なんて言われた俺は、なんとかもう一度機会を作ろうと頭を悩ますことになったのだった。
獣がただの獣であれば王都の騎士団で充分戦えるのだろうが、獣が魔力を纏うと途端それは難しくなるらしい。
騎士団の中には魔力持ちも幾人か存在するが、獣の数によっては騎士団が壊滅的な被害を受ける。
そして、騎士団が機能しなくなれば、他国の侵略を受ける。
他国の侵略を受け国名が変わるようなことになれば、新たな権力者が、魔力持ちを定期的に排出できるシシダリス村に目をつけることは容易く考えられることだ。
シシダリスは千数百年前の悲劇を繰り返すわけにはいかない。
それに、討伐に貢献したとなれば、報酬に色がつく。
俺はとにかく手っ取り早くのし上がりたかった。
どこまで強くなれば、どこまで稼ぐようになれば、リースと対等になれるのだろう。
村の連中の中にはリースを侮るヤツも多くいるけれど、何故か長老組はリースの評価を下げることはない。
口を酸っぱくするほどに魔力量の多さには意味があると言う。
実際、生活を共にしている俺にはリースに追いついている自信は無いわけで。
それでも、何もしないで悲嘆に暮れるような性格でも無い。
どんなに時間はかかっても、努力することには意味があると教えてくれたのはリースだ。
だからいつかリースとの間を埋めてみせる。
けど、その前にリースに褒められたい、まずはたくさん稼いで貢ぎたい、その想いでものすごく頑張った。
結果、若年組の最も働いた功労者として名を上げて帰って来たのだ。
さすがに、父親世代の経験からくる戦略戦にはならなかったが。
リースにいっぱい褒めてもらおうと、祝杯を上げる場を早めに切り上げて家に帰ってみれば、そこにリースの姿は無かった。
畑にも、川にもいない。
山にリースの気配がしない。
まさか、また、逃げられた?
どうにも消化できない不安と焦りを抱えて山を降りれば、小売店の店主が「リース君なら村まで買い出しに出てるぞ」と教えてくれた。
隣村まで、俺の足で1日。
道は1本道だ。
とにかく会いたい。
リースに会いたい。
ひと月もリースを我慢したのだ。
村の出口まで速足で駆けると、遠くに獣に車を引かせてこっちにくるリースが見えた。
俺はダッシュで駆け寄ると体当たりするようにリースを抱きしめた。
リースが苦しそうにもがいたが、家に帰ってリースがいなかった俺の気持ちを思えば、そのくらい我慢するべきだと思う。
帰宅して風呂から出ると、一緒に帰ってきた獣はいなかった。
冷静になって思い返してみると、あれは話に聞く神獣の類では無いかと思い当たった。
さすがリースという気持ちと、なんでそんなモノまで惹き寄せてるんだという嫉妬が湧いてくる。
まだまだリースに追いつけないというジレンマで、どうにかなりそうだ。
それにしても、近年ここらで姿を見せるのは黒い神獣だと聞いていたが、白い神獣もいるのだな。
白い神獣の話は聞いたことがなかったが。
それもやっぱりリースの特別感を感じる。
少しばかり鬱屈としたが、リースのご飯が並んだ食卓でその気持ちは飛んだ。
そういえば、そうだっ。
「リース、今日は酒をもらってきたんだよ。一緒に飲もう」
「え、酒、飲んでもいいのか?」
何故だかものすごく驚いた顔をして、リースが顔を上げた。
「いいよー。一緒に飲もうよ」
リースと晩酌とか、ずっとしたかったんだ。
酔ったリースってどんな風になるんだろ。
「いや、年齢的に飲酒とか許されるの?っていう意味で」
…………。
リースはこういうところがある。
なんか、独特な倫理観っていうか。
「酒なんか13も過ぎればみんな飲むでしょ。魔道具の豊富にある町とかならまだしも、田舎だと水じゃあ腹を下すこともあるし」
「へえ」
他の村じゃ水で腹を下すこともあるとか、知らなかったのかな。
「まあ、シシダリスはだいたい自分で綺麗な飲み水くらい出せるし、リースは知らなかった?」
「うん」
リースでも知らないことがある。
それが、なんとなく嬉しかった。
俺の方が知ってることも、あるんだ。
いざ食事を始めると、酒を飲むことを知らないはずなのに、リースの飲み方は堂に入っていた。
気分がよくなって、知らず知らずバカ飲みするってことはなかった。
品のあるリースの様子に、やっぱりリースはリースだなと思う気持ちと、なんだかわからない不安な気持ちが湧き上がってくる。
だから、なんとかリースにたくさん飲ませようと、躍起になってしまった。
互いに次第に酔いがまわり、赤くなった頬ととろりとした瞳に見つめられるようになると、その口から俺への労いとか称賛が飛び出る度に俺の下半身がビクビクと反応した。
その称賛を身体で表してくれたら、なんて。
酔い潰れて目を閉じたリースをベッドに運び、その上に跨る。
前を寛げ、昂った己れをリースの手の中に収めると、何度も動かした。
「っっっは!」
いけないことをしている興奮で、思いもかけず直ぐに出てしまった。
リースの服にも、首にも、飛んでいた。
その光景に、リースの手の中にある己がまた主張をはじめた。
もう1回、もう1回だけ。
気がついたら、リースが汚れまくっていた。
汚れた服をそのままにしたらダメだよな?
リースの服を脱がせて、ついでに俺も脱ぎ捨てて風呂に投げておく。
ああ、食べ終わった食器を片付けでおいたら、さらに褒められるかもしれない。
残飯を全て腹におさめ、魔力で水を出すとサラッと汚れを落とし、重ねて置いた。
これだけやったのだから、ご褒美に裸のリースを抱きしめて寝てもいいはずだ。
翌日起きたリースに
「もう2度と一緒には飲まない」
なんて言われた俺は、なんとかもう一度機会を作ろうと頭を悩ますことになったのだった。
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