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10話 13歳のモフモフ
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いつも通り畑の水やりをしていると、山の上から白い毛玉が落ちてきた。
獣避けの結界がしてあるのに入ってきちまうってどういうことだ?
けど、頼りなげにクンクンと小さく泣いているのを見てると可愛くなってしまう。
「お前、お母さんとかどこ行ったんだ?」
こんな小さいのが1匹で生きていけるとは思えない。
俺の足にまとわりついてくるのを見るにつけても、保護したい気持ちがわいてくる。
「腹とか減ってるのかなあ」
亜空間収納から今日の昼に食べようと思っていた軽食を取り出して一口大に切ると、小さな毛玉が必死で食らいついた。
「よっぽど腹が減っていたんだな。あー、飲み物もいるか?」
平たい皿に花蜜水を注ぐと、それも必死で飲んでいる。
「お前、行くとこないなら俺んとこの子になるか?」
毛玉から返事が返ってくるとは思っていなかったが、毛玉はその言葉にワフッと応えると尻尾を振りまくった。
か、かわいい~!!
「そ、そっか。じゃあ俺んとこの子になるか。あー、名前どうしようかなあ」
白色の小さな毛玉。種族は犬っぽいよな。
「『シロ』じゃ単純だし、『毛玉』つうのもそのままだしなあ。『ユキ』ってどうだ?遠い国の言葉で、白くてふわふわ空から降ってくるやつのこと言うんだけどな」
お前も急に降ってきたんだし。
毛玉は少し首を傾げたあと、ワフッと鳴いた。
「じゃあ、お前はユキな」
しかし、ユキはかわいい。
それに頭もいいみたいだ。
俺の庭は育てたい苗の成長も早いが、雑草が伸びるのも早い。
俺が雑草を抜いていると、ユキもやっていることがわかるのか、土を足でかき出してくれているのだ。
しかも大切な苗には触らないときた。
ただの犬?なのに頭良すぎだろ。
「さて、ユキ~そろそろ帰るぞー」
テトテトとついてくるユキを振り返りながらゆっくり帰宅すると、そのまま風呂場に直行して足だけ洗った。
俺はそのまま軽く身体まで洗っちまう。
「今日はイフトは来ないし、ユキと2人でご飯だな」
イフトは隣村まで泊まりがけで獣の依頼討伐だ。
ご飯をタカリにくるのを悪いと思っているのか、やたらと稼ぎを渡してこようとしたりするんだよな。
将来の嫁のために取っとけって言うんだけど、俺の部屋に箱を運び込んでそこに貯めてるらしい。
自分の部屋には狩り仲間が遊びにくるから置いておけないとか理由までつけてさ。
まあ、信用されてるっていうのは悪い気はしねえけど。
早目の夕飯を食い終わると、酒造りだ。
その日1日で得た収穫物の中で、1番良さげなモノで造る。
なんて言っても、それがポイントを左右するからな。
イフトがいる時は、イフトが風呂に入ってるうちにやるんだ。アイツ、風呂を気に入ってるのか、入浴時間が長えのよ。
今日の収穫は完全に時期外れのスイベリー。春物が夏に採れるとか、俺の庭がマジでファンタジーだ。
あれか?
ビニールハウス栽培だとでも思っておけばいいんかな。
毎日使い育てて大きくなった酒造機に、今日採れたスイベリーをコレでもかと入れてまずはジュースをつくる。
ん、『赤果水』ね。
コレも体力回復薬水になるらしいな。
横で大人しくしていたユキがクゥクゥ鳴くから、ユキの皿にも垂らしてやる。
「そうか、美味いか」
いやー、かわいいなー。
次は酒だぞっと。
酒造機に大量のスイベリーと焼酎を入れると、グイグイと魔力を注いでいく。
「『赤果酒』できたっと。金杯に入れてっと。よし、消えたな」
今日の分も無事奉納終了っと。
どれどれ今日の取得ポイントは……1025ポイントか。
1日のポイント数としてはまあまあだな。
合計で20585ポイントか。
もう少し貯めたら新しい農具(神器)が欲しいんだよなー。
神器だからか、どれも高くてさ。
けどすげえ丈夫でその上強いっていうのは今使ってるクワで実証済みだ。
畑の周りに徘徊する獣と会った時、思わず振り下ろしたらサクッと胴体を切り離しちまってな。
思わず手が震えたもんよ。
農具って武器になるんだってな。
さーて、瓶に移す前に少し味見したろ。
どんな味になったんかなー。
ん!甘酸っぱい酒だ。
母さんが好きそうだなー。
瓶に移しながら、今度買い出しに出たついでに渡してこようと決めた。
買い出しかあ。
「ポイントで、ユキのおもちゃを買うのもいいよなー、ユキ。…………ってユキ!どうした!?」
さっきまで陽気に赤果水を舐めていたユキが、ぐてんぐてんになって転がっている。
「なんで酒臭いんだ?もしかして、瓶に移す時、ユキの皿にかかっちゃったか?ユキ、大丈夫か?ごめんな」
慌ててユキを抱き上げて首や耳を撫でまくる。
…………てかユキを抱き上げて思ったんだけど、ちょっとデカくなってねえ?
いやいやマサカな。
いくら動物の成長が早いっていっても、こんな短時間でデカくなったりしねえよな。
はー、俺も酒で少し酔ってんのかもなー。
……って舐めただけなんだが!?
獣避けの結界がしてあるのに入ってきちまうってどういうことだ?
けど、頼りなげにクンクンと小さく泣いているのを見てると可愛くなってしまう。
「お前、お母さんとかどこ行ったんだ?」
こんな小さいのが1匹で生きていけるとは思えない。
俺の足にまとわりついてくるのを見るにつけても、保護したい気持ちがわいてくる。
「腹とか減ってるのかなあ」
亜空間収納から今日の昼に食べようと思っていた軽食を取り出して一口大に切ると、小さな毛玉が必死で食らいついた。
「よっぽど腹が減っていたんだな。あー、飲み物もいるか?」
平たい皿に花蜜水を注ぐと、それも必死で飲んでいる。
「お前、行くとこないなら俺んとこの子になるか?」
毛玉から返事が返ってくるとは思っていなかったが、毛玉はその言葉にワフッと応えると尻尾を振りまくった。
か、かわいい~!!
「そ、そっか。じゃあ俺んとこの子になるか。あー、名前どうしようかなあ」
白色の小さな毛玉。種族は犬っぽいよな。
「『シロ』じゃ単純だし、『毛玉』つうのもそのままだしなあ。『ユキ』ってどうだ?遠い国の言葉で、白くてふわふわ空から降ってくるやつのこと言うんだけどな」
お前も急に降ってきたんだし。
毛玉は少し首を傾げたあと、ワフッと鳴いた。
「じゃあ、お前はユキな」
しかし、ユキはかわいい。
それに頭もいいみたいだ。
俺の庭は育てたい苗の成長も早いが、雑草が伸びるのも早い。
俺が雑草を抜いていると、ユキもやっていることがわかるのか、土を足でかき出してくれているのだ。
しかも大切な苗には触らないときた。
ただの犬?なのに頭良すぎだろ。
「さて、ユキ~そろそろ帰るぞー」
テトテトとついてくるユキを振り返りながらゆっくり帰宅すると、そのまま風呂場に直行して足だけ洗った。
俺はそのまま軽く身体まで洗っちまう。
「今日はイフトは来ないし、ユキと2人でご飯だな」
イフトは隣村まで泊まりがけで獣の依頼討伐だ。
ご飯をタカリにくるのを悪いと思っているのか、やたらと稼ぎを渡してこようとしたりするんだよな。
将来の嫁のために取っとけって言うんだけど、俺の部屋に箱を運び込んでそこに貯めてるらしい。
自分の部屋には狩り仲間が遊びにくるから置いておけないとか理由までつけてさ。
まあ、信用されてるっていうのは悪い気はしねえけど。
早目の夕飯を食い終わると、酒造りだ。
その日1日で得た収穫物の中で、1番良さげなモノで造る。
なんて言っても、それがポイントを左右するからな。
イフトがいる時は、イフトが風呂に入ってるうちにやるんだ。アイツ、風呂を気に入ってるのか、入浴時間が長えのよ。
今日の収穫は完全に時期外れのスイベリー。春物が夏に採れるとか、俺の庭がマジでファンタジーだ。
あれか?
ビニールハウス栽培だとでも思っておけばいいんかな。
毎日使い育てて大きくなった酒造機に、今日採れたスイベリーをコレでもかと入れてまずはジュースをつくる。
ん、『赤果水』ね。
コレも体力回復薬水になるらしいな。
横で大人しくしていたユキがクゥクゥ鳴くから、ユキの皿にも垂らしてやる。
「そうか、美味いか」
いやー、かわいいなー。
次は酒だぞっと。
酒造機に大量のスイベリーと焼酎を入れると、グイグイと魔力を注いでいく。
「『赤果酒』できたっと。金杯に入れてっと。よし、消えたな」
今日の分も無事奉納終了っと。
どれどれ今日の取得ポイントは……1025ポイントか。
1日のポイント数としてはまあまあだな。
合計で20585ポイントか。
もう少し貯めたら新しい農具(神器)が欲しいんだよなー。
神器だからか、どれも高くてさ。
けどすげえ丈夫でその上強いっていうのは今使ってるクワで実証済みだ。
畑の周りに徘徊する獣と会った時、思わず振り下ろしたらサクッと胴体を切り離しちまってな。
思わず手が震えたもんよ。
農具って武器になるんだってな。
さーて、瓶に移す前に少し味見したろ。
どんな味になったんかなー。
ん!甘酸っぱい酒だ。
母さんが好きそうだなー。
瓶に移しながら、今度買い出しに出たついでに渡してこようと決めた。
買い出しかあ。
「ポイントで、ユキのおもちゃを買うのもいいよなー、ユキ。…………ってユキ!どうした!?」
さっきまで陽気に赤果水を舐めていたユキが、ぐてんぐてんになって転がっている。
「なんで酒臭いんだ?もしかして、瓶に移す時、ユキの皿にかかっちゃったか?ユキ、大丈夫か?ごめんな」
慌ててユキを抱き上げて首や耳を撫でまくる。
…………てかユキを抱き上げて思ったんだけど、ちょっとデカくなってねえ?
いやいやマサカな。
いくら動物の成長が早いっていっても、こんな短時間でデカくなったりしねえよな。
はー、俺も酒で少し酔ってんのかもなー。
……って舐めただけなんだが!?
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