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7話 11歳の仕事
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「よし。水も汲めたし畑に行くか」
米擬き、麦擬き、大豆擬きを手に入れることができて自家栽培をし始めているのだ。
なんでかわからんけどな、亜空間収納に一度入れた水をまくと、通常8カ月ほどかかる収穫が、なんとひと月に縮むのだ。
すごいだろ?
種を蒔いて翌日水やりに行ったらもう踝まで芽が出てるとか、毎日トロロ歌っちゃうもんな。
だから畑自体は小さなものだが、この1年で蓄えはちょっとした農家みたいになった。
いろんな種類の種をポイント払いで手に入れては輪作して、それなりに種類のある備蓄があるから生活にも困ってない。
まだ実家に持って行けるほどの余裕はないけどな。
亜空間収納もな、5部屋増えて今は20種類しまっておけるようになったんだ。
ちなみに酒も造り続けている。大人になったら存分に楽しもうと先の目標ができたっていうか。
最近では1回で2・3本分の酒ができるようになったから、めっちゃ溜まっている。
なんとなく酒は20からだと思っているが、こっちの事情はどうなんだろうな。
家族以外の他人と関わらないから気軽に聞ける友人もいないし、よくわからん。イフトはそういうの知らなさそうだし。
ま、大人になった時の楽しみがあるってことだ。
さすがに今飲んだら、背とか伸びなくて後悔しそうだからさ。
だから自分で自在に手に入れられないのは肉くらいなんだ。
その肉も、いつも親兄弟とイフトが分けてくれるし。
とはいえ、自分で手に入れられないのだから他のヤツよりも肉を食う量が少ないんだろう。
背はあまり伸びず筋肉もつかない俺は、あんなに小さかったイフトにこの間背を抜かれたところだ。
地味にショックだった。
いや、そんなことどうでもいいんだ。
俺はお一人様スローライフを楽しみながら余生を過ごすんだからな。
高身長でモテる必要なんかこれっぽっちもないんだから。
俺は色付いたトメトをもぐと、亜空間に次々と入れていった。
☆
今日の分の収穫を無事に終え家に帰ると、玄関で靴を脱ぐ。
大きなドーム状のテント家は寝るためのベッドは置いてあるが、大抵は地面に座る生活様式で1Kに住んでいた時代とよく似ている。
1K時代と違うのは、入り口はカギではなく魔術で閉められていて、決められた人しか入れないというところだろうか。
無理に入ることができないわけではないが、そのためには相当な高度な技がいるらしい。
この村、魔力は豊富だが魔術は発達していない。
都は逆に、魔術は発達しているが魔力に乏しい。
だからこそ時折村人が出稼ぎに行くと結構な収入になるわけである。
ちなみに我が家に自由に出入りできるのは俺だけだ。
こんな遠くまで泊まりに来てくれる友達なんて、いないからな。
時々イフトが遊びに来るだけで、その時は泊めることもあるけど。
土を落としわざわざ作った浴室に入ると、木で作った大きめなタライに水を張り豊富な魔力を使って温めた。
中に直接入るには少し狭くなってきて足を伸ばしきれなくなったから、俺も少しは大きくなっているということだろう。
毎日お湯を浴びたいと思うのは、やっぱり記憶の名残だよなー。
村人は水浴びはしても風呂には入らないし。
そもそも風呂がないからなー。
まあ、金に余力のあるやつは魔術の組み込まれた魔道具を購入して帰ってくるから、俺みたいに温めて浴びてるやつもいるかもしれないけどな。
ま、冬もそこまで寒くなるわけじゃないから、一年中水浴びできなくもないんだろう。
ただ、他の町には風呂に入る習慣がある所もあるらしい。
俺が食品を加工して保存するビンとかは、基本的にはその町からやって来る業者から仕入れてて、いろいろ話を聞くに、この村は他の町と比べて文明的に少し遅れているんだと思う。
豊富な魔力を利用して、基本的な水や火などには困らないのが理由だろうか。
対して、基礎的なエネルギーに欠ける他の村などでは、限りあるエネルギーをエコに使用する方法を考えなければならなかったのだろう。
村と比べると随分と発展している気がする。
この村が他の町から優遇されているのは、村人がもれなくみんな魔力持ちであるからだ。
また魔術を魔道具に施すにあたり獣から獲れる素材などが必要となるわけだが、それも魔力持ちの人間でないと討つことが難しい。
つまり、この村の必要度はかなり高いということになる。
ただ、この土地から長期に離れると次第に魔力が減っていくとかで、厚遇の仕事があっても村人が町や王都に腰を据えることはないんだ。
そういう理由もあってか、過去にはこの村を支配しようとした権力者もいたというが、魔力を保持し続けるのにはそれなりの面倒な決まりもあるらしく、彼らは一様に断念することになったとか。
それ以来お互い助け合うことでうまくやっている。
風呂から上がると、俺は空き瓶に1年間の時間止めの魔術を仕込んで完成した保存食を詰めた。
魔力があると魔術を扱いにくいらしいが、俺はどちらも問題ない。
魔力を抑えることもできるからかなと思っている。
魔術を仕込む時に完成前の魔術に魔力が流れると暴発してしまう。
だから魔力がいくらあっても魔術の開発は進まないわけで、そういった意味ではこの村は発展しない。
町から完成品を購入すればいいのだが、みんな基本的な魔法は使えるわけで、ちょっとした魔道具なんかは必要ないもんなー。
「うっし、完成っと」
完成した食料の加工品を瓶に詰め終わった。
他の町で買った瓶には保存魔術は施されていなかったから、ポイントで購入した瓶の魔術を真似て入れてみてある。
亜空間収納に入れている間はもちろん、ずっとこのまま保存が効くし、人に渡す時に亜空間収納から取り出すと、そこから1年間は腐らないって代物になっているのだ。
結構喜ばれるから、物々交換にもってこいな感じなんだー。
森で助けたおっさんが時々『花蜜水』を買いに来るから金も結構貯まったし、もう少ししたら、やっと実家に恩返しができる気がしている。
米擬き、麦擬き、大豆擬きを手に入れることができて自家栽培をし始めているのだ。
なんでかわからんけどな、亜空間収納に一度入れた水をまくと、通常8カ月ほどかかる収穫が、なんとひと月に縮むのだ。
すごいだろ?
種を蒔いて翌日水やりに行ったらもう踝まで芽が出てるとか、毎日トロロ歌っちゃうもんな。
だから畑自体は小さなものだが、この1年で蓄えはちょっとした農家みたいになった。
いろんな種類の種をポイント払いで手に入れては輪作して、それなりに種類のある備蓄があるから生活にも困ってない。
まだ実家に持って行けるほどの余裕はないけどな。
亜空間収納もな、5部屋増えて今は20種類しまっておけるようになったんだ。
ちなみに酒も造り続けている。大人になったら存分に楽しもうと先の目標ができたっていうか。
最近では1回で2・3本分の酒ができるようになったから、めっちゃ溜まっている。
なんとなく酒は20からだと思っているが、こっちの事情はどうなんだろうな。
家族以外の他人と関わらないから気軽に聞ける友人もいないし、よくわからん。イフトはそういうの知らなさそうだし。
ま、大人になった時の楽しみがあるってことだ。
さすがに今飲んだら、背とか伸びなくて後悔しそうだからさ。
だから自分で自在に手に入れられないのは肉くらいなんだ。
その肉も、いつも親兄弟とイフトが分けてくれるし。
とはいえ、自分で手に入れられないのだから他のヤツよりも肉を食う量が少ないんだろう。
背はあまり伸びず筋肉もつかない俺は、あんなに小さかったイフトにこの間背を抜かれたところだ。
地味にショックだった。
いや、そんなことどうでもいいんだ。
俺はお一人様スローライフを楽しみながら余生を過ごすんだからな。
高身長でモテる必要なんかこれっぽっちもないんだから。
俺は色付いたトメトをもぐと、亜空間に次々と入れていった。
☆
今日の分の収穫を無事に終え家に帰ると、玄関で靴を脱ぐ。
大きなドーム状のテント家は寝るためのベッドは置いてあるが、大抵は地面に座る生活様式で1Kに住んでいた時代とよく似ている。
1K時代と違うのは、入り口はカギではなく魔術で閉められていて、決められた人しか入れないというところだろうか。
無理に入ることができないわけではないが、そのためには相当な高度な技がいるらしい。
この村、魔力は豊富だが魔術は発達していない。
都は逆に、魔術は発達しているが魔力に乏しい。
だからこそ時折村人が出稼ぎに行くと結構な収入になるわけである。
ちなみに我が家に自由に出入りできるのは俺だけだ。
こんな遠くまで泊まりに来てくれる友達なんて、いないからな。
時々イフトが遊びに来るだけで、その時は泊めることもあるけど。
土を落としわざわざ作った浴室に入ると、木で作った大きめなタライに水を張り豊富な魔力を使って温めた。
中に直接入るには少し狭くなってきて足を伸ばしきれなくなったから、俺も少しは大きくなっているということだろう。
毎日お湯を浴びたいと思うのは、やっぱり記憶の名残だよなー。
村人は水浴びはしても風呂には入らないし。
そもそも風呂がないからなー。
まあ、金に余力のあるやつは魔術の組み込まれた魔道具を購入して帰ってくるから、俺みたいに温めて浴びてるやつもいるかもしれないけどな。
ま、冬もそこまで寒くなるわけじゃないから、一年中水浴びできなくもないんだろう。
ただ、他の町には風呂に入る習慣がある所もあるらしい。
俺が食品を加工して保存するビンとかは、基本的にはその町からやって来る業者から仕入れてて、いろいろ話を聞くに、この村は他の町と比べて文明的に少し遅れているんだと思う。
豊富な魔力を利用して、基本的な水や火などには困らないのが理由だろうか。
対して、基礎的なエネルギーに欠ける他の村などでは、限りあるエネルギーをエコに使用する方法を考えなければならなかったのだろう。
村と比べると随分と発展している気がする。
この村が他の町から優遇されているのは、村人がもれなくみんな魔力持ちであるからだ。
また魔術を魔道具に施すにあたり獣から獲れる素材などが必要となるわけだが、それも魔力持ちの人間でないと討つことが難しい。
つまり、この村の必要度はかなり高いということになる。
ただ、この土地から長期に離れると次第に魔力が減っていくとかで、厚遇の仕事があっても村人が町や王都に腰を据えることはないんだ。
そういう理由もあってか、過去にはこの村を支配しようとした権力者もいたというが、魔力を保持し続けるのにはそれなりの面倒な決まりもあるらしく、彼らは一様に断念することになったとか。
それ以来お互い助け合うことでうまくやっている。
風呂から上がると、俺は空き瓶に1年間の時間止めの魔術を仕込んで完成した保存食を詰めた。
魔力があると魔術を扱いにくいらしいが、俺はどちらも問題ない。
魔力を抑えることもできるからかなと思っている。
魔術を仕込む時に完成前の魔術に魔力が流れると暴発してしまう。
だから魔力がいくらあっても魔術の開発は進まないわけで、そういった意味ではこの村は発展しない。
町から完成品を購入すればいいのだが、みんな基本的な魔法は使えるわけで、ちょっとした魔道具なんかは必要ないもんなー。
「うっし、完成っと」
完成した食料の加工品を瓶に詰め終わった。
他の町で買った瓶には保存魔術は施されていなかったから、ポイントで購入した瓶の魔術を真似て入れてみてある。
亜空間収納に入れている間はもちろん、ずっとこのまま保存が効くし、人に渡す時に亜空間収納から取り出すと、そこから1年間は腐らないって代物になっているのだ。
結構喜ばれるから、物々交換にもってこいな感じなんだー。
森で助けたおっさんが時々『花蜜水』を買いに来るから金も結構貯まったし、もう少ししたら、やっと実家に恩返しができる気がしている。
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