2 / 40
2話 9歳の実験
しおりを挟む
この村は幼児から成長し、働ける子供になった証として行われる『独立の儀』という祭事がある。
村の宝である宝珠に手をかざし、大地から魔力を体内に取り込む儀式で、必ず全員が魔力を得られるのだ。
ただしそれはここの村人限定で、他の村や町の人間には反応しない。
都からやってくる偉い人でも反応する事はないという。
この国にはこの村でなくても魔力持ちは僅かに生まれるらしいが、それはそれなりに貴重なことで、もし生まれれば貴族に養子に出されるのが常なんだとか。
けれど、ここの村人はそんなことはしない。
なぜならこの土地から離れて暮らしていると、およそ3年で魔力が消えてしまうからだ。
故に、村人は大地から魔力を吸収していると考えているらしく、裕福さとは裏腹に家はテントみたいな作りになっている。
地面に直に腰を下ろして大地と触れ合って生活するのだ。もちろん土の真上じゃなくて、分厚目な布を敷いた上だけどな。
そのため家に入る時には少しでも大地と触れ合うために靴を脱ぐし、きちんと寝る時は衛生上ベッドの上で寝るのだが、ちょっと微睡む時は分厚めな布の上で横たわる。
なんとなく記憶の中の生活と合致して、それはちょっとホッとした俺だ。
さて、歴代で一番多い魔力を有しながら、狩りにも出かけない俺。
魔力量そのものの圧を獣に威圧として当てたり、水や火を使って獣を追い込んだり、風を使って速く走り大きな獲物を浮かせて運んだり。
一応やり方は知っていて、行使することができるのは確認済みだ。
しかし俺は好んで狩りに行かないわけで、他の用途を探る必要があるのだ。
こんなに多い魔力量、使わないと勿体無いじゃないか。
まあ、命の危険があれば狩らねばならないわけで、全くのゼロじゃないが。
となれば、やっぱり1番欲しいのはアレだよな。
亜空間収納。
重い荷物や嵩張る物をしまっておけて、なおかつ時間に左右されないヤツ。
できないかもしれないけど、できるかもしれない。やってみなければ一生できないわけで、そうなればやってみちゃうでしょ。
男ならやっぱり夢のアイテムに1度はチャレンジしないとな!
と思っていたら、できてしまった、簡単に。
「マジかよ」
まあ、部屋は3つにしか分かれてないから収納できるのも3種類だが。
部屋を1つ増やすのに膨大な魔力が必要みたいだから、また俺の器に目一杯の魔力が溜まるまで部屋を増やすのは休憩だ。
3部屋目を作るのに魔力を使い過ぎたのか、ちょっと、いや、かなり気持ち悪い。
さて暇になってしまった。
気持ちは悪いが、まだ1日ははじまったばかりだ。
どうしようか。う~ん。あ!
俺はあまり魔力を使わなくてもいい土の魔術を使って土をボコッと耕すと、兄貴がくれた苗を植えることにした。
他の人に抜かれたり、害虫や害鳥に食べられたりしないように薄く結界の魔術を施す。
食糧になる肉を獲って来れないんだから、なんか美味しい作物でも収穫できるようになるといいんだけどな。
村人は野菜なんかは他の村から買っているし、知り合いは同情込みだろうけど、俺からも買ってくれるだろう。
なんて思いながら翌日見に来てみれば、踝程の大きさだった苗木が腰の高さまで成長し、花まで咲いている。
これ、明日には収穫できそうじゃねえか?
なんでこうなった。
確か収穫までに半年くらいかかる植物なはずだぞ。
俺はその苗1本に魔力をこれでもかと使った結果の現象だとは気づかず、作物を育てては早く実がなったり実らなかったりするのを、いろいろ検証する1年間を過ごすことになったのだった。
村の宝である宝珠に手をかざし、大地から魔力を体内に取り込む儀式で、必ず全員が魔力を得られるのだ。
ただしそれはここの村人限定で、他の村や町の人間には反応しない。
都からやってくる偉い人でも反応する事はないという。
この国にはこの村でなくても魔力持ちは僅かに生まれるらしいが、それはそれなりに貴重なことで、もし生まれれば貴族に養子に出されるのが常なんだとか。
けれど、ここの村人はそんなことはしない。
なぜならこの土地から離れて暮らしていると、およそ3年で魔力が消えてしまうからだ。
故に、村人は大地から魔力を吸収していると考えているらしく、裕福さとは裏腹に家はテントみたいな作りになっている。
地面に直に腰を下ろして大地と触れ合って生活するのだ。もちろん土の真上じゃなくて、分厚目な布を敷いた上だけどな。
そのため家に入る時には少しでも大地と触れ合うために靴を脱ぐし、きちんと寝る時は衛生上ベッドの上で寝るのだが、ちょっと微睡む時は分厚めな布の上で横たわる。
なんとなく記憶の中の生活と合致して、それはちょっとホッとした俺だ。
さて、歴代で一番多い魔力を有しながら、狩りにも出かけない俺。
魔力量そのものの圧を獣に威圧として当てたり、水や火を使って獣を追い込んだり、風を使って速く走り大きな獲物を浮かせて運んだり。
一応やり方は知っていて、行使することができるのは確認済みだ。
しかし俺は好んで狩りに行かないわけで、他の用途を探る必要があるのだ。
こんなに多い魔力量、使わないと勿体無いじゃないか。
まあ、命の危険があれば狩らねばならないわけで、全くのゼロじゃないが。
となれば、やっぱり1番欲しいのはアレだよな。
亜空間収納。
重い荷物や嵩張る物をしまっておけて、なおかつ時間に左右されないヤツ。
できないかもしれないけど、できるかもしれない。やってみなければ一生できないわけで、そうなればやってみちゃうでしょ。
男ならやっぱり夢のアイテムに1度はチャレンジしないとな!
と思っていたら、できてしまった、簡単に。
「マジかよ」
まあ、部屋は3つにしか分かれてないから収納できるのも3種類だが。
部屋を1つ増やすのに膨大な魔力が必要みたいだから、また俺の器に目一杯の魔力が溜まるまで部屋を増やすのは休憩だ。
3部屋目を作るのに魔力を使い過ぎたのか、ちょっと、いや、かなり気持ち悪い。
さて暇になってしまった。
気持ちは悪いが、まだ1日ははじまったばかりだ。
どうしようか。う~ん。あ!
俺はあまり魔力を使わなくてもいい土の魔術を使って土をボコッと耕すと、兄貴がくれた苗を植えることにした。
他の人に抜かれたり、害虫や害鳥に食べられたりしないように薄く結界の魔術を施す。
食糧になる肉を獲って来れないんだから、なんか美味しい作物でも収穫できるようになるといいんだけどな。
村人は野菜なんかは他の村から買っているし、知り合いは同情込みだろうけど、俺からも買ってくれるだろう。
なんて思いながら翌日見に来てみれば、踝程の大きさだった苗木が腰の高さまで成長し、花まで咲いている。
これ、明日には収穫できそうじゃねえか?
なんでこうなった。
確か収穫までに半年くらいかかる植物なはずだぞ。
俺はその苗1本に魔力をこれでもかと使った結果の現象だとは気づかず、作物を育てては早く実がなったり実らなかったりするのを、いろいろ検証する1年間を過ごすことになったのだった。
27
お気に入りに追加
969
あなたにおすすめの小説
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
【完結】三度目の正直ってあると思う?
エウラ
BL
俺には今の俺になる前の記憶が二つある。
どういう訳かその二つとも18歳で死んでる。そして死に方もほぼ同じ。
もう俺、呪われてんじゃね?
---という、過去世の悲惨な記憶のせいで引きこもりがちな主人公の話。
三度目は長生き出来るのか?
過去の記憶のせいで人生を諦めている主人公が溺愛される話です。
1話1話が長いですが、3話で終わる予定です。
R18には*がつきます。
3話の予定でしたが番外編的な1話を足しました。これで完結です。
モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています
奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。
生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』
ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。
顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…?
自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。
※エロは後半です
※ムーンライトノベルにも掲載しています
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる