彼はやっぱり気づかない!

水場奨

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51話 閑話2 懐かしき日々と未来へ

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「蛇神様~!今日も美しいですねえ」

「シャルロッテ、妾は蛇ではないというのに」
「蛇神様が本当は大きいって知ってるけど、私の前にいるのはこんなに可愛い蛇神様なんだもの」

ああ、これは夢であるか。
傷ついた妾を癒してくれた、清らかな乙女よ。
其方にまた会いたいものだ。



「蛇神様、私、嫁ぐことになりました。お会いできなくなるのが、寂しいです」
「こんなに小さい妾で良ければ、水さえ有れば会いに行ける故、悲しむな」
「本当ですか!嬉しい!」

その婚姻で其方があれほどまでに悲しむことになるので有れば、あの時攫っておけばよかった。
妾に人の世は難しい。



「蛇神様、私、王都に行くことになりました。田舎者の私には、怖いところなのでしょうね」
「其方が嫌ならば行くことはないであろう。だが、王都には妾の本体があるのだ。其方に大きく立派な妾の姿を見せてやりたいのう」
「ふふふ。お父様には迷惑をかけましたから、これは私が選んだ道なのです。だから耐えられると思っておりましたけど、蛇神様がいらっしゃるなら楽しみになりました!待っていてくださいね!」

妾が力を制御できたのであれば、其方を守れたのに。
前のように苦しむ其方を見たくはない。
少し試してみるかの。



「蛇神様、恐れ多いことに、陛下のお子を身篭ってしまいました」
「そうか。陛下とやらは其方を幸せにしてくれるのか?」
「はい、それは優しい方なのです。あの寂しい方を、私は支えて差し上げたいと思っているのです」
「では其方と其方の子を守る者を送り届けよう」

力ある愛子をシャルロッテの側に。
其方を守る者として。
うむむ、なんとか力を制御せねばな。

まさかそれに10の年月を必要としてしまうとは。



ああ、ああ、まこと、人の世は難しい。
其方を守る者として愛子を送り届けたのであるに、其方が愛子を守るために命を捨てようとは。

シャルロッテの色を濃く引き継いだ、妾の愛子よ。
シャルロッテが守った其方を、妾も守ろう。

それにしても、憎き者達よ。
どのように苦しめて滅ぼそうか。
嗚呼、ああ、憎い、憎い。
妾の愛しい者を葬った、アレらを地獄の底へ送らねばならぬ。



妾の力が、愛子を苦しめておる。
妾の力が、憎しみが、制御できなかった故。
妾の力で生まれた愛子は、妾の影響を受けやすかったのだ。
このままでは、憎しみに駆られ愛子の心までも死んでしまう。
一体どうしたらいいのか。
妾の憎しみのせいで、愛子の心まで、憎しみに満ちるとは思わなんだ。
だが、この憎しみを抑えることもできぬ。

せめて愛子の幸せな記憶だけは、シャルロッテの記憶だけは汚されたくない。



今の妾の姿をシャルロッテが悲しむと?
憎しみを捨てても愛子は守れると?
異なる星の魂を持つ者よ。
其方は堕ちた妾まで救ってくれようとしているのか。

人は、弱い。
妾が関わると、幸せにはしてやれぬのだ。
力の加減が、わからぬのだ。
妾は、人の世を知らぬからな。

ならば、ならば、異なる星の魂を持つ者よ。
其方に託したい。
妾の愛子を。

ああ、妾の憎しみの呪い、愛子の絡まった記憶の糸を、解いてやらねばな。

シャルロッテを守る者としてのかしこまった愛子と、その役割を忘れ自由に生きていた愛子。
どちらも妾にとっては変わらぬ其方だが、あまりにも違う記憶じんかくはすぐには混ざることも叶わぬ。
だが、どちらの記憶も其方のものだ。
いずれ、混じり合おう。

そして

幸せに、幸せにおなり、其方の母の分まで。





ーーーーーーーーーー

ちょっと説明不足ですが、御山殿と人との間には分かり合えない考え方の差があります
神様だから仕方ないですね
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