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26話 リクの執事試験
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今年収穫した麦たちは、おっちゃん達がすぐに粉にしはじめた。
俺、農業のことはわからないけど、乾燥とかしなくていいんかな。
乾燥なら手伝ってやれるぞ?
米は乾燥が必要だったぞ。麦は知らんけど。
「兄貴!必要分は粉にしたので、早いとこ石臼を片付けちゃってください!」
「お、おう。任せとけ」
おっちゃんたちの目が血走ってて、マジ怖ええ。
しかしなぜ故に石臼を片付けるのだ?
「おじさん、なんでそんなに慌ててるの?」
「おじさんて……ミーナちゃん、僕らみんなまだ10代だからね」
おっちゃん達の目が遠くを見てうるっと光った。
……ごめん、俺も30歳は回ってると思ってた。
「そ、そんなことよりも、早くパンにするぞ!」
「は!そ、そうだった!」
そう言うと我に返ったおっちゃん達は、なんでかわからないけど急いでパンを焼いた。酵母が無くて、時間も無くてパンというよりスコーンになった。
いやスコーンならいいけど、小麦粉伸ばして焼いただけのナンみたいなのが大半だ。
焼けてりゃいいのか?君たちは。
美味しいパンを食べたいとか思わないのか?
時間があればそれなりのものも作ってあげられるのに、変なの。
それでも急げと言われて、焼いてすぐマジックバッグにパンも片付けた。
それなのに、籾殻すら取ってない麦が20袋、部屋の中央にでん!と置いてある。
以上が麦を収穫してから3日目までの出来事である。
それからおっちゃん達は真剣な顔で言った。
「兄貴、こちらから人を遣るまで、チビ達と隠れていられる場所に心当たりはないですか?」
と。
「あ、リクさん、できればリクさんもついて行って女達を守ってほしいっす」
「ああ、なるほど」
リクはなんのことか理解したようだ。
俺にはさっぱりわかんないけど。
「お兄様!行きましょう!」
少女達もノリノリだ。
なんかわからないけど、みんながノリノリで楽しそうだし、この空気はあれだ。
俺はハッと気がついた。
そうかそうか、ふむふむ。
せっかく収穫が終わったのだ。後やることっていったらアレだよね。
収穫祭に違いない!
え、もしかしてサプライズ?
サプライズ考えてくれてるの?
マジ、嬉しいかも!
なんなら俺、日本でサプライズとかしてもらったことないわ!
いや、普通のお誕生日会とかはさすがにやってもらってたけどな。
別にかわいそうな子じゃないからな。
でもそうか。みんながいろいろ考えてくれてるのなら乗っちゃわないと悪いよなあ!
☆☆☆
お邪魔したのはなんと娼館だった。
お姉さん達が是非にと言ったからであって、『行く行く~!』ってノリノリで来たのは確かに俺なんだけども、泊まる先が娼館だとは知らなかったんだよ、本当に。
「スニ、ちゃんと押さえてて!」
「お兄様、動かないで下さい!」
マッパに剥かれて、フリフリの下着を合わされてる、俺。
あんな、逃げようと思ったら逃げられるんだぞ、ホントは。
けどな、女に力尽くで逆らうとかしたらな、暴力振るったことになってだな、後々社会的に抹殺されるのは俺の方なんだぜ?
彼女たちから逃げたあとの方が怖いに決まっている。
ちゃんと前の世界で学んでいるのだ。
だが、それにも限界があってだな。
「待て待て待て待て!それ透けてるよな?!もっと違うのあるだろ?」
黒のスケスケとか、チンコ丸見えだよな?
「あら、お気に召さなかったかしら」
次はもっとマシなの持って来てくれるかと思いきや、ピンクのスケスケとかもっといらんし!
まあ女子たちが俺のことを、男として認識してないってことだけはわかった。
……ていうか俺にこんな格好させて、誰得だよ。
「逆の方がいいわね。中が黒で外がピンクよ」
ってまだやるのかよ!
さらに布を合わせてくれてるんだけど、その布も透けてるからな!
前面の足の腿がくっきり見える、ふんわりセクシーなアラビアンなズボン履かされて、むっちゃ似合わないだろ!
「そろそろリクさん呼んできて」
「はーい」
ミーナが部屋を飛び出していった。
「お待たせしました。何かご用……ぐはっ」
部屋に入ってきたリクが前屈みに倒れ込んだ。
「な、何?何だ?」
姉さんたち、リクにも何かやったのか?
「う~ん、免疫がなさ過ぎですね。執事失格、と」
だから、何?
「というかこれはなんの衣装なんだ?」
収穫祭ってもしかして、ハロウィンみたいな感じなのか?
仮装してお祝い?
「あ、これは、もうそろそろ12歳になるサフィ様の、ちょっと大人の世界に足を踏み入れたいな♡頑張って背伸び衣装着てみました、風です」
は?
「リクさんには、サフィ様の最も近くにいることを許される権利をもぎ取っていただかないと、ですからね!」
「カランさんに負けてもらっては困るのよ」
「サフィ様を本家の方に取られるなんて、我慢できませんから!」
「へ、へ~え?」
それは何か?3日に1度やってくるカランとリクの間に何かあるのか?
ね~、と手を取り合う少女達に、なんかわかんないけど、楽しそうだからまあいいかと思うことにした。
人間、諦めも大事だ。
なんてことを考えていたからいけなかったのかもしれない。
残された男衆がどんな思いでいたのかなんて、俺は全く気がついていなかったのだ。
俺、農業のことはわからないけど、乾燥とかしなくていいんかな。
乾燥なら手伝ってやれるぞ?
米は乾燥が必要だったぞ。麦は知らんけど。
「兄貴!必要分は粉にしたので、早いとこ石臼を片付けちゃってください!」
「お、おう。任せとけ」
おっちゃんたちの目が血走ってて、マジ怖ええ。
しかしなぜ故に石臼を片付けるのだ?
「おじさん、なんでそんなに慌ててるの?」
「おじさんて……ミーナちゃん、僕らみんなまだ10代だからね」
おっちゃん達の目が遠くを見てうるっと光った。
……ごめん、俺も30歳は回ってると思ってた。
「そ、そんなことよりも、早くパンにするぞ!」
「は!そ、そうだった!」
そう言うと我に返ったおっちゃん達は、なんでかわからないけど急いでパンを焼いた。酵母が無くて、時間も無くてパンというよりスコーンになった。
いやスコーンならいいけど、小麦粉伸ばして焼いただけのナンみたいなのが大半だ。
焼けてりゃいいのか?君たちは。
美味しいパンを食べたいとか思わないのか?
時間があればそれなりのものも作ってあげられるのに、変なの。
それでも急げと言われて、焼いてすぐマジックバッグにパンも片付けた。
それなのに、籾殻すら取ってない麦が20袋、部屋の中央にでん!と置いてある。
以上が麦を収穫してから3日目までの出来事である。
それからおっちゃん達は真剣な顔で言った。
「兄貴、こちらから人を遣るまで、チビ達と隠れていられる場所に心当たりはないですか?」
と。
「あ、リクさん、できればリクさんもついて行って女達を守ってほしいっす」
「ああ、なるほど」
リクはなんのことか理解したようだ。
俺にはさっぱりわかんないけど。
「お兄様!行きましょう!」
少女達もノリノリだ。
なんかわからないけど、みんながノリノリで楽しそうだし、この空気はあれだ。
俺はハッと気がついた。
そうかそうか、ふむふむ。
せっかく収穫が終わったのだ。後やることっていったらアレだよね。
収穫祭に違いない!
え、もしかしてサプライズ?
サプライズ考えてくれてるの?
マジ、嬉しいかも!
なんなら俺、日本でサプライズとかしてもらったことないわ!
いや、普通のお誕生日会とかはさすがにやってもらってたけどな。
別にかわいそうな子じゃないからな。
でもそうか。みんながいろいろ考えてくれてるのなら乗っちゃわないと悪いよなあ!
☆☆☆
お邪魔したのはなんと娼館だった。
お姉さん達が是非にと言ったからであって、『行く行く~!』ってノリノリで来たのは確かに俺なんだけども、泊まる先が娼館だとは知らなかったんだよ、本当に。
「スニ、ちゃんと押さえてて!」
「お兄様、動かないで下さい!」
マッパに剥かれて、フリフリの下着を合わされてる、俺。
あんな、逃げようと思ったら逃げられるんだぞ、ホントは。
けどな、女に力尽くで逆らうとかしたらな、暴力振るったことになってだな、後々社会的に抹殺されるのは俺の方なんだぜ?
彼女たちから逃げたあとの方が怖いに決まっている。
ちゃんと前の世界で学んでいるのだ。
だが、それにも限界があってだな。
「待て待て待て待て!それ透けてるよな?!もっと違うのあるだろ?」
黒のスケスケとか、チンコ丸見えだよな?
「あら、お気に召さなかったかしら」
次はもっとマシなの持って来てくれるかと思いきや、ピンクのスケスケとかもっといらんし!
まあ女子たちが俺のことを、男として認識してないってことだけはわかった。
……ていうか俺にこんな格好させて、誰得だよ。
「逆の方がいいわね。中が黒で外がピンクよ」
ってまだやるのかよ!
さらに布を合わせてくれてるんだけど、その布も透けてるからな!
前面の足の腿がくっきり見える、ふんわりセクシーなアラビアンなズボン履かされて、むっちゃ似合わないだろ!
「そろそろリクさん呼んできて」
「はーい」
ミーナが部屋を飛び出していった。
「お待たせしました。何かご用……ぐはっ」
部屋に入ってきたリクが前屈みに倒れ込んだ。
「な、何?何だ?」
姉さんたち、リクにも何かやったのか?
「う~ん、免疫がなさ過ぎですね。執事失格、と」
だから、何?
「というかこれはなんの衣装なんだ?」
収穫祭ってもしかして、ハロウィンみたいな感じなのか?
仮装してお祝い?
「あ、これは、もうそろそろ12歳になるサフィ様の、ちょっと大人の世界に足を踏み入れたいな♡頑張って背伸び衣装着てみました、風です」
は?
「リクさんには、サフィ様の最も近くにいることを許される権利をもぎ取っていただかないと、ですからね!」
「カランさんに負けてもらっては困るのよ」
「サフィ様を本家の方に取られるなんて、我慢できませんから!」
「へ、へ~え?」
それは何か?3日に1度やってくるカランとリクの間に何かあるのか?
ね~、と手を取り合う少女達に、なんかわかんないけど、楽しそうだからまあいいかと思うことにした。
人間、諦めも大事だ。
なんてことを考えていたからいけなかったのかもしれない。
残された男衆がどんな思いでいたのかなんて、俺は全く気がついていなかったのだ。
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